【競走特集】注目ルーキー対談第三回 渕上翔太×鶴巻陽太

競走特集

 今春も、早大短距離陣には新たな顔ぶれが加わった。その中でも特筆すべき選手は、名門東福岡高校で主将を務め、2023年全国高等学校総合体育大会(インターハイ)において、4×400メートルリレー(マイル)3連覇、400メートル障害2位という功績を残した渕上翔太(スポ1=東福岡)、そして、100メートルの新潟県高校記録、2022年のインターハイで100メートル6位入賞の実績を持つ鶴巻陽太(スポ1=新潟・三条)の2名。いずれは部の中核を担っていくであろう彼らに、春からの大学生活や競技における目標を伺った。

※この取材は4月14日に行われたものです。

 

「(大学は)自分で考えて自分に必要なことを行う」(鶴巻)

 

対談中の鶴巻

 

――他己紹介をお願いします

鶴巻 渕上翔太選手で、福岡県の東福岡高校出身です。専門種目は400メートル障害です。日本のアイドルが好きで、よく歌っています。

渕上 最初からぶっこむね(笑)。 新潟県で100メートルをやっていた鶴巻陽太君です。印象としては、以前12月に合宿で会った時、ものすごくふざけるイメージの方が僕の中で強かったのですが、練習中は淡々とやっているなと思います。3月に入寮して会った時から1カ月経ったのですが、そのようなイメージはまだ自分の中にあります。好きなものは特に分からないのですが、おちゃらけキャラです。

――鶴巻選手から見て、渕上選手の第一印象と今の印象を教えてください

鶴巻 第一印象は、結果を残していた選手だったので、怖いのかなと思っていたのですが、会ってみたら普通の高校生でした。最初はしっかりしていましたね。

渕上 最初は(笑)。

鶴巻 今は1年生のリーダー的な立ち位置にいて、色々なまとめ役などをやってくれているので、真面目だなと思います。

――おふたりは、いつ頃から知っていらっしゃったのですか

鶴巻 渕上は、ずっと活躍していたので、陸上の大会のネットニュースなどに度々載っていました。なので、僕はずっと前から知っていました。

渕上 僕は、(鶴巻が)高校3年生の5月に(100メートルで)10秒36を出した時はツイッターで見ました。レース映像なども見たので、その頃から知っていました。インターハイでも(鶴巻を)見るようにはしていました。

――寮生活は慣れましたか

鶴巻 1カ月以上寮に住んでいるので慣れてきましたね。

――ホームシックにはならなかったのですか

鶴巻 特になっていないです。

渕上 僕も高校から寮にいたので、悲しいというのはないです。しかし、(高校)3年という一番上の立ち位置から、大学1年という一番下の学年に行くし、4人部屋ということもあったので少し緊張していた部分がありました。ですが、先輩方も優しくて、想像していたよりもラフな感じで楽しいなというのはここ1カ月で感じています。

――高校時代の寮と大学の寮で違いはありますか

渕上 高校は一人部屋だったので、お風呂場やご飯の時に周りと関わることはあったのですが、普通に過ごしている中で関わることはありませんでした。大学の寮は、同じ部屋ということもありますし、部屋間が近く、結構仲が良いということもあるので、気軽にいけるのは高校とは一番違うところだなと感じています。

――オフの日はどのようにして過ごされていますか

鶴巻 オフの日は、基本寮でユーチューブを見たり映画を見たりして過ごしています。どこかに出かけるということはあまりしないです。

渕上 僕も(外に)出る方ではなくて、インドアな時はインドアです。ですが、それこそ一昨日に長期休みの関係で午後が休みだったので、先輩とアウトレットとコストコに行ったのが楽しかったです。東京には1、2回行ったのですが、たまに行くくらいが楽しいです。

――監督についてお伺いします。大前祐介監督(平17人卒=東京・本郷)はどのような方ですか

渕上 自分たちの考えを聞いたうえで、アドバイスを言ってくださるのと、調子や試合についての相談もしてくださるので、一言で表すなら気さくな方という感じです。僕の中で先生というのは、話しづらいという印象があったのですが、そんなことはなく、近い距離間で話せているなと感じますね。

鶴巻 自分もほとんど同じです。監督と聞くと、結構距離を感じるのですが、話してみると話しやすいという印象ではあります。

――大学に入学して大変だったことを教えてください

渕上 入寮した最初は練習が一番しんどかったですし、やはり速い選手がたくさんいらっしゃるので、そこの中で食らいついていくということはまず大変でした。それが徐々に慣れてきたなと感じる頃に授業が始まって、金曜日はまだオリエンテーションで短かったのですが、これが月曜から金曜まで100分あると考えたら、まだ想像でしかないけれどしんどいだろうなと思います。ただでさえ、新入生ガイダンスを見るだけ「あぁ・・・。」と思ったので、授業との兼ね合いが難しいのだろうなということは今の段階から感じています。

――楽しみな授業などはありますか

渕上 ダンスです。競走部のみんなで取った科目ではあるのですが少し未知数すぎるので(笑)。みんなでやる楽しさはあるのかなと思っています。

――鶴巻選手はいかがですか

鶴巻 自分は授業がまだ始まっていなくて、授業の大変さは感じていないです。高校の時は実家暮らしで、こっちに来て寮に入ったので、私生活で買い出しなどが大変だなと思います。

――大学と高校で感じる違いがありましたら教えてください

渕上 まず、自分たちが男子校だったので、練習に女性がいることが、(早稲田に)来て一番最初に違和感を感じました(笑)。練習の違いという部分で言えば、高校も少し自由にやらせてもらえる練習環境ではあったのですが、大学の練習に来て、そのことに加えて、同じ種目間のコミュニケーションがものすごくあるということを一番感じました。これまではただきつい練習というイメージが僕の中であったのですが、やはりトップ選手の方が大勢いらっしゃるので、その中でコミュニケーションをとりながら、色々考えながら(練習を)するという部分は高校と違うなと感じます。そのことは、今練習をしていて楽しいと思えています。

鶴巻 僕の高校時代は、監督からメニューを出されてそれを行う感じでした。しかし、大学に来てからは、自分で考えて自分に必要なことを行うということが主になっています。先輩方は何を言っているのか分からないくらい考えているんですよ。そういうことが、高校時代と違って自分でやらなければいけないのだなと感じました。

 

「人として、スポーツ選手としてけん引できるような選手になりたい」(渕上)

 

対談中の渕上

 

――陸上競技自体を始めたきっかけを教えてください

渕上 自分が始めたのは小学4年生の時です。本当に単純な理由なのですが、それまで運動会のかけっこでずっと2番で、1番で勝てなかった子がいて。その子が入っていたクラブが自分が小学校の時に入っていたクラブで、その子を追っかけて始めたのがきっかけです。一応小学校の時は野球と(陸上を)兼ね合いしていたのですが、小学校の野球の時に肘をケガしてしまったということもあって、陸上一本に絞ろうと思いました。最終的に決めたのは中学の時です。

――陸上一本に絞ったのは、肘のケガが大きな決め手になったからということでしょうか

渕上 それまでは、正直野球はみんなでやっていたからこそ楽しいなというのもありましたし、一方陸上は勝って楽しい部分もあったので、そこで迷っていました。ですが、小学校6年生の時にケガをしてしまったので、最終的には中学に上がるタイミングで陸上に決めました。

――鶴巻選手はいかがですか

鶴巻 始めたきっかけは、兄が陸上をやっていて、自然に自分も連れていかれたからです。元々足が速かったので、別にいいかなと、本当に軽く陸上を始めました。

――今の種目を始めた時期とそのきっかけを教えてください

渕上 400メートル障害については、試合にちゃんと出たのは高校からです。その種目が高校からしかなかったということもあるのですが、練習自体は中学2年生のころから始めていました。その段階では、高校に入ってから(400メートル障害を)しようと考えていました。理由は、それまで110メートル障害という種目をやっていたのですが、身長的にもハードルの高さが少し高くなってしまうので、そこが厳しいかなと思い始めたからです。それに加えて小学校の頃のコーチが、そのまま中学校の頃の外部コーチとして教えてくださっていたのですが、そのコーチと世界を目指したいという話をしたことがあって。その時に一番可能性がある種目は、400メートル障害というお話を伺ってからしようと決めましたし、それがきっかけにもなりました。

鶴巻 めっちゃ話すじゃん(笑)。

渕上 ごめん(笑)。

鶴巻 自分が今の種目を始めたきっかけは、小学3年生の時に初めて出た試合が県で一番大きい試合で。そこで優勝できたので、自分は100メートルをやるしかないと思ってその時からずっとやっています。

――だいぶ早い段階から決めていたのですね

鶴巻 はい。ハードルや跳躍競技は自分には向いていないと思って。

――ハードル競技や、跳躍競技などをやられたことは

鶴巻 やったこともないんです。ずっと100メートルしかやっていないです。

――高校時代に印象に残っている試合を教えてください

渕上 一番印象に残っている試合は、高校1年生の時の福井インターハイです。そこで、個人ではボロボロで、唯一マイルリレーのメンバーとして1年生で準決勝を出させていただいたのですが、そこでも先輩方が持ってきてくださった差を自分で一気に縮めてしまい、ギリギリの試合になってしまいました。その後の決勝で違う1年生の子と替えられたということが一番悔しくて印象に残っています。そのことが原動力となってやってこれたなと感じています。

鶴巻 自分が一番印象に残っているのは、高校2年生の時の徳島であったインターハイです。1個上の関口さん(裕太、スポ2=新潟・東京学館新潟)と決勝で一緒に走らせていただいたのですが、初めての全国で6位入賞できたのが嬉しくて印象に残っています。

――早大を志望した理由がありましたら教えてください

渕上 自分は、高校2年生の時に一度見学させていただいたことがあって。自分の勝手な考えではありますが、練習のメリハリを結構つけたいタイプなので、そうなったときに、早稲田の競走部を見させていただいた時の集合とやるときのメリハリ感、そうでないときのコミュニケーションなど非常に関係性がいいなと思いました。やるときはやるという環境でやっていたら楽しいだろうし、自分も伸びるだろうなと考えたことがきっかけになりました。

――競走部に入る前にどなたかと連絡は取りましたか

渕上 話を聞いたなどはないのですが、田中天智龍さん(令6スポ卒、現エイジェック)はその代でも400メートル障害で有名でしたし、名前は知っていたということもあったので、田中さんは意識していました。

――鶴巻選手はいかがですか

鶴巻 僕も高校2年生の時に監督から声をかけていただいて、お話をたくさん聞かせていただきました。競技力だけではなく、人間性も高めるには早稲田大学が一番いいというのを感じたからです。それに加えて、トップレベルの選手がいる中で、自分もその中でレベルを上げていきたいなと思って志望しました。

――関口選手からお話を聞いたりなどはされたのですか

鶴巻 そうですね。関口さんには練習のことや寮のことなどたくさん聞きました。

――早稲田入学前後でイメージの変化がありましたら教えてください

渕上 練習には1回しか参加させていただいてないのですが、その段階で少し堅苦しいのかなというイメージが正直ありました。やはり、一言で言うと(早稲田は)頭がいいじゃないですか(笑)。僕はそんなに(頭が)いい方ではないので。ですが、入ってみるとその印象は違いました。

鶴巻 自分も全く一緒です。伝統があるのできっちりしているのかなと思ったのですが、きっちりするときはする、そうでない話す時などは楽しむなど、メリハリがあると感じました。

――先日出場されました、六大学対校陸上の振り返りをそれぞれお願いします

渕上 先ほど鶴巻が言っていたように(早稲田は)伝統がありますし、マイル(4×400メートルリレー)が代々強いということは知っていたことなので、対校戦初戦で勝つという中で4走を任せられたのは、非常に緊張しました。高校までとは違うプランで走ったということもあったのですが、タイムは自分の中で納得いかなかったですし、3走までの先輩が持ってきてくださった差を一気に縮めた、というかつぶしたようなものなので、そこは少し悔しかった部分はありました。ですが、結果的に優勝できたことについて、先輩たちは非常にほめてくださって、結果的には良かったのかなという部分はありました。

鶴巻 自分は渕上が出ているような対校種目ではなくて、オープン種目の100メートルに出させていただきました。去年の高3の間はずっとケガをしていて、今回ケガ明け初の試合だったので、良くない点もいくつかありましたが、それにしては10秒台も出たし、いい方だったとは思います。あとは、渕上も対校種目でエンジのユニホームを着ていて、自分は白いユニホームだったので、エンジに対する憧れを持った試合となりました。

――ケガ明けから最近の調子はいかがですか

鶴巻 最近はまた違うところを痛めてしまって走れていないのですが、来週から練習に参加するという感じです。

――ご自身の走りの強みを教えてください

渕上 自分の強みは、スプリントを活かした前半の入りのスピードです。高校時代から、100メートルの方の走力がないと400メートルは速くならないという考えが自分の中にあったので、高校の間は両立して伸ばしてこれたかなという部分があります。そのあたりは1つの武器だと思っています。

鶴巻 自分の100メートルの強みは、爆発力だと思っています。スタートから加速して、二次加速の部分で自分は他の選手より強いのではないかなと思っています。

――目標とする選手を教えてください

渕上 早稲田で目標としてる選手は、同じ種目に関しては金本昌樹さん(スポ4=東京・日大桜丘)で、400メートルに関しては眞々田さん(洸大、スポ4=千葉・成田)です。

鶴巻 僕は、千田杜真寿選手(スポ4=茨城キリスト教学園)です。

渕上 ずっと好きだよね(笑)。

――何か理由があるのですか

鶴巻 好き・・・なんです(笑)。

一同 (笑)

――逆にライバルとする選手がいましたら教えてください

渕上 自分のライバルは権田浬(スポ1=千葉・佐倉)です。400メートルは同じくらいのタイムを持っていて、400メートル障害という同じ種目をやっているので。彼も今は受験期だったということもあって色々大変だと思うのですが、いざ学年が2学年、3学年と上がってきたら、同じチーム内ではありますけど、切磋琢磨(せっさたくま)していくメンバーになるのかなと思っています。

鶴巻 自分のライバルは、伊橋璃矩(スポ1=千葉・成田)です。高校1年生から3年生まで全部タイムも同じくらいで進んできていて、自分は2勝2敗・・・。

渕上 2勝2敗(笑)。すごいことになっているぞ(笑) 。

鶴巻 2勝2敗じゃない(笑)。2戦2敗していて、1回も勝てていないです。彼もずっとケガをしていて、今多分同じくらいで走っているので、これからライバルとしてバチバチやっていきたいです。

――大学4年間で伸ばしたいところを教えてください

渕上 競技面に関しては、オリンピックや世界基準の試合に一般の規格として出ることをまず目標としています。あとは抽象的な目標にはなってしまうのですが、人として、スポーツ選手としてけん引できるような選手になりたいなということも目標としています。精神面は、1個1個の試合でダメージを受ける方ではあるので、いい意味で(試合に)とらわれすぎないように成長していけたらと思っています。

――緊張はされるタイプなのですか

渕上 いえ、緊張はあまりしないのですが、終わった後に「こうしておけばよかった」みたいなことは動画を見ながら思うことが多いです。記録会程度ならいいのですが、それが去年のインターハイなどでも出てきたので、そのあたりは成長しなければいけないなと思います。

――鶴巻選手はいかがですか

鶴巻 競技の面では、試合で勝ち切るということが成長するべきところだと思っています。あまり勝てた経験がなかったので、大学という大きな場所で勝つということを意識しています。精神面は、アスリートとしても人としても成長していきたいです。

――最後に今年1年間の目標を教えてください

渕上 まずは、U20の世界大会があるので、そこの日本代表に入ることを目標としています。チームの目標としては、マイルの優勝に貢献できる選手になりたいです。対校戦が続いていくので、個人も含めて1年生ではありますが、点数に少しでも絡んでいけるように、貪欲につかんでいきたいなと思っています。

鶴巻 自分の目標は、U20の日本選手権が自分の地元の新潟県であるので、そこに出て勝つことです。

――ありがとうございました!

(取材・編集 草間日陽里)

 

色紙に好きな言葉を書いていただきました!
 

◆渕上翔太(ふちがみ・しょうた)(※写真左)

2005(平17)年10月10日生まれ。177センチ。東福岡出身。スポーツ科学部1年。自己記録400メートル障害49秒97。実は習字を習っていたことがあるという渕上選手。鶴巻選手に影響されて四字熟語を選び、色紙に「全力疾走」と記されました。最後まで字体にこだわり、達筆に書かれたその言葉には、渕上選手の熱い思いが込められています!

◆鶴巻陽太(つるまき・ようた)

2005(平17)年4月20日生まれ。173センチ。新潟・三条出身。スポーツ科学部1年。自己記録100メートル10秒36、200メートル21秒44。渕上選手、鶴巻選手はともに地方から上京されたということで、時折田舎トークが炸裂。特に鶴巻選手は、上京して感じたこととして、「広がっている風景が田んぼじゃない(笑)。」と新潟県出身ならではの回答をしてくださいました!