固唾をのんでボールの行方を追う観客、競り合う選手。ふとした瞬間に鋭くコースに走り出し、見事なキャッチを見せる。ラグビーとの違いとしてよく挙げられる、前へのパスプレーにはアメフト独特の魅力がある。今回はレシーバーとそれに比較的近いプレーをこなすTEに焦点を当て、WR西川大地(商4=東京・早大学院)、TE田島広大(法3=東京・早大学院)、TE松岡直希(政経2=東京・早大学院)にお話を伺った。
※この取材は4月17日に行われたものです。
――最初に今に至るまでの経緯をお聞きしたいのですが、まずアメフトを始めたきっかけはなんだったのでしょうか
田島 高校ではバスケットボールをやるつもりだったんですけど、早大学院アメフト部の熱心な勧誘を受けて入部しました。大学ではもともとこのまま続けようと考えていたので、自然な流れで今もやっています。
松岡 僕も勧誘されて、行ってみたら良い雰囲気で迎えてもらえたので。大学でもそのままという感じです。
西川 二人とほとんど同じです。最初はテニス部に入ろうとしていたんですけど、アメフト部の日本一を目指せる環境に惹かれて始めました。大学でも何か一つ打ち込めるものを探すときに、やはり今までやってきたアメフトを続けようということになりました。
――今のポジションになった経緯は
田島 高校1年のときはDLをやっていました。ただ2年のときに先輩がTEからコンバートして、ポジションに人が少なくなってしまったので自分がやるということになりました。基本TEなんですけど、他にも人数が足りない場合はOLとかをやるときもありました。
松岡 高校2年まではQBをやっていたんですけど、体重を増やしたかったのもあり、僕の代のTEの人数が少なかったのもあってこうなりました。
西川 僕は高校からずっとレシーバーです。高校1年のときの3年の先輩レシーバーにかっこいい人が多くて、それに憧れてレシーバーを志望しました。
――自身のポジションの魅力はなんでしょうか
田島 TEはオフェンスのほとんどのプレーをできるのが魅力ですね。一度OLをやっていた頃もあるんですけど、自分はそこよりボールを持ったりタッチダウンしたりできるポジションが良いと思ったので。
松岡 WRより強くて、OLより速いっていうところですかね。中途半端ではあるんですけど、何でもやってしまうというのは面白いところです。
西川 やはり目立てるというところです。もちろんその分ミスも目立ってしまうんですけど、大勢の観客の前でキャッチして、盛り上がってくれるというのはすごく気持ちが良いので。
――自分のポジションをやっていて大変なところは
田島 パスコースに出ないといけなくて、WRより体が大きいのにWR並みのスピードを求められて、ブロックするときはOLより体重が軽くタックルの練習もそこまでしてないのに、OLと同じレベルを求められるというところです。両方のポジションの人から怒られることが多いです。まぁ練習不足かもしれないですね。
松岡 同意です(笑)。
西川 さっき言ったミスが目立つというところと、ずっと走っている必要があるところです。
――お互いを見てすごいと思うところはどこでしょうか
田島 松岡は一個下なんですけど、僕より足が速くてDBにもついていけますし、ブロックもうまいので見習わないといけないと思っています。西川さんはキャッチする前のカットといって、振り切るのがすごくうまいので、頼りになります。
松岡 田島さんは見ての通り体が大きいし、プレーもうまいです。あと意外と真面目っていう(笑)。一個上にすごく良いライバルがいるという感じです。西川さんは速くてうまくて強くて3つそろっています。ウエイトも他の人の2倍くらいやっていますし、そういうところもかっこいいです。
西川 田島は一番はでかいというところです。このスポーツは体のサイズが大きいだけで十分強みになりますし。松岡はブロックがすごくハードなので、僕もああいうブロックをしたいなと思っています。
――西川さんはレシーバーのリーダーに就任されたとのことですが、レシーバー全体での目標も掲げているのでしょうか
西川 ことしは「ハード」というのを目標に掲げています。どんな練習でもストイックに全力で取り組むということで、ことしはそれを全員で体現できるようにしていきたいです。
――つづいて現在のチーム状況をお聞きしたいのですが、チームの中でも特に伸びてきたと感じる選手はいますか
田島 新1年生の柴崎哲平(政経1=東京・早大学院)というQBの子が、すでに練習に参加してくれていて、投げどころも良いですしプレーの理解度も高いので、QB全体のレベルが上がっていると思います。あとOLはきょねんのメンバーが結構残っていて、そこがチームの要になっているかなと思います。
松岡 僕と同じ代でOLの金子君(竜也、法2=東京・早大学院)が今僕の中ではすごく伸びてきているなと感じています。
西川 WRのなかでは2年生の遠藤(健史、法2=東京・早大学院)がことしに入って伸びていて、スピードもついてきているので、ことしは試合に出る存在になっていくかなと思います。
――主将の印象はいかがでしょうか
西川 下級生のころは人に何かを伝えるというのがあまりうまいほうではなかったんですけど、主将になって自分の思いを一生懸命伝えてくれるようになりました。あとはすごく真面目で、彼のそういう取り組みがチームの全員に良い影響を与えていると思います。
田島 西川さんもおっしゃっていたように、高校のときは言葉よりプレーでみんなを鼓舞するタイプだったんですけど、主将に就かれてからはプレーだけじゃなくて言葉でも引っ張ってくださるようになりましたね。
松岡 プレーもそうですし、後輩に対しても優しく接してくださります。
――昨年はどのようなシーズンでしたか。また、そこから見えたことしの目標は
田島 チームとしては甲子園ボウルに出場できるくらいの実力がついてきたんですけど、個人的には反省の多いシーズンでした。試合に出られるようになったのが2年生からですし、まだまだ足りないと感じる部分も多いので、今はそういうものを課題としてアフターとかにも取り組んでいたりします。特にブロックは相手の3、4年生と当たってフィジカルでもスキルでも不足していると思ったので、ことしはそこに重点を置いています。
松岡 TEで試合に出られるのは一人だけで、ピンポイントでの起用はあったんですけど、いろいろなプレーをする役目のTEとしてはそれほど出られなかったので、ことしは試合に出ることを目標にして頑張っていきたいです。
西川 昨年は上の代がすごく引っ張ってくれたという印象があります。なのでことしは最上級生としてそういう風に下をリードしていければと思います。
――最後のテーマとして、早慶戦について伺いたいのですが、ことしのケイオーの印象はいかがですか
田島 ケイオーは特殊な体系をしてきて、すごくやりづらい相手なのですが、そういう難しい相手にも勝てるようになるという意味では大事な一戦になってくると思います。あと、きょねんはタッチダウンをとったんですけど、喜びすぎっていう反則をとられてしまったので、ことしはタッチダウンをしてかつ反則をしないで冷静に行きたいです。
松岡 監督もおっしゃっていたんですけど、相手は一回流れに乗るとそのままずっと持っていってしまうというチームだと感じています。きょねんの秋もぼろぼろにやられましたし、家の中でのプライドというのもあるので負けたくないですね。
西川 乗らせると怖いチームなので、自分たちオフェンスが全シリーズをしっかりタッチダウンまで持っていって、一つ一つの勝負に勝つということを意識してやっていきたいです。
――警戒する選手は
田島 同年代で高校から知っているLBの工藤勇輝さんと染矢優生さんです。彼らが特殊な体系の中心で、ここを止められるかでパスが通るかなとが決まってくると思うので、オフェンスを出すためにも重点的にしっかり止めていきたいです。
松岡 工藤さんと染矢さんは同じで、あとは同じ代のLBの中野航平さんです。雑誌にも取り上げられるくらい速くて鋭いプレーをしてくるので。
西川 DBの兵頭宣俊さんと杉山慶さんです。ワセダとケイオーがライバルというのはあるんですけど、ここは同年代なのでより負けたくないです。
――松岡さんはケイオーに双子のお兄さん(WR松岡拓希)がいらっしゃいますが、ライバル意識はあるのでしょうか
松岡 あります。向こうはWRで少し違ってはいますけどほぼ同じようなポジションでもあるので。
――最後に早慶戦に向けての意気込みをお願いします
田島 まずタッチダウンをとることと、ケイオーのディフェンスを圧倒するというのが目標です。
松岡 きょねんも少しは出たんですけど、反則をしてしまったりしたので、ことしは思い切って自分のプレーをして、結果として勝っていきたいと思います。
西川 僕は春の早慶戦は最後なので、勝ちたいというのはもちろん、楽しんでいけるような試合にしたいです。
――ありがとうございました!
(取材・編集 井上陽介)
※掲載が遅くなり、申し訳ありません
パスで局面を打開します!
◆西川大地(にしかわ・だいち)(※写真左)
1994年(平6)12月6日生まれ。176センチ78キロ。東京・早大学院高出身。商学部4年。WR。きょねん男前対談にいらしてくださった西川選手。そのあとの影響は「馬鹿にされてしかいないです(笑)。」とのことですが、レシーバーのリーダーとして周りを引っ張っていく姿に憧れる人は少なくないはずです!
◆田島広大(たじま・こうだい)(※写真中央)
1995年(平7)7月22日生まれ。184センチ、93キロ。東京・早大学院高出身。法学部3年。TE。昨年の対談でお聞きした、スニーカーにハマっているというのは変わらず、最近も買ったとのこと。少し高めでなかなか手が出にくいものも狙っているそうです!
◆松岡直希(まつおか・なおき)(※写真右)
1996(平8)年12月31日生まれ。181センチ、90キロ。東京・早大学院高出身。政治経済学部2年。TE。双子の兄が慶大のアメフト部にいるそうです。仲が良く、今こそケイオーは朝練があってできませんが、高校生のころは一緒にキャッチボールをされていたとのことです。うらやましい関係です!