慶大に力負け　賜杯奪還とはならず／慶大３回戦

　勝ち点を取った方が優勝という早慶戦。早大は１回戦でサヨナラ勝ちをしたものの、２回戦は打線が沈黙し敗北を喫する。この日、１勝１敗のタイで、運命をかけた３回戦に臨んだ。廣瀬隆太（４年）の２ランで先制を許すと、７回表にも救援陣が３点を失い、終始追いかける展開となる。打線は、６回裏に印出太一（スポ３＝愛知・中京大中京）の遊ゴロの間に１点を返し、７回にも田村康介（商２＝東京・早大学院）の適時打などで２点を返したが、反撃及ばず敗戦。これをもって慶大の４季ぶり40回目の優勝が決まった。

９回２死で三振に倒れ、うつむく森田朝

　早大の先発は中１日での登板となったエース・加藤孝太郎（人４＝茨城・下妻一）。初回に四死球で２死満塁のピンチを招くも、粘りの投球で得点を許さない。するとその裏に、相手先発の外丸東眞（２年）の立ち上がりを攻め、１死一、三塁の好機をつくる。しかし、４番の印出が併殺に倒れ、先制点を奪うことはできない。

　試合が大きく動いたのは３回表の慶大の攻撃。無死一塁で廣瀬が初球を振り抜くと、打った瞬間に入ったと分かる会心の一発で２点を先制される。加藤はその後、４、５回にも得点圏に走者を進められたが、魂のこもったピッチングでしのぎ、５回２失点でマウンドを下りた。加藤の粘投に応えたい打線だったが、外丸を前に苦戦を強いられる。内野ゴロを量産する単調な攻撃が続き、２回から５回まで放った安打は、３回の田村の内野安打１本のみとなった。

先制の本塁打を浴びた加藤

　６回表には、前日の２回戦で２失点を喫した前田浩太郎（スポ４＝福岡工）が登板。三者凡退に抑える好投で、見事にリベンジを達成した。すると、その裏に打線がつながる。先頭の尾瀬雄大（スポ２＝東京・帝京）が左前打で出塁。その後、盗塁と熊田任洋副将（スポ４＝愛知・東邦）の左前打などで１死二、三塁とすると、印出の遊ゴロの間に尾瀬が生還し、１点を返した。

　１点を取り盛り返した早大だったが、７回に救援陣がつかまる。澤村栄太郎（スポ４＝早稲田佐賀）が先頭の本間颯太朗（３年）にソロを浴びると、その後も相手の猛攻を止めることができず、１死一、三塁となった時点で香西一希（スポ１＝九州国際大付）にスイッチ。しかし、香西も火消しをすることができず、齋藤來音（４年）、水鳥遥貴（３年）に連続適時打を浴びてこの回計３点を失った。

適時打を放つ田村

　４点差となったが、早大ナインは諦めていなかった。７回１死から小澤周平（スポ２＝群馬・高崎健康福祉大高崎）が右翼フェンス直撃の三塁打で出塁すると、続く田村が左前に運び１点を返す。ここで、満を持して代打・森田朝陽主将（社４＝富山・高岡商）がコールされた。森田朝主将が３球目を振り抜くと、中前へのクリーンヒットとなり、１死一、三塁となる。この場面で尾瀬が犠飛を放ち、さらに１点を返した。続く島川叶夢（スポ４＝熊本・済々黌）が右前打を放ったところで、慶大は外丸から左腕・森下祐樹（４年）にスイッチ。２死一、三塁という絶好のチャンスだったが、熊田副将が一ゴロに倒れ、勝ち越しとはならなかった。

　８回には齋藤正貴（商４＝千葉・佐倉）、９回には伊藤樹（スポ２＝宮城・仙台育英）の、今季ブルペンを支えてきた２人が登板。齋藤正、伊藤樹共に流石の安定感を見せつけ、０点に封じる。しかし、打線は８回は３人で抑えられ、９回も簡単に２死を取られる。９回２死で最後の打席に立ったのは、森田朝主将。１ボール２ストライクからの４球目を強振したが、バットは空を切り三振。早大の敗戦が決定し、マウンド上には慶大選手たちの歓喜の輪が出来上がった。

９回を抑えた伊藤樹

　「賜杯奪還」を目標に掲げ、１年間活動をしてきた早大野球部。今春は４位という歯がゆい結果に終わったが、決意を新たに秋季リーグ戦を戦ってきた。明大に敗れて一度は優勝が遠ざかったが、慶大が明大から勝ち点を奪ったため、優勝の行方は早慶戦に委ねられることに。その早慶戦では、１回戦では劇的勝利を飾ったが、２、３回戦は『陸の王者』を前に屈した。そして、この試合で最も印象深かったのは、７回に森田朝主将が代打出場し、８回から守備に就いた場面だ。体調不良や不振に悩んだ時期もあったが、最後の大一番で主将としての雄姿を刻んだのだった。これで「チーム森田朝陽」は終了し、世代交代となる。「賜杯奪還」の目標は、後輩たちへと託された。

（記事　齋藤汰朗、写真　田中駿祐）