トラックにもロードにも強いスーパールーキー・山口竣平(スポ1=長野・佐久長聖)。トラックシーズンは思うような結果を残せなかったものの、徐々に本来の力を取り戻し、全日本では区間3位の好走を見せた。しかし対談では「満足したらここで終わってしまう」と、飽くなき向上心を口にした。そんなさらなる高みを目指す山口竣に、初の箱根路への思いについて伺った。
※この取材は12月12日にオンラインで行われたものです。
悔しさをにじませたトラックシーズン
全日本大学駅伝関東地区選考会(全日本選考会)でレース後に他選手と健闘を称えあう山口竣
――大学に入学してから約8カ月経ちましたが、この期間を振り返っていかがですか
トラックシーズンは結果を出せなくて悔しかったのですが、駅伝シーズンになり、出雲(出雲全日本大学選抜駅伝)は納得いく結果ではなかったものの、全日本(全日本大学駅伝対抗選手権)は最低限の走りができたと思います。箱根(東京箱根間往復大学駅伝)に向けて自分の身体の状態も仕上がっていると思います。
――以前、早大に駅伝をしに来たと話されていましたが、駅伝に対する思いを教えてください
高校時代から、(僕自身に)『トラックより駅伝の方が強い』というイメージを駅伝ファンの方々は持っていると思います。 もちろんトラックをやりたい気持ちはありますが、やはり一番は駅伝に焦点を当ててやりたいと思っています。ですので、早大に駅伝をしに来たといっても過言ではないです。
――今シーズンは2月の早大競技会から始まりました。改めてそのときを振り返っていかがですか
2月の早大記録会は合宿明けということで、記録を狙う大会というより、1万メートルを走る経験をするためのレースでした。そのため、特に良かった悪かったという評価はしませんが、最低限の走りはできたと思っています。そのときの走りに満足はしていません。
――大学生としての初レースは、フランス・パリでのロードレースでしたが、心境に変化はありましたか
パリに行って、ASICSのアスリート選手と一緒に走り、全く歯が立たなかったので本当に悔しかったです。今のままでは世界、ましてや日本でも戦えないと思いましたし、世界で戦っていくためには、まだまだ自分の力は足りないと感じました。
――全日本選考会ではレース後の笑顔が印象的でしたが、レースを振り返っていかがですか
笑顔がこぼれた理由は、予選会ということで、失敗が許されない過度なプレッシャーを抱えつつも、しっかり走れた安心感からだと思います。その時の走りに満足はしていませんが、大学生になって最低限のレースはできたのではないかと思っています。
――納得のいく結果をトラックシーズンでは出せなかったと話されていましたが、トラックシーズンを振り返ってみていかがですか
高校時代、5000メートル13分34秒59という記録を持って早大に入学してきて、自己記録を塗り替えなければという気持ちの焦りがずっと積もったまま、トラックシーズンを過ごしていました。なので、自己ベストを更新できなくて肩身の狭い思いを感じていたと思います。
――夏合宿で特に意識していたことや、ご自身が成長されたことについて教えてください
夏合宿で意識していたことは、とりあえず距離を踏むことです。春はトラックシーズンでトラックをずっと走っていたので、どうしても走る距離が短くなっていました。そのため夏は箱根に向けて足を作ろうと思い、とにかく距離を意識して走っていました。1人で長い距離を走るのはきついので、先輩である伊福(陽太、政経4=京都・洛南)さんとジョギングをして、人の力を借りながら頑張っていました。それによって、距離に対する耐性をつけることができました。
出雲から全日本への気持ちの変化
全日本を走る山口竣
――出雲のご自身の走りを振り返っていかがですか
3区は一般的にエース区間と言われている区間だったので、過度なプレッシャーがかかっていました。その前の調子もあまり良くなかったので、気持ちと走りがずっと空回りしていたと思います。区間順位も11位と本当に悔しかった駅伝で、大学駅伝デビュー戦としては苦い経験でした。
――出雲の結果を受けて、全日本までの間気持ちを切り替えることが難しい瞬間はありましたか
1日、2日ぐらい落ち込んでいましたが、落ち込んでも仕方ないという結論に至って。全日本も走らないといけないと思っていたので、すぐに切り替えることができました。しかし、やらなければならないという気持ちが空回りしてしまい、全日本の1週間前に走りの調子が崩れてしまったこともありましたが、出雲から全日本までの3週間は、経験という意味では良かったと思います。
――全日本では、5区区間3位で早稲田新記録を達成されましたが、その結果をどのように受け止めていますか
チームに貢献できる走りができたことはほっとしていますし、早大記録に関しても特に意識していなかったので、 走り終わって早大記録だったのだなというような感じでした。しかし、全日本が終わって日が経つにつれて、全日本の5区は一般的につなぎ区間と言われていて、他大学でもエース級の人が集まらない区間なので。3位になったからといって満足していいわけではないと思っています。自分が戦わなければならないところは、他大学のエースの人たちと戦う区間だと考えているので、満足したらここで終わってしまうと思っています。
――全日本での走りについて花田勝彦駅伝監督(平6人卒=滋賀・彦根東)やチームメイトからどのような言葉をもらいましたか
監督からは「やっと調子が戻ってきたね」、といった感じの声かけをしていただいて、率直にうれしかったです。チームメイトからもやっと戻ってきた、といった感じの言葉を言われたので、全日本が自分の起爆剤となった駅伝ではないかと思います。
――高校駅伝と大学駅伝の違いは何だと思いますか
大学駅伝と高校駅伝の差は、注目度だと思っています。スポンサーの企業であったり、周りからの応援であったりと大学駅伝の方が高校駅伝よりも注目度がとても高いと感じました。
箱根路で恩返しを
箱根前合同取材で、笑顔を見せる山口竣(写真右)
――現在の調子はいかがですか
箱根に向けて本当に良いかたちで練習が積めているので、あとは体調不良や、ケガさえしなければ、個人としてもチームとしてもいい結果は出てくると思っています。
――現在の練習で特に意識していることは何ですか
特に意識していることは、ジョギングの距離です。箱根駅伝は1区間20キロ以上あるので。20キロ以上走るためにはスタミナをつける必要があり、自分はロング系が嫌いということもあって、とにかく距離を踏むことを意識して今は練習をしています。
――全日本では12キロが長く感じたと話されていましたが、ハーフマラソンの距離に対する現在の手応えはいかがですか
12キロはもちろん長かったですが、全日本から今までロング系の練習をかなりやってきたので、ハーフに対する不安というのは少しずつ取れてきています。ハーフへの恐怖心もなくなりつつあるので、このままの調子で頑張りたいと思っています。
――学年は被っていないものの、高校の先輩である伊藤大志駅伝主将(スポ4=長野・佐久長聖)はどのような存在ですか
キャプテンとしてチームをまとめてくれている、お兄さん的存在だと思っています。大志先輩のおかげでチームの雰囲気もとてもいいですし、 自分はまだ1年目ですが、練習の雰囲気もいいだろうなと思います。大志さんのもとで活動できることは、長距離ブロックの一員として本当にうれしいですし、幸せだと感じています。
――初めての箱根ということで、何か特別に意識されていることはありますか
特に意識していることはありません。とりあえず頑張りたいです(笑)。
――箱根で走りたいと思う区間はありますか、その理由も教えてください
走りたい区間は特にありません。逆に走りたくない区間は5区6区で、 理由はとてもきつそうだからです。5区と6区以外ならどこでも走れる準備はしています。自分がどの区間を走るかは、花田さんにお任せします。
――出雲や全日本での経験を踏まえて、箱根での戦略などはありますか
戦略という意味ではありませんが、今まで駅伝をたくさん経験しており、高校時代トップでタスキをもらったり、トップで走ったりした経験があるので、その経験を生かせる走りをしたいと思っています。
――箱根でご自身がチームにどのように貢献したいと考えていますか
チームとしては総合3位以内を狙っているので、まずはそこに貢献する走りをしていきたいと考えています。そのためには、どの区間を走っても区間3番以内、もしくは最低でも5番、最高で区間賞を狙っていかないと、チームの3位以内という目標が達成できないと思います。あとは僕の個人的な目標ですが、4年生にとてもお世話になった1年だったので、4年生を笑顔で卒業させるためにも、頑張って走りたいと思います。
――箱根に向けて意気込みをお願いします
初めての箱根駅伝なので、雰囲気は全く分からないのですが、分からない分、全力で楽しみながら走りたいと思っています。あとは、本当に今の4年生である大志さんをはじめ、石塚(陽士、教4=東京・早実)さん、菅野(教4=埼玉・西部学園文理)さん、伊福さん、和田(悠都、先理4=東京・早実)さん、日野(斗馬、商4=愛媛・松山東)さん、草野(洸正、商4=埼玉・浦和)さん、相川(賢人、スポ4=神奈川・生田)さん、そして、いろいろなトレーナーの方のサポートもあって、自分が競技を続けられていると思うので、その4年生に笑顔で卒業してもらうために、死ぬ気で頑張りたいと思います。
――ありがとうございました!
(取材・編集 鶴本翔大)
◆山口竣平(やまぐち・しゅんぺい)
2006(平18)年1月15日生まれ。168センチ。長野・佐久長聖高出身。スポーツ科学部1年。人見知りで、初対面の人には話しかけることができない山口竣選手。相手から話しかけられるのを待つ派の人間なので、どんどん話しかけてもらえるとうれしいそうです!