早大勢好発進ならず、FSで巻き返しを図る

フィギュアスケート

 シーズンの集大成を披露する場である国民体育大会。この日は成年女子の戦いが幕を開けた。ショートプログラム(SP)では、実力通りの得点を出せない選手が続出。独特の緊張感の中、中塩美悠(人通3=広島・ノートルダム清心)が9位、永井優香(社1=東京・駒場学園)が14位、松嶋那奈主将(スポ4=東京・駒場学園)が18位でフリースケーティング(FS)に駒を進めた。あすのFSで逆転での表彰台入りを狙う。

★今季最後のSPで見せた『挑戦』の成果

中塩は今できることを出し切った

 中塩にとって『挑戦』だった今季のSP。難しいプログラムと向き合ってきた1年の、努力の成果を発揮した。今大会でもケガとの戦いは続いており、新しい靴で3回転―3回転を初めて降りたのはこの日の公式練習でのこと。それでも、「今までいっぱい跳んできたから跳べるだろう」と強気の姿勢で冒頭のジャンプに挑み、セカンドジャンプは乱れたがなんとかコンビネーションにしてみせる。トリプルサルコーとダブルアクセルは流れのあるきれいな着氷で成功させ、不安要素であったジャンプをそろえた。そして、このプログラムの魅力はジャンプだけではない。スピン、ステップ、要素のつなぎ、全てにおいて洗練されたスケーティングが映え、演技構成点は全体の6位とここで高い評価を得る。50点には届かず本人も納得の出来とはいかなかったが、ラストイヤーにつながる美しい『Time to Say Goodbye』だった。

(記事、写真 川浪康太郎)

★実力を発揮できず14位スタート

永井は納得のいく演技とはならなかった

 永井の本来の実力とは程遠い演技内容となった。リンクサイドに集まった選手やコーチに笑顔を見せスタート位置につく。しかし「本番の前に気をつけることを考えていたのに本番では忘れて跳んでしまった」という冒頭のトーループでは、両足着氷かつ手をついてしまう。そして全日本選手権、日本学生氷上競技選手権と成功させていたループもシングルになり、得点源のジャンプを相次いで失敗。「緊張しながら一歩一歩やっていた」というステップでも、最後につまずいてしまった。ダブルアクセルからスパイラルの一連の流れ、演技の中盤と終盤に組み込まれた三つの美しいスピンで曲のイメージを表現したが、納得のいく演技はできず。自身の演技を振り返り「情けない」と肩を落とした。「明日は耐えて滑ろうと思います」と翌日に控えたFSに向け思いを語った永井。大きなカベを乗り越えてきた自分を信じ、今季を納得のいく演技で締めくくってほしいものである。

(記事 糸賀日向子、写真 川浪康太郎)

★現役最後の試合は悔しい出だしに

松嶋は気持ちを切り替え集大成のFSに挑む

 「いつも以上に緊張してしまって」。松嶋の口から普段聞くことの無い言葉がこぼれた。「最後に二人で良い結果を出して表彰台にまた上りたい」と鈴木美桜(慶大)とともに神奈川県代表として挑んだ。ところが冒頭のジャンプでミスが出る。得意なトリプルトーループの連続ジャンプを予定していたところでは、1つ目のジャンプで手をついてしまい、単独ジャンプになる。そして続くループも着氷が乱れてしまう。しかしここから意地を見せた。腕を大きく使った特徴的な動きを組み込んだステップシークエンスでは、ここ数年で磨きをかけた表現力で魅了する。そして後半のダブルアクセルは着氷しスピンでも観客を惹きつけた。だが演技を終えると大きく首をかしげ、インタビューでは「やっぱりすごく悔いは残ります」と目に涙を浮かべながらSPを振り返った。松嶋は今大会で現役生活に終止符を打つ。SPは悔しい出来となったが、集大成となるFS『トゥーランドット』ではとびっきりの『那奈スマイル』を見せてくれるだろう。

(記事 糸賀日向子、写真 川浪康太郎)

結果

▽成年女子

中塩美悠 9位 48.20点

永井優香 14位 42.24点

松嶋那奈 18位 41.01点

コメント

松嶋那奈(スポ4=東京・駒場学園)※囲み取材から抜粋

――試合を終えていかがですか

いつも以上に緊張してしまって。思うように体と脚が動かなくて、しょうがないかなという部分はあります。でもやっぱりすごく悔いは残りますね。

――昨年はFSで挽回しました

そうですね。気持ちをあしたには切り替えて、自信を持って最後やりたいと思います。

――ジャンプを振り返っていかがでしたか

力が入りすぎてしまったところがあったので、自分の持っている物を出し切れなかったかなという感じがします。

――ステップはいかがでしたか

きょうも全然動ききれなかったというのと、ちゃんと乗れなかったという部分はあります。

――あしたはどのような演技をしたいですか

本当に最後の演技になるので気持ち良く滑ることができたらいいなと思います。

中塩美悠(人通3=広島・ノートルダム清心)

――ショートプログラム(SP)を終えて感想はいかがですか

なんとか(ジャンプを)全部立つことはできたのでそこはよかったんですけど、ミスはちょこちょこあるので、それは悔しいです。

――日本学生氷上選手権(インカレ)後はどんな調整をしてきましたか

インカレのあと疲れちゃって、1週間休んで、靴を新しく変えて国体(国民体育大会)に挑もうと思っていました。ですが、日数が少ないし、先生は四大陸(選手権)に行っていたので、そこは難しかったです。でも、ジャンプが跳べないのを靴のせいとか、先生がいないからだと考えて気持ちが沈んでしまわないように、なんとか練習していました。

――ケガの状態はいかがですか

ケガも心配だったので、全然トーループの練習はしていなくて、朝の公式練習で跳んだ3(回転)―3(回転)がこの靴に変えて初めて跳んだ3-3でした。今までいっぱい跳んできたから跳べるだろうと信じてやりました。

――ジャンプ以外の要素については手応えはありましたか

練習不足が出ていて、ステップも飛んでいたし、エッジに乗ることができていないなと自分で思いながらやっていました。頑張って練習して、2試合続けて結果が出なくて、「頑張ろう」と思って頑張るのはやめて、逆に楽しく練習できたらいいなと思ってやっていたので、気持ち的には楽でした。

――このSPは来季も継続するということですが、今季滑ってみて感触はいかがでしたか

今まで速い曲をやってきた分、表現が大変だし、ロヒーンに振り付けてもらった大人っぽい曲を滑るのが難しくて、まだまだ滑り込める部分はたくさんあるなと思っています。曲自体はどんどん好きになってきてるし、この試合が終わったら次は引退のシーズンなので、やっと引退の『Time to Say Goodbye』を…ちょっとズレてたので(笑)。(来季は)もっとしっくりくるかなと思います。

――最後に、フリーに向けた意気込みをお願いします

いろいろ心配な部分はあるけど、シーズンの最後にスケートって楽しいな思えるような終わり方ができたらいいなと思っています。大変なシーズンだったんですけど、ジャンプがどうこうとかじゃなくて、『ラプソディー・イン・ブルー』は最後になるので、しっかり滑り切れるように、楽しめるように頑張ります。

永井優香(社1=東京・駒場学園)※囲み取材から抜粋

――調整がうまくいっていなかったのでしょうか

こっちに来てから少しはましになったんですが、全然しっかり練習ができていなかったので仕方ないかなというのと、情けないという感じです。

――インカレ(日本学生氷上競技選手権)の後学校が忙しかったのですか

テストがありました。それと、貸し切り(練習)があまり時間が取れていなくて、リンクの休みなども変則的でした。あとは体調が悪くてちょっと気分が上がらなかったりとかあまりできていませんでした。だから今回は自分でもちょっとだめだろうなとは思ったんですけど、案の定だめだったので残念です。あしたは耐えて滑ろうと思います。

――トリプルトーループの後はどのようなことを考えていましたか

本番の前に気をつけることを考えていたのに本番では忘れて跳んでしまったので、ループの時は気をつけて跳ばなきゃなと思っていました。そしたら考えすぎてしまったかなという感じです。

――ループの後はどのようなことを気をつけていましたか

得点源が無くなったので他のところで(得点を)取らないといけないことは分かっていました。でもジャンプが成功してもステップとか緊張してしまうので、緊張しながら一歩一歩やっていたかなという感じです。

――ステップの最後は緊張していたのでしょうか

あれはただの凡ミスだと思います。