7・8級の選手4名が出場 ミスはありつつもそれぞれの魅力を発揮した/インカレ2、3日目

フィギュアスケート

日本学生氷上競技選手権 1月6日~7日 古瀬スポーツ公園アイスアリーナ

 古瀬スポーツ公園アイスアリーナで開催された日本学生氷上競技選手権(インカレ)。日本全国から選手が集まり、各大学を背負って演技を実施した。大会2、3日目は男女7・8級の競技が行われ、早大からは男女2名ずつが出場。今回がラストインカレとなる4年生も含め、全員が全力を尽くし、リンクサイドに並ぶ部員からは大きな声援が送られた。

★男子7・8級 SP

キレのある演技を披露した廣田

 2日目の男子7・8級の競技には、早大から2人が出場。最初に登場したのは4年生の廣田聖幸(スポ4=千葉・東邦大東邦)。昨年進むことができなかったフリー進出を目標に掲げ、最後のインカレに臨んだ。曲は継続のSP『It’s gonna be alright』。ダンサブルな曲に乗りながら挑んだ最初の3回転フリップは両足着氷。続く3回転トーループは転倒し、コンビネーションにすることができなかった。相次ぐミスに焦りが出てしまったといい、その後2本のスピンでも回転がほどけ無得点となった。「力になった」という応援を受けながら、キレのある振り付けを見せ滑り切ったものの、力を発揮することができず。「追い込みが足りなかった」と反省を口にした。得点は31・45で25位と、目標としていた翌日のFSに進むことはできなかった。1月末の国民スポーツ大会冬季大会(国スポ)でのリベンジを誓う。

『戦場のメリークリスマス』を演じた山田

 続いて登場したのは山田琉伸(人通2=埼玉栄)。昨年末の全日本選手権(全日本)からの連戦となった今大会。「全日本が終わってから気持ちが緩んでしまった」と、納得できる練習を積むことができていなかったという。冒頭、今シーズンは回避していたSPの3回転アクセルは回転不足で転倒。直後の3回転フリップでも、「アクセルのことを考えながら」跳んでしまったと珍しく転倒してしまった。後半の3回転ルッツ+3回転トーループは加点が付く出来栄えで着氷し持ち前の安定感を見せたが、最後のスピンでは体勢を崩し回り切ることができず、ノーバリューで無得点となった。珍しいミスが続き、本人も苦笑い。「練習不足が試合に出てしまった」と振り返った。それでも、54・62点で翌日のFSに駒を進めた山田。全日本では悔しい結果に終わったFSでの巻き返しを図る。

★女子7・8級 SP

伸びやかに滑った木南

 女子7・8級のSP、最初に出番を迎えたのは4年生の木南沙良(人通4=東京・日大一)。木南は今回で4年連続でのインカレ出場となる。曲は『To Love You More』。大学最後のシーズンにと自分で選んだプログラムも、滑れる回数は残り僅か。「好きな気持ちが人に届くように滑りたい」と語った通り、一つ一つの振りを大切に演じていった。冒頭の3回転サルコウ+2回転トーループはぶれることなく着氷。続く3回転トーループは転倒してしまったが、動揺は見せずその後のエレメンツも丁寧にこなしていく。ジャンプやスピンの間も笑顔を絶やさず、手足を伸びやかに使って全身で音楽を表現した。「残りの試合が少なくなる中で、今できることをしっかりやって確実に点数を取っていくこと」を意識して練習してきたという木南。その言葉通り、転倒こそあったものの、スピンはいずれもレベル4を獲得するなど着実に得点を積み重ね、全体22位となる42・88点でFS進出を決めた。

笑顔で滑りきった穂積

 最終グループで登場したのは、今回が初めてのインカレとなる1年生の穂積乃愛(人通1=東京・駒場学園)。「目標というものが持てない」ほどに「調子が落ち切っていた」という状況で迎えた今大会。公式練習でも調整に苦戦している様子が見て取れたが、コーチと演技前に話すことでなんとか落ち着きを取り戻した。ジャッジに背を向けてポーズをとり、『You’re a Mean One, Mr. Grinch』の音楽とともに踊りだす。冒頭2本のジャンプは回転不足こそ取られたものの、しっかりと着氷。しかし、後半に予定していた3回転のコンビネーションジャンプは、最初のジャンプで着氷が乱れて2回転となってしまい、セカンドジャンプをつけることができなかった。スピン、ステップでもレベルの取りこぼしがあり、SPの得点は38・94点と伸び悩み、FS進出は叶わなかった。「まずは心身ともに元気に滑れるように」と向き合う姿勢を見せた。

★男子7・8級 FS

会場をひきこんだ山田

 3日目には男女7・8級のFSが実施された。最初に行われた男子7・8級の競技には、山田が登場。悔しい結果となった全日本選手権FSのリベンジと位置付けた今大会。ミスが出たSPからの立て直しが求められた。冒頭の3回転アクセルは転倒したものの、続く2本の3回転ジャンプは滑らかに成功。その後は、コンビネーションジャンプの1本目が2回転に抜けるミスが2度出たが、2回転アクセルや3回転をつけるなどして意地を見せ、大きな失点を防いだ。「昨日(SP)は氷の状態と身体の状態がマッチしていなかった」というが、一日で修正し、次々とジャンプを着氷。勢いを増していく山田の演技に会場の熱量も高まる中、一番の見せ場である後半のステップシークエンスとコレオシークエンスへ。音楽の盛り上がりに合わるように山田のスケーティングも加速し、表情豊かに『Nuovo Cinema Paradiso』の感動的な世界観を演じた。演技が終わるとガッツポーズが飛び出し、客席からもスタンディングオベーションが送られた。得点は、FS117・08点、総合171・70点で全体10位。全日本選手権のリベンジを果たし、「新しい技やスケーティングをまた一から見直す」と来季を見据えた。

★女子7・8級 FS

情感あふれる演技をした木南

 大会最後の種目である女子7・8級の競技には、木南が出場。リンクサイドの部員たちからの声援を背に、笑顔でリンク中央へ向かった。音楽がかかるとふっと顔を上げ、正面に手を伸ばす仕草をして滑り出す。冒頭の3回転サルコウは回転が足りず転倒し、勢いでそのまま壁にぶつかってしまう。その直後の3回転トーループも2回転になるミス。しかしその後はミスを引きずらず冷静に立て直し、冒頭失敗した3回転サルコウからのコンビネーションジャンプを含め、全てのジャンプを着氷。スピンでも2つレベル4を獲得し、「確実に点を取る」練習をしてきたという成果を発揮した。後半のコレオシークエンスも、疲れを見せることなくリンクを大きく使って滑り、情感にあふれる『Nuovo Cinema Paradiso』を演じた。得点はFS74・28点、合計117・16点で全体21位。演技後は、「FSの理想像の想定が甘く、ふわっとしたまま終わってしまった」と悔やんだが、今シーズンは一度もSPで落ちることなくFS進出を達成しており、成果もあったと話す。今度は「FSで、やりきった、と思えるように」と次の目標を掲げた。

(記事、写真 荘司紗奈、吉本朱里)


結果

▽男子7・8級


山田琉伸

 

SP 12位 54・62点

FS  9位 117・08点

総合 10位 171・70点


廣田聖幸

 

SP 25位 31・45点

総合 25位 31・45点


▽女子7・8級


穂積乃愛

 

SP 28位 38・94点

総合 28位 38・94点


木南沙良

 

SP 22位 42・88点

FS 21位 74・28点

総合 21位 117・16点


コメント

木南沙良(人通4=東京・日大一)

★SP後

――ラストインカレになりますが、どういった目標をもって臨みましたか

早稲田大学として出られる最後のインカレということもありますし、残りの試合がインカレと国体と少なくなる中で、今できることをしっかりやって確実に点数を取っていくことを意識してやってきました。トリプルが確実ではない中でちゃんと取れる点数を意識してやってきました。今回もトーループは転んでしまいましたが、他のところで取れたから残れたのかなと思います。

――曲の表現など、今日の演技全体を振り返っていかがでしたか

今シーズンのSPは、私が滑りたいと言って先生にお願いした曲なんです。今大会含めて大会が残り2回しか踊るチャンスがないので、好きな気持ちが人に届くように滑りたかったので、よかったかなと思います。

――ラストインカレですが、心境はいつもと違いましたか

正直、緊張はすごくしたんですけど、先生が最後、気負わなくていいよ、と言ってくれて。自分はトップの選手ではない中で、大学4年生の最後まで挑戦者という気持ちでやれたのかなと思います。先生の言葉が最後緊張をほぐしてくれました。

――明日のFSに向けて、意気込みをお願いします

明日の『Nuovo Cinema Paradiso』も、あと2回と終わりが迫っているプログラムなので、練習してきた確実に点を取るという部分と表現する部分を見ていただけたらと思います。

★FS後

―今日の演技を振り返ってどうでしたか

今日は演技としてやりたいことがあまりはっきりしていなくて、ふわっとしたまま終わってしまった印象です。まだ大会があるので、今後の大会ではよい気持ちで終わるために、まだ改善点がたくさんあるかなと思います。

―ふわっとしたまま終わってしまった、というのは、演技前の心の準備が十分できていなかったということでしょうか

演技前というか、練習のときから、FSの理想像の想定が甘かったかなと思います。またこういう思いをしないように、練習のときから調整したいです。

―今大会で得た収穫と課題は何ですか

前シーズンは大きな大会になるとSP落ちになってしまうこともあった中で、今シーズンは一度もSP落ちすることなくFSに進むことができたのは大きな収穫でした。今回もそれを目指してやってきたのでSPを通過できたのは今までのシーズンと比べてもよかったかなと思います。ですが、FSで、やりきった、と思えなかったのが課題なので、また次に向けて練習を頑張ろうかなと思います。

穂積乃愛(人通1=東京・駒場学園)

――今大会に向けて、どのように練習してきましたか

なかなか調子が上がらなくて調子が落ち切った中での試合でした。目標というものが持てなくて、3本しっかり跳んで滑り切るということくらいしか頭が回らなかったというのが正直なところでした。

――今日の演技を振り返っていかがでしたか

先生と演技前にお話しする時間をいただいて、今までのことや自分の身体のことを深くお話しできました。そこで気持ち的には切り替えられていたのですが、やはり積み重ねてきたものが薄くて、ジャンプ以外にも細かい通りでミスが出てしまったのかなと思います。

――初めてのインカレでしたが、緊張感はありましたか

あまりインカレだという意識は強くなくて、自分が成長していくためのステップの一つだという意識で臨みました。

――これからの試合や早稲田オンアイスにむけて、どのように練習を積み重ねていきますか

まずは心身ともに元気に滑れるようにすることが一番やるべきことかなと思います。スケートの技術を進化させるのももちろんですが、自分が元気にスケートができる状態に持っていくのが今一番必要なことかなと思っています。

廣田聖幸(スポ4=千葉・東邦大東邦)

――最後のインカレでしたが、今大会の目標を教えてください

 昨年フリーに進めなかったので、フリー進出を目標にしていました。

――このインカレに向けての最近の練習状況はいかがでしたか

 1週間、2週間ほど前くらいから調子を上げていって、練習の中では割と良い方向に持っていっていたのですが、本番でできなかったのは追い込みが足りなかったかなと思います。

――改めて、今日滑ってみていかがでしたか

 ちょっとこういう大きい大会だとやっぱり萎縮してしまって、本来の力が出せず、悔しい部分が大きいです。

――スピンとジャンプでミスが出てしまいましたが、その時の状況は

 1本目のミスはちょっと想定内だったのですが、その後の流れにちょっと焦りが出て、2本目転んでからは心を落ち着かせてはいたのですが、最終的に焦りが出てしまいました。

――最後のインカレですが、今までの大会と違った感覚はありましたか

 リンクサイドで後輩や練習仲間が応援してくれて、そういう大会はなかなかないですし、本当に応援は力になりますし、特別な大会だったと思います。

――区切りのシーズンですが、早稲田オンアイスまでの2カ月弱、どのような競技生活にしていきたいですか

 残すは国スポになるので、今回の失態をしないくらい、最後まで追い込んで、最後は笑って終われるようにしたいです。

山田琉伸(人通2=埼玉栄)

★SP後

――全日本選手権(全日本)後の大会でしたが、このインカレに向けての練習状況について教えてください

 全日本にピークを持って来れるよう今シーズン取り組んできたので、ちょっと全日本が終わってから気持ちが緩んでしまって。全日本前の練習とは質も量も悪いものになってしまって、その練習不足感が試合に出てしまったかなという感じです。

――今大会の目標を教えてください

 3回転アクセルをショートから入れようと決めていました。今シーズンはまだ試合で跳んでいないので、試合で跳びたいなと。

――改めて、今日滑ってみていかがでしたか

 アクセルまではあまり悪くなかったかなという感じだったのですが、アクセルを降りた時に、感覚的に、降り切ることができた感覚だったので、ちょっと空中で緩んでしまったのが悔しいなと思っています。

――その後のジャンプ、スピンでのミスについては

 アクセルのことを考えながらフリップに行ってしまって。全日本の後、スピンの練習もできていなかったので、当然そうなるというか…。練習不足が出てしまったかなと思います。

――フリーに向けて意気込みをお願いします

 フリーは全日本で、何も結果を出せなかった部分なので、全日本のリベンジということで、アクセルも入れて良い演技ができるようにしたいと思います。

★FS後

―今日の演技を振り返っていかがですか

全日本選手権のFSで良くない演技をしてしまって、そのリベンジを目標にやっていたので、まとめることができてよかったです。

―演技後にはガッツポーズも出ました。今日の演技の達成度としてはどれくらいですか

昨日のSPがひどすぎたので、それと比べたら達成感は大きいです。でも、点数とかを含めるとそこまででもないかなという感じです(笑)。

―昨日のSPから切り替えて、どのように準備してきましたか

昨日はひたすら休憩してリラックスして今日に備えていました。昨日の反省点を改善しながら、今日に向けて準備していました。

―反省点とは具体的にはどのようなことになりますか

昨日は氷の状態と身体の状態がマッチしていなかったというか、すごくパワーが必要な氷だと感じて、(昨日は)パワーを出せるような状態ではなくて、それが出てしまった部分がありました。

―今大会をふまえ、今後どのように練習を重ねていきますか

とりあえず今シーズンの大きな大会はこれで最後になるので、来シーズンに向けて、新しい技やスケーティングをまた一から見直します。また早稲田オンアイスにむけて、魅せるスケートを準備していきたいです。