今回登場するのは島川叶夢(スポ4=熊本・済々黌)、中村将希(教4=佐賀・鳥栖)の4年生コンビだ。九州の公立高校から神宮の舞台まで登りつめた二人に、早大野球部での4年間、集大成となる東京六大学秋季リーグ戦(秋季リーグ戦)への思いを伺った。
※この取材は8月31日に行われたものです。
「全体で秋のリーグ戦に向かっていく準備はできた」(島川)
――他己紹介をお願いします
中村将 島川は野球に対しての意識がすごく高い選手だなっていうのが印象です。野球に関してはバッティングだったり、ウエートトレーニングもそうなんですけど、自分でしっかり情報を集めて寡黙に取り組んでいます。 普段の生活は結構面白いやつなので、自分は結構仲いいんですけど、普通に話す内容とかも結構おもろいなって思うので、普通におもろいです(笑)。見た目のそのままです。
島川 頼りになるバッターですね。守備はあれなんですけど、バッティングでとにかくチームを引っ張っていってくれる存在です。下級生とかも結構背中で引っ張っていくようなタイプの人間で、自分は結構頼りにしています。
――プライベートでも仲がいいとお話がありましたが、普段はどんなお話をされますか
中村将 野球の話が結構多いかなって思います。
――お二人は九州の公立高校出身ですが、お互い意識されますか
島川 意識はしないですけど、 親近感湧くって感じですね(笑)。
中村将 結構似たもの同士なので、一緒に頑張りたいなっていうのは思います。
――野球面でお互いの「ここがすごい」というポイントを教えてください
島川 バッティングです。選球眼もいいし、多分本人も目のトレーニングとかに取り組んでいて、バッティングとかも結構考えてやっています。それが結果として春のリーグ戦もそうですけど、オープン戦も結構当たっているので期待しています。
中村将 自分は逆方向の飛距離、逆方向に飛ばす力っていうのは自分にないところなので、 そこが結構すごいなっていうか。右中間にホームラン打ったりするので、そこが結構すごいなって思うところです。
――南魚沼キャンプ全体を振り返っていかがでしたか
島川 自分たちは最後のキャンプで、とにかく春は悔しい結果だったので、とにかく秋優勝できるようにっていうことを常に考えてキャンプに取り組みました。まだリーグ戦に取り組んでみないと分からないですけど、キャンプでたくさん練習して、普段寮に入っていない選手とかも一緒に共同生活して、お互いのコミュニケーションだったりっていうのはいつもより取れたと思いますし、全体で秋のリーグ戦に向かっていく準備はできたかなと思います。
中村将 個人としては野球生活最後のキャンプっていうところもあって、野球漬けの日々を送るっていうのは最後だったので、とにかく悔いがないようにやり抜こうっていうことを自分は考えていて。 チームとしても春は悔しい結果で終わってしまったので、その中でやっぱりなんとなくでやるんじゃなくて、一球一球を本当に最後だと思って「この一球で決まるんだ」っていうことを常に考えながら新潟キャンプでプレーしました。その点に関してはやり抜いた、自分にとってもこの秋のリーグ戦の結果がどうなろうと、やれることはしっかりやってきたなっていうのは一番に思ったので、そういう意味でも充実したキャンプだったなっていうふうに思います。
――お二人は全早稲田戦に出場されましたが、いかがでしたか
島川 とにかくもう自分たちはまだ力不足だなっていうのを感じたのとともに、上でやっている先輩方のプレーを見て、やっぱりすごいなっていうのは率直に思いました。
中村将 点差を見たら分かると思うんですけど、これがそのまま自分たちの力の差だと思うので、あの試合を経てやっぱりこのままでは全然通用しないなっていうのを思ったと思うので、それを思わせてくれるような先輩方に勉強させてもらったいい試合になったと思います。
――お話された先輩方はいらっしゃいましたか
島川 レセプションの時にトヨタの佐竹さん(佐竹功年、平18人卒=現トヨタ自動車)と河原さん(河原右京、平28スポ卒=現トヨタ自動車)が同じ席でお話しました。
――どんなお話をされましたか
島川 結構今の早稲田のことの話が多くて。そんな感じです。
――中村将選手はいかがですか
中村将 自分は萌斗さん(鈴木萌斗、令3スポ卒=現明治安田生命)と橘内さん(橘内俊治、令3教卒=現明治安田生命)が年代も近くて、現役で早稲田でやっている時から仲良かったので結構話しました。
「圧倒的な超攻撃的な2番打者を目標としてやっている」(中村将)
質問に答える中村将
――リーグ戦についてお聞きします。東京六大学春季リーグ戦(春季リーグ戦)は4位に終わりました。春を終えてチームとして意識してきたことや取り組んできたことはありますか
島川 春はやっぱり大量失点する試合が多くて、あとはいいピッチャーを打ち崩せていないというか、やっぱり明治との力の差を感じました。そこで圧倒的にやられたので、とにかく打撃陣は甘い球を振って、ストライクを打ってボールを見逃すっていうのを金森助監督(金森栄治助監督、昭54教卒=大阪・PL学園)が徹底して言われています。それはもう自分たちの中で今までずっと口酸っぱく言ってやってきました。投手陣の取り組みは自分たちはあんまり分からないですけど、春よりは目の色変えてやっているかなって思います。
中村将 チーム全体として意識してきたことは、一球の大切さだと思います。法政戦の第4戦が春のリーグ戦の全てをやっぱり握っていたなって思うんですけど、9回1アウトまで1点差で勝っている状況で、最後逆転ツーラン打たれてそのまま負けてしまいました。やっぱり最後の最後まで何が起こるか分からないというか、心の中ではどこか「勝てるな」ってちょっと隙があったのかもしれないですし、それはもうチーム全体の反省です。「一球入魂」っていうスローガンがあると思うんですけど、一球も気を抜いてはいけないというか、何が起こるか分からないので、逆もしかりだと思いますし、チーム全体として一球に対する執着心っていうのは上がったのかなっていうふうに思います。
――春季リーグ戦の結果を受けて、4年生の中で話し合ったことはありますか
中村将 話してはないですけど、やっぱり軸となる森田(森田朝陽主将、社4=富山・高岡商)が結構体調的にも苦しい時期が続いているので、そんな中で4年生全員がキャプテンの気持ちで、自分たちが引っ張るっていう気持ちでやることが大切なんじゃないかっていうのはそれぞれ感じている部分はあると思います。そこをやっぱりチームをまとめることも任せっきりにしないというか、それぞれが引っ張る意識があれば自然とまとまると思うので、そういう意識は全体にあるんじゃないかなっていうふうに思います。
――ここからは中村将選手にお聞きします。個人として春のリーグ戦を振り返っていかがでしたか
中村将 個人としては結果的にタイトルを取れなかったっていうのが自分の中で一番大きかったなと思います。今まで目標として首位打者を取ること、そしてベストナインを取ることっていうのを目標に掲げてやってきた中で、春はベストナインを取る自信が自分の中でもあったシーズンでした。そこで途中までは自分の思い通りの成績も出たんですけど、最後の2カードで失速してしまってタイトルを逃してしまったっていうのが、やっぱり自分の中で悔しかった部分です。あと1シーズンしかないんですけど次につなげたい部分、自分の課題かなっていうふうに思います。
――春は届かなかった首位打者に向けて、必要になる部分はどういったところですか
中村将 調子を安定させることっていうのは第一だと思うんですけど、技術的な部分だけじゃなくて、やっぱりどうしても数字だったり気にしてしまう部分があります。精神的に強くなることというか、普通通りにやれば結果は後からついてくると思うので、数字を気にしすぎないというか、打てなくても次のカード、次の試合で取り返せばいい結果が残せると思うので、自分に左右されない、数字に惑わされないことが1番大事かなっていうふうに思います。
――打線の中では不動の2番打者に定着しています。2番という打順には慣れてきましたか
中村将 そうですね。去年の夏からはずっと2番を打っているので、そういう意味ではもう2番が自分の中では1番打ちやすい打順かなっていうふうに思います。
――早大の2番打者に求められる役割はどういったところでしょうか
中村将 早稲田の2番打者として打棒早稲田じゃないですけど、 打ち勝つ早稲田の野球っていうのがファンの方も見たいと思うので、そういう意味でつなぐのはもちろんなんですけど、やっぱり圧倒的な超攻撃的な2番打者っていうのを自分は目標としてやっているので、送りバントからホームランまで打てる、そんな選手になりたいなって思っています。
――先日の夏季オープン戦後のインタビューで、「夏の練習を通して、自分のバッティングをしっかり構築できている」というお話がありました。夏の期間に意識してきたテーマや取り組んできた練習はありますか
中村将 意識してやっていることはとにかく脱力することと、バットを内から出すことです。大きく言ったらそんな感じなんですけど、自分の癖として力が入って突っ込んでしまう部分があるので、ボールは自分のところに来るから自分は追いかけないというか、そういうことを意識してやっています。あとはやっぱりどうしても欲が出ると、ヒットが打ちたいとか長打が打ちたいってなると、バットが遠くから出てしまうので、できる限り体の近くからバットを出すような意識をずっと意識してやってきました。取り組んできた内容は主に自分は置きティーなんですけど、1年生の時からずっと置きティーで練習しているので、それが一番自分に合った練習法だなって思って置きティーをやっています。
「とにかく毎日練習あるのみっていう感じで今はやっている」(島川)
質問に答える島川
――続いて島川選手にお聞きします。個人として春のリーグ戦を振り返っていかがですか
島川 個人としてはほとんどが代打の出場だったので、大事な場面を任されることが多かったです。全部が全部いい結果で終わったわけじゃないですけど、打点はあげることはできたので、そこの代打としての役割は良かったと思います。でもやっぱり自分としてはスタメンで出たいっていう気持ちがずっとあったので、そこでスタメンで出れなかったっていうところはやっぱり悔しい春のリーグ戦だったと思います。
――ファーストで激しいレギュラー争いが行われていると思いますが、そこについてはいかがですか
島川 やっぱり自分もスタメンで出たいですし、今ファーストを争っている野村(野村健太、スポ4=山梨学院)だったり、田村(田村康介、商2=東京・早大学院)、生沼(生沼弥真人、教4=東京・早実)とかいるんですけど、みんな打撃が持ち味の選手なので、そこで自分が打撃で負けていたら他に追いつかれてしまいます。とにかくみんな切磋琢磨(せっさたくま)しながらできると思いますし、自分は圧倒できる実力がまだないので、とにかく毎日練習あるのみっていう感じで今はやっています。
――春は大事な場面での代打起用が多かったと思います。代打の切り札として、ベンチではどのような準備をしていましたか
島川 自分の代打は左ピッチャーの時がほとんどだったので、左ピッチャーの情報っていうのは試合前とか、データのミーティングだったりで頭に入れて、試合でいざベンチで見て、今日どういう球投げてるとか、どんな配球してるとかっていうのをずっと考えながらベンチにいてます。いざという時、自分の出番が回ってきた時にそのベンチで考えていたことを出して、初球の配球だったりとかっていうのを、やっぱり代打だったら初球は結構大事になるので、 初球から振っていける準備っていうのをしていました。
――左投手に対しての得意意識はありますか
島川 特にはないです。右ピッチャーが好きだったり左ピッチャーが好きっていう意識はあんまりないんですけど、実際左ピッチャーの方が打っていると思うので得意ではあるのかなって思います。
「最後は最高の活躍をして終わりたい」(中村将)
取材に応じる二人
――お二人への質問に戻ります。秋は早稲田大学野球部での集大成となると思います。早大野球部での3年半を振り返っていかがですか
島川 あっという間だったなっていうのは結構あります。気づけばもう4年生の最後のリーグ戦っていうのはありますし、あとはやっぱり自分は熊本の公立高校から来て、早稲田で野球やりたいと思ってこっちに来たんですけど、最初は先輩方のプレーとか見て、「ここでスタメン張っていけるのかな」とか、自信はあんまりなかったんですけど、やっぱり早稲田で試合に出るっていうことが目標だったので、とにかくそこはもう負けずに練習して、まだ自分の思うようなプレーだったり活躍はできてないんですけど、いざ神宮に立ってプレーして、やっぱり応援もすごいですし、幸せだなっていうのは感じます。まだ終わってないですけど、振り返ってみればいい4年だったかなっていうのは思います。
中村将 自分も田舎の佐賀県から早稲田で野球がやりたいと思って入学してきて、やっぱり最初の頃は挫折することばかりで、自分がやっていけるのかっていう不安もありましたし、自分に自信がなくて結構苦しい思いを最初にしていました。そこに怪我が重なって苦しい思いがあった分、3年生でスタメンで出れた時は本当に嬉しくて。それと同時に早稲田のこのユニホームを着ることの責任の重さというか、ものすごい歴史と伝統のある大学なので、自分のワンプレーで多くの人が喜んだり、多くの人が肩を落としたりする、それだけ影響力のある大学だなっていうのを3年生の頃に感じたなって思います。そして今は自分個人としても経験も積んできて、次のシーズンが最後になります。最後の最後は堂々とプレーして、「自分が早稲田を優勝させる」っていうぐらいの気持ちでやりたいので、集大成となる秋のシーズンはより自分に期待してほしいなっていうのは感想です。
――早大野球部を志したきっかけはありましたか
島川 自分は早稲田OBの大竹耕太郎選手(平30スポ卒=現阪神タイガース)です。今は阪神なんですけど、済々黌の時から甲子園で出られていて、それで済々黌に行きたいっていうのもあって済々黌に行って。大竹さんが早稲田で活躍しているの見て、自分も早稲田行きたいなと思って。ちょうどその時に、大竹さんが4年の時にオール早慶戦が熊本で開催されて、それを見に行って「早慶戦すごいな」って感じて、そこから早稲田を強く意識するようになりました。
中村将 自分は母校の鳥栖高校のOBで内山さん(内山秀典氏、平20スポ卒)って方がいます。その方が自分の17個ぐらい上だと思うんですけど、高校時代に侍ジャパンに選ばれて鳥栖高校から早稲田にスポーツ推薦で入って。その方の話とかをいろいろ聞いていくうちに、早稲田で野球をやることの素晴らしさというか、「かっこいいな」っていうのを一番に感じました。自分もあの早慶戦の舞台に立ちたいっていうのが一番の思いで、その思いがあったから早稲田入学まで来れたのかなっていうふうに思います。
――秋のリーグ戦開幕が迫ってきましたが、現在の心境を教えてください
島川 とにかく「やるだけだ」っていう感じで、腹くくってるっていう感じです。自分はまだスタメン確定っていうところまでいけていません。これからまだあと2週間あって争いも激しくなっていくと思うんですけど、とにかく自分はもう全力を出し切るっていう意識で、もうリーグ戦も(残り)1回なので、とにかく全力でぶつかるっていう、ただそれだけです。
中村将 自分もやることはもう全てやってきたので、いつ開幕しても問題ないぐらいの準備はできています。自分が関わったリーグ戦で優勝したことはまだないので、1年生の秋以来の優勝を自分が4年生の秋で成し遂げたいと思っています。とにかくチームの勝利のために、チームが優勝できるために、少しでも最善の準備をして活躍できるようにやっていきたいなっていうふうに思ってます。
――秋季リーグ戦でのアピールポイントを教えてください
島川 チャンスでのバッティングでお願いします。
中村将 自分もバッティングなんですけど、全打席注目してほしいなって思います。
――最後に、秋季リーグ戦に向けて意気込みをお願いします
島川 最後のリーグ戦なので絶対に優勝して、その後の神宮大会(明治神宮大会)でもチームが発足した時からの目標である日本一に向かって頑張っていきたいです。あとやっぱり4年間同じ環境で同級生たちと、後輩もそうですけど、最高の仲間と出会うことができたので、みんなで最後笑って終わりたいなと思っています。
中村将 個人としても次のリーグ戦で野球人生は終わりになるので、今まで15年間野球を続けてきて最後の最後はやっぱり勝って笑って終わりたいです。そのために先ほど島川も言ったんですけど、この大学で多くの出会いがあって、先輩だったり後輩だったり、同期のいろんな思いがあると思うので、その思いを背負って神宮でプレーするっていうことになると思います。最後は優勝の立役者になれるように最高の活躍をして終わりたいなって思います。
――ありがとうございました!
(取材・編集 田中駿祐、矢彦沢壮真)
ラストシーズンに期待です!
◆島川叶夢(しまかわ・かなむ)(※写真左)
2001(平13)年9月17日生まれ。172センチ、83キロ。熊本・済々黌高出身。スポーツ科学部4年。内野手。島川選手が対戦したい投手に挙げたのは、同じ熊本出身の蒔田稔投手(明大)。小学校時代には同じクラブチームでバッテリーを組んだ経験も。同郷のライバルから勝負を決める一打を放ちます!
◆中村将希(なかむら・まさき)
2001(平13)年7月26日生まれ。180センチ、87キロ。佐賀・鳥栖高出身。教育学部4年。外野手。南魚沼キャンプでは、印出太一選手(スポ3=愛知・中京大中京)や吉納翼選手(スポ3=愛知・東邦)、中村敢晴選手(スポ3=福岡・筑陽学園)と一緒にスマブラをプレーしたことが思い出だそうです!