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第58回全日本大学駅伝対校選手権 11月1日 名古屋・熱田神宮〜三重・伊勢神宮
先月の出雲全日本大学選抜駅伝(出雲)を制し、大学駅伝2冠目に向け挑んだ全日本大学駅伝対校選手権(全日本)。今大会の早大は、1区から3区にルーキートリオを並べ、終盤に主力の上級生が控える布陣で臨んだ。レースは序盤から主導権を握ると、2位以下を大きく突き放す圧倒的な展開に。最終的に従来の大会記録を3分以上も更新する衝撃のタイムをたたき出し、16年ぶり6度目の頂点に輝いた。

1区を走る本田
1区を任されたのはルーキーの本田桜二郎(スポ1=鳥取城北)。スタート直後はけん制し合う展開となり、1キロ3分を超えるスローペースで推移した。本田は序盤、集団の後方に位置して冷静に様子をうかがう。5キロ付近で東海学連選抜の清水大斗(皇学館大)が集団の前に出るも決定打とはならず、レースはそのまま終盤へ。8キロを過ぎ、本田が少しずつ位置を押し上げると、青学大、駒大、帝京大とともに先頭集団を形成する。迎えたラスト300メートル、後方に控えていた榲山一颯(青学大)が一気にスパート。本田も即座に反応して追走を試みたものの惜しくも届かず、トップとわずか2秒差の27分47秒、区間2位で2区へとタスキをつないだ。

2区を走る増子陽太
2区に抜擢されたのは、これが大学駅伝デビュー戦となった増子陽太(スポ1=福島・学法石川)。走り出すと早々に石川浩輝(青学大)を捉え、後方から追い上げてきた楠岡由浩(帝京大)や鈴木大翔(駒大)らと激しい先頭争いを繰り広げる。「レース前はかなりのプレッシャーがあった」と明かした増子陽太だったが、いざ号砲が鳴ればその不安をみじんも感じさせない果敢(かかん)な走りを披露。「ラスト勝負にするより、ハイペースで早めに仕掛けていく走りができた」と振り返る通り、自ら集団をけん引して揺さぶりをかけ、8キロ過ぎで楠岡と鈴木を置き去りにした。中継所手前で楠岡の猛追を受けたものの、最後まで首位の座を譲らず中継所へ。タイムは30分51秒の区間新記録。初の伊勢路で世代トップの実力を遺憾(いかん)なく見せつけた。

3区を走る新妻
3区にタスキが渡ると、こちらもスーパールーキーの新妻遼己(スポ1=兵庫・西脇工)が疾走する。1区から3区までルーキートリオがそろい踏みした早大。新妻は並走していた帝京大を2キロ付近であっさりと突き放すと、そこからは異次元の独走劇を演じる。5キロを13分台で通過する猛ペースにも関わらず、後半に入ってもストライドの伸びは衰えない。追走する後続の姿が中継カメラのフレームから消え去るほどのリードを築き上げ、4区へとタスキを運んだ。マークしたタイムは32分45秒。2021年に東京国際大のイェゴン・ヴィンセントが樹立した区間記録を1秒更新する快挙となった。不滅とも思われた留学生の記録を塗り替える会心の走りで、出雲に続く大きな衝撃を与えた。

4区を走る小平駅伝主将
独走態勢の中でタスキを受けた4区の小平敦之駅伝主将(政経4=東京・早実)。終始単独走を強いられる難しい展開となったが、序盤から淀みのないリズムを刻む。5キロ地点を区間記録と遜色ないハイペースで通過し、後半も危なげない足取りで首位をがっちりとキープ。「1年生3人が素晴らしい走りをしてくれたので、最低限首位を守りたかった」と振り返った主将の言葉通り、抜群の安定感で4区を駆け抜け、自身最後の全日本を33分24秒の区間4位でまとめた。

5区を走る鈴木琉
5区には当日変更で鈴木琉胤(スポ2=千葉・八千代松陰)がエントリー。当日までその配置に注目が集まっていた大黒柱が、中盤の勝負どころに投入された。滑り出しは冷静そのもので、5キロを14分前後で通過。この時点ですでに区間新ペースを刻んでいたが、ここからさらにギアを一段引き上げる。10キロ通過時には28分を切る驚異的なラップをたたき出し、最後までスピードを緩めることなく駆け抜けた。マークした34分31秒は、従来の区間記録を30秒以上も塗り替える驚愕のタイム。「この区間に配置された以上、どれだけ後続との差を広げられるかが自分の役目だった」と語るように、ライバルを完全に沈黙させる快走で優勝の行方を決定づけた。

6区を走る堀野
6区は堀野正太(スポ2=兵庫・須磨学園)が出走。「調子は上がり切っていなかった」と不安の残る状態ではあったが、序盤から積極的な走りを見せ、区間記録とほぼ同じペースでレースを進める。今季は出雲で初めて三大駅伝出走を逃し、悔しさを持って臨んだ伊勢路。レース終盤はきつかったと語ったように、苦悶(くもん)の表情を浮かべていたものの、最後まで懸命に粘り抜いた。5区で築いたリードを保ったまま区間3位で中継所へ。昨年の苦い記憶を払拭する力走で、自らの成長と確かな勝負強さを証明してみせた。

7区を走る山口
エース区間の7区を任されたのは山口竣平(スポ3=長野・佐久長聖)。正午に迫り、気温が急上昇する過酷な気象条件のなか、勢いよく飛び出した。各校が誇る強力なエースたちが猛追を仕掛ける最重要区間。しかし、山口は気負うことなく序盤から区間記録に迫るペースを刻み、他大学を寄せ付けない。レース終盤、暑さの影響からか苦しい表情を浮かべる場面もあったが、決してフォームを崩すことなく粘り抜いた。強豪校のエース陣と真っ向からぶつかり合いながら、堂々たる走りで刻んだタイムは50分58秒の区間3位。後続とは2分半近い大差を保ったまま最終区の工藤慎作(スポ4=千葉・八千代松陰)へとタスキを託した。

8区を走る工藤
2位以下に決定的な大差をつけてタスキを受けたアンカーの工藤。序盤は冷静にペースを抑え、単独走のリズムを組み立てていく。中盤の10キロ付近まではペースが上がり切らない苦しい時間帯が続いたが、度会橋を過ぎたあたりから一気にギアをチェンジ。追走する後続とのタイム差をぐんぐんと広げていく。勝負どころとなる終盤の上り坂も力強いストライドで軽快に駆け上がった。伊勢神宮内宮のフィニッシュ地点では、おなじみとなった名探偵の決めポーズを披露して歓喜のゴール。早大は5時間3分31秒の総合新記録を樹立し、従来の大会記録を3分以上も塗り替える歴史的勝利を飾った。さらに工藤自身も、昨年打ち立てた8区の日本人最高記録を29秒更新する56分20秒をマーク。強く意識していた強敵ブライアン・キピエゴ(山梨学院大)を9秒差で退け、2年連続となる区間賞を獲得した。

快走を見せた1年生トリオ
終わってみれば区間賞4つ、区間新記録が3つ、そして大会新記録。「今年は早稲田の年になるだろう」と予感させた出雲をさらに上回るインパクトでの快勝だった。1区から3区を担った1年生トリオを始め、花田駅伝監督が掲げる『圧倒的な個』の力を持つ選手たちが存分にそれぞれの持ち味を発揮した。また勝因として見逃せないのが、中盤区間を支えた小平駅伝主将や堀野らの粘りだ。確実に区間上位でタスキをつなぎ、決して主導権を渡さなかった走りは、総力戦となる箱根路を見据える上でも選手層の厚さを証明した。小平駅伝主将が「出雲の勝利からいい状態、いい雰囲気で来れている」と語る通り、研ぎ澄まされた「個」と盤石の「選手層」が融合した理想のチームは、今まさに完成の時を迎えつつある。狙うは16年ぶりとなる東京箱根間往復大学駅伝(箱根)制覇、そして史上初となる2度目の大学駅伝三冠。栄光の大手町のフィニッシュテープが、いよいよはっきりと視界に入ってきた。
(記事 植村皓大、写真 阿部仁胡、石本遥希、國友咲、黒澤秀真、鈴木京介、鶴本翔大、永尾早渡、長澤奏羽、中部百合子、吉田真悠)
※選手・監督コメントは別記事にて、後日掲載いたします
結果
