[フィギュアスケート]千葉百音、ミラノオリンピック出場決定! 気迫のフリーで銅メダル獲得/全日本選手権女子FS

フィギュアスケート

全日本選手権女子FS 12月21日 国立代々木競技場第一体育館

 2025年の全日本選手権、最終種目は女子フリースケーティング(FS)。オリンピック出場をかけた大舞台で、選手たちの熱い戦いが繰り広げられた。早大から出場した千葉百音(木下グループ/人通2=宮城・東北高校)はショートプログラム(SP)、FSともにミスなく演技をまとめ、銅メダルを獲得。その後日本スケート連盟より、2026年に開催されるミラノオリンピック代表に選出されたことが発表された。

フリー『ロミオとジュリエット』を演じる千葉

  昨シーズンの世界選手権では銅メダル、今シーズンはグランプリシリーズ2連勝と実績を積み重ね、オリンピック代表の有力候補と位置づけられた。一方で全日本の2週間前に行われたグランプリファイナルでは5位に沈み涙を流すなど、困難にも直面した。多くの期待とプレッシャーを背負って立った大舞台。「全身全霊でいくしかない」と強い覚悟をもって臨んだ。19日に行われたショートプログラム(SP)ではノーミスの演技で4位に。「最後まで自分を信じて滑り切りたい」と語ったSPから中一日、運命のFSを迎えた。

 出番を待つ表情は、緊張感に満ちていた。SPは4位、年齢の規定によりオリンピックの選考基準を満たさないジュニア選手を除けば2位に入っていたものの、前のグループで良い演技が続き、上回るには高得点が求められるプレッシャーのかかる状況だった。それでも、濱田美栄コーチから送られた「自分を信じて」という言葉を胸に、音楽がかかるとパッと笑みを浮かべて滑り出した。

華麗なコレオを披露する千葉

  まずは何度も練習していた冒頭の3回転フリップ+3回転トーループを滑らかに着氷。大きな加点がつくダイナミックなジャンプを決め、勢いに乗った。グランプリファイナルでミスのあった単独の3回転ジャンプも続けて成功。緊張からかやや動きが固く回転不足を取られるジャンプもあったものの、一つひとつ確かめるように丁寧に要素をこなしていく。絶対にオリンピックに出るのだというような、気迫がこもった力強い滑りを会場中が固唾を呑んで見守った。そんな張り詰めた空気の中でも、千葉は心の強さと確かに積み重ねた実力を発揮し、全てのジャンプを予定構成通りにミスなく終了。観客からは歓声が送られ、千葉の顔にも笑みが溢れた。

 見せ場のステップでは、解き放たれたようにのびのびと大きな動きで演じていく。特に終盤のコレオシークエンスは全出場者中2番目に高い2・14点の出来栄え点と高い評価。リンクを大きく使った華やかな振り付けと最後までスピードの落ちないスケーティングで盛り上げた。演技が終わるとホッと胸を撫で下ろす。『ロミオとジュリエット』の選曲には珍しい青い衣装とともに、千葉の魂の滑りを観客の心に深く刻みつけた。

表彰式で笑顔を見せる千葉

  結果はFS141・64点、総合216・24点で3位。2年ぶり2度目の全日本表彰台に登った。この結果を受け、当日夜、2026年に開催されるミラノオリンピックの代表に選出されたことが日本スケート連盟より発表された。「スケートを始めたての頃からずっと将来の夢だったオリンピックに出場できてとても嬉しい」と語った千葉。初めての、そしてメダル候補として臨むオリンピック。千葉の活躍に期待が高まる。

オリンピック代表記者会見に臨む千葉

(記事 荘司紗奈、鳥越隼人 写真 荘司紗奈)


結果

▽女子シングル


千葉百音

 

SP 4位 74・60点


FS 141・64位 4点


総合 216・24位 3点



コメント

千葉百音(木下グループ/人通2=宮城・東北高校)

※FS後囲み取材より

――今日の演技を振り返って

  まずは、すごい完璧な演技ではなかった。ファイナルからここまで自分ができることをかけてきたので、今日はそれが気持ちとしてしっかり出せたのが良かったです。

――濱田コーチが演技中曲に合わせて動いていました。試合では何かお話されましたか。

 「自分を信じて」というのは今シーズン通して言ってくれている事。その言葉を自分がしっかりと出そうと。自分がどこまで信じられるか、今日はとにかく徹底してやりました。今日は思いっきり緊張を出して、「自分はできる大丈夫」と言い聞かせて挑めたので今日は良かったかなと思います。

――今シーズンの全日本はどのような大会でしたか

  最初は漠然としたものがあったのですけど、ちゃんと自分の現実的な一試合として手繰り寄せて、大きなミスなく終えられたのは凄く嬉しいです。

――GPファイナルの涙から2週間どういった思いで今日の試合に臨みましたか

  ファイナルで自分の思い通りに行かなくて。悔しいを感じる前に空虚な状態になってしまった。その状態から、期間が短いからこそ、何とか立て直そうと思いました。今までやってきた中で濃くて、しんどくて。何とか乗り切った、そんな2週間でした。

※メダリスト記者会見より

――今大会を終えて

  自分の中で完璧とは言えない出来でした。自分のコンディションに対する立て直しを最後まで集中力を持ってできたなと思います。

――緊張感ある大会を終えて自分にかけたい言葉

 グランプリ2連勝したあとのファイルの結果で。そこから2週間でよく乗りきったという言葉をかけたいです。

――ジャンプ以外の表現、ステップがいつもよりきめ細やかで丁寧に取り組んでいると感じました。それらはどのような意識を持っていましたか

  一年また一年とシニアで経験を重ねるにつれて(自分の技術を)高いレベルのものに磨き上げていかないといけない。ジャンプ、スピン、スケーティング、など自分が今まで得意としていたことを伸ばす以上に自分の足りないところ、より美しく見せるという意識など常に追求していかなければ、成長できないと思ってます。今回、プログラムの細かさとか良いところとして伝えられたのはいいことだと思う。しかし、緊張した時はスケーティングにまだ粗さがでるので、さらに良いスケーティング、より高いスリーコンポーネンツが出せるよう、上を目指し頑張っていきたいです。

※オリンピック記者会見より

――代表に決まった今の気持ち

  スケートを始めたての頃からずっと将来の夢だったオリンピックに出場できてとても嬉しいです。出場するからには自分の納得のいく演技で納得のいく結果を残したいと思います。

――オリンピックまで50日を切りました。改めて本番への意気込み

 今回の全日本選手権はSP、FSともに自分の中で完璧と言える演技ではなくて、改善点の見つかる試合でした。オリンピックでは悔いのないように、納得のいく演技で終えられるように、一日一日を大切に、成長していると思えるような練習を積んでいきたいです。