現在5連敗中、3勝6敗と苦しむ早大野球部。厳しいチーム状況の中、小宮山悟監督(平2教卒=千葉・芝浦工大柏)に話をうかがった。
※この取材は5月22日にオンラインで行われたものです。
この夏は本当に地獄の夏にします

ーー今季ここまでの戦いを振り返って
選手それぞれが持ちうる能力を最大限に発揮できていないです。(能力を)発揮できるように監督として選手をうまく起用できなかった、という反省ばかりのシーズンですね。
ーーもっと勝てる力はあるとお考えですか
試合で個々の能力を最大限に発揮さえすれば、大敗の試合になることはないと思っていました。競り合いになればなるほど、選手個々の能力を結集すれば、勝つ可能性は高いと考えていたので。もちろん、細かなところや他のチームの分析をしながら、どういう試合運びをすればいいのかということも事前にシミュレーションをして、プラン通りに行けば、という話ですが。ところが、序盤からそれが思うようにならないことが多かった。さらには、ピッチャーが頑張っていて、打線が「ここ」というところで打ってさえいれば(勝てたかもしれない)というようなシーズンでした。そこの部分について、早慶戦を前にして、前4カードで何が足りなかったのか、何が原因だったのかということを学生と話をしましたので、早慶戦ではちょっと違った姿になるかなという期待はしています。
ーー苦戦の要因は
期待していた選手たちが思うようにならない、というところが全てです。中でも、やはり本来だったらもっとピシッとしてもらわないといけない4年生たちが思うようにならない、というのが原因かなと思っています。
ーー昨年は4年生が引っ張って4連覇に挑戦するシーズンでした。昨年までと比べて違うところや不調の原因は
レフトの寺尾(拳聖、人4=長野・佐久長聖)だけが(昨年)試合に出ていたというチームで、選手が総入れ替えになったというところが最大の要因です。ただ、上手に選手をやりくりさえすれば、経験を積ませることはできたはずなんです。ところが、(昨春)3連覇して秋に4連覇がかかったシーズンになると、新たな戦力を試すことの方が愚策だと思っていたので。小澤(周平、令8スポ卒=現三菱重工East)をはじめ4年生を中心として4連覇に手が届くところにいましたから、彼らの思い通りにさせてあげる、というのが正しい姿だと思っていました。ただ、4連覇を逃した代償とでも言いますか、例年であればもう少し経験を積んだ選手が残るはずなのに、その選手たちがほぼいない状況で戦わなければいけない状況になってしまいました。そのため、シーズンが始まる前から乗るか反るかのどっちかだと思っていました。うまく行けば突っ走れるだろうし、思うようにならなかったら相当苦戦するだろうな、というのは準備想定内で。ただ、この春負けているゲームも含めて、今まで経験したことがなかった選手たちが経験を積む、特に悔しさを経験できた、というのが強みだと思っています。明大戦が終わった後に優勝がなくなって、その瞬間からもう秋に向けて戦いが始まったと彼らには伝えました。早慶戦ももちろん大事な試合だとは思いますが、秋を見据えた早慶戦にしようという風に思っています。
ーー今季の練習面の課題は
自らやるようにしなさいよという風に言っていましたが、どこか3連覇の余韻に浸るような甘えがありました。歯を食い縛らなければいけないところで、食い縛れないという、そういう選手になってしまいました。覚悟してグランド来いということで、この夏は本当に地獄の夏にします。
(髙橋煌は)負けるはずがない

ーー今季、髙橋煌稀選手(スポ3=宮城・仙台育英)が良い投球を見せていますが、ここまでの活躍をどのようにご覧になっていますか
もちろん良い投球はしてくれていますが、彼の本来の能力からしたら圧倒するピッチングをしないといけないです。無様な点の取られ方をしてはいけないピッチャーですから、そこが甘さと言えば甘さかなという風に思っています。
ーー髙橋煌選手に対して厳しい発言が目立ちますが、期待の表れ
能力のない選手に期待をするわけはなく、飛び抜けた能力があるのにその能力を発揮せずにやられていることがもったいないな、ということです。この春の経験を生かして、秋にもう一回り二回り大きくなって、リーグ戦で快刀乱麻のピッチングをお見せできるように鍛えたいと思います。
ーー髙橋煌選手に期待している数字などは
投げた試合に全部勝つことです。負けるはずがないので。打線との兼ね合いもあるので難しいですが、誰が見ても勝てる投手なわけですから、何とかしたいと思います。
ーー投手出身の小宮山監督から見て、髙橋煌選手の魅力は
ボールの速さ、強さ、コントロールが十分すぎるくらい。ただ、ところどころで気が抜けるときにやられるんです。本人は気を抜いて投げているなんてことはない、と言うと思うけれど、投げている姿を見ると気が抜けているところがあるな、と。
ーー一方、今季宮城誇南選手(スポ4=埼玉・浦和学院)が苦しんでいますが、その要因は
今季に限らず、秋からですよね。その要因としては、おそらく夏に大学日本代表に呼ばれて、そこで本来の姿を見失って、そのままということだと思います。
ーーオープン戦ではかなり良い投球を見せていたかと思いますが
オープン戦でのいいピッチングが彼にとっての本物ではなかったのに、(良い)結果が出てしまったことで勘違いが直らなかった、ということではないでしょうか。
ーー今足りていないところや、改善のために必要なことは
ピッチャーとは、ということをもう1度考え直す必要があると思います。(投手は)アウトを取るのが仕事なので、アウトを取るために何をどうすればいいか、ということです。守備の時に唯一攻撃を仕掛けることができるのがピッチャーなので、その攻める気持ちが全く感じられないところが、もたもたしてる原因だと思います。
(阿部には)かわいそうなことをしたと思う

ーー続いて野手陣についてうかがいます。「1番・センター」に固定した阿部葉太選手(スポ1=神奈川・横浜)が苦しんでいますが、ここまでを振り返って
今だからお話しますが、練習に合流して2日目に左太もも肉離れという、全治8週間の重症のケガをして。そこからリハビリを経て開幕に間に合うかどうか、というところで、4月の頭に無理やり合流させて、オープン戦出場2試合という状態でリーグ戦に突入したので、相当苦しむだろうな、というのは想定内でした。ただ、試合を重ねて日々練習をする中で少しずつ状態が上がってくるだろうという想定をしていたのですが、状態が上がってこなくて。リハビリを経て戻ってきた段階のままずっと推移していて、優勝の可能性がかかった試合に負けるまで我慢(して起用)しようと開幕前に決めていたので、その試合が来た時点でスタメンから外しました。いい経験を積んだ、と良い方向に捉えるしかないですね。
ーーその不調の要因はやはりケガ
順調にキャンプやオープン戦をこなして打席数を重ねるという面で言うと、大体40打席ぐらい実戦の数が必要だろうなという風に思っていたので、(リーグ戦開始後も)その40打席くらいまでに状態が上がってきてほしいと思って使い続けました。ただ、合流した時点のレベルからずっと変わらない感じだったので、彼にとっては酷なシーズンになってしまったな、と。無理やり使ってしまったので、かわいそうなことをしたなと思っています。
ーー秋には成績が上がってくるとお考えでしょうか
健康にキャンプとオープン戦をこなせれば大丈夫だと思います。
ーー阿部選手に期待する数字などは
とにかくヒットをたくさん打ちたいと言うくらいなので、打率はもちろん大事ですが、1試合で2本打ったり、2回、3回出塁するような打撃を披露してくれればと思っています。
ーー一方で、川尻結大選手(スポ1=宮城・仙台育英)が好調ですが、ここまでの活躍を振り返って
開幕からDHで使えとOBの方々から言われていて、もちろん彼の打撃を前面に出すつもりでした。ですが、本来DHとは4年生が居座らないといけないポジションだという認識だったので、打線が湿っていてやむを得ず川尻を起用した、ということでした。本人もいきなり春の試合から出るとは多分思ってもみなかったと思いますが、ある程度打席数をこなすと打てるところと打てないところがある程度丸裸になって。明大戦で思うようにならなかったというところを考えると、夏にもう一度阿部と2人で鍛えていきたい、という感じですね。ただ(阿部と川尻の)2人は明るい未来です。
ーー川尻選手は試合を重ねるにつれて打順も上がってきましたが、高評価ということでしょうか
そう受け取られると思いますが、実際のところは、打ちまくっていればギリギリで規定打席数に到達して首位打者になるかもしれない、という点で2番に置いていました。ただ、明大戦でこけてしまって首位打者の可能性がないので、「通常業務」にします。
ーー新しく2番に入った佐藤寛也選手(政経3=東京・早大学院)はリーグデビュー戦で2安打を放ちましたが、いかがですか
能力的には高い選手なので、右ピッチャーの時に積極的に試合に使おうと思います。そもそも外野手だったものを、シーズン開始前にひょっとしたらファーストで試合に出る可能性もあるということで、学生コーチを通じて本人にファーストにトライするか確認をしたところ、試合に出られるなら内外野両方やります、と言ったので。それでファーストの守備にも挑戦している、ということです、人一倍努力をしてるので、結果が出て良かったなと思っています。
原点回帰の練習

ーー今季は開幕前に野村徹さん(昭36政経卒)が亡くなりました。早慶戦での勝利を届けたいですね
もちろん勝つに越したことはないんですけど、「早稲田としてこういう野球をしてるんです」ということが分かってもらえるような、そんな試合をしないといけないなという風に思っています。明治にやられてから原点回帰ということで練習に取り組ませていますので、これを彼らがどう受け止めるかというところだと思います。なんとかなるだろうとは思っていますけど。
ーー同じ早大の監督として、野村監督としてはどのような存在でしょうか
監督時代に「ちょっと練習を手伝え」と言われて、グラウンドにお邪魔してた時期がありました。あの時の練習の雰囲気というのは、それこそ練習で銭が取れるぐらい緊張感たっぷりの、素晴らしい練習でした。あの雰囲気で野球ができれば、負けることはないと思っています。常々あそこを目標に練習をしてるつもりですけど、やっぱり学生たちの考え、取り組みが甘いというのはどうしてもついてくるので。当時の野村さんのスパルタに近いやり方が今このご時世ではご法度ですので、もしそれが許されるのであれば、徹底的にスパルタでというのがもう簡単な話ですね。ところが、今の時代はそれができませんので。学生たちに自立を求めて、早稲田の選手として何をしなければいけないのかということをとにかく訴えることしかできません。それを理解することができる選手が試合に1番近い場所にいるという認識でやっています
ーー慶大は優勝が懸かっており、早大は下位。ここ2年とは逆の立場での早慶戦ですが
学生たちには優勝が懸かっていなくても、早慶戦は早慶戦だという話をしています。さらに言うと、私の監督1年目の秋、慶應が8連勝で早慶戦を迎えて、我々は勝率5割でした。その状況で初戦を落とし、もし翌日の第2戦を落とすと、慶応の10戦全勝完全優勝という状況でした。とにかく阻止しろという話をして、慶応もちょっと固くなっていたのか星を落としたと。そして3回戦、今度は完全優勝する可能性のあるチームから勝ち点を取って、ただの優勝にしてやろうという話をしました。こうしたら卒業後30年、40年経ってジジイになった時に、「お前らのせいで」みたいな話で盛り上がれるぞと。そしたら早稲田が勝って、ただの優勝にしたということがありましたね。要は相手にとにかく勝たなきゃいけないんだ、対抗戦なんだという気持ちを常に持ち続けなければいけません。そうすれば今までの戦いなんてもうないようなものなんですね。言い方はおかしいかもしれませんが、早慶戦に勝って、「終わりよければ全て良し」ということが許される早慶戦だと思っています。もし勝てば優勝という状況で、明治が逆転優勝するようなことがあれば、これ以上の屈辱的な敗戦はないわけで。慶応のライバルとして、そういう思いをさせてあげたいなと思っています。
ーー早慶両校のキーマンを挙げるなら
慶応はもうはもう間違いなく渡辺くんですよ。渡辺くんの球を打てればもう楽勝でいけますから。ただ、そんな簡単に打てるピッチャーではないので。そこをどうしましょうかということで知恵を絞ります。一方の早稲田は、とにかく髙橋煌が抑えてくれればといったところです。(髙橋)煌稀のピッチングに懸かっていると言っても過言ではないと思います。
ーー1回戦は投手戦になりますか
本当はそういう試合をしたくないので、できれば序盤から勢いよく渡辺くんを打ち込みたいですね。
ーー早大を応援している人へのメッセージを
申し訳ない試合ばかりで反省しきりです。ただ、経験が浅かった選手たちが大敗を喫することで、通常の敗戦よりも大きい悔しさを味わいました。その悔しい思いを持って秋のシーズンに向けて努力をすれば、必ず良い試合をお見せできるようなチームに生まれ変わると思っています。夏に鍛えてまた戻ってくるので、ぜひ懲りずにご声援を賜れればと思います。
(取材 石澤直幸、編集 石澤直幸、早崎静)
◆小宮山悟(こみやま・さとる)
1965(昭40)年9月15日生まれ。千葉・芝浦工大柏高出身。1990(平成2)年教育学部卒業。現早大野球部監督。