駅伝シーズンで好走を続け、早大のエース格へと成長した工藤慎作(スポ2=千葉・八千代松陰)。東京箱根間往復大学駅伝(箱根)では2年連続となる5区を任され、チームの順位を3つ押し上げて区間歴代3位の快走を見せた。今年も早稲田の山問題を解決した「山の名探偵」が、その激走を振り返る。
※この取材は1月25日に行われたものです。
磨き続けた平地の走力
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対談中の工藤
ーー5区の出走が決まったのはいつ頃でしょうか
5区に関しては自分しか用意していない状態だったので、ずっと自分(が走るだろう)という感じがありました。
ーー全日本大学駅伝対校選手権(全日本)から箱根までの間はどのように調整を行っていましたか
全日本の疲労を抜くことと、練習を積み直すことを意識していました。山の練習というよりは、平地の走力にフォーカスしたトレーニングが基本でした。
ーー箱根前でも平地でのトレーニングを積んだ理由を教えてください
私は卒業した後も競技を続けていきたいと思っており、山の練習だけしていてもどうなのかというところがあります。あまり山に対するこだわりはないですし、マラソンのための箱根駅伝というように捉えています。山で区間上位に入る選手は平地での走力も高いということもあり、さまざまな理由から平地をメインに取り組んでいました。
ーー平地の走力がつくことで上りが走りづらくなるという話もありますが、工藤選手の感覚的にはいかがですか
実際昨年より速く走れるようになっているので、現時点では大丈夫だと思いますが、もしかしたらタイムに伸び悩むことがあるかもしれません。ですが、結局5区が一番タイム差がつきやすい区間なので、自分が5区を走り続けるのではないかと思います。
「順調にレースを進められた」
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箱根5区を走る工藤
ーータスキを貰ってから函嶺洞門までの区間はどのような意識で走っていましたか
ハイペースで入ってしまうと後半にキツくなってしまうので、自分が楽に感じるスピードで走っていました。
ーー上りが始まってから国学院大と駒大を捉えましたが、上りを振り返っていかがですか
自分の中では70分前後をゴールタイムとして想定していました。それに合わせて定点間も走っていきたいと思っていたので、順調にレースを進められたと思います。
ーー結果的に設定タイムの70分を29秒縮める結果となりました。設定よりうまくいったポイントを教えてください
11・7キロの定点である小涌園から頂上付近までのタイムがかなり良かったです。また、頂上に達した後の下り坂でタイムを稼げました。それが設定タイムを29秒縮めた結果につながったと思います。
ーーレース後には「頂上付近で失速してしまった」と振り返っていましたが、その要因は何でしょうか
そこはかなり足が重くなってしまっていました。失速といっても、全体ではタイムが伸びている中で、まだ伸びしろがある部分という意味ではあります。
ーー函嶺洞門を除いた全ての定点間で区間2番以内の走りでした。安定して良い走りでしたが振り返っていかがですか
昨年の経験や、平地の走力が段違いに上がったということはありましたが、上りの練習は年間で片手で数えられるほどしかしていませんでした。一番傾斜のきつい宮ノ下から小涌園の区間で失速してしまうと思っていたのですが、そこで思っていたより速く走れていたことが大きかったと思います。ただ、まだこのポイントでタイムを伸ばせるとは思います。
ーーゴール直後には「来年は区間新いける」と発言されていましたが、その理由を教えてください
もう残り20秒くらい縮めれば区間新記録なので、あと20秒くらいならいけるのではないかという感じです。
ーー沿道の声援はいかがでしたか
走っているときはあまり聞こえないのですが、定点カメラがあるような場所では音の圧が凄いと感じ、そこで大きな大会を走っていると感じました。
ーー花田勝彦駅伝監督(平6人卒=滋賀・彦根東)からの声かけで印象に残っているものはありますか
ゴール付近で「素晴らしい名探偵ぶりだ」みたいなことを言われたことが印象に残っています。
ーー今年の山は例年より暖かい環境でしたが、走っていてどのように感じましたか
暖かい分、スタートから函嶺洞門までは走りやすく、アームウォーマーを函嶺洞門までは、手首まで下げて走っていました。体も動きやすかったですし、凍えることもなかったので、走りやすい安定した気候だったと思います。
ーー山登りに特化したシューズの使い心地はいかがでしたか
山の傾斜に合わせてかかとが盛り上がった形状をしていて、自分は上りのときに走りやすいと感じています。しかし、平地だと前につんのめってしまう感じもあるので、全員に効果があるかは分からないです。そもそも自分も普通の靴が良いかもしれないですし、そこは分かりませんが自分は上りが楽に感じました。
「区間賞を取りたい」
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日本学生ハーフマラソン選手権でゴールする工藤
ーー来シーズンの練習で取り組みたいことを教えてください
今から1年後にマラソンに挑戦したいと思っていますので、そこに向けたアプローチを中心に取り組みたいと思っています。
ーー4月には八千代松陰高の後輩である鈴木琉胤選手が入学しますが、工藤選手から見てどのような選手ですか
自分が高校3年生のときに(鈴木は)高校1年生ということで代被りしていたのですが、こういう人がいるとチームが強くなっていくというか、ものが違うように感じていました。ある意味自分自身に絶望したような感情がありましたが、それを言い訳にはできないので、そういう意味では刺激を貰っています。大学だと距離が長くなってくるので、長い距離だったら自分の方が大丈夫だと思っています。そういう面でも切磋琢磨(せっさたくま)してやっていきたいと思っています。
ーー八千代松陰高のOBで陸上界を盛り上げたいという思いはありますか
箱根駅伝では3年連続で八千代松陰高出身の選手が区間賞を獲得しているので、自分も区間賞を取って、それを継続させたいと思っています。学生のみならず、実業団で走っている方々と一緒に高め合っていきたいと思います。
ーー来シーズンのトラックでの目標を教えてください
トラックでは1万メートル27分台を目指していきたいと思います。
ーー来シーズンのロードでの目標を教えてください
マラソンではマラソングランドチャンピオンシップ(MGC)の出場権の獲得を目指していきたいです。箱根では5区で区間新記録を出すことを目標にやっていきたいと思います。
ーー早大では佐藤航希(令6スポ卒=現旭化成)選手や伊福陽太(政経4=京都・洛南)選手がマラソン後のリカバリーに苦戦していました。工藤選手はどのようにお考えでしょうか
ある程度自分自身で練習を積めていれば反動が強すぎることはないと思っています。今年のニューイヤー駅伝(全日本実業団対抗駅伝)ではGMOインターネットグループの吉田祐也選手が福岡国際マラソンの1カ月後に1区で好走をされていたり、OBの瀬古さん(瀬古利彦氏、昭55教卒)は駅伝の1カ月前にマラソンを走っていたりするのでマラソンのリカバリーができないこともないと思います。私自身早大のスポーツ科学部に所属していますので、そういったアプローチについても考えていきたいと思っています。
ーー来シーズンは優勝候補として挑む駅伝になりますが、重圧などは感じていますか
自分自身は3大駅伝を全て区間3番以内で走れていたとはいえ、区間賞を取れていないので、どこかで区間賞を取りたいです。3大駅伝を全て区間3位以内で走ったことがあるというのは早大だと大迫傑さん(平26スポ卒=現Nike)以来なので、自分みたいな存在がいると優勝できる確率は高くなると思います。あとは周りの選手が青学大や駒大にどれだけ迫れるかというところだと思うので、自分自身はサポートして引っ張っていきたいと思っています。
ーー今後の意気込みをお願いします
来年度は箱根駅伝の5区区間賞とフルマラソンでのMGC出場権獲得に向けて頑張ります!
ーーありがとうございました!
(取材・編集 石澤直幸)
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◆工藤慎作(くどう・しんさく)
2004(平16)年11月10日生まれ。168センチ。千葉・八千代松陰高出身。スポーツ科学部2年。第101回箱根5区1時間9分31秒(区間2位)。1年時には体育各部の成績優秀者として表彰され、今年度の春はGPA3.85を記録した工藤選手。走りは怪物、頭脳も怪物。「早稲田の名探偵」が文武両道を体現します!