[連載] 全日本インカレ前対談『HAND IN HAND』最終回 松井泰二監督

特集中面

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インカレ前対談最終回は、チームの指揮を執る松井泰二監督(平3人卒=千葉・八千代)。1年間を通し苦しい時間を過ごしてきたバレー部だが、決して諦めることなく、愛のこもった指導を続けてきた監督に、お話を伺った。

※この対談は11月21日に行われたものです。

「Hand in hand」

ーー今年度初め、新チームをどのようなチームにしたいとお考えでしたか

去年は4年生が中心にチームを作って、今の4年生は表舞台には立っていなかったけど、すごく4年生を尊敬して、4年生に賛同して3、4年がひとつになっていました。それが4年生となり浅野がキャプテンになって、4年生自体は人はものすごくいいけど人の先頭に立って引っ張ったり、何かを見せて「ついて来い」というタイプの選手はなかなかいないという状況でした。そういう意味で僕のテーマは「Hand in hand」、手と手を取り合ってということでやり始めました。そのスローガンにもあるように、4年生が引っ張るというよりは、4年生がやることにみんなで手を取り合ってやらなければいけないとうことが最初にわかっていたので、そういう形でスタートしました。

 

ーー春、東日本では課題が多く挙がりましたが、その中での収穫は

前半戦、状態としては良くなかったけどその中で最善を尽くそうというのはありました。それが黒鷲旗まではうまくいったけど、一呼吸置きながら黒鷲旗に行って、このチームは今もですが、相手を見て気合の入り方が違うというのはあります。それは個人のメンタリティが今までの3、4年生とは違うということです。収穫としては、前田を中心としたチームでなんとか進もうということがわかったことです。東日本でも、自分たちの中で役割をはっきりさせたり、個が大きくならないとチーム力は上がらないというのがわかったのは収穫だったと思います。

 

ーー夏に前田選手が主将、浅野選手と馬渕選手が副将となり体制が変わりました。それによりチームに変化はありましたか

わかりやすくなったということですよね。浅野がキャプテン、前田が副キャプテンという時も、どちらかというと浅野は周りを気にしながら、空気を読みながら方向性を決めてたけれど、前田は自分の考えをしっかり持ってる学生ですので、そこでうまく方向性が取れていませんでした。それが前田がキャプテンになって、前田が方向性を決めるというので、あとは4年生がサーバントリーダーシップ、フォロワーの方に徹するというのが目に見える形で組織化したので、それは下から見ればわかりやすいんだろうなという感じですね。それと併せて、4年生が自分たちが本来はキャプテンをやらないといけないのですが、やれないということでしっかりサーバントしていくという決意もあったので、いい、新しい組織にはなったのではないでしょうか。

 

ーー前田選手もやりやすくなったように見えます

そうだと思います。彼は支えるというのも得意ですけど、自分で見せる選手です。前田もセッターだから、冷静に言葉を喋らずにチームの状況がどうなっているのかというのを一歩引いて見ないといけない立場ですよね。しかし、キャプテンは自分で走ったり声を出したりしないといけません。ですから彼は、ゲームではキャプテンというよりセッターという、1本目と3本目をつなぐコネクターの役割だという話をしています。キャプテンになったからというよりは、キャプテンとセッターという2つの役割をとても理解してやっていると思います。

秋リーグのこと

ーー秋リーグでは何を目標としていましたか

チームとしてはやはり準備をすることとコミュニケーションを取るということです。チームで決めたことに対して、学生が「これでいこう」となって、何をすればチームが組織化されていくのかが理解できて、少しずつチームが作られ始めたのかなという感じはします。

 

ーー秋リーグでは競った場面でも立て直す場面が多くありました。その要因は

春は競り負ける試合が多くありましたが、それは自分のことばかり考えているんですよ。それが少しチームに目をやれるようになって、その分が少し広がったのかなと思います。

 

ーー秋リーグに点数をつけるとしたら

75点ですね。

 

ーーあとの25点は

あとのその部分は、まだまだ自分しか見えないというか、自分のことを中心に考えてる学生が多いので、その分チームファーストというか、フォーザチームということで今やっているのですが、それが出る時と出ない時があります。スキル的には練習も一生懸命やるようになってきています。ただやはり若いチームなんですよ。そういう揺れるというのはわかるけど、もっと仲間や基本を大事にしていかないと乗っかっていかないんですよね。勝ち負けだけやってるような、僕が目指しているチームとは違うので、その分が25点です。チームのために自分がプレーをしたり応援をするようになってきた時には負けないチームになるとは思います。

 秋リーグで選手に声をかける松井監督

ーー秋リーグ中、前田選手に落ち着きがないというお話をされていましたが、今はいかがですか

日によって違うんですよね。本人は性格的にも勝ち気で、セッターというのはどうしても点を取れないポジションなので、決めてほしいところで、決めなければいけない時に、スパイカーが僕らが予想していることとは違うことをすることがあって、そういうことに対して少し心が動いてしまうことがありました。簡単に言えば前田が全体が見える時と、少し自分のことだけになってしまう時があります。スパイカーは相手コートを見るけど、セッターは唯一ネットを背中にして自チームを見るわけですよね。ということは前田の表情をチームメイトは見ているんです。後半は彼としても「優勝したい」という気持ちがあったみたいで、試合で顔や態度に出してしまったりという場面がありました。最後は悪いところは出ていなくて、良いところが出ていたと思いますけどね。

 

ーー今年からスタメン入りした選手で特に成長したと思う選手は

みんなですね。佐藤は去年から出たり出なかったりで、去年の秋も大事なところで大変な失敗をしている選手だったし、春もダイレクトミスして、同じミスを春、秋でしていたのですが、今は自信を持ってやれてきたというのは佐藤にとって大きいです。布台はリベロとしてはまだまだだけど、向かっていこうという気持ちがあるので、スキルも上がってきています。菅原に関しては質問も多いし、話も聞いていますよね。だから大人の会話ができるというか、僕が言ったことの2つ先のことを考えてプレーしているので、菅原は相手のミドルとしたら相当嫌なんじゃないでしょうか。徳留に関しては、サーブレシーブは僕が歴代見てきた中で一番だと思いますよ。ただやはりまだ雰囲気がないというか、もっと1年生らしくやってほしいんですよね。静かすぎてチームが盛り上がらないというのは頑張らないといけないと話しているのですが、いずれにしても底上げできたので、良くなってるんじゃないでしょうかね。

 

ーー秋季リーグ中に開催された天皇杯ブロックラウンドではかなり危ない場面もありました

やはり自分たちのすべきことではなく、相手を見てやっているからです。相手に勝てばいいとは思ってないだろうけど、相手に合わせてしまうというのがあるので。

 

ーーそこから秋季リーグ最終戦の中大戦に向け、お話ししたことは

全部出すことを先輩たちもやってきて、勝ったから偉いのではなくて、バレーが終わった後につながるようなことを意識して普段から練習に取り組まなければいけないことを話しました。勝てばいいとは思ってないにしても、結果的にそうなっています。いつでもトレーニングだと。中大戦も試合というよりは、インカレに向けたトレーニングというつもりで臨まないとという話はしました。

インカレに向けて

ーー今のチームの状況は

この時期はどこのチームも一生懸命やっています。1週間前に気合いが入るというのは当たり前で、他のチームがどのような感じかはわかりませんが、うちも秋のリーグ期間中はしっかりとトレーニングしたり、試合も競り勝ったりというのは結果的にあったので、そういう面ではいいトレーニングは積んできたと思います。ただ秋とインカレは違くて。秋が終わってから僕、相当怒っているんです。ムラがありすぎて、今日はいいけどその翌日はダメとか。その辺は今のチーム状況は安定してないなと思います。昨日、一昨日の練習を見るといい感じではやってますけど、どのチームもやっているので、その前にダラッとしたのが心配ですね。

 

ーー4年生はどのような代ですか

苦労した代ですね。早稲田大学のスポーツ推薦で入ってきた子が活躍してくれないとチームが組めないという状況で、1人もスタートになれない、ベンチに入れない、試合でもキーマンとなるところに出ていけないという状況なんですよね。だけどそれは本人たちが一番よくわかっていて、ただ人の良さでいうと歴代見てもこんなに人がいい子たちが集まった代はないです。今4年生が一生懸命陰で3年生以下をまとめようとして、よく色んな学生の話を聞いてくれているので、そういう面では心の優しい、温かい学年だなと思います。

 

ーー4年生へのメッセージ

辛かった4年間だったと思うんですよね。ただ言いたいことはプレーが上手いとか下手ということではなく、日々の取り組みを振り返った時にバレー部でやったことは間違いじゃなかったということはわかると思います。それを一生懸命やってきたのが今の4年生だから、社会に出ても自分たちがやってきて良かったなと思うものわかる、一番大事にしてきた心の部分をしっかりとやれていたので、いい部分を残してくれてありがとうと言いたいですね。

(取材、写真、編集 町田知穂)

◆松井泰二監督(まつい・たいじ)

千葉・八千代出身。1991(平3)年人間科学部卒業。2012年に早大のコーチに就任し、2014年から監督となった。色紙には、昨年に引き続く「全部出せ!!」に加え、「残すな!!」という、熱い思いを書いていただきました!趣味は芸術鑑賞で、オフの日には美術館に行くこともあるそうです!