【連載】競走部 東京箱根間往復大学駅伝(箱根)事後特集 『蕾(つぼみ)』 第3回 山口竣平

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 東京箱根間往復大学駅伝(箱根)3区で、終盤に谷中晴(駒大)との1年生対決を繰り広げ、観客を魅了した山口竣平(スポ1 =長野・佐久長聖)。各校の主力が集う3区で6人抜き、早稲田記録の更新といった、堂々たる走りを披露し存在感を示した。学生長距離界のエースを目指す山口竣に箱根路デビューの裏側と今後の展望について伺った。

※この取材は1月25日に行われたものです。

ーー箱根が終わってからの解散期間はどのように過ごしていましたか

 解散期間中は1回陸上を忘れて、競技から離れた生活をして、完全にリフレッシュできる時間を設けました。実家に帰って親や祖父母に報告して、ゆっくりのんびり過ごしました。

ーー箱根について、周りからの反響はいかがでしたか

 SNSでのDMだったり、いろいろなところから反響はあったかなと思います。

ーー1年生ながら今季の3大駅伝全てに出走し、主力として注目されていましたが、プレッシャーはありましたか

 逆にプレッシャーはなかったです。1年生ということもあって、そこまで期待されていなかったように思っていたので気楽にいけました。先輩に頼りながら3大駅伝を走ってきたので、特にプレッシャーは感じなかったかなと思います。

ーー本間颯選手(中大)やスティーブン・ムチーニ選手(創価大)、鶴川正也選手(青学大)、山本歩夢選手(國學大)といった有力選手と走ることになりました。当日のエントリー変更を聞いて、また実際待機所で一緒になって、なにか思うところはありましたか

 特になかったと思います。青学が主力を置いてくること、創価もムチー二選手がくることは想定していました。周りというよりかは、自分の走りをしてその中で順位を上げていければ良いと考えていたので、特に思うことはなかったです。

ーー現地には選手や補助員、観客として佐久長聖高の関係者の方もいたと思います。会話や応援の言葉はありましたか

 高校時代のクラスメイトが戸塚中継所にいて「頑張って」と話しかけられてすごくびっくりしました。高校の先生2人が遊行寺を下ったあたりにいてくださって、気づいたのでしっかりガッツポーズをしました。その後電話で「余裕そうだったね」と言われました。

ーー改めて3区での走りを振り返っていかがですか

花田さん(花田勝彦駅伝監督、平6人卒=滋賀・彦根東)から設定されていたタイムを切れたことは良かったのですが、トータルが61分15秒で、15秒縮めていたら大学1年生の記録にもなりましたし、60分台も見えていたので、悔しさもあります。終わってみると、設定タイムをクリアしてホッとしている面がある一方で、まだまだいきたかったという気持ちも残った1年目の箱根だったと思います。

ーー前半は抑えて浜須賀の交差点からペースアップを意識したレースプランだったとおっしゃっていました。具体的なペース配分や、仕かけどころなど決まっていたことがあれば教えてください

 海岸線に入ってから足が止まるとみんなから言われていたので、最初の下りでは飛ばしすぎないように抑えてという感じでいきました。とは言いつつも、ある程度のペースは維持して後半伸びる走りをしていきたいと考えていたので、狙い通りのレースができました。

ーー前半の下りでの疲労はいかがでしたか

 結構余裕がありました。下りが終わると周りの選手の足が止まりはじめたので、やっと前が見えてきました。特に疲労は感じずに下り切ってからスタートというイメージでいけました。

ーー正面に富士山、左手に相模湾と、景勝地と呼ばれる3区ですが景色を楽しむ余裕はありましたか

 最初は余裕だったので、人生で初めて「富士山ってこんなに綺麗なんだ」と思いました。久しぶりに駅伝で余裕のある走りができたかなと思います。湘南大橋に差しかかるところでは、防風林がなくなって、海が見えたので「海綺麗だな」と思いつつ、その時は駒大に追いついていて、歩きそうなくらいきつかったです。

ーー花田監督からの声かけで印象に残っている言葉はありますか

 声かけは、指示が多かったのですが、ラスト1キロくらいで、意外と良いタイムできていたので「竣平かっこいいぞ」と言ってくださったのが一番印象に残っています。

ーー沿道の応援は聞こえていましたか

 大体聞こえていました。特に最初の浜須賀に入るまでは本当にたくさん人がいて、その中でも、高校時代の先生、高校時代のチームメイトの親からの声かけにも気づきましたし、ラスト400メートルのところに親がいたのですが、それも気づきました。

ーーレース終盤、谷中選手との1年生対決について振り返っていかがですか

 ラスト負けてしまったのは悔しいですが、あそこまで詰められるとも思っていなかったので、インパクトを残せたのは良かったかなと思っています。

ーー長屋匡起(スポ2=長野・佐久長聖)選手との佐久長聖リレーが、かなえられました。何か特別に思うところはありましたか

 僕が高校2年生で、長屋先輩が高校3年生の時に、ずっと一緒に練習をしていて、長屋先輩ともう1度タスキをつなぎたい、もう1度一緒に練習したいという思いが、早稲田大学に入学を決めた理由の1つでもあったので、長屋先輩が1秒でも楽に走れるようにという思いを込めてタスキを渡しました。

ーー高校時代の駅伝経験は箱根駅伝にいかすことができましたか

 できたと思います。駅伝で自分の限界値、どこで自分の力が尽きるのかという感覚が理解できていたので、それが箱根の走りでも生かされたかなと思います。

ーー箱根での収穫や課題はありましたか

 やはり課題は詰めの甘さだと思います。設定タイムは切れていたのですが、60分台までだとあと15秒というところで、詰めの甘さがあったと感じました。収穫は、来年はもっと良い位置で大手町でフィニッシュしたいというビジョンが明確になったことかなと思います。

ーー3区区間3位ということで、同学年の中では1番という結果をどのように捉えられていますか

 上位の2人は2年生の選手で、1学年しか変わらないので、特に満足はしていないです。僕はレースになれば学年は関係ないと思っています。もちろん中大の本間選手と創価大のムチーニ選手に負けたことは本当に悔しいです。

ーー箱根駅伝の結果を踏まえて、長い距離への苦手意識は克服されましたか

 克服できたと思います。本当に夏合宿で伊福さん(陽太、政経4=京都・洛南)とずっと一緒に練習して、力がついたと思うので、伊福さんのおかげで今回箱根が走れたと思っています。

ーーレース前に祖母に恩返しの走りをしたいと話されていましたが、何か言葉をかけられましたか

 祖母は当日現地に来ていなかったので、帰省して祖母の家に行って報告した時に、「そう言ってもらえて嬉しかったよ」と言ってもらいました。

ーーたくさん可愛がってくれた4年生へのメッセージは何かありますか

 4年生と1年しかいられなくて悲しいです。僕も次のステージ、2年生の舞台で頑張るので、競技を続ける4年生は、世界で活躍できる選手になってほしいですし、いつまでも僕の自慢の先輩であり続けて欲しいです。

ーー来年度は佐久長聖高から後輩である佐々木哲選手が入学しますが、どのような印象をお持ちですか

 哲は、高校2年生の都大路まではメンバー争いをする選手という捉え方をしていましたが、今年は主力、エースとして活躍している姿を見て急成長を感じています。先輩として恥ずかしい姿を見せられないですし、勝たないといけないと思っているので、プレッシャーはありますが、一緒に頑張りたいと思っています。

ーー自分に今必要な力はどのようなものだとお考えですか

 自己管理能力かなと思っています。寝る時間や栄養面においてしっかり自己管理できているとは言えないので、そこは克服しないと、次のステージに行った時に自分の殻を破ることができないかなと思います。

ーートラックシーズンの目標はありますか

 日本選手権の5000メートルに照準を合わせています。今年は日本選手権の標準記録が下がって、予選もあります。そこを狙えるところまでは来ているので、狙えるなら狙っていきたいと思っています。欲を言えばU20の日本記録も更新したいです。

ーー駅伝シーズンの目標はありますか

 箱根が終わった直後に、花田さんが「来年は優勝しよう」という話をしていたので、箱根駅伝で優勝するなら来年だと思っています。智規さん(山口智規、スポ3=福島・学法石川)もいて、強い1年生も入ってくるので、チームとしては優勝を狙いたいと考えています。個人としては、3区にリベンジしたいという思いはありますが、やっぱり2区を走らないと早稲田のエース、学生のエースにはなれないと思っているので、そこを狙っていきたいと思います。2区を走れるなら走って、3区なら区間賞を取る勢いで頑張りたいです。

ーーありがとうございました!

 

(取材・編集 長濱愛里咲)

◆山口竣平(やまぐち・しゅんぺい)

2006(平18)年1月15日生まれ。168センチ。長野・佐久長聖高出身。スポーツ科学部1年。第101回箱根3区1時間1分15秒(区間3位)。最近は、気づいたらコンビニスイーツを買っていると話す山口竣選手。おすすめはファミリーマートの「しっとり食感のバウム」だそうです!