新入生インタビューラストとなる第10回は、千葉百音(木下アカデミー/人通1=宮城・東北高校)。昨シーズン世界選手権代表にも選ばれるなど目覚ましい活躍を見せる千葉に、競技歴やスケートへの想いだけでなく、大学での生活や今後についても話を聞かせてもらった。
※この取材は6月16日に行われたものです。
笑顔の千葉
競技について
――スケートを始めた時期ときっかけを教えてください
4歳の頃にテレビでフィギュアスケートの試合を見て自分も滑りたいと思ったのが始まりです。
――いつ頃から世界を意識されましたか
あんまりはっきり覚えていないんですけど、小学校高学年位から上を目指すようになったかなと思います。自分の中でだんだん、ただ楽しむだけのフィギュアスケートから、世界を目指したいと思うようになりました。
――競技の魅力は何だと思いますか
フィギュアスケートはアクロバティックな面と芸術的な面が両方あるのが特徴だと思うので、そのどちらも劣ることなく両方発揮することで初めてフィギュアスケートの素晴らしさが伝わるんじゃないかなと思います
――どんな選手になりたいか選手としての理想像はありますか
先ほどと似たような感じですが、スケーティング、スピン、ジャンプ、全てが得意で輝いている選手です。
――ご自身の強みは何だと思いますか
現時点で強みなのはスケーティングの伸びだと思うので、より確立させるためにももっとスケーティングの技術を磨きたいです。大きいスケーティングというだけでなく、難しいことをやっても長所である伸びが殺されないようする技術が必要だと思うので、そこをしっかり成長させていきたいです。あとは、スピンやジャンプももっと上を目指すには、さらにハイレベルなものが必要になってくるので、全部一生懸命やってます!
――千葉選手といえばやはり美しいスケートや繊細な表現が持ち味としてよく挙げられますが、昔から意識して練習されてきましたか
表現力はまだまだですが、小さい頃から何に気をつけて練習してきたか思い出してみると、ノービスの頃からよく伸びるスケーティングを意識してきました。練習でよく伸びるスケーティングができたときに気持ちが良かったので、必然的に練習の中で意識するようになっていたかもしれないです。
――逆に改善したいところなどはありますか
スピンの加点をもっともっと伸ばせると思っていて。スピンをもっと速く回って加点を狙うのが一つ課題としてあります。あとは、難しいジャンプを身につけるのが一番大きな課題で、今は4回転トーループを練習しています。他の3回転ジャンプの安定感も上げていきたいです。
――4回転など高難度のジャンプはいつ頃から練習を始めましたか。挑戦しようと思った理由を教えてください
中学校から少しずつ練習はしていたのですが、強く思ったのはここ1年くらいです。今は4回転トーループの最も力を入れていて、まだ完成度は低いんですけど、一番やりたいジャンプです。今シーズンに習得できたらベストですが、今はとにかく習得したくて練習しています。
――Instagramの部員紹介欄では、あこがれの選手にパイパー・ギルス&ポール・ポワリエ組(カナダ)とマディソン・チョック&エヴァン・ベイツ組(アメリカ)を挙げていましたが、アイスダンスもよく見られるのですか
実はアイスダンスの試合をじっくり見たのは去年のモントリオールの世界選手権が初めて(だったのですが)、そこでアイスダンスの魅力に気づかされて、思わず(部員紹介欄に)書きました。シングルはもちろんですが、アイスダンスの魅力ももっともっと広げていけたらなと思っています。
――早稲田大学のスケート部に入部した理由、経緯を教えてください
通信体制のある大学を検討した時に、早稲田の人間科学部が一番自分の学びたい学問があると思ったので早稲田大学を選びました。そのとき、もっと同じ大学の人と仲良くなって情報交換とか意見交換とかしたいなと思って部活に入ったのがきっかけです。
――千葉選手と言えば羽生結弦氏(令2人卒)に憧れていらっしゃることで有名ですね。高校、大学とも同じになりますが、進路の決定にも影響はあったのでしょうか
私が早稲田大学を選んだのは、フィギュアスケートについて学びを深めたいと思ったからです。大学に入るからには自分の競技に活かしたいなと思ったので、追いかけようと強く思ったわけではないですけど、必然的に早稲田の人間科学部が浮き上がってきました(笑)。後に続きたい思いはありますし、私も頑張りたいです。
――早稲田の先輩や同期と交流しましたか
同学年の人間科学部の穂積乃愛選手(人通1=東京・駒場学園高等学校)とジュニアのころから友達だったので、今回たまたま同じ学部だと気づいたときはすごく嬉しくて。たまに、この課題きついよね、とか意見を交換し合いながら勉強を頑張っています。
――早稲田大学フィギュア部門への印象は
先輩方皆優しくて頼りがいがある感じで。まだオンライン上でしか話したことはないのですが、温かい雰囲気の部活だと思います。
競技歴について
――四大陸選手権優勝、世界選手権入賞など、2023-2024シーズンは大飛躍のシーズンだったと思います。改めて振り返っていかがですか
良い結果も悔しい結果も味わえた濃い一年だったと振り返っています。今は2024-2025シーズンに向けてステートダッシュしている感じなので、今年は昨シーズンの反省を活かして、シーズン全般を通して安定した演技がしたいです。
――昨シーズンはもちろん、それ以前から既に、四大陸選手権銅メダルなど実績を残されていました。ご自身の中で飛躍したと感じるタイミング、シーズンはいつでしたか
去年の全日本選手権です。それまでのグランプリシリーズで結果が振るわない中、一ヵ月後の全日本選手権で、自分なりに調子を上げてベストを出せたというのは、その後の試合の自信に繋がる大会だったかなと思います。
――昨年はシーズン前に木下アカデミーへ移籍されました。驚いたファンも多いと思いますが、改めて経緯を教えてください
自分の中でスケート人生の計画を考えた時に、やはり一番は、2026年のミラノオリンピックに出場したいと強く思って、そのためには世界で戦っていく力をつけないといけないと強く思ったので、オリンピックの2年前に移籍しました。
――木下アカデミーではどのようなことを教わっていますか
ジャンプを安定させないと得点も伸びないですし成績も決まってきてしまうので、ジャンプを安定させたいと自分の中でも思っていました。そのために筋力面でのトレーニングを重点的にやっています。4回転の習得なども結局はフィジカル面の強化が主な課題になるので。
――移籍前後で感じる一番大きな変化は何ですか
京都に移ってから去年初めての夏を経験したのですが、体感的に、仙台の一番暑いときの気温が京都の初夏と同じくらいで、京都の一番暑いときは本当にきつかったです(笑)。今年ももう夏に入り始めて、まだ梅雨が来ていないのに(この暑さだと)、今年の夏もそこそこ怖いですが、なんとか乗り切りたいです。
――木下アカデミーにはたくさんの代表選手が所属していますが、刺激は多いですか
レベルの高い選手に囲まれて練習できるのは貴重な環境だと思います。この環境に感謝しながら毎日成長し続けようという強い気持ちを持ち続けるのが大切だと思うので、日々お互いに高めあっていけたらと思います。
――競技人生で一番思い出に残っている大会を教えてください
本当に色々な思い出があって…。そうですね、一番直近の試合になってしまうのですが、一番自分が超えないといけない壁を感じたという意味では世界選手権ですかね。この壁を乗り越えてもっともっと強くなりたいと思いました。
――日本の次世代エースの立ち位置になってきましたが、プレッシャーなどはありますか
自分はこれからもっともっと上に行かないといけない存在なので、プレッシャーを感じず上だけ見て突き進んでいきたいです。
私生活、大学生活について
――趣味は何ですか
刺繍です。動物が好きなので動物の刺繍とかをしています。あと京都に来てからは、大学の課題が終わって時間がある時にお寺を訪れたりしています。最近は鈴虫寺に行きました。
――大学生活には慣れましたか
だいぶ慣れてきた方だと思います(笑)。
――高校生活と比べていかがですか
通信体制なので、なおさら自分でスケジュールを管理しないといけなくて、今までよりも自立した生活を求められるのが、すごく大学生だなと感じています。
――学びたい学問があるとのことでした。人間科学部ですが、何を勉強していますか
自分の競技に活かすために、心理学的な面だとかフィギュアスケートをしているときのイメージトレーニングをするための心理機構とかを学びたくて人間情報科学科を選びました。今は感覚情報工学とか生体心理学について学んでいます。難しいのですが、複雑な人間の身体や心理学的なメカニズムを学ぶことができて刺激的な日々を送っています。
――高校時代から文武両道で有名でしたが、勉強は好きですか
自分が知りたいと思ったことはとことん突き詰めたい、学びたいと思う方かなと思います。
――学業とスケートの両立はいかがですか
最初は慣れるために少なめの単位にしたのですが、それでも毎週末期限に追われていて、今日も何とか終わらせた感じで(笑)。シーズン入ってから課題をちゃんと終わらせられるか心配ですが、しっかり付いていけるように頑張りたいです。
――大学生活4年間、スケート以外でやってみたいことはありますか
今はスケート一本なので、特にないかもしれないです(笑)。
今後について
――今シーズンの目標を教えてください
シーズン前半の目標はグランプリファイナルに出場することです。シーズン後半にうまく繋げられるような良い演技をするのが、まず一つ目標です。そして、今年も世界選手権に出場したいです。去年のモントリオール世界選手権に出場したときに、もっと強くなってまた絶対に世界選手権に出場して、(昨シーズンの)モントリオール(での世界選手権)よりも良い演技がしたい、と強く思いました。
――インカレなどに出る予定はありますか
そうですね、できれば出たいです。
――今シーズンのプログラムは何ですか。注目ポイントも教えてください
SPが『ラストダンス』で、FSは『アリアナ』というクラシック曲です。SPは夜のミラーボールに照らされているノリノリの情景が浮かび上がってくるような曲なので、自分の中の楽しい気持ちを爆発させて滑りたいです。FSは、今までやってきた表現しやすい曲調と、今までとは違った挑戦的な強い曲調(の両方)があるのでしっかりできたらなと思います。
――今後のスケートの目標を教えてください
今学んでいることと繋げてフィギュアスケートについて掘り下げていきたいですし、最終的には技術力向上に役立つ研究がしたいです。
――最後にファンの方へメッセージをお願いします
いつも応援ありがとうございます。今シーズンも更なる高みを目指して、日々技術を磨いて頑張っていきたいです。
――ありがとうございました!
(取材・編集 荘司紗奈)
◆千葉百音(ちば・もね)
木下アカデミー所属。宮城・東北高校出身。人間科学部通信課程1年。所持級はシングル7級。