【連載】競走部 東京箱根間往復大学駅伝(箱根)前特集 『UPSET』 第14回 菅野雄太

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 安定感のある走りが特徴の菅野雄太(教4=埼玉・西武学園文理)。前半シーズンは貧血などに苦しむも、夏合宿からは復調の兆しを見せた。最終学年として挑む最後の東京箱根間往復大学駅伝(箱根)出走に向けて、目標や意気込みを伺った。

※この取材は12月11日にオンラインで行われたものです。

「4年間で1番苦しんだ」前半シーズン

関東インカレのハーフマラソンを走る菅野

――まず、前半シーズンについて伺います。今年2月には初のフルマラソンを経験されましたが、フルマラソンを走って何か変化はありましたか

 単純に長い距離に対する心理的なハードルは下がったと思います。先日上尾ハーフ(上尾シティハーフマラソン大会)を走った時も意外とすぐ終わったという感覚があったので、やはりそういう部分で変化を感じました。

――今年4月からはついに最終学年となりましたが、心境の変化はありましたか

 最終学年となって、やはり下級生から一番見られる立場になったので、練習に向けた姿勢などは今まで以上にちゃんとしていこうと思うようになりました。

――4年生として、チーム内での立ち位置の変化はありましたか

 大きな変化はありませんが、練習中の声かけなどを意識的に行うようにすることは、4年目になって意識していたところではあります。

――今年のチームの雰囲気を教えてください

 チームの雰囲気としてはみんな練習に対する態度がしっかりしています。一方で普段の様子は大志(伊藤大志駅伝主将、スポ4=長野・佐久長聖)を中心に学年間の壁を作らないような雰囲気を出していくことができたので、学年をまたいだコミュニケーションも多く見られて、活気のあるチームだと思います。

――伊藤大志駅伝主将はどんな駅伝主将だと思いますか

 これまでは結構背中で引っ張るタイプの主将が多かったです。大志はもちろん背中で引っ張る姿勢も見せますが、練習などで下級生に寄り添うところもあります。あとはチーム運営に関しても、1人でやるというよりは4年生でしっかり話し合ってから試行していく感じです。背中で引っ張っていく面もあれば、一人一人に寄り添ってくれる面もあり、本当にいい主将だなと思います。

――今年は教育実習もあったと思いますが、教育実習と競技の両立で大変だったところはありますか

 大変だったところとしては、練習量の確保が難しかったことです。やはり通勤する場所が学校という教育現場になると、おそらく普通の会社よりも1、2時間早く出勤しなければならないこともあります。そうなると朝練習の時間も取れなかったので、ほとんど毎日1部練みたいな感じになって、練習量があまり確保できませんでした。

――教育実習を通して成長したことはありますか

 これまで、(自分は)意見を曖昧に言ってしまう方でした。ですが教育実習の経験からやはり語尾などを曖昧にしてしまうのは先生としてあまりよろしくないので、疑似的に先生を経験したことで自分の意思をしっかり周りに示していけるようになりました。

――5月の関東学生対校選手権(関東インカレ)ではハーフマラソンで入賞に迫る走りを見せました。当時の心境を教えてください

 正直入賞は最低限かなと思っていたので、うまくいかなかったなと思いました。ロードレースだと毎回差し込みに苦しめられているのですが、関東インカレは結構早い段階から(差し込みが)来てしまって、早い段階で先頭集団から置いていかれてしまいました。やはり強い人たちと後半で勝負するという段階に至らなかったのは、非常に悔やまれる点だと思います。

――今年は全日本大学駅伝対校選手権(全日本)選考会の1万メートルにも出場されました。他のトラックレースと違う点はありましたか

 他のトラックレースだったらある程度自分の想定しているペースに近いペースで走ることがこれまで多かったのですが、予選会ではかなりけん制してしまって、すごいスローペースから後半一気に上がるというレース展開でした。そういうレースの経験がなかったので、うまく対応できなかったという印象を受けました。

――全日本選考会を振り返っていかがですか

 教育実習明けで練習を積めていない中で走らせていただいたにもかかわらず、 順位が良くないものとなってしまってチームの人に助けられるかたちになってしまったので、そこはかなり悔やんでいます。

――前半シーズンを振り返っていかがですか

 4年間で一番苦しんだ前半シーズンだったと思います。箱根の後にマラソンに向けて距離を積む練習などをした結果、オーバートレーニング気味になったり、貧血になったりして、スタートがかなり出遅れてしまったのは大きかったかなと思います。

――夏前の不調はどのようにして脱却しましたか

 まずは無理に周りの練習に合わせるのではなくて、自分ができる範囲の練習を余裕持って終え、イメージよく練習を終えることをくり返しました。それでだんだん調子は戻ってきたと思います。夏合宿に入るとほとんど調子がいい状態に持ってこれたので、そこはうまくいったと思っています。

――ここからは夏合宿について伺います。夏合宿での目標や意識して取り組んだことを教えてください

 夏合宿の目標としては、駅伝シーズンに向けたスタミナ作りといったところで、例年以上にしっかり走り込んで練習量を確保したいと思っていました。意識していた点としては、走力のベースを今年は上げていきたかったので、多少無理をしてでも夏合宿の後半は追い込むことも多かったです。

――夏合宿の練習消化率はどのくらいでしたか

 消化率としてはほぼ100パーセントに近いくらいか、95パーセントぐらいは消化できたかなと思います。量と質を両立させながらいい感じに消化できたと思っています。

――夏合宿で得られた収穫や課題を教えてください

 収穫としては、夏合宿の後半で少し追い込んだこともあって、楽に感じるペースが上がったなというのは最近の練習で感じています。課題としては少し無理をしてしまったことで秋の初めの方はまた調子が落ちてしまったので、そこはもう少し余裕持ってイメージよく終わる練習を定期的に取り入れてもよかったと思っています。

復路で「区間3位以内」

箱根前合同取材で意気込みを語る菅野

――ここからは秋の駅伝シーズンについてお伺いしていきます。 まず、出雲全日本大学選抜駅伝(出雲)や全日本は出走とはなりませんでしたが、このことに関してはどのように捉えていますか

 出雲に関しては僕自身が結構長距離型というのもあってメンバー争いに絡めないことはある程度想定していました。ですが全日本に関しては昨年度少しブレーキとなってしまったこともあり、リベンジしたいという気持ちがあったので、あと少しのところで出走メンバーから漏れてしまったことは非常に悔しかったです。

――チームは出雲では6位、そして全日本では5位という成績を残しましたが、菅野選手はこの結果をどのように受け止めていますか

 例年に比べてやはりチーム全体の総合力は上がったという印象を受けました。どちらの駅伝も失敗してしまった区間がありましたが、他の区間でそこを補ってなんとか埋め合わせができていました。うまくいかない場所があるとそのまま流れに乗れないことが多かった昨年と比べると、そこが今年のチームの明らかに違う点だと思います。

――ご自身が出走していない時期にチーム内で果たした役割は何かありましたか

 全日本に関しては現地に行っていたので、サポートに徹していました。7区と8区のリザーブだったので、しっかり選手の声を聞きながら最大限のサポートをすることを意識していました。

――今シーズンのここまでを振り返っていかがですか

 流れとしては非常にいい感じで来ていると思います。昨年度は単独走の練習を、例えば5キロ2本など短めなロングインターバルと仕上げのように行っていたのですが、今年は割と実践的なペースに近いメニューでも単独走でやらせていただく機会があります。昨年度よりも見通しが立つような練習はできていると思います。

――今シーズン成長した点や収穫はありましたか

 収穫としては、昨年と同じような練習を今年は少し余力を持ってできるようになったことは収穫だと思います。 そこが成長でもあります。

――ここからは現状について、そして箱根に向けての質問をさせていただきます。まず、箱根まで1カ月を切りましたが、現在の調子はどうでしょうか

 比較的いいのではないかと思います。今は練習を一番積んでいる時期なので疲労はもちろんありますが、練習の感覚や消化具合的には状態は上向きになってきていると思います。

――最近の練習ではどのようなことを行っていますか。意識しているポイントなどがあれば教えてください

 意識している点は、出し切って終わるというよりは、例えばあるペースでもちょっと余力を残して終わって、あと何キロは走れそうだ、という感覚を残しておくことで見通しを立たせることです。

――菅野選手が今チーム内で意識している選手はいますか

 やはり宮岡(凜太、商3=神奈川・鎌倉学園)を結構意識しています。彼は上尾ハーフでもかなりいい走りをしていて、今回メンバーに絡んでくる可能性は高いと思いますし、単独走でも強い選手なので、自分もうまく勢いに乗ってしっかり整えて準備していければと思っています。

――菅野選手が他大学で意識している選手はいますか

 特に顔見知りではないのですが、東洋大学3年生の岸本遼太郎選手はかなり意識しています。昨年10区で区間賞を取っていて、その時のラップタイムが僕としては結構理想的なラップタイムでした。やはり昨年の岸本選手くらいの走りでないと今年も区間上位は狙っていけないと思っているので、ある種の指標として意識しています。

――やはり10区を走りたいという気持ちは昨年から変わりないですか

 そうですね。今年走るとしたら3年目ということになるので、経験を生かして区間賞を取りたいという思いは強いです。

――最後の箱根にかける特別な思いはありますか

  チームで戦うレースとしてはおそらく最後になりそうなので、チーム一丸となって戦うとなった時に、自分は最低限の役割を全うしていきたいなと強く思っています。

――一般組としてこれまで苦労したことや大変だったことはありましたか

 3年くらい前の話ですがやはり受験明けのブランクがありました。思ったように練習量を積めなかったり、レースも理想とはかけ離れたレースになってしまったりすることが多くて、1年生の夏前までは苦労が多かったかなという印象です。

――今回の箱根でご自身の走りの注目してほしいポイントはありますか

 例年であれば安定感と答えると思いますが、今年は長い距離の後半にペースを上げるような練習も取り入れていたので、後半に区間順位をしっかり上げていけるような走りができればいいと思っています。なのでやはり注目してほしいポイントとしては後半かなと思います。

――箱根での個人の目標を教えてください

 走るとしたらおそらく復路になると思うので、単独走の強みをいかして、どの区間になっても区間3位以内というところはしっかり達成したいです。チームの目標が総合3位以内なので、そこに貢献していきたいと思います。

――それでは最後に箱根に向けた意気込みをお願いします

 今言ったことと少し被ってしまいますが、ここからしっかり状態を上げて、区間3位以内で走りたいです。今年はうまくいかないことも多かったですが、最後の箱根で有終の美を飾りたいと思っています。

――ありがとうございました!

(取材・編集 會川実佑)

◆菅野雄太(かんの・ゆうた)

2002(平14)年5月7日生まれ。165センチ。埼玉・西武学園文理高出身。教育学部4年。箱根が終わったらしたいことは、同期との卒業旅行だという菅野選手。最後に最高の思い出ができそうですね!