【連載】全日本大学選手権直前特集 第1回 OL小林亮生主将×松澤学主務

米式蹴球特集

 悲願の日本一を掴み取るため、全日本大学アメリカンフットボール選手権(全日本大学選手権)に臨む早大BIG BEARS。第1回に登場するのはOL小林亮生主将(先理4=埼玉・早大本庄)と松澤学主務(スポ4=東京・早実)の2人。それぞれ選手、スタッフの代表としてチームをまとめる2人に秋季リーグ戦の振り返り、全日本大学選手権への意気込みを伺った。

※この取材は11月20日に行われたものです。

仲が良いだけではなく、信じ合えるような関係になった(小林)

質問に答える小林主将

――秋季リーグ戦について伺っていきます。リーグ戦2位という結果を振り返っていかがですか

小林 法政に負けて2位になりましたが、もちろん負けたことは悔しいですし、関東1位になれなかったのは非常に残念というか悔いが残る結果でした。ただあの試合で学んだことも結構あって、準備の部分で法政に負けたと思うので、そこやプレーの精度の詰めの甘さなど、そういうことを学べたリーグ戦でした。

松澤 やはり一番は悔しい気持ちがあります。主将含めた幹部たちやオフェンス・ディフェンス・キッキングチームのリーダーたちを一番近くで見てきた分、彼らの頑張りをすごく感じていたので、法政に負けたときはすごく悔しかったです。ただその後の立教、明治戦に向けて、負けたから落ち込むというわけではなく、みんながすぐに切り替えて取り組んでいたのが印象的なリーグ戦だったと思います。

――印象に残っている試合は

小林 やはり法政戦と立教戦です。法政は先ほど申し上げたような結果で。立教は昨年春も秋も負けて悔しい思いをして、ただ勝つだけではなくてこてんぱんにしてやろうという気持ちでやったので、それが結果として試合の数字に出て良かったです。

松澤 僕もやはり法政戦は結構印象に残っていて、お客さんも結構入ってきてくれたというのもありました。もう一つは初戦の慶応戦も印象に残っています。やはり早慶戦ということもありましたし、初戦だったので相手も何をしてくるかわからないという状況でこちらも準備をしなければならなかったので、その緊張感やリーグ戦が始まるワクワク感がありました。

小林 めちゃくちゃ前のことに感じる(笑)。

――小林主将に伺います。今年のリーグ戦ではランプレーによる得点がとても多かった印象ですが、OLとして手ごたえは感じましたか

小林 試合を重ねるにつれて、OLとRBのコミュニケーションであったり、OL同士のコンビネーションの練度が上がってきて、手応えを感じるリーグ戦でした。

――RB安藤慶太郎(社3=東京・早大学院)選手はリーグトップの11タッチダウン(TD)を記録しましたが、どのような存在ですか

小林 安藤はプレーでもそうですし、オフェンスが少し浮ついていたら鎮めてくれるし、落ち込んでいたら檄を言ってくれるといった頼もしい存在です。OLのブロックが不甲斐なくても独走してくれる、そういうプレーの面でも頼れる選手です。TD数で1位を取れたというのは自分も嬉しいですし、安藤はもちろんそこまでドライブしていった他のRBの味岡(海斗、法4=東京・早実)とかもいるので、そういうのが数字として出たのかなと思います。

――今年のオフェンスは主力の4年生が多く卒業した中でのスタートだったと思います。そこからシーズンを通して、ここまでのオフェンスの成長や現在のデプスはいかがですか

小林  QBは國元さん(孝凱、令6社卒)がいなくなって、OLも4年生が多くて。RBも安村さん(充生、令6文構卒)や花宮さん(圭一郎、令6文構卒)といった優秀な方がいなくなって、新しく1からのスタートでした。その中でオフェンスリーダーの飯田(OL飯田星河、法4=東京・早大学院)がどうやったら強くなるかということを常に考えてくれて、策を練ってくれていたので、飯田あってのオフェンスだと感じています。デプスに関してはWR、RBは層が厚いんですが、OLはどうしても少し差があってしまっていて。ただ明治戦では普段試合に一本目として出ていない選手が出たときにゲインすることができていたので、育ってきているのかなと思います。

――特に成長を感じる選手はいますか

小林 OLの柳嶋(将歩、政経3=東京・早大学院)、丸山(皓士朗、法3=東京・早実)、石亀(光希、文3=東京・早実)の3人です。石亀は経験があるんですが、柳嶋、丸山はあまり経験が無くて少し荒削りな部分があったんですが、だんだんとOLの動きに慣れてきて、そつなくこなせるようになってきたと感じます。

――続いて松澤主務に伺います。今年からスタッフに転向され、主務を務めることになりましたが、主務として1年間の目標を教えてください

松澤 僕は選手から上がってきたということで、選手とスタッフ間の繋がりを強くしたいというのは1年間目標としてやってきました。振り返ってみて、最初の頃は選手とスタッフが僕を介していたという面がありましたが、だんだん下級生のスタッフと上級生の選手が話している姿を見てきて、少しは貢献できているのかなと感じました。

――主務として苦労したことは

松澤 いっぱいありますが、特にスタッフの仕事が全然わからなかったというのが自分の中で一番大きな問題だったと思っていて。分からなかったというのは運営の仕方はもちろん、選手に対してどうやったら指示を聞いてくれるか、理解してもらえるような資料作りだったり、そういうところで何をすればいいのか分からなかったというのが苦労したところです。

――一方で、選手としての経験が主務での業務の役に立ったところは

松澤 選手目線の意見が言えるのは大きいと思っています。例えばウェイトの重要性というのは理解していたので、試合運営や練習運営の時間を決める際にウェイトの時間はここで取らないといけない、であったり、選手だったらこういう考えをするからこういう資料は入れといた方が良いなど、選手目線の考えができていたのが役に立ったと思います。

――お二人に伺っていきます。チームワークという面で選手とスタッフ間の関係性で意識していた部分はありますか

松澤 僕は選手たちに積極的に話しかけるということは意識していました。3年生以下の選手たちとはあまり関わりがない中で信頼関係を築いていかないといけないので、よく選手たちに話しかけてはいました。

小林 例えばトレーナーやストレングス&コンディショニングの部門のスタッフたちが運営で困っていることがあれば、率先して選手に協力を促したり、マネジャーがいろんな提出物やユニフォームを回収してくれるので選手にはしっかり出すように言ったり、業務を円滑にできるようにというのはやっていました。

松澤 これはとても助かりました。何かあったら主将に手伝ってもらおうというのがスタッフ内にあったので、本当に助かる取り組みでした。

――4年生の皆さんはとても仲が良いと聞きますが、一年間でどういうチームになりましたか

小林 もともと1年生のときから仲良かったんですが、最初に4年生ミーティングをやって主将と副将を決めるときに意見が対立して、当時は団結しているとは言えない状態で少し不安でした。それでもシーズンが進むにつれてお互いに信頼が生まれて団結してきているのかなと思います。ただただ仲が良いだけではなく、信じ合えるような関係になったと感じています。

松澤 下級生のときからずっと小林が仕切ってくれていて、彼を中心にまとまっているチームでした。4年生という最高学年になって、まとめる対象が40人くらいだったところが200人近くとなったときに一人の力では難しいところがあるので、そこで4年生でどうやってリーダーシップを発揮してまとめていくのか不安でした。ただ日数を重ねていくことで声を出して引っ張ってくれる人が出てきたりして、そういうリーダーシップがみんなの中に芽生えてきたというのは今年1年通してとても成長したのかなと感じます。

小林 頼もしい同期が多かったです。松澤はもちろん、副将の4人、功能(LB功能誠也副将、教3=東京・西)は3年生ですが功能含めて本当に頼もしい仲間が多くて恵まれたと思います。

最後は笑って終わりたい(松澤)

質問に答える松澤主務

――全日本大学選手権の試合まであと3日となりました。現在のチームの雰囲気は

小林 先週の練習で言ったのは「関西を三連続で倒すのは早稲田しかできないからそれに対してワクワクしよう」と。負けたら引退というのはどうしても頭をよぎりますが、倒せるというその前向きな気持ちでやろうと言って、みんなやる気に湧いてるんじゃないかなと思います。

松澤 関大戦は甲子園ボウルに行くにあたっての通過点だと、みんな認識している中で春に関大に引き分けていて、決して勝てない相手ではないというのは分かっています。そこに対してどれだけ勝率を高めるために練習をこだわれるかというところをリーダーだけではなく、各自それぞれが考えて行動できていると思います。

――準々決勝の相手である関西大はどのようなチームだと見ていますか

小林 各ポジションにタレントが揃っているなと。レシーバーだったら溝口選手(駿斗、4年)や岡本選手(圭介、4年)、RBだったら前川選手(礼男、2年)や阪下選手(航哉、4年)と、複数人タレントがいますし、DLもサイズが大きく個々の能力が高いと思います。あとはキッカーの中井選手(慎之祐、3年)もパワーがあってすごい距離のフィールドゴールも決めるので、そこは警戒しています。そして勢いに乗るとすごい怖いチームだなと思います。

松澤 春に定期戦をやって感じたのは、とてもアメフトに対して楽しんでやっているなと感じていて。試合のときに相手のスタッフさんとお話しする機会があったんですが、スタッフさんも仕事をやらされているという感じではなくて、楽しんでいるなと感じました。そういう楽しさをみんなが理解しているからこそ、団結しているチームなのかなと思っています。

――日本一に向けて、BIG BEARSの強みはどこにあると思いますか

小林 アメフトって最後はファンダメンタルの勝負だと思うので、いかに自分たちがこれまでやってきたファンダメンタルを出し切るかというところに行きつきます。なのでファンダメンタル、自分たちの早稲田のフットボールを出し切るというところですかね。これは関大戦だけではなく全部の試合で言えることだと思います。

松澤 いろいろな方から組織力が高いという風に評価していただいていて、その組織力というのもそれぞれのスタッフが力を発揮しているというのと、選手がそれにしっかり対応してやることをしっかりやってくれています。そういうところが強みなのかなと思います。

――期待しているチームメートは

松澤 QBの八木(義仁副将、政経4=東京・早大学院)です。僕は八木と寮で一緒の部屋で生活していて、練習のビデオもずっと撮っていて、八木がどれだけアメフトに対して頑張っているのか、相手をどれだけ研究しているのかというのを一番近くで見てきました。ライブ中継の解説などでは八木がちょっと調子が悪いと言われていますが、僕はそんなことはないだろうと思いますし、いろんな人に八木じゃないと早稲田のQBは務まらなかったと言われるように、頑張ってほしいです。

小林 自分も八木で、誰よりも研究しているし、準備もめちゃくちゃしていて、信頼できる選手です。松澤が言ったようにリーグ戦では解説の方に調子が悪いみたいに言われていましたが、そういうのをひっくり返すぐらい暴れてほしいです。もう一人は味岡(RB味岡海斗、法4=東京・早実)です。早稲田のエースランナー安藤がいて、安藤よりは目立っていないかもしれないですが、自分は味岡のすごい魂のこもったランやブロックが好きで。パスプロテクションでも大きいDLに対して果敢に当たっていくし、明治戦では4人くらいにタックルされながらもTDを決めたりして、普段は大人しいキャラクターですが試合になると豹変して気持ちのこもったプレーをするので、選手権でもそれを見せてほしいです。

――同期の皆さんと挑む最後の大会ですが、そこに関しては

小林 まだ負けたらここで終わりという実感がなくてそこは不思議な感覚ですが、特にこの1年間はすごく濃い1年だったなと思っていて。良いことばかりではなかったですが、みんなでここまで過ごしてきたので、最後そうして信じ合える仲間たちと一緒に思いっきりやりたいです。

松澤 最後の大会になるので集大成を見せてほしいというのと、最後は笑って終わりたいです。やっぱり泣いて終わるのは避けたいです。

――最後に、全日本大学選手権への意気込みをお願いします

小林 大学アメフトでは西高東低と言われていますが、今年それをひっくり返すのは早稲田しかいないと思いますし、そういった風潮が今後どうなっていくかを占う年だと思っているので、そこはプライドを持ってひっくり返そうと。下剋上ですね。やってやろうという気持ちです。

松澤 関西3校と戦える機会があるのは早稲田しかないので、その3校を倒して優勝することに意味があると思います。試合をするのは選手ですが、その裏でスタッフがいかに選手たちをサポートできるかというところにもかかってくるので、全員で勝ちに行くというのを徹底していきたいと思います。

――ありがとうございました!

(取材・編集 沼澤泰平)

◆小林亮生(こばやし・りょう)※写真右

埼玉・早大本庄高出身。先進理工学部4年。ポジションはOL。180センチ。110キロ。力強いリーダーシップでチームを率いてきた小林主将。全日本大学選手権では主将の意地に期待です!

◆松澤学主務(まつざわ・がく)

東京・早実高出身。スポーツ科学部4年。選手からスタッフに活躍の場を移した松澤主務。全日本大学選手権でも選手たちをサポートする姿に注目です!