全日本選手権女子SP 12月19日 地国立代々木競技場第一体育館
4年に1度のオリンピックシーズン、その切符をかけた特別な全日本選手権(全日本)がついに開幕した。大会初日に行われた女子シングルショートプログラム(SP)には、早稲田から千葉百音(木下グループ/人通2=宮城・東北高校)が出場。全てのジャンプを着氷し、エネルギッシュな滑りで観客を魅了した。74・60点という高得点には本人も納得の表情を見せ、全体4位につける。勝負のフリーは21日に行われる。

『Last Dance』を演じる千葉
オリンピックへの出場がかかる今大会は、千葉にとっても特別な一戦だ。今シーズンは、グランプリシリーズ2戦連勝と順調な幕開けだったものの、グランプリファイナルではフリーでミスが続いて5位に沈み、涙もみせた。波乱のシーズンだったが、大会前には「沈んでもいられない。全身全霊でいくしかない」と前を見据える強さをみせる。「自分に全集中」すると誓った千葉。覚悟を胸に、ショートに臨んだ。
千葉の滑走順は第4グループの2番目。リンクに上がった表情は固く、緊張が伝わるようだった。名前がコールされると、いつも通り濱田美栄コーチに背中を押され、力強く送り出される。曲は昨シーズンから継続の『Last Dance』。きらびやかな紫色の衣装をまとい、明るい曲に乗せて滑り出した。
冒頭の3回転フリップ+3回転トーループのコンビネーションジャンプは危なげなく成功。続く2回転アクセルは着氷にも工夫が凝らされており、流れのまま余韻を残すようにゆったりと弧を描く。一つずつ丁寧にこなしていった前半のジャンプはいずれも出来栄え点1点台と、高い評価を得た。

笑顔でのびのびと滑る千葉
キャメルスピンを終えると同時、曲調がより溌剌としたものに変わり、観客からは待ちわびたように大きな手拍子が送られる。流れに乗った後半の3回転ルッツは、アテンションがついたものの滑らかに着氷。ジャンプ3つ全て揃え、千葉の顔にも笑顔が溢れた。「自分自身が伸び伸びとやりたいようにやることを許す」と決めていたという今日のショート。身体を大きく使い、まさしく伸びやかに演じていった。
ブラッシュアップを重ねてきたステップシークエンスでは、ポニーテールを回す振り付けなど多彩な動きで魅せた。どんどん盛り上がっていく音楽に負けない加速するスケーティングで生き生きと曲を表現。ポジションの安定感が光るビールマンスピンで演技を締めくくると、最後はビシッと指差しで決めポーズ。会場には観客の大歓声が響き、千葉は笑顔でそれに応じた。リンクサイドへ向かうと濱田コーチに笑顔で迎えられ、固くハグを交わした。得点は74・60点で4位。得点が発表されると何度かうなずき、納得の表情を見せた。

演技後、濱田コーチとハグをする千葉
演技後には「まずはひとやま乗り越えられた」と安堵の表情。1つのミスが大きく響くショートで、過失なくまとめ上げた。今大会は「雨降って地固まる」を目標とし、「(ファイナルの)悔しい思い、結果は絶対にバネにして成果につなげる」と決めていた。その言葉通り、シニアデビュー3シーズン目、悔しさを乗り越え着実に積み重ねてきた底力を発揮した。勝負のフリーは21日。自身初のオリンピック代表に向け、視界は良好だ。
(記事 荘司紗奈、川田真央 写真 荘司紗奈)
結果
▽女子シングルSP
千葉百音
SP 4位 74・60点
コメント
千葉百音(木下グループ/人通2=宮城・東北高校)
※公式練習後の取材より――転倒もありましたが、コンディションはどうですか
感覚的には、初日の練習は足がしっかり動くかの確認だったので、今日のうちに違和感をしっかり出しておいて、自分の体の動きを見ながら修正していくっていうのはしっかりできたかなと思います
――GPFから時間もない中で切り替えはどうしましたか
切り替えるというよりも、少し沈むところもありましたが、沈んでもいられないので、明日と明々後日、本番に一番いい演技ができるようにということだけ考えて練習してきましたし、この4日間が大事になってくると思うので、全身全霊でいくしかないと思ってます
――GPFから全日本までの間に、誰からか記憶に残る言葉をかけられたりしましたか
今まで支えてくださった方々にたくさん励ましの言葉を頂いて、しっかり頑張ろうと思えました。その言葉のひとつひとつを無下にしないように、自分の中で出し切ったと言えるような演技がしたいです
――オリンピックシーズンです
今までの人生の中で一番結果が重視される全日本なので、結果に意識が向いてしまいがちですが、まずは自分の滑りを信じる、自分の動きを信じることに集中して、とにかく一心不乱にいければと思います
――自分の中でどう向き合ってきましたか
向き合って、でも不安もありながら、これを成長の機会として、成功につなげられるようにと考えていました。それが本番に確かめられるかどうか、本番に係っているので、その重さを考えつつも考えすぎず、やるべきことに集中してできたらと思います
――そのために必要なのは
自分に全集中、ですかね(笑)
――GPFでミスが出たジャンプを集中して練習してきたのですか
苦手なジャンプのミスは印象に残りやすいので、痛手なミスだったんですけど、自分のためにも全日本で塗り替えるしかない。練習してきたことをそのまま出せるようにしたいです
――全日本で腹をくくって演技をするだけの準備は整えられたということでしょうか
自分の中では最善を尽くしてきましたし、ここから本番に向けて尽くしていくつもりなので、あとは自分を信じてやり通すだけだと思います。
※SP後の取材より
――何かから解放されたような表情にも見えました
明後日のフリーをより良いものにするためにも本番に向けての取り組み方や振り返るところもたくさんありますが、ファイナルのフリーから、ショートだけですけど、まずは一山乗り越えられたという安堵の気持ちをかみしめていました。
――スピン、ステップはレベル4の評価を得ていますがいかがですが
男子の中継を見ながら「今日は結構レベル厳しいな」と思っていたので、そこはちゃんと練習の通りにしっかり意識して抜けることなくできたので良かったかなと思います。
――最初濱田コーチとばちっとやっていましたが、何かやっていたんですか
今日はとにかく「自分自身が伸び伸びとやりたいようにやることを許す」という考え方で挑んだので、濱田コーチともちゃんと気持ちの意思疎通みたいなのを意識してやりました。素直にスイッチが入って笑顔で行けたので良かったと思います。
――明後日のフリーですべてが決まると思いますが、改めて意気込みをお願いします
どんなに不安があっても、どんなに緊張を感じていても演技は始まります。来るべきその時に向けて自分がどこまで準備していけるか、それだけに集中して自分のやるべきこと、やるべき動きをしっかり把握してやっていきたいと思います。
――「のびのびと自分を許す」とは、今までの大会ではないような感情ですか
今まで許してなかったのかと言われると嘘になるし、この言葉の意味としてもこれからどんどん自分として解釈していけるところがあると思うのですが、本当に自分が伸び伸びとできる限界の力を出し切りたいという思いがあります。
――グランプリファイナルから2週間だけですが、明後日のフリーに挑む中でどんな課題をもって取り組まれてきましたか
いいイメージを作る事だけに集中して練習してきました。もちろんそんなに絶好調のままここに来たという、そんなうまくいくわけではなかったんですけど、最後まで自分を信じて滑り切りたいという思いが本当に一番なので、それだけに集中してやっていきたいです。
――朝失敗したことで自分の中で修正点を見出したのですか
「ミスを練習のうちに出しとけてよかったじゃん」と濱田コーチに言われてポジティブな気持ちで思い切りいった結果、大きなミスなく終えられたのはよかったと思うのですが、自分の中でももっといいジャンプができたなという思いもあります。それでもファイナルからこのショートまでを考えると、自分が今日できることはできたかなと思います。
――自分の感情はどうでしたか
ちょっと複雑な感じで、3フリップ+3トウループも3ルッツもすごく気持ち良い下り方ではなく絶妙な感じだったのですが、ちゃんとレベルを取り切ることがすごく点数に響いてくる大事なポイントだと思うので、そのあとのエレメンツを確実にこなすということだけに意識が向いていました。
――ファイナルで悔しい思いがあったと思うのですが、今日は臨むにあたって怖さはありましたか
もちろんその怖さを感じはしましたが、ちゃんと自分のやるべきことは出せたかなと思います。
――目標のところで雨降って地固まるとあったと思うのですが、どういう思いがありましたか
これだ!って。結構みんな言葉を考えるのに時間がかかったりするんですけど、もう30秒くらいで決まりました。そのまんまです。地は自分で固めるしかないです。ことわざの通りで、そのまま悔しい結果のまま自分が落ちていったらあのファイナルが何も糧にもならないと思って、今後の自分のためにもこの悔しい思い、結果は絶対にバネにして成果につなげないといけないという思いがあったのでそういう意味も込めて。
――ファイナル終わってそういう考え方になったのか、どのタイミングでそれが出ましたか
ちょうどそれを書いた時くらいから練習もしっかり、気持ちも前日本に向いて、一生懸命やるぞっていう時期でした。
――このプラグラムにはすごく助けてもらったことが何度もあると思うのですが、この期間にこのプログラムがあるということについて何かありますか
やっぱりこの「Last Dance」、すごく明るい曲で、緊張しているときでも無理にでも笑顔を作って挑むと、結構動きもいい方向に行ったりするので、私はこのプログラムに本当に助けられているなとつくづく感じます。ロミジュリも同じくらい自分がやっていて気持ちいいと思えるようなプログラムなので、それが緊張によって崩れることのないように、自分らしい「ロミオとジュリエット」を演じていきたいです。
――怖さのある中で固められそうな自信はありますか
自分の中で自信を作ろうと、確かめようとしている時なので、まだ自分が固まっているかどうかは終わるまでわからないのが素直な気持ちです。一生懸命、全身全霊で、フリーで7本のジャンプをしっかりできるように頑張ります。