【連載】ア式蹴球部 夏季特集『PROVE ONESELF』第10回関紀信主務

特集中面

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特集第10回は早慶クラシコを先頭に立って進めるDF関紀信主務(社4=東京・早実)。主務として、選手として目指す姿に迫った。(取材は7月中に行われたものです)

――今季ここまでFCのチームはいかがですか

チームとしての完成度というか難しさみたいなところはすごく感じていて、社会人特有の相手だったりとか、下級生が多いことでなかなかチームの足並みが揃わなかったりというところが今課題としてあります。コーチとして指揮をとってくれている小澤さんの言うことをしっかりと聞いて、かつ自分たちにしかできない強みをもう1回認識して、この夏で強化できればと思います。

 

――ここまでで印象に残っている出来事があれば教えてください

主務としては、関東リーグにはベンチとして当日は帯同するのですが、開幕の筑波戦はすごく印象的です。プレシーズンから関東1部リーグに4年ぶりに上がるっていうところで、本当に1番下からのスタートだと全員認識した上で、その中でどうやって筑波や他の大学に勝っていくかを話し合って取り組んできました。プレシーズンで暗闇の中を模索していた中で、そこで1つ結果を出せたことはチームとして勢いに繋がりましたし、これが自分たちの戦い方だとそこで確信が持てた部分もあるので、あの試合はターニングポイントだったなと思います。

 

――今のスタッフ陣の雰囲気はいかがですか

僕が所属していた4年間の中では、すごくスタッフに恵まれた年だなっていう風に思っています。兵藤(慎剛監督、平20スポ卒)さんも4年目で集大成となる年ですし、近藤(大輔コーチ)さん、小澤(雄希コーチ)さん含めて、ここまで選手のことを考えてくれて、責任感を持って指導してくださる方が3人もいるというのはすごくありがたいことです。小澤さんや近藤さんがFC、Iリーグを担当してくれている以上は、シーズンの途中にトップに食い込んでいけるような選手を出さないといけないプレッシャーもあると思うので、そういった期待に応えたいです。

 

――同期の学生スタッフ陣についてはいかがですか

1個上のマネジャーと比べると熱量が見えづらいマネジャーではあると思います。去年から監督やコーチからは厳しいことを言われていたことを僕も知っていて、その中でなかなか認められない経験や、評価が上がらない経験をしているマネジャー、スタッフ陣です。そういった意味では、それを跳ね返して早慶戦を成功させて、それぞれが担当しているカテゴリーで結果を出して見返してやろうという気持ちは全員共通して持っているところだと思います。かなり足並みは揃っている代かなと思います。僕としても頑張っているのは近くで見ている分、もっと報われてほしいという気持ちがあります。同期には伝わっていると思うので、力を合わせながら結果を出して、去年から言われていたようなことを跳ね返せればと思います。

 

――主務の仕事について教えてください

早慶戦や普通の活動もですが、ア式蹴球部は学生主体で運営することが多いです。基本的にはマネジャーが担当してくれるのですが、そのマネジャーを統括する立場です。ア式蹴球部で起こっていることを主務は全て把握していなければいけないですし、大体の仕事を把握して問題がないかを見ながら、問題があった時には一緒に助けるような仕事をしています。

 

――主務に就いた経緯を教えてください

主務になった経緯は事務的な流れで言うと、学年で1人話し合って決めて、先輩や監督陣が承認を出して決定する流れになります。僕はア式蹴球部に入部する前からリーダーとして組織に貢献したいという思いを持っていました。ただ、そういう思いを持った人がなるべき役職ではないというのは、僕の1個上の木庭(正太郎、令8商卒)くんや公平(北村、令7文構卒)くん、怜於くん(山田、令6社卒)を見て思っていました。やりたいという気持ちでやるものではないと思っていたので、あくまで自分がやりたいという意思は出さずに、皆が任せてくれるならその立場で組織に貢献したいということはずっと話していました。1年生の時からは寮外リーダーとして組織に対して一応自分なりに接してきたつもりだったので、そういったところをおそらく同期が評価して信頼してくれて、副務になって、今年から主務になりました。

 

――他の代と比べて、主務としてどのような見方をされていますか

自分自身が主務らしくないというのは少しあるかなと思っています。僕より前の主務を見ていても、自分の意見を殺してまで組織のために行動し続けるような方がすごく多かったと思っています。それは部分的には正しいし、真似していかなければなけないのですが、僕自身はどちらかというとそれだけでは駄目だと思っています。ある程度の基盤のところはやりつつも、自分のオリジナリティを出していかないと、同期の色や自身の色が組織に反映されないと思っているので、自分らしさは他の主務よりは押し出しているのかなと思います。

 

――主務としての理想像を教えてください

僕が例えば1個上の主務だったら、また違った主務像を目指していたと思います。自分の代を見た時に、自分は周りを俯瞰するような立場というよりは引っ張っていく立場でないと組織がうまくいかないということを感じています。自分だけのリーダーシップではなくて、他の人との相性も見ながら、自分にできることは何か模索している段階です。

――今主務としてやっている仕事を教えてください

細かい作業が多いです。早慶戦当日まであと1ヶ月強なので、早慶戦の仕事はここから増えていきます。

試合前の関主務

――やりがいを感じる場面はありますか

昨年は1個上の4年生主体でチーム作りをしていてそれで成長できた部分もあるのですが、今年は自分たち4年生が影響力を持っていて、影響力を持っているからこそ、何かアクション起こした時の良い影響の大きさはやりがいを感じます。悪い影響も大きくて4年生としてやるべきことが多くて大変ですが、その分チームに対しての跳ね返りが大きいところは日々感じています。僕がアクションを起こしているときももちろんやりがいがありますし、今まであまり行動できてこなかった同期がチャレンジしているのを見て、すごくたくましくなったなと思います。同時に心強いなと思うので、そういったことを自分たちの代が受け持てていることは、日々やりがいになっています。

 

――主将、副将、新人監督のそれぞれの選手に対してどんな印象を持っていますか

新人監督の浦川(舜、政経4=埼玉・早大本庄)に関しては、入部当時はそこまできっちりしていない印象を受けて、彼自身も仮入部時代は苦労していましたけど、そこから考えたらすごく成長していて、今ではすごく頼りになります。舜がいないこの代というのは考えられないくらい、必要不可欠な存在だなと思っています。1年生に対するアプローチを見ていても、僕が1番良いなと思うのは褒める能力が高いというか、褒め方がすごく上手だなと思っています。僕はそれがどちらかというと苦手で、もっとこうした方が良いみたいな部分を強く感じてしまうので、そういったところは舜からうまく吸収して、一緒に高みを目指したいなと思っています。

猛志(伊藤、スポ4=ジュビロ磐田U18)に関しては、すごく変わっていて普段は人を笑わせているのですが、ピッチ内で結果を残し続けてくれているし、そういう人が新人監督として1年生の前に立っているだけでもすごく意味があると思っています。舜がピッチ外で頑張ってくれている分、猛志はピッチ内でもっともっと結果を出せる選手だと思うので、結果を出してプロまでいってほしいなと思います。

副将の海本(慶太朗副将、スポ4=大宮アルディージャU18)についても同じような意見になります。ア式を代表してもっと目立って良い選手だと思います。少しとんでいる部分もあって、皆が感じていないようなことを感じられていて、それをチームに発信する力があります。それを昨年までは遠慮がちになっていてそれは僕ももったいないなと思っていました。プレシーズンは彼とも結構話したのですが、最近はちゃんとした形でチームに発信することを覚え出して、チームにとって良い影響力を与えられる選手になってきていると思います。海本のような選手が副将にいてくれるのは、チームとしてはすごく心強いなと思います。

凜誓(西副将、社4=名古屋グランパスU18)に関しても、ケガでプレーできない時間も多くて苦しんでいた部分もありますが、ピッチに立った時の存在感や信頼感はチームの中でもずば抜けています。仮にピッチに立てなくてもチームのことを支えてくれるところは、全員が信頼している部分で、そういったところは今後も期待したいなと思っています。

 大翔(鈴木主将、スポ4=ガンバ大阪ユース)に関しても、ピッチ内ではずば抜けて能力が高いと思いますし、彼のおかげで関東1部で戦えている部分があると思うので、ケガにも気を付けて頑張ってほしいなと思います。もっともっと活躍して評価されても良い選手だと思っていて、まだ彼は口下手なとこがあるので、その辺はもう少し上手にキャプテンとしてもう1段階大きくなってほしいなと思います。

 

――主務に就く前と比べて、想像より大変なことと簡単だったことを教えてください

 思ったより大変だと思ったのは、人に仕事をふること、人にふった仕事を管理するところはすごく難しいなと思っています。今まで副務時代はマネジャーや、当時の主務から与えられた仕事をこなすことがメインタスクでした。ただ今はそれだけではないので、もっと自分に余裕を持たなければいけないし、もっと計画性を持ってやらなければいけないというところは思ったより大変でした。思ったより簡単だったことは、入寮に対しては少しハードルがあるかなと思っていたのですが、すんなり馴染めたので、そこは良かったかなと思います。

 

――仕事をする中で意識していることはありますか

仕事をする上で意識していることは、ちゃんと話すというところですかね。マネジャーや副務とは仕事だけの話になりがちですけど、それだとやっぱりお互いの理解も深まっていかないし、自分の見えないところで不満が出てしまうところもあると思うので、仕事をふるというよりは何気ない会話や、何気ない絡みは自分からもするようにしています。主務だからといって怖い存在にはなりたくないなと思っていて、1年生は頭下げて挨拶してきますけど、そういったところも徐々に良い意味で距離を近くして、お互いのことを信頼し合えるような関係になることが大事かなと思っています。

 

――副務の斎藤直晴(スポ3=神奈川・日大藤沢)選手についてはどのようにみていますか

僕自身は1個上の木庭くんとは似たタイプだと思っていて、多分木庭くんは僕のことを指導しやすかったのではないかと思うのですが、直晴は僕とは真逆のムードメーカーなタイプなので、そういった意味では彼とどう接するか難しい部分もあります。良い面で言えば、ピッチ内での存在感とか声での目立ち方みたいなところはすごく良いものがありますし、彼が組織に向き合ってケガとも向き合っている中で、ポジティブな発信をピッチ内でしてくれることは、来年も含めてすごくチームの力になると思っています。1個頑張ってほしいところで言えば、仕事の面はもう少し頑張れるなというところがあります。僕も管理不足の部分はあるので、そういったところは丸投げせずに頑張って面倒をみたいと思います。

 

――FCでのスタメンも続いていますが、選手と主務の両立で大変なことはありますか

時期にもよるのですが、仕事が立て込んでしまうと睡眠時間が確保できない日があったり、試合映像を十分に振り返れない日があったりします。時間的な制約は強いなと思うのですが、主務の仕事を言い訳にしておろそかにしたくないので練習が始まる1時間前からはいつも決まったセルフアップをしますし、自主練も仕事があるという理由で辞めるようなことはないようにしているので、ある程度の線引きはしながらやっています。他のマネジャーも僕が練習の時間を確保できるようにサポートして動いてくれているので、自分でできる工夫もしながら、周りにも頼りながら、なんとか両立できていると思います。

 

――昨年の早慶戦を振り返っていかがですか

運営に関しては、僕が運営陣として早慶戦に絡むのは初めてで、何がなんだかわからない状態からスタートした中で4年生のマネジャーや主務の木庭くんが、睡眠時間とか命を削って運営している姿を見ていました。自分が少しでも仕事を遅らせてしまったら、迷惑をかけてしまう、負担を増やしてしまうという思いがすごく強かったので、なるべく自分が仕事を早く終わらせたり受け持ったりして、負担を軽くしてあげたい一心で運営していました。結果は負けてしまって、慶應の主務は選手としてベンチに入っていて勝利したので、ピッチの中で塾歌を歌っていました。木庭くんは運営だったので、運営の正装を着て本部の場所で慶應が歌っている姿を見ていた姿がすごく印象的でした。木庭くんは僕からすると本当に報われるべき人で、そのくらい頑張っていたと思いますし、彼にできることは全部やっていたと思うのですが、それでも日が当たらないのは早慶戦やスポーツの残酷さだと思います。どんなに頑張っていても報われないこともあるというのは、木庭くんの姿を見て学ばさせてもらいましたし、木庭くんが育ててくれたからこそ今年は僕が頑張って、なるべくピッチにも立って、慶應にも勝って木庭くんの思いをしっかり今年で回収したいなと思っています。

 

――早慶戦はどのような舞台ですか

僕自身、早大を志したのは早慶戦がきっかけです。その時の話をすると、養和のジュニアユースからユースに上がれないと言われたタイミングでプロは難しいかなと自分の中で感じました。プロを目指さない中で、どこまでサッカーを続けるのか自分の中で悩んでた時期がありました。その時に早慶戦を見て、この舞台に立てればそこでサッカーは諦められるなと思えたのが僕の中ですごく大きくて、そこから早実に入って、大学でア式に入りました。そういった意味でも、今までのサッカー人生の中でも、積み上げてきたものや支えられてきたことに対する恩返しだとか、そういったところの集大成が早慶戦に詰まっています。今まで自分が正解だと思って頑張ってきたことが正解だったのかが問われる1戦です。

 

――始めて早慶戦を見たとき、早慶戦のどのような部分に魅力を感じましたか

 学生の定期戦なのにここまで盛り上がっているんだと感じました。出場している選手や、監督、ベンチにいる選手、スタッフの表情を見ても、その1戦にどれだけの思いを込めているかが伝わってくるくらい熱中して、熱狂していたので、ここまで熱中するのはかっこいいなと思いました。

 

――運営する立場として早慶戦のどのようなところに憧れてほしいですか

 好きなところに憧れてほしいなと思っています。「憧れを創出する」というコンセプトは立てているものの、強要するものではないと思いますし、良いものを作り上げようとした結果として存在しているものだと思っています。こちらとしてはそこまで意図はせずに、ただひたすらに今までの思いを運営にぶつけたいと思います。

 

――大学サッカーで1番大きな舞台だと思いますが、学生主体という部分にはどの様に感じていますか

 学生主体だからこそ選手はここまで熱狂してくれると思っていますし、学生主体でやっているからこそ助けてくれる大人も多いです。学生主体だからこそ、この規模が実現できているという見方もできれば、学生主体だからこそこの規模で収まってしまっているという見方もできると思います。そういった面では、学生だからこのくらいだよねと思っている層に対して、もっともっとできるよと今年の早慶戦で見せたいなと思っています。

 

――早慶戦で見て欲しいところはありますか

今年は前年踏襲をせず新しい試みが思いついたら全部やってみようくらいの意気込みで、新しいことにも着手している部分があります。なので、昨年の早慶戦を見てくれた方、来場してくださった方は、昨年との違いを感じ取ってくれれば嬉しいですし、それが今後の早慶戦の幅にも繋がってくると思うので、今までとの違いに注目していただけたら嬉しいです。

 

――早慶戦のキープレーヤーを教えてください

作和(高橋、法4=東京・国学院久我山)です。作和は、高校は違うのですが中学はチームメイトでした。早大にいる選手の大半は、皆賢いので言われたことをやるとか、そういう能力に長けている人、真面目な人が多いです。その中で彼は苦しみながらも今までずっと自分の信じているものを貫き通してきた選手だと思うので、そういった選手が結果を残してくれたらすごく嬉しいなと思います。絶対に結果を残してくれると思うので期待しています。

 

――引退後、どのような代だったと言われたいですか

 結果を残した代と言われたいですね。自分たちの中では自分たちはすごく良い代だと皆信じていますが、それが社会で評価されるときは結果でしか残っていかないと思います。リーグ戦でも1位を取って、早慶戦でも勝って、日本一を取ることでしか歴史に名を刻めないと思うので、確実に結果だけは残すような代でありたいと思っています。

 

――最後に、4年生での目標をお願いします

社会人になることは確定しているので、最後の学生生活1年というところと、サッカー選手としてラスト1年というところで、話が戻るのですが、大学でリーダーとして組織に貢献したいと思った理由の1つに、高校時代の友人のリーダーシップに衝撃を受けたっていうところがありました。当時の彼のリーダーシップを自分なりに噛み砕いて、それを体現しようと思って今も奮闘しているところです。結果という側面でも図れると思いますし、自分の中でもそういったところの体現ができたなと思えるように、今後は別にリーダーシップを追求しなくてもいいなと思えるようなラスト半年間にしたいです。

(取材 安田直樹、編集 山口愛結)

対談後に書いていただきました

◆関紀信(せき・きしん)
2004(平16)年5月28日生まれ。180センチ。東京・早実出身。社会科学部4年。主務としてここまで運営を引っ張ってきた関主務。選手として出場を狙います