競技2日目に行われた男子ショートプログラム(SP)。フリースケーティング(FS)を最終グループで迎えるためには、90点以上が必要という熾烈(しれつ)を極めた戦いが繰り広げられた。そんな中、島田高志郎(人通2=岡山・就実)は、『Giving Up』を披露。自身の世界観に観客を引き込ませるかのように、華麗な演技を目に入れ、「自分自身の演技を楽しむことができた」と86・76点の9位でSPを終えた。
迫真の表情で演技を行う島田
第5グループの第4滑走で迎えたSP。煌びやかな衣装を身にまとい、爽快な面持ちでリンクに向かう島田。会場に音楽が流れ始めると、楽曲に合わせてどこか切ない表情へと切り替わり、華麗な滑り出しを見せる。
最初に迎えたのは、難易度の高い4回転サルコウ。惜しくも見事な着氷とはならなかったが、序盤の雰囲気を保つべく堂々とした様子で演技を続けた。そのまま一気に加速しながら大きく弧を描き、次に向かったのは3回転ルッツ-3回転トーループ。高みのある力強いジャンプを成功させ、美しく着氷した。続く2つのスピンでも、最高評価となるレベル4をキープして、観客を魅了。さらに、曲の盛り上がりと重なる3回転アクセルも華やかに成功させ、自信をつけた。プログラム終盤では、心かなしげな表情のステップシークエンスを披露。繊細な指先と全身を使った緩急のある動きで、島田特有の豊かな表現力を発揮した。その流れのまま、最後は足換えコンビネーションスピンも安定のレベル4判定を受け、盛大な拍手に包まれて演技を締めた。
9位という結果ではあったが、島田の表情は充実していた。描いた心の内側から湧き出る『Giving Up』の独特な世界観は、間違いなく今日観客の心を鷲づかみにした。今季ワルシャワ杯でSP自己ベストを更新し、士気を高めてきた島田。試合前のインタビューでは「目標は表彰台に乗ること」と意気込み、昨年より強くなった自分を出すことを誓った。26日に控えるFSに向けて課題点を修正し、目標とする表彰台へ一歩をすすめたい。
(記事 谷口花、写真 及川知世)
演技後、客席に手を振る島田
結果
▽男子SP
島田高志郎 9位 86・76点
コメント
島田高志郎(人通2=岡山・就実)
※囲み取材より
――SPを振り返ってみていかがですか
実際結果として、まとめることはできたし、このさいたまスーパーアリーナという大舞台で、自分自身の演技を楽しむことは出来ました。そこがすごくうれしかった点ではあるのですが、やはりまだ完璧ではなかったので、もっと上を目指せるなと再認識したSPでした。
――冒頭の4回転サルコウはどのように受け止めていますか
少しまだタイミングが合っていませんでした。もっと自分を100パーセント信じていくことができればできたと思うので、そこはFSまでに調整したいなと思っています。
――この試合前には、思うようにステファン・ランビエールコーチから指示を受けられない期間もあったと思いますが、その上でコーチからはどのような言葉をいただいて今日の演技に向かわれたのでしょうか
まずは、ステファンコーチがこの全日本のために日本に入国できたことを本当にうれしく思います。また、2週間の隔離期間の中での練習だったのですが、その期間は、今までのスイスでの練習のペースとは全く違い、難しいこともあったのですが、本当にこの全日本という舞台を、自分もステファンも、もちろん宇野(昌磨)選手(トヨタ自動車)も、楽しみにしていたので、2人とも良い演技をして、ステファンコーチが笑顔でいてくれたことが本当にうれしいです。
――明後日のFSはどのように挑んでいきたいですか
まずは万全の調整をして、自分の体調や、身体のケアを大事にして、明後日のFSはチャップリンで、自分の思い入れの深いプログラムになっているので、そこを自分自身が楽しんで、チャップリンの世界をこの大舞台で、雰囲気を存分に出せたらいいなと思っています。
――日本にはどのくらい前に戻って来ましたか。スケジュールを教えてください
ワルシャワカップの後に一旦スイスに戻って、2週間と少し前に日本に帰ってきたかたちです。ステファンコーチは、スポーツ庁の方に申請を出していたのですが、3日間隔離をしました。その間も僕は練習をできていて、3日後からステファンコーチが加わって教えていただくことができました。
――宇野選手の演技もご覧になっていたということですが、他の選手の演技を見ることはご自身の試合前のメンタルには影響は無いですか
今までの自分だったらすごく影響を受けて、自分の演技に悪い影響が出てしまうことも多くあったのですが、今は五輪選考会とはいえ、みんながすごくいい雰囲気で、みんながいい演技をすることをお互いが望んでいる雰囲気を感じているので、自分のやるべきことをただやりに来ている人がほとんどだと思うので、そこは気にしてはいなかったです。