3年連続でエントリーメンバー入りしている宮岡凜太(商3=神奈川・鎌倉学園)。今シーズンは関東学生対校選手権(関カレ)でエンジデビューを果たすと、ハーフマラソンでの自己ベスト更新など実りの多いシーズンとなり、東京箱根間往復大学駅伝(箱根)に対する自信もこれまでとは違うようだ。今回はここまでのシーズンのハイライトや、初の出走に向けての意気込みを伺った。
※この取材は12月11日にオンラインで行われたものです。
箱根駅伝の存在がモチベーションの源泉に
関東インカレ・ハーフマラソンで力走する宮岡
――エントリーメンバーに選ばれたことに対しての、率直な感想をお願いします
とりあえず、箱根を走るためのスタートラインに立つことができてほっとしています。
――今シーズンについてお聞きします。2月に愛媛マラソンで初めてのフルマラソンを走られましたが、感触はいかがでしたか
練習でも最高で33キロまでしか走ったことがなかったので、フルマラソンは完全に未知の世界というか、そんな感じの試合だったんですよね。箱根などの駅伝は今まで走れていないのですが、マラソンで改めて、自分はスタミナを強みにできるんだなと自覚できたのは大きかったかなと思います。
――シーズン前半の部員日記で、『練習の強度は上がっているが思ったよりもタイムが出ない』ということを書いていらっしゃいました
1月、3月くらいの時期は、自分が走り込みを意識しすぎていたが故に、体は丈夫になったけれどスピードは出ないというかたちでした。なので、練習量に対してなかなか試合で結果が出ないことにもどかしさを感じていたかなという感じです。
――今年の関カレでは、ハーフマラソンに出走されました。初エンジの感想をお願いします
まず正直に、ハーフマラソンの代表になったことが嬉しかったです。そして、やはり普段の大会で着る白エンジではなくてエンジのユニホームを着ることができて、個人として試合に出るのではなくて大学の代表として、競走部の代表として出ているといことに誇りや喜びを感じました。自分が一番目指しているところは箱根であって、箱根もエンジのユニホームを着て走るので、そこの予行練習としても良かったかなというふうに思っています。
――4月には、1万メートルでも自己ベストを出されました
もうその時には関カレのハーフに出ることが決まっていたので、そこに向けてのひとつ手前のステップのようなかたちで取り組みました。思ったようにはタイムが出なかったのですが、レース自体は自分の中である程度まとめられた走りができて、ハーフマラソンに向けて良い感覚をつかめたという意味では、タイム以上に収穫があったと思います。
――思うようにタイムが出なくてもどかしい時期があったというお話がありましたが、そのような時に練習のモチベーションだったり、心の支えになるものは何ですか
例えば5000メートルや1万メートルで結果が出なくても、自分の中で練習は嘘をつかないだろうというところは、ひとつ確信を持って取り組めていました。長い目で見れば、自分には毎年1年間の最後に箱根駅伝があって、5000メートル、1万メートルで結果が出なくても、箱根駅伝を走ったときに良い走りができればそこで報われるかなと思っていたので、やはり箱根駅伝を走りたいという目標の存在が、結局自分の苦しい時期を乗り越えるためのモチベーションの源泉になったかなと思います。
――ここから夏合宿についてお聞きします。夏合宿はどのような練習がメインでしたか
一応トラックシーズンが終わって、駅伝シーズンに向けての走り込みということが夏合宿の位置づけでした。なのでやはり、長い距離を踏む、スタミナをつけるということに一番の主軸が置かれていました。
――合宿中に刺激を受けた選手はいらっしゃいましたか。
同期で言えば伊藤幸太郎(スポ3=埼玉・春日部)だったり、藤本進次郎(教3=大阪・清風)で、後輩で言えば宮本(優希、人2=智辯学園和歌山)です。自分と同じくらい夏合宿の練習をこなしていたので。やはりそこに負けたくないというところで刺激を受けられたかなと思います。
――合宿での収穫はどのようなものでしたか
昨年2年生の時に初めて夏合宿に参加した時と比べて、着実に力がついたとというところが印象として残っています。というのも、2年生の時(の合宿)は自分の中では練習量を詰めて詰めてやったイメージでした。自分の能力をコップで例えた時に、結構コップの縁ギリギリまで、並々だったなと思うんです。それが今年は2年生の時と同じぐらいの練習量にも関わらず、コップ8分目ぐらいの気持ち・体力でできたように感じます。昨年と同じ量の練習を、余裕を持ってこなせたところが大きかったなと思います。
――競技のことでもそれ以外のことでも、合宿中の出来事で印象に残っていることは何ですか
9月の紋別の合宿の時に捻挫してしまったことは自分の中で印象に残っています。
――練習に響いてしまいませんでしたか
確か紋別の4日目の朝に捻挫をしました。合宿は11日間あったのですが、結局合宿終わりまでポイント練習ができなかったんです。そこで自分が夏合宿(の練習)をひとつ飛んでしまったことはすごく悔しかったです。その時は自分で筋トレしたりとか、あるいは他の部員たちがやっているポイント練習を見たりする機会がありました。その人たちが100パーセントの消化率で練習をこなしているところを見て、自分はこんな捻挫でしょげてる場合じゃないなと思ったというか。やはりここの悔しさをばねに、残りの1カ月合宿を頑張ろうという気持ちになれたので、そこは大きかったかなと思います。
――今年入部してきた1年生の走りはどのようにご覧になっていますか
今年の1年生もすごく強くて、部の中で僕くらいのレベルの人間にとってはすごく刺激になったんじゃないかなと思っています。入部してきたばかりの3月は、まだ競走部という組織に対して右も左もわからなくてうろうろしていたのですが、5月、6月くらいから主力として活躍している姿を見ると、単純にすごいなという気持ちにもなりましたし、あるいは、夏合宿や走り込み、ハーフマラソンは負けないぞというところで、そこもやはり燃える要因になりました。
――上尾シティハーフマラソン(上尾ハーフ)で自己ベストを更新されましたが、タイム面ではいかがでしたか。ご自身が想定していたものと比べて違いはありましたか
箱根駅伝につなげるためには、上尾ハーフで1時間02分台を出すことがマストだと思っていました。ただ、目標タイムを1時間02分台と設定すると、本番(のレース後)に1時間03分05秒とかで泣いている姿が見えたので、自分の中での目標数字は一応1時間02分50秒を切ること、と掲げていました。実際に走ってタイムは1時間02分39秒でした。昨年の自己ベストから50秒縮めるかたちになったので、自分の11月20日ぐらいの時の実力は100パーセント出せたのかなというところで評価をしています。
――シーズンここまでを振り返って、ここが伸びたなという部分をひとつ選ぶとしたらどこですか
余裕度です。1日1日出し切るのではなくて、毎回の練習に対してどこかしら余力を持って終わることができています。本番はその残していた余裕を絞り出せばさらにパフォーマンスが上がるわけなので、そこの余裕度がついたところが大きいかなと思います。
――出雲全日本大学選抜駅伝(出雲)と全日本大学駅伝対校選手権(全日本)でのチームの走りと結果はどのように捉えていらっしゃいますか
まず出雲駅伝については、駅伝の初戦だったので、今のこのチームがどのくらい他の大学に対して勝負できるんだろうというところを、単純に客観視して見ていました。前半の智規(山口智規、スポ3=福島・学法石川)や大志(伊藤大志駅伝主将、スポ4=長野・佐久長聖)さんがなかなかうまくいかない姿は見ていたのですが、一方で、後半の藤本と、工藤(慎作、スポ2=千葉・八千代松陰)と長屋(匡起、スポ2=長野・佐久長聖)がすごくまとめた走りをしてくれていました。自分の競技のタイプとしては、その後半の3人と似ていると思っています。走り込みやスタミナで勝負するタイプなので、後半3人が出雲駅伝で勝負できていたことは、逆に自分にとっても自信になったと思っています。全日本に関しても同じです。昨年、うちはシード落ちしてしまいましたが、今年はずっと上位の方で争えていたので、やはりそこも早稲田大学というチームに力がついてきたと、早稲田大学という組織に力がついたなというところを実感したんですね。そこに所属している自分もその中で一緒に夏合宿とかをやってきたので、自分は駅伝で走っていないのですが、自信につながったと思います。
――同じ学年で推薦組ではない藤本選手の出走は、やはり刺激になりましたか
本当に刺激になりましたね。悔しさがないと言ったら嘘になりますが、それよりも、彼がなかなか練習ができなかったり、体調が合わなくて苦しんでいる姿を自分はかなり近くで見ていたので、快走している姿を見て嬉しかった気持ちの方が大きいです。さらに、一般組でも早稲田大学で三大駅伝で活躍できるんだというところで、箱根駅伝で自分も走れるんじゃないか、走りたい、という気持ちがより明確になったなと思います。
――少し話が変わりますが、来季の寮長に就任されました。どのように決められたのですか
寮に住んでいる3年生全員でミーティングをして、その中で宮岡に任せようというかたちで寮長になりました。
――寮長の仕事で、一番好きなことと一番大変なこと、それぞれあれば教えていただきたいです
好きなことと大変なことがそれぞれ表裏になるのかなと思っているのですが、やはり寮長として寮全体の環境だったり、あるいは部員たちの過ごしやすさを考えることが面白さであり、大変さでもあるかなというふうに思っています。ただ、自分が寮長として最後の意思決定をして動かせる立場になったので、例えば1年生がこういうところで困っている、となった時にその不便さを汲み取って、自分が花田さん(花田勝彦駅伝監督、平6人卒=滋賀・彦根東)に伝える役割ができているので、そこにはすごくやりがいを感じています。
――部活と学業を両立させるために意識していることはありますか
自分はかなり効率化を求めるような人間なので、基本、何もしない時間を極力なくすようにしています。ぼーっとして、スマートフォンだけをただ眺めてる時間とかもあると思うのですが、そういう時に、じゃあ今のうちに課題を終わらせようかなという感じで。ある意味、自分で自分を忙しくさせることによって両立できているのかなと思います。
余裕度が自信につながる
上尾ハーフで走る宮岡
――今のコンディションはいかがですか
自分の中では絶好調だと思っていて、ただそれがだんだん調子が好調なのではなくて、単純に自分の実力が上がってきたということなのかなというふうに捉えています。
――最近の練習で気をつけていることや意識していることを教えてください
先ほどキーワードとして上がった『余裕度』というのは引き続き意識しています。箱根駅伝がここまで近づいてくると、少し力が入ってしまったり、緊張してしまったりすることもあるのですが、そういう時こそ心の中にどこかしら余裕を持っていることが大事だなと思っています。1年生、2年生の時は箱根駅伝前の練習は自分にとっていっぱいいっぱいで、パンクしそうな時もあったのですが、今年で箱根駅伝前の練習も3回目です。日々の練習をしっかりこなしていくというところにフォーカスできていて、大きく体調を崩すことなく、調子を乱すこともなく練習ができているかなと思います。
――最近の練習の雰囲気は、やはり箱根前特有の緊張感があるものに変わってきていますか
そうですね。毎回の練習に、駅伝でこういう走りをするため、箱根でこういうパフォーマンスをするため、と理由づけがされているので、みんながひとつひとつの練習に試合のような緊張感を持って臨んでいるなと感じます。
――最近の箱根に向けた練習の中で、特に刺激を受けている選手はどなたですか
やはり今、チームの中で多分(自分と)同じくらいの立ち位置である、藤本だったり、あるいは石塚(陽士、教4=東京・早実)さん、瀬間(元輔、スポ1=群馬・東農大二)です。すごく自分も意識しながら練習しています。
――希望区間を教えてください
一応監督さんから復路であることは伝えられていて、復路であれば6区以外は色々あるかなと思っています。やはり自分の中で一番希望が強いのは8区です。
――8区の中で特にポイントとなるのはどこだとお考えですか
15キロ過ぎの遊行寺の坂が、コースとしては一番大きなポイントになってくるかなと思います。いかに遊行寺まで余裕度を残したうえで行って、登った後の最後の3キロをどこまで耐えられるかかなというふうに思っています。ただ、その残り3キロあたりが僕のど地元なので、やはりそこは、ヘロヘロの姿ではなくて、かっこいい姿で走れたらなと思います。
――仮に8区を走るとした場合、どのような役割が求められるとお考えですか
今年のチームであれば、往路から7区まで、きっとチームがかなりいい流れで来てくれるのではないかなと予測しています。なので、まず自分はその流れを断ち切らないで、そのまま9区につなげていきたいなと。やはり8区というのは、海から街に上がる中ですごくタフなコースだと思っているので、今年1年、箱根を目指してスタミナを意識してきた自分が走ることで、確実に順位を下げない、あるいは順位を上げる走りをすることが自分の役割ではないかなと思います。
――ご自身の走りのどのようなところに注目してもらいたいですか
苦しんで走っているのではなくて、楽しんで走っている姿は注目してほしいかなと思います。ハーフマラソンくらいの距離で1時間以上走る長丁場なので、ずっと張り詰めてるわけではないと思うんですよね。その中で箱根駅伝の舞台を楽しむ、景色を楽しむ、走りを楽しむという、その余裕度が逆に良いパフォーマンスにもつながるのかなと思っていて。そこは意識して走るつもりなので、ぜひ注目してほしいなと思います。
――それでは最後に、箱根に向けての目標と意気込みをお願いします
自分の走りたい区間は8区なのですが、とりあえず監督さんに任された区間、チームメイトに任された区間を走ることを確実に意識したいなと思っています。今年の練習の消化具合でいけば、復路であれば区間5位以内はそこまで夢じゃないと思っているので、チーム総合3位を目標のひとつに掲げている中で、自分が任された復路の区間を区間5位以内で走るというところを目標に頑張りたいです。
――ありがとうございました!
(取材・編集 髙杉菜々子)
◆宮岡凜太(みやおか・りんた)
2003(平15)年10月7日生まれ。168センチ。神奈川・鎌倉学園高出身。商学部3年。最近は菅野選手と一緒にポケトレというアプリにハマっているそうです!ゆるい雰囲気がおすすめポイントだと教えてくれました!