トップスケーターが勢ぞろいする全日本選手権(全日本)の4日目。ハイレベルなショートプログラム(SP)から一夜明け、フリースケーティング(FS)進出の切符をつかんだ24名の選手がこの日も熾烈(しれつ)な争いを繰り広げた。会心の演技を披露した松嶋那奈(スポ3=東京・駒場学園)が総合147.32点の20位に入り、中塩美悠(人通2=広島・ノートルダム清心)も総合145.85点の21位となった。
滑走順が決まる前から熱望していた全体の1番滑走として登場した松嶋。冒頭で高さのあるトリプルトーループ―トリプルトーループの連続ジャンプを流れるような着氷で成功させ、会場の雰囲気をつかむ。続くループが2回転になったものの、トリプルサルコー―ダブルトーループを決め、勢いをつけた。ステップシークエンスでは落ち着いた雰囲気に合わせて優雅に舞い、重点的に練習してきた表現面で進化を見せる。後半のジャンプも、3連続ジャンプを含む全てのジャンプを成功させ、実施した要素のほぼ全てに加点がついた。自己ベストを更新する95.35点をたたき出し、「90点台は初めて出たので、すごくうれしいです」と笑顔で特別な舞台を振り返った。
松嶋は演技後、珍しくガッツポーズで喜びをあらわにした
中塩は、第2グループの3番滑走にきらびやかな水色と白の衣装で登場した。『ラプソティ・イン・ブルー』に合わせて初めの連続ジャンプに挑むが、回転不足を取られてしまうと鬼門のフリップでも回転不足を取られてしまう。一方、ステップでは観客にアピールを向け、軽やかな動きやおどけた動きを見せ楽しげなプログラムを盛り上げる。後半はダブルアクセルにトーループをつけて前半のリカバリーをするなど流れはよくなっていったが、中塩の本来の演技とはほど遠いものとなった。FS90.86点と点数も伸び悩み悔しい全日本となったが、2年ぶりの全日本で中塩の魅力を存分にアピールした。
フリーは最高の出来とはいかなかった
表彰台は10代の選手が独占し、ジュニア勢も上位に食い込むなど新世代の台頭が目立つ大会となった。一方、ベテラン勢も持ち前の表現力で観客を魅了。早大勢も悲喜こもごもとなったが、全日本の舞台で輝きを見せた。日本学生氷上競技選手権(インカレ)の舞台では、さらに磨きのかかった演技で早大を上位に導いてくれるだろう。
(記事 糸賀日向子、写真 川浪康太郎、藤岡小雪)
結果
▽女子FS
松嶋那奈 19位 95.35点(総合 20位 147.32点)
中塩美悠 21位 90.86点(総合 21位 145.85点)
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コメント
松嶋那奈(スポ3=東京・駒場学園)
――きょうの素晴らしい演技を振り返っていかがですか
ミスが1個だけあったんですけど、全体的にすごく滑れていたし、すごく笑顔で滑ることができたので、よかったなと思います。
――1番滑走から手拍子が起こっていましたが、お客さんはいかがでしたか
1番でも温かく見守ってくださって、ファンの方にも「那奈ちゃん頑張って-!」ってすごく言われたので、楽しんで滑ろうと思うことができました。
――1番滑走を引いた時はいかがでしたか
引く前から1番やりたいなと思っていました。「1番、1番!」って思って引いたら1番がきたのでやった!と思いました。
――冒頭の連続ジャンプはいかがでしたか
練習では左に行っちゃったりしていて不安要素でした。でも普段の練習ではすごくよかったので、自信持って跳ぼうと思いました。それで本番でもうまくいったのでよかったなと思います。
――3連続ジャンプはいかがでしたか
きょうは結構落ち着いていたので、慌てずに跳び急ぐこともなくできたのでよかったです。
――表現面はいかがでしたか
きょうはきのうと引き続き笑顔で滑ることができました。普段練習では笑うことができなかったのですがきょうは笑うことができて、表現面もうまくいきました。なので、下の点(演技構成点)も少し伸びたかなって思います。
――コーチとキスアンドクライでどのようなお話をされましたか
すごくきょうは落ち着いていたし、良い演技だったよと言われました。
――実力のある選手が全日本にそろいましたが、印象に残った選手はいらっしゃいますか
ジュニア勢が、勢いがあって印象に残りました。
――得点についてはいかがでしたか
90点台は初めてでたので、すごくうれしいです。自分なりには納得しているので、これからもっと下の点数(演技構成点)も上げていけるようになったらもっと点数が出ると思います。なので、ジャンプの技術点だけじゃなくて、表現力やスケーティングをもっと上げて得点を出せるようにしたいと思います。
――今後に向けての抱負をお願いします
インカレ(日本学生氷上競技選手権)とか国体(国民体育大会冬季大会)はペアがいるので、ペアの足を引っ張らないようにしたいです。ミスがあったとしてもそれをリカバリーできるような演技ができるようにしたいです。なので、これからの練習ではそういうリカバリーとかもうまくできるようにしていきたいなと思います。
中塩美悠(人通2=広島・ノートルダム清心)
――きょうのフリーの演技を振り返っていかがでしたか
朝の練習があまりよくなくて(本番は)練習よりはよかったのですが、やはり全日本(選手権)の舞台でノーミスの演技をすることが目標だったのでそれができなかったのがすごく悔しいです
パンクした2つ目のサルコージャンプについて
もう体力が落ちてしまって跳びたいと思ったのですが、多分跳びたいという気持ちが強すぎて体が先にいっちゃったのかなと思います
――ステップやスピンに関してはどうでしょうか
やはりステップもスピンもまだまだ見劣りするというか、ステップは分からないですがスピンは演技中に要素をこなしてますみたいな部分があるので。その曲のなかでマッチして、プログラム1つとして見せる時に見劣りしているかなと思います。
――今季のはじめに『普通の女の子』を演じたいとおっしゃっていましたが全日本ではそれができましたか
表現の面ではいろいろ試合をこなしてきてだいぶできるようになったかなと思うのですが、そういうことを考えている暇はなかったです
――インカレ(日本学生氷上競技選手権)に向けての意気込みをお願いします
年始なのでできないかもしれないですが、年末はちょっとゆっくりしたいなと思っています。去年インカレは出られなかったのでことし初めて出るのですが、早稲田として、また東の人間として出る試合なので、一緒に出る人に迷惑かけないように、那奈ちゃん(松嶋、スポ3=東京・駒場学園)と二人で頑張りたいと思います
――インカレの目標はありますか
インカレの目標はやっぱり東で早稲田が1番で通過したので、「西に負けてないんだぞ」というところを見せられるようにちょっとでも西の間に大学の名前が入ればいいかなと思います
――最後に2016年を振り返ってみて
ことしは病気とケガの多い年でした。去年の全日本からですかね、試合の前になるごとに毎試合毎試合何かあって。何かしらケガをしたり病気になったりしていたので先生にも何が起こるかわからないから目を離せないと言われていて、やはりそういう浮き沈みというか波をなくさないといけないかなと。波があったら良い時もあるのですが、悪い時もあるので、それをなくせるように常に同じ演技、練習通りにできるようにしないと。ことしは大変な年でした。