関東大学対抗戦 11月3日 対帝京大 秩父宮ラグビー場
まさに快勝。近年、ここまで赤のジャージーが沈黙した試合があっただろうか。早大はルーキーたちが躍動し、7トライを挙げる猛攻。ディフェンスでは帝京大を3トライに抑え、48ー17と31点差で対抗戦第4節、山場の帝京大戦で勝ち点6を得た。前半12分にWTB田中健想(社1=神奈川・桐蔭学園)がトライを挙げると、17分、20分にもトライ。8分間でハットトリックに成功し、19ー0と帝京大を序盤から大きく突き放した。帝京大FL青木恵斗に2トライを献上したものの、早大は崩れることなく26ー10で前半を終えた。続く後半はさらに早大ペースとなり、3トライとペナルティーゴールを追加。試合終了間際に失点を許すが、帝京大に追い上げる隙を与えずノーサイドとなった。
早大のキックオフで始まった今試合。帝京大のノックオンにより、開始早々からファーストスクラムを組んだ。早大は帝京大のプッシュにも微動だにせず、序盤から違いを見せつける。2分、10分の帝京大ボールスクラムでアーリーエンゲージの反則を得た早大は着実に流れを引き寄せていく。試合が動いたのは12分。帝京大ゴール前でラインアウトモールを組んだ早大はHO佐藤健次主将(スポ4=神奈川・桐蔭学園)が持ち出し、トライラインに近づく。早いテンポで次々と攻撃を仕掛け、ディフェンスラインを崩すと、SO服部亮太(スポ1=佐賀工)からロングパスを受け取った田中健がインゴール右隅に飛び込んでトライした。続く17分、敵陣22メートルライン上で組んだマイボールスクラムを大きく押した早大は、アドバンテージを得ると右サイドに素早く展開。NO・8鈴木風詩(社4=国学院栃木)が持ち出し、SH細矢聖樹(スポ4=国学院栃木)からFB矢崎由高(スポ2=神奈川・桐蔭学園)へ。矢崎からバックフリップパスを受け取った田中健がインゴールを叩き割り、追加点を挙げた。さらに20分、服部の大きく伸びたキックに対し、処理が遅れた帝京大の隙を見逃さず早大はすかさずプレッシャーをかけた。LO西浦剛臣(社4=ニュージーランド・ハミルトン・ボーイズ・ハイスクール)がブレイクダウンでペナルティーを獲得すると、CTB福島秀法(スポ3=福岡・修猷館)が素早く再開。ゲインしたところでラックを作ると、狭いサイドで待っていた佐藤からパスを受け取った田中健が3本目のトライを挙げ、一気に19ー0とリードを広げた。26分、34分に帝京大FL青木恵斗に2トライを献上したが、前半終了間際に服部がアンストラクチャーの場面から一人でインゴールまで走り切るとスコアは26ー10。16点差で前半の40分を終えた。
ハーフタイムを終え、先にグラウンドに姿を現したのは早大。グラウンド中央で円陣を組み、後半開始の直前まで全員で意思を統一した。その甲斐もあり、後半も先に試合を動かしたのは早大。スクラムの一次攻撃でWTB池本晴人(社2=東京・早実)がゲインラインを切ると、逆サイドに大きくボールを回す。福島がステップでディフェンスの裏に出ると、オフロードパスを受け取ったのはまたも田中健。ライン際を走り切った。難しい角度のキックをCTB野中健吾(スポ3=東海大大阪仰星)が確実に沈め、33ー10とリードを広げる。続く10分、服部のロングキックのチェイスに走っていたLO栗田文介(スポ3=愛知・千種)、FL城央祐(スポ1=神奈川・桐蔭学園)、鈴木で帝京大のペナルティーを獲得すると、早大はショットを選択。Hポール中央に決め、さらに点差をつけた。さらに24分、マイボールラインアウトからハイパントキックを蹴り上げた早大は福島が空中戦を制すると、途中出場のSH宮尾昌典(スポ4=京都成章)がブレイク。一気に帝京大ゴール前まで侵入すると、持ち前のハイテンポアタックで前進する。最後は服部が自分でインゴールに手を伸ばしてトライを挙げた。帝京大はボールを保持する時間を増やすが、早大の鉄壁のディフェンスは前進を許さず、反撃の糸口をつかませない。後半の終盤という苦しい時間帯になっても出足は鋭く、赤黒のジャージーは守備でプレッシャーをかけ続けた。37分、帝京大が早大の圧力から逃れるように放ったふわりと浮いたパスを奪い取ったのは田中健だった。50メートルを走り切り、とどめのトライを挙げた。ノータイムに帝京大にトライを許すが48ー17と大きくついたリードを守り切り、試合終了の笛が鳴った。
「今試合ではセットプレーを中心に良いゲーム運びができた」と佐藤が振り返るように、帝京大の最大の武器であるスクラムで優位を取らせなかった早大。フィールドプレーでは服部のロングキックを中心に陣地を広げ、強固なディフェンスでボールを奪い取ることで帝京大に流れを渡さずにリードを広げた。また、佐藤は「今日この試合で勝つことができたのはBチームをはじめとする下のカテゴリーの選手たちが雰囲気を作ってくれたのが大きな要因」と語った。この帝京大との一戦に向けて、全員が早大のラグビーを体現するために戦った成果がまさに今試合の勝利だろう。対抗戦優勝、そして『荒ぶる』に向けて大きな白星を飾った早大。しかし、「対抗戦はまだ終わりじゃない」(佐藤)。次戦は一週間後に控える筑波大戦。『早稲田のプライド』を胸に、対抗戦全勝に向けて赤黒の戦士たちはひた走る。
(記事 村上結太、写真 西川龍佑)
コメント
大田尾竜彦監督(平 16 人卒=佐賀工)
ーー今試合の振り返りをお願いします
対抗戦の一試合以上の意味がある、何としても取り切らなければならない一戦であると考えていました。試合までの一週間の練習ではうまくいかない瞬間もあったのですが、選手たちはしっかりと乗り越えて今日の試合をやってくれたかなと思います。
ーー今日のキックゲームに関しては準備してきたものが発揮できましたか
夏合宿からキックチェイスのところを練習していたのですが、今日はそれがよくできたかなと思います。
ーーSO服部選手のプレーを振り返っていかがですか
服部はチームを救うプレーをしてくれていると思います。攻撃ではプレーメーカーとして機能してくれていると思います。
ーーこれからのシーズンに向けてどのように取り組んでいく予定ですか
コンディションの維持をメインに行っていきたいかなと思います。その中で、練習では自分たちのラグビーを実現するために、自分たちで声をかけていく「自律」のところをもっと鍛えていきたいと思っています。
ーーWTBの田中健選手のプレーを振り返っていかがですか
1年生ながらも堂々としたプレーをしてくれていると思います。彼の良いところはしっかりスイッチを入れられるところかなと思います。1年生としては珍しく、気負いせずにプレーできるところが彼の強みだと思っているので、これからももっと成長してほしいと思います。
佐藤健次主将(スポ4=神奈川・桐蔭学園)
ーー今試合の振り返りをお願いします
今試合はターゲットゲームの一つだったので、全員がコリジョンバトルで良いファイトができたことが良かったかなと思います。僕自身としてはHOになって3年目、帝京大学さんにはこれまでセットプレーで圧倒されてきた場面が多かったのですが、今試合ではセットプレーを中心に良いゲーム運びができたのかなと思います。今日この試合で勝つことができたのはBチームをはじめとする下のカテゴリーの選手たちが雰囲気を作ってくれたのが大きな要因だと思ってます。全員が今週帝京大と戦うんだ、という気持ちを持って練習に取り組めたことで、チームとして良い雰囲気でこの一週間を過ごすことができました。
ーー下のカテゴリーの選手たちが雰囲気を作ってくれたとありましたが、具体的にどんな雰囲気だったのですか
対抗戦のシーズンに入ってくると、少しずつ下のカテゴリーの試合数が減っていってモチベーションの意地が難しくなるんですが、帝京戦に向けて全員がコミットできていたことで良い練習ができたかなと思います。特に4年生の意識が高まってきていて、チーム全体が良くなっているかなと思います。
ーー今試合のテーマを教えてください
今日はコリジョンバトルとFWの内側からのファイトがテーマでした。良い場面は多かったと思いますが、勝って終わりではなく、これからのシーズンに繋げていきたいと思います。
ーーこれからのシーズンに向けてどのように取り組んでいく予定ですか
相手に合わせて練習するのではなく、一戦一戦、自分たちのラグビーをしてく為に自分たちにフォーカスして練習していきたいと思っています。
ーー復帰明けの初戦でしたが、コンディションはいかがですか
以前から少し気になっていた個所があり、それを直して100パーセントの状態で帝京戦に臨めるように少し期間をいただいていました。去年や一昨年は自分がゲインしてトライすることが良いことだと思っていましたが、今日はチームとして勝つために自分が何するべきかを考えながらプレーできたので、また一段と成長できた試合だったかなと思います。
ーー夏合宿での勝利は今試合での勝利に何か関係していると思いますか
夏合宿で勝てたことで、全員のメンタリティーが変わったのかなと思います。去年は「もしかしたら勝てるかも」という思いだったのが、今年は「自分たちのラグビーをすれば絶対に勝てる」という慢心ではない確信になったので試合の入りの部分から違ったかなと思います。今日の試合は勝てたらチームとして一気に成長できるチャンスだということはずっと言い続けていたので、勝てて良かったです。しかし、夏合宿では帝京に勝った一週間後に天理に負けてしまいました。今回は一週間後には筑波戦があります。対抗戦はまだ終わりじゃないので気を抜かず、しっかりと準備して筑波戦に臨みたいです。
LO西浦剛臣(社4=ニュージーランド・ハミルトン・ボーイズ・ハイスクール)
ーー今日の個人的なコンセプトを教えてください
今日はとにかく、練習でやってきたことを100パーセント出すということを自分のテーマとして臨みました。接点の部分で、コリジョンが強い相手に絶対負けないことも意識していました。
ーー久しぶりの試合でしたが、いかがでしたか
コリジョンの部分で、相手に超えられてしまって、2トライ目も自分のせいで取られてしまったので、コンタクトの部分は次の1週間でしっかり修正して、筑波大戦でいいプレーができたらなと思います。
ーースクラムの手応えはいかがでしたか
今日は前の3人がすごくまとまってくれていて、自分としても本当に押すだけでした。FWとしてこれを続けていきたいなと思います。
ーーチームのディフェンスを振り返っていかがですか
出足をすごい意識していました。何本か後手に回って前に出れないところや、オフサイドが多かったことがあったので、規律を守りながらしっかり前に出ることを意識していきたいです。
ーーご自身が貢献できたところはありますか
今日はまだまだだなと感じました。強い相手に対してコリジョンの部分で戦えないといけないと感じました。ワークの部分は貢献できたかなとは思いますが、もっと練習しないといけないと思います。
ーー今後の意気込みをお願いします
来週の筑波大戦から残りの慶應、明治、さらにその先の選手権に向けて、自分たちのラグビーを常にやり続けて、絶対に負けないようにやっていきたいと思います。
FL城央祐(スポ1=神奈川・桐蔭学園)
ーー今日のゲームコンセプトはなんですか
とにかくコリジョン、接点のところにフォーカスしました。自分はFLとしてタックルだったりいい仕事が出来たんじゃないかと思います。
ーー初めての対抗戦の帝京戦、どんな思いで試合に望みましたか
夏に戦って帝京がコリジョン強かったことは分かっていたので、そこで意識を相手に向けすぎず自分たちにフォーカスして試合に臨みました。
ーープレーで意識していたことはなんですか
相手が強いことが分かっていたので、ダブルタックルの部分で一人目は足を止めて二枚目の選手が強いタックルをするということです。そこも意識してできていたので良かったと思います。
ーー同期の活躍を見て率直に思ったことを教えてください
とにかくとても嬉しく思いますし、これからプレーしていく仲間として心強いです。
ーー今後の意気込みをお願いします
一週間後に筑波戦があって、これから厳しい試合が続くのでしっかりリカバリーして次に向けて準備をしていきたいです。
WTB田中健想(社1=神奈川・桐蔭学園)
ーー帝京大にこれだけのトライを挙げられたというのはいかがですか
どの試合にかける意味というのはそんなになくて、しっかり一試合一試合、自分に与えられた役割を果たすことが大事だと思っています。けれどターゲットにしていた試合だったのでやっぱり嬉しいです。
ーー太田尾監督が「対抗戦の初めは緊張していたけれど、だんだん落ち着いてきた」と仰っていたが、それについてはいかがですか
だんだん慣れてきたので、自分のやるべきことを明確にして、あとはしっかりパフォーマンスを出していこうと思います。
ーー早稲田を進学先に選んだ理由は
ラグビーも勉強もしっかりできるというところです。ラグビー以外のことも考えて、ケガしてもしもラグビーがなくなってしまった時に、自分がどういったキャリアを歩んでいきたいのかを考えて選びました。
SH宮尾昌典(スポ4=京都成章)
ーー今日のコンセプトはなんですか
「勝つ」ですかね。これ以上の部分でチームで戦うっていうのがチームとしてのコンセプトでした。
ーー久しぶりのAチーム出場でしたが、率直な思いはいかがですか
出場時間短いなって感じですね。もっと長い時間やりたかったです。
ーー自身のプレーを振り返っていかがですか
スクラムからのペナルティの判断が今回のゲームでの課題かなと思います。久しぶりの試合だったので感覚を取り戻しつつやっていければいいかなと思います。
ーー今後の意気込みをお願いします
早稲田の9番に戻って優勝できるように頑張ります。