【連載】競走部 日本学生対校選手権(全カレ)前特集『NOW OR NEVER』第6回 鷺麻耶子女子主将×中村真由

特集中面

≪特集表紙に戻る

 第6回は女子チーム全体を牽引する鷺麻耶子女子主将(スポ4=東京・八王子東)と中村真由(政経4=東京・早実)の2人が登場。女子短短ブロックのエースとして、そして女子主将としてチームを引っ張ってきた鷺と、4年間の努力の末、全カレへの出場を勝ち取った中村が、最終学年として挑む全カレへの想いとはーー。

※この取材は8月25日に行われたものです。

「チャレンジできることを楽しもう」(中村)

対談中の中村

――まずはじめに、お互いの他己紹介をお願いします

 中村真由です。政治経済学部4年で成績優秀者です。短距離副ブロック長です。同じ100メートルと200メートルを競走部でやっていて、性格は几帳面で丁寧で努力家で冷静です。

中村 鷺麻耶子です。スポーツ科学部4年生です。性格は、女子主将になってから、すごくみんなを引っ張るタイプにどんどん変わっていってるなって思ってて。元々ちょっと抜けてるというか、すごく言い間違いが多かったりするタイプなのですけど、女子主将を今すごく頑張ってやってくれています。それで、私も支えたいなと思って一緒に今頑張っているところです。すごく心強い同期です。

――高校時代にお互いのことを知っていましたか

中村 私は知っていました。

  私も知ってはいたのですけど、1回も喋ったことないし、レースも一緒に走っていないと思います。1回くらいはあったっけ。

中村 あるけど、1秒差くらい開いていました。

 前髪がなくて。前髪がない早実の子という印象が強かったです。

中村 鷺はすごく有名だったので、都でもトップの選手でしたし、同じ100メートルの選手だったので憧れていた選手でした。元々トップレベルで活躍しているなという印象があって、大学で一緒にできると聞いたときは驚きました。

――お互いの第一印象と今の印象を比べていかがですか

 私はそんなに変わってないけど、第一印象からこの子となら4年間やっていけそうだなって思ってました。

中村 嬉しい。私は会った初日から結構仲良くなれて、すごく盛り上がっていて良かったなと思っていました。今の印象としては抜けているところは変わらないんですけど、どんどんしっかりしてきているという印象です。

――お互いの尊敬しているところはどこですか

 まず、競技に対する姿勢の部分です。入学したときは多分今まで全国大会出たことなくて、でもすごく深い理由はないけど高校の競技だと中途半端で、もっと頑張りたいっていう気持ちを持って部に入ってきて。その中で、今4年生になってこうやって全カレ前対談を組んでいただいています。4年間かけても最初に立てたそこまで高い目標を達成できる人って競走部の中でも一握りだと思っているのですが、今年に入って(標準記録を)2種目どっちも切っています。もちろん、元々ある程度の競技レベルがあって、それをキープしてる人はいっぱいいるのですけど、関東大会にも出られないようなレベルから、ちょっとずつ実力を伸ばしていってという努力をすごく尊敬しています。あとは、ただただ頑張ってきたんじゃなくて、1回疲労骨折していて、離脱もありすごく苦しい時期も長い中で、それを乗り越えているところです。ここまでのレベルの選手になっているのは、彼女自身の努力もすごいですし、それが後輩に与えている影響もすごく大きいと思うので、そういうところが自分にはなくて尊敬しています。

中村 私が鷺を尊敬しているところは、もちろん競技力というのはあるのですけど、競技力が高い選手だけど、そうじゃない選手にも寄り添ってくれるところ、そうじゃない選手のことをちゃんと考えてくれているところです。それが後輩や、周りの同期から見ても頼れるというか、信頼できるからこうやって今女子主将をやっていると思います。みんなが一つのチームとして鷺についていけているのは鷺の性格の部分が大きいです。

――続いて、競技に関しての質問をしていきます。まず、ご自身の前半シーズン全体を振り返っていかがですか

 私はまず記録だけの部分で言ったら、100メートルは3年ぶりに11秒7台を出せて、200メートルも自己ベストを更新をすることができました。ただ、前半シーズンの大きな試合として位置づけていた関東インカレ(関東学生対校選手権)と日本選手権はどちらも体調の部分だったり、足の状態だったりが上手く合わなくて、結果としていいものを全く残すことができなかったです。そこはすごくきつかったですし、周りにもあんまり良くない影響やオーラを出しているんじゃないかとすごく心配だったので、あまり納得いくシーズンではなかったという印象です。

中村 大学3年まで全然思うような記録を出せてないというのもあって、今シーズンではそれを少しずつ着実に更新できているという意味では、成長を感じられているシーズンかなという印象です。全カレ100メートルはギリギリ標準を切って、200メートルもぴったり。A標準のギリギリというところでは、まだ今目指している全カレの個人種目で戦えるレベルではないのかなと思っています。そういう意味では前に比べたら伸びてはきているけど、まだまだここから上げていかないといけないです。リレーで戦うという意味でも、私個人の力があとどれだけ伸ばせるかが重要だと思うので、まだまだこれから頑張りたいなと思っています。

――お二人とも自己ベストを今シーズン中に複数回更新しています

 私は200メートルで2回自己ベストを更新していて、それ自体は一安心というところではあります。ただ、自分自身としては23秒台を出して全カレに臨んで、決勝で戦うという理想のプランがあったのでそこにまだ到達していないという部分では手放しで喜べる記録ではないなと思っています。でも、更新しないよりはいいですし、ちょっとずつ近づいてはいるので、次の日本インカレで23秒台出して、決勝で戦うというのは実現したいなと思っています。

中村 私は100メートルは1回で、200メートルは複数回更新できています。200メートルでタイムが伸びてきた理由としては、100メートルも大きいと思っていて、200メートルに絞らずに100と200どっちも試合に出場しているというのがプラスに働いたかなと考えています。200メートルは前半のスピードのところをずっと強化してきて、それが徐々に100メートルの結果としても現れてきて、その結果200メートルもやっと記録につながってきたと思います。でも、前半速く入ったときにどれだけ後半で動きが維持できるかという部分が課題として残っているので、そこを修正すれば今後も100も200共に記録を上げていけるかなと感じています。

――中村選手は、最近では走るたびに自己ベストを更新しているような印象を受けるのですが、練習面やメンタル面で今年に入ってから変化はありましたか

中村 メンタルという意味だと、ラストシーズンということが影響していると思います。私は本格的に陸上を始めたのは中学なのですけど、小学校の時から試合にも出ていて、10年近く陸上をやっている中の最後というのがすごく自分の中では大きくて。最後だからこそ記録を出したいのもそうなんですけど、チャレンジ精神というか、元々11秒台で走ってみたいっていう思いや、全国大会に出てみたいっていう気持ちで陸上を続けているので、そういったところにチャレンジできることを楽しもうというメンタルになったのがすごく大きいです。走らないといけないっていうよりも、走るのを自分でやりたいっていう気持ちが出てきているのがメンタルの変化だと思います。

――お互いの走りから刺激を受けている部分はありますか

 もう色々あるのですけど、最初に言った努力家という部分です。4年生になっても今残っていらっしゃるOBの方に聞きに行く姿とか、後輩の男子短距離の選手に聞きに行く姿とか、そういうのをずっと見ています。メニューが終わった後には、走りの話も当たり前にしていて、自分で上手くアウトプットできない言葉や感覚をなんとなく共有している部分があって、それを言語化してくれるので技術の部分にとどまらず、自分自身でもう一度考えるときに会話をしていてすごくありがたいなと思う場面がたくさんあります。

中村 私は小さい記録会しか出られていない時期が長かったのですけど、そういう時期から日本選手権、関カレや全カレに出て、ちゃんと決勝にも残ってっていう姿を見て、すごく刺激を貰ってきたというのが一番あります。それで、試合に出場してるという事実だけでなく、その試合に出ているからこそわかること、例えば大きい試合にあたって、どのようなメニューを組んでいるかいうことを周りの人にも共有してくれています。私が結構メニューの相談をするのですけど、そういうときも自分の経験を元にいろいろアドバイスをくれて、そういう意味では鷺の周りの人も、鷺の今まで経験してきたことの恩恵を受けてるなとすごく感じます。

――前半シーズンを通しての成長や収穫は何かありましたか

中村 走りとしては、3年生の冬季練習で積んできたもの、私だったら身体を全身で連動させるという風に言うのですけど、そういうところが徐々に走りの中に現れてきたのが収穫かなと思っています。あとはウエートトレーニングや体作りの面でも、4年間かけて自分の中では大きく変わってきたと思っていて、それを走りの中にいかせるようになってきたのが今年のいいところです。また、4年生になった、というのはすごく自分の中でも大きいです。後輩たちが見ているところで私も4年生として、鷺だけじゃなくていい走りをしたいし、結果で引っ張っていく先輩になりたいという思いが強いので、結果をより出さないといけないという気持ちが芽生えたのが成長かなと思います。

 一つは、今中村も言っていたように、ウエートや体作りの部分です。どうしても冬期に連続して積んでいたものが試合期になると練習量を落として試合に出て、それでまた積んでというような、サイクルが繰り返されるのでウエートがおろそかになりがちな部分がありました。合宿でも、去年までだとメニューをやりきるのにいっぱいいっぱいでプラスアルファでウエートができないこともあったのですけど、今年はシーズンを通して体作りをして筋力量が落ちないようにというのは意識してできてるかなと思います。そして、あとは今シーズンに入ってから足の痛い部分がずっとあって、そこも上手く付き合いながら今はリハビリも継続してるので、ちょっと成果が出てきたかなと。全快に向けて痛みとか不安とかがない状態で、このまま臨んでいきたいなと思っています。

「一人一人とコミュニケーションを取ることを大事にしている」(鷺)

対談中の鷺

――最近の練習で意識していることは何ですか

中村 私は細かい話ではなくなってしまうのですけど、練習を試合の質にどれだけ近づけるかというのを最近考えています。これまでは、練習でできていた動きが、試合でがむしゃらに本気で走るってなったときに、いつもの良くなかった動きに戻ってしまうことを、試合のたびに繰り返してしまっていました。それを直すためには、やはり練習の質をもっと試合に近づけて、試合に近い状態で練習することが大切だと思います。試合のようにアップをする時間をしっかりとって、スピードもマックスに近い状態で練習して、その中でやりたい動きができるかということを最近考えて取り組んでいます。

 私は技術的な部分では体の中心部分から動いて、大きな走りをするということをやりたくて。理由の一つ目は自分が元々ピッチ型じゃないので、身長がある方なので、そういう特性の部分です。二つ目は、今のケガの原因も膝下で力を使って走ってしまったり、足首がちょっと緩かったりすることがあって、体の中心、腹圧とかをちゃんと高めて真ん中から動かしていかないと痛みが出てしまうからです。技術的な部分と、自分のケガとの付き合い方という両方の部分からその動きをやりたくて練習しています。あとは、試合は、1カ月に1回以上あるものなので、1試合1試合で反省して次の課題という風にやっていくと、1カ月の継続だとどうしても身につかないことが多いです。このテーマはシーズンが始まる前くらいから一貫して持っていて、試合のたびにころころ課題へのアプローチを変えるのではなくて、4年生になってその課題への適切なメニュー、1番課題にアプローチしやすい引き出しが自分の中に増えているので、そういうのを上手く選択しながらやっています。

――ここからは、今年のチームについて、またチームとして全カレに向かっていく雰囲気などの質問をしていきます。まず、4年生という立場から見て、今年のチームはどのようなチームだと感じていますか

 まず下級生が多くて強いというのが一番あります。男女どちらもなのですけど、特に女子に関しては今までと一番違うのはそこかなと思います。実力だけじゃなくて、そういう実力を持っている選手は行動の影響力も周りに対してすごく強くなってくるので、そこを上手くいい方向に持っていけるようにまとめるのが4年生の立場かなと思っています。

中村 私も人数の多さを一番感じています。今まで女子は本当に少なくて、インカレメンバーはかなり少ない状態でやっていました。今年は1、2年生が力を持っているというのもあり、一つの大きなチームとして全カレに臨めるなと感じています。チームの雰囲気としては柔らかくなってきている部分もあって、1、2年生がすごくハキハキいきいきしているところはいいなと思います。学年が上だから、全部引っ張るという感じには今できていないのですけど、結果の面ではみんなで協力しながらできているところがいいのかなと思います。

――鷺選手がチームを牽引(けんいん)する女子主将として意識していることや、また、中村選手から鷺女子主将はどのように見えているのか教えてください

 私が一番意識しているのは、一人一人とちゃんとコミュニケーションを取るというところです。人数が増えた分1日に話せる量はそんなに多くないですけど、練習終わる時の挨拶で一人ずつ来てくれるタイミングで、挨拶して終わるのではなくて、最近の体調とか、今日の練習の内容とか、ケガとか、なるべくちゃんと一人一人のことを把握しててあげたいなと思っています。把握していないとそもそも信頼関係は生まれないですし、ちゃんと見てるよ、気にかけてるよというのが伝わったらいいなと思って、コミュニケーションはすごく大事にしています。

中村 本人が今言っていた通りで、一人一人をすごくよく見ているなというのが私にも伝わってきます。人数も増えてきてすごく大変だと思うんですけど、女子短短ブロックの同じ距離の人たちだけじゃなくて、その他の種目の人とかともしっかりコミュニケーションをとってくれています。後輩からもすごい遠い存在のリーダーというよりかは、話しやすい、相談しやすい、近くの存在の主将ですので、チームにとってはすごくプラスに働いてるんじゃないかなと感じています。

――最高学年として、昨年までと比べてチーム内での立ち位置の変化はありましたか

 はい。全然違うなと思います。いつも後輩に見られてるという意識をして、行動しないといけないというのもあります。あとコミュニケーションをちゃんととって信頼関係を作りたい理由というのも、信頼関係が成り立ってない主将から何を言われても響かないと思うので。指摘しなきゃいけないことを言った時にも、薄い関係性だったら届かないですし、聞いてくれないと思います。そうなってくるとチームがまとまらないと思っているので、色々な角度から見た時の女子主将としての姿、4年生としての姿というのは意識するようになったかなと思います。

中村 私は短距離副ブロック長で、女子の主に短短の選手を一緒にまとめるような立場になって、後輩たちがすごく強いのですけど、そういう意味で無理に私が引っ張ろうとしなくてもいいなというのは感じています。後輩の方が技術的に持っているものが多いので、そういうところは変に意地を張らずに、みんなで意見交換したり、私が教えてもらったりしながらチームとしての雰囲気を良くしていきたいなと思っています。なので、最高学年ではあるのですけど、私が引っ張るというよりかは、みんなで上げていけるような、強くなっていけるようなチームというのを作りたいと思っています。

――そんなお2人から見た女子短距離の今の雰囲気はどのように感じていますか

 1個下の清水奈々子(文構3=北海道・札幌南)と山越理子(人3=東京・富士)はすごく二人とも実力があって、去年ぐらいからぐんぐん上がってきた選手で、私たちが抜けても、その二人を中心に今後マイル(4×400メートルリレー)も4継(4×100メートルリレー)も引っ張っていってくれるだろうなというのは思っています。そこはメニューの相談とか、私たちが見切ることができない後輩のこととかを頼らせてもらっているので、そういう意味ではバランスは取れているのかなと思います。

中村 陸上をやりたい人しか集まっていないので、結果を追い求めるという雰囲気は今までと変わっていないと思っているのですけど、それに加えてみんなで楽しむみたいな雰囲気が最近出てきているのかなと思っています。2年生の上島(周子、スポ2=東京・富士)を始めとして、すごく面白い人がいっぱい入ってきて、練習もみんな自分の意見とかもしっかり発言してくれています。仲良しチームに、なってはいけないと思っているのですけど、練習の際、ピリッとするところはするけど、ちゃんと楽しんでいる、後輩たちも楽しめている雰囲気のあるチームなのかなと思っています。

――チームとして全カレで目指していることはありますか

 はい。順位の目標として、総合3位という目標を一番に掲げています。トラックやフィールドでそれぞれ目標順位はありますが、チーム全体で戦っていきたいという思いがあるので、そこはそんなにみんなにも伝えていないです。

中村 チーム全体は総合3位ということで、鷺が合宿のたびにみんなに全カレの目標は総合3位で、得点の計算がこうなってというのをすごく話してくれています。皆も総合3位を目指して、常に意識してやっているのかなと思います。

――最終学年として挑む全カレになりますが、昨年までとの気持ちの違いはありますか

 はい。私はこれまで3年間全カレに出場してきて、(全体)9番目、10番目(のタイム)で決勝に行けていません。そういった部分でも、最後の日本インカレということで決勝に行きたいという思いはあります。あとは女子主将として私が決勝に行かなかったら、チームの雰囲気や点数にもすごく影響が出てくると思うので、最低限決勝にという思いは今まで以上に強いかなと思います。

中村 私は個人で出場するのは4年目の今年が初めてです。リレーで昨年出場させてもらったのですけど、その時も試合の5日前ぐらいまでメンバーとして走らせてもらえるかわからないという状況で、5日前ぐらいの記録会に向けて準備して、そこで決まって出るというかたちでした。元々走ると決まっていて出場するのが初めてになるので、チャレンジャーではあるのですけど、これが最初で最後になるので、個人では決勝に残って4継では優勝することを目指して頑張りたいなと思っています。

――最後になりますが、全カレへの個人の目標、そして意気込みをお願いします

 個人の目標は100メートルと200メートルで表彰台に乗ることです。競技人生の一番最後の大きな大会で、競走部の集大成としても悔いの残らない、やりきったと思える結果を得られるように頑張ります。

中村 私は100メートルと200メートルで決勝に残って1点でも得点をするということと、4×100メートルリレーで優勝することを日本インカレの目標にしています。意気込みは、これが最初で最後の全カレになるので、目標達成しなきゃという部分はもちろん大前提としてあるのですけど、それを目指しつつ、みんなで陸上ができるということを楽しみながら出場したいなと思っています。

――ありがとうございました!

(取材・編集 會川実佑)

◆鷺麻耶子(さぎ・まやこ)(※写真左)

2003(平15)年1月3日生まれ。167センチ。東京・八王子東出身。スポーツ科学部4年。最近はホラー映画にハマっているそうですが、中村選手からは「見れなさそう!」との声も。手の隙間からチラ見しているそうです。

◆中村真由(なかむら・まゆ)

2002(平14)年5月23日生まれ。169センチ。東京・早実出身。政治経済学部4年。最近ハマっていることは教習所に行くことだそうです。鷺選手からは「ハマってるの!?」とつっこまれていました。ドライブできる日が楽しみですね!