接戦繰り広げるも・・・ 因縁の早慶戦 勝利はまた来年に持ち越し

水球男子
TEAM 1P 2P 3P 4P
早大 12
慶大 13
▽得点者
古谷3、永野3、中村2、加納(恒)2、都田、曳地

 伝統の一戦・早慶対抗水上競技大会(早慶戦)。今年は有観客開催となり、会場には大勢の応援団が訪れた。3年ぶりの勝利を狙う中、今季の対戦成績は2勝1敗。「絶対に勝とうと決めて」(都田楓我主将、スポ4=鹿児島南)」。「今までチームを引っ張ってくれた主将のためにも」(永野冬惺、スポ1=東京・明大中野)」。こうして、各々の思いで臨む早慶戦の幕が上がった。試合開始早々からカウンターをうまく利用し、3連続得点。その後は一進一退の展開が続き、6-6のタイスコアーで前半を終えた。後半も変わらず接戦を繰り広げるが、第3ピリオド(P)終了時点では1点をリード。しかし最終Pで勢いを失い、1得点に留まった。この間に慶大に強烈なカウンターやセットプレーからの攻撃を受け、残り40秒で逆転を許す。ここから最後までボールを奪うことはできずに、12-13で試合終了のブザーを迎えた。

試合前に円陣を行う選手達

 試合が開始された途端に、応援部を先頭にした大きな歓声が響き渡る。開始30秒で先制されるも、1分半にペナルティスローのチャンスがやってきた。ここは相手GKに止められるが、そのセットプレーからボールを受けた加納恒心(スポ1=東京・明大中野)が早大最初の得点を決めた。そしてその直後、曵地孝太郎(スポ3=埼玉・秀明英光)が中心となってボールを引っ張り、中央付近のスペースに陣取っていた永野冬惺(スポ1=東京・明大中野)へと的確にパス。これを見事にゴールに変えた。さらに3分にも再び永野が中央からシュートを決め、早大が3連続得点。しかしこの後は、セットプレーで無得点に終わるなどチャンスをものにできず、その間に2得点を許してしまう。ラスト30秒で相手のパスカットに成功し、中村大智(スポ3=埼玉・秀明英光)が前線まであがってくると、最後は加納(恒)がシュート。ルーキー2人の活躍が光り、4-3と一歩リードで第1Pを終えた。

個人3得点のルーキー・永野

 続く第2P、序盤はなかなか攻撃の契機が掴めない。カウンターからのアタックを狙うも、逆に大きく返されてしまう展開が続き、4分半までに3連続失点。ようやく6分半、この苦しい空気が断ち切られる。中村がカウンターから左サイドを使って上がってくると、古谷典也(スポ2=東京・明大中野)へパス。ゴール真横の厳しい位置から、鋭くボールを突き刺した。さらに残り5秒には、またも永野のポジショニングが冴え渡り、回ってきたボールを的確に決め入れた。こうしてピリオド終盤で立て直し、6-6と同点で前半を折り返す。

ペナルティスローを成功させる古谷

 得点を稼ぐしかない後半。展開は超高速なカウンター合戦に。第3P早々に1点を失ったが、その後中村がパスを回しながら攻撃の領域を広げ、右サイドからのループシュートで返上。そしてインターセプトを受けたところからまたも得点を奪われると、3分、都田楓我主将(スポ4=鹿児島南)がチャンスを作る。ハーフライン辺りで古谷からボールを受けると、フルで迫ってくる相手ディフェンスを自らくぐり抜ける。阻止の手を感じさせない技ありのシュートで、チームを引き締めた。その直後のカウンターでも、中村から曵地孝太郎(スポ3=埼玉・秀明英光)にボールが届き、中央からネットに投げ込んだ。この後古谷のペナルティスローも成功し、3連続でゴール。しかし再び2点を奪われ、タイスコアーと思われた残り10秒。相手ゴール前で反則を誘い、そのまま早大ボールに。都田からハーフライン付近で控えていた中村に素早くパスが送られると、水面を滑らせるようにシュートをかけた。この得点によって11-10と1点のリードを取り、命運は第4Pに託された。

最後の早慶戦を迎えた都田。来年は後輩に思いを託す

 決死の最終P。互いに厳しいディフェンスが効いている中、3分から慶大が2得点。大きくカウンターを取られ、逆転のゴールを割られる。「ディフェンスが組織的に守られていた」(古谷)。早大はシュートに至っても防がれる展開が続き、6分まで無得点。ようやく残り2分、古谷が自らの前進でネットを揺らし、再び同点に。GK加納凪人(スポ2=三重・四日市中央工)はこの試合幾度となくシュートを止めてきたが、ラスト40秒でセットプレーから逆転を許す。最後には両校ともタイムアウトを使い、早大も十分に陣形を立て直したが、相手ボールのまま試合は終了。高らかに突き上げられたボールと、歓喜の叫びを上げて集まる慶大の姿。それに顔を背けるようにして、敗北を噛みしめていた。

試合後の選手達。プールから上がると悔しさをにじませた

 宿敵・慶大に向け、そして唯一の4年生である都田主将に向け、それぞれが深い思いを持って挑んだ今年の早慶戦。しかし結果は納得できるものではなく、試合直後は涙を流す選手も見受けられた。だがインタビューの時間には、各々が今後へのさらなる飛躍を前向きに誓った。特に都田は「全力は出し切った」と清々しい表情を見せた。今季、多くの好ゲームを繰り広げてきた一方で、最後の重要局面を落とすことも多かった早大。9月に行われる日本学生選手権では、「勝負強さ」に磨きをかけ一層力をつけた姿に期待したい。

 

※重大なファウルを犯した選手は、20秒間ディフェンスに参加できない。

 

※掲載が遅れてしまい、申し訳ありません。

  

(記事 中村凜々子 写真 堀内まさみ、中村凜々子)

コメント

  

都田楓我主将(スポ4=鹿児島南)

――最後の早慶戦でした、どんな思いで臨まれましたか

 最後の早慶戦ということでたくさん対策もしてきて、絶対に勝とうと決めていたのですが、思うような試合運びにできませんでした。悔しいという気持ちもあるのですが、全力は出し切ったので、あまり悔いはないですね。

――では課題というよりは今後に向けて何かを、というところですか

 厳しいことを言うと細かいミスはあったので、それをインカレまでに修正してもっと万全な状態で試合に臨めるように頑張ります。

――今後、後輩選手達にどんな成長を期待しますか

 この悔しさというのをどれだけ長く、自分の心の中に秘めておくことができるかが成長に繋がると思うので、この気持ちをずっと持ち続けたままみんな練習に取り組んでもらえればもっとすごい選手になっていくと思います。

――最後に残りシーズンに向けての意気込みをお願いします

 まずはユニバーシティゲームズもあるので、そちらでもしっかり成績を残しつつ、インカレでは上位に食い込んで最後はいい形で終われるように頑張りたいと思います。

中村大智(スポ3=埼玉・秀明英光)

――今日の試合全体を振り返っていかがでしたか

 昨年は自分のやりたいことをやった上で負けてしまったのでとても悔しくて、涙がずっと出ていたのですが、今年はやりたいことが決まっていた上で、自分がしたいプレーとやったプレーが違いすぎました。悔しいというよりは、自分の力をこういう場所で出せないというのが、まだまだ実力不足だなと痛感しました。

――具体的に昨年との違いはどんなところでしたか

 戦術自体は昨年と同じことをしたのですが、失点の仕方が全然違いました。昨年はミドルシュートをかなり決められていたので、そこをケアしていました。今年は、ミドルシュートはしっかり止められていたのですが、落ちた球を拾われて決められたり、1対1でここだけは守らないといけないというところで得点されてしまったり、やりたいことが出来ていた上で失点をしていたので、そこが反省点だなと思います。

――少し早いですが、来年に向けての思いはもう募っていますか

 そうですね。来年は自分も最後になってしまうので、今まで勝ちがない分、来年は点差を離して勝てるように。同期は自分含めて4人いるので、どうすればいいかというのをみんなでしっかり考えながら、あと1年過ごしていきたいと思います。

――最後に残りシーズンへの意気込みをお願いします

 早慶戦という1つ大きな大会が終わってしまったので、次は選出して頂いているユニバーシアード、世界大会というところになってきます。自分の持ち味である1対1とカウンターをしっかり出せるようにしたいと思います。インカレはまた早稲田大学で出ることになるので、今回の試合の反省をしっかり生かせるようにします。

古谷典也(スポ2=東京・明大中野)

――昨年の早慶戦で強く悔しがっていた姿が印象に残っています。今年の試合はいかがでしたか

 昨年の早慶戦は自分が永退(永久退水、1試合につき3回重大なファウルを犯すと、それ以降その試合に出場ができなくなるルール)をして何もできない状況で負けてしまいました。今年は永退こそしなかったですが、最後は自分のミスというかターンオーバーで相手に得点を許したこともあって結構悔やまれる部分も残ってはいます。もう少し何かできたんじゃないかなというか、楓我さんのために勝ちたかったなというのはあります。

――よかった部分もありましたか

 個人的に調子は悪くなかったと思います。ただ、相手のディフェンスが組織的に守られていて、そこを攻略しようとはしたのですが、一枚上をいかれたかなと。気持ちよく楽しくプレーはできたのですが、やはり勝ち切れなかったというのは今日の試合どうこうではなく、日頃の積み重ねなのかなと思います。今日の試合に悔いがあるというよりは、もっと今までに何か別のことができたんじゃないかと感じますね。

――来年の早慶戦に向けて何を思いますか

 昨年は負けて慶應が唄っている姿を観て、今年も慶應がとても喜んでいるのを目の前で見て。2年連続こういう姿なので、来年こそは早稲田の観客がみんな喜んでくれて、自分達も一緒に喜べるように。結果にこだわって、楽しむだけでなく勝ちに行くというのを目指していきたいと思います。

――最後に次戦であるインカレに向けて、意気込みをお願いします

 インカレまでまだ1ヵ月半位あるのでそこに向けて、個人のスキルアップももちろんですし、勝てるチームを目指して頑張っていきたいと思います。

永野冬惺(スポ1=東京・明大中野)

――初めての早慶戦でしたが、どのような気持ちで臨まれましたか

 主将が4年生1人しかいないので、今までチームを引っ張ってくれた楓我さんのためにも頑張ろうという気持ちでした。

――実際にプレーしてみていかがでしたか

 1点差で負けてしまって、負けという事実は変わらないので、楓我さんにはすごく申し訳なく思います。振り返ると、この失点がなければ、この退水がなければ、と思ってしまうのでどうしても悔しい部分は残ります。

――個人3得点と大活躍でした。個人のプレーを振り返るといかがですか

 元々僕が慶應から見てそんなに強くないほうなので、空けてくるというのは予想していて、思い切りシュートを打つというのは決めていました。なので打って決められたのはよかったです。ですが、ディフェンスのところでやはり失点に絡むケースが多かったので、ここからインカレに向けて、もっと1対1を強くしていかないとなと思いました。

――最後にインカレに向けての意気込みをお願いします

 オフェンス面は引き続き得点力を伸ばせるようにというのと、ディフェンス面は1対1で相手に負けないような力強さをつけていきたいと思います。頑張ります!