創部125周年を迎える早大野球部に、新たなリリーフエースの登場だ。身長182センチ、体重87キロの本格派右腕・齋藤士龍(文3=東京・早実)。今季神宮デビューを果たした早実高出身の新星は、今やブルペンに欠かせない存在になっている。

最大の武器はこの冬で最速150キロに到達したストレート。少し沈み込むようなフォームから投げ込まれる直球にはノビがあり、ボールの下を振らせる場面が目立つ。メインの変化球はカットボールとフォーク。落差のあるカットボールは独特の軌道を描き、決め球としてもカウント球としても抜群の威力を誇る。フォークボールは鋭く低めに変化し、主に左打者へのウイニングショットだ。
今季は東大3回戦の3番手、同点の場面でリーグ戦初登板を果たした。先発の越井颯一郎(スポ4=千葉・木更津総合)が2回ノックアウトという不穏な試合展開であったが、齋藤は流れを断ち切る2回無失点の好投。打線の援護にも恵まれ、初白星を手にした。
「1イニング目は応援も全く耳に入らないほど緊張していた」と振り返る齋藤。それでも女房役・尾形樹人(スポ3=宮城・仙台育英)のリードを信じ抜き、テンポのいいマウンドさばきを見せた。

そして齋藤が大きな注目を集めたのが、1勝1敗で迎えた法大3回戦。雨の中で先発した宮城誇南(スポ4=埼玉・浦和学院)が6失点を喫すると、2番手に呼ばれたのが齋藤だった。4回表、1死一、三塁という火消しの場面での登板。法大の主砲・井上和輝(2年)を相手にフォークボールを打たせ、6-4-3の併殺打でピンチを切り抜けた。
さらに齋藤は回をまたぎ、5、6回もノーヒットピッチングで無失点。7回と8回には内野安打絡みで1点ずつを失ったが、試合をつくったのは間違いなく齋藤の投球であった。
結局この日の齋藤は8回の2死まで投げ、4回と1/3を2失点。雨が降りしきる苦しいマウンドで堂々たる活躍を見せ、一方的な試合展開を6-8の惜敗まで持ち込んだ。

早実高時代は背番号「11」の控え投手。背番号「1」は早大準硬式野球部のエース・宮本陸(文構3=東京・早実)のものだった。当時の早実高は5年連続で甲子園出場を逃す「低迷期」。高3夏の西東京予選では準々決勝でコールド負けを喫し、同年に全国制覇を果たした慶応高と対比的に語られることもあった。
しかしその経験から、齋藤には譲れないものがあるという。
「最後の試合で投げていたのが自分で、サヨナラヒットを打たれたのがフォークボールでした。その悔しさから、絶対フォークでは打たれないようにと、高3の夏から練習してきました」
フォークボールは決め球の一つとして、今季のブレークを支えている。夏の悔しさを糧に3年の時を経て、齋藤は進化した姿で神宮球場に戻ってきた。

現在、早大のブルペンは厳しい台所事情。昨年まで素晴らしい活躍を見せた安田虎汰郎(スポ3=東京・日大三)は相手チームの研究が進み、オープン戦から不安定なピッチングが続いた。昨年春から苦しい投球となっている越井も、未だ調子を取り戻せていない。
それでも、早大のブルペンには齋藤がいる。昨年まで1度も神宮のマウンドに上がったことのない新星は、一躍リリーフエースの座に駆け上がった。大逆転の天皇杯奪還に向け、今や齋藤の力が欠かせない。
法大戦で勝ち点を落とした早大。残るカードの立大、明大、慶大戦で勝ち点を落とすと、優勝の夢は絶望的だ。負ければ終わりの緊迫したマウンドが増えていくリーグ中盤戦も、己のボールを信じ抜く。
(記事 石澤直幸)