春から格段に成長したチームを引っ張っている中川卓也主将(スポ4=大阪桐蔭)。自身はこれまで満足のいく成績を残せていないが、この男なしでは早稲田の快進撃はなかったはずだ。自身最後の早慶戦に勝利し、春の雪辱を晴らす。
※この取材は10月22日に行われたものです。
本当に後輩が頑張ってくれているおかげ
主将の声掛けは頼もしいだろう
――ここまでの戦績を全体的に振り返っていかがですか
本当に後輩が頑張ってくれているおかげでここまでこれています。
――少ないチャンスをものにして勝てています。オープン戦から継続してそのまま相手投手に対策できている結果ですか
そうですね。夏のオープン戦の時から低めのボールは捨てていこうという話はずっとしています。低めのボールを捨てて高めのボールを自分のスイングできるようにということをこの夏徹底してやってきたので、それがいいかたちにというか、それが徹底できて今はいいかたちでみんな打てているのかなと思っています。
――法大戦は2試合とも僅差の接戦を制しました。勝ち点を取って勢いがついたと思いますが、チームの雰囲気はいかがでしたか
早稲田はここ数年開幕戦に弱く、あんまり勝ち点を取れているという記憶がほぼほぼなかったので、強い相手ですけどなんとしても勝ち点を取れるようにと思ってみんな気合も入ってやっていました。ピッチャー中心に頑張ってくれて、守備もエラーなく2試合終われているので、そういうところが結果につながって良かったなと思います。
――明治に2連敗してしまった要因は何だと考えていますか
一言で言うと準備不足というか、準備の意識が低かった、それに尽きると思います。1週間空いて、勝ち点取ったというのもあって、どこかにほっとした気持ちというのがチーム全体としてあったのかなと今考えたら思うので。その前の週に東芝と練習試合をやって、ボコボコにやられて負けているので、その結果が明治戦に反映されたようなかたちにはなってしまったと思います。
――明大戦を落としてしまい、すぐ東大から勝ち点を奪いましたが、空き週がなかったことは良かったですか
空き週がなかったからというよりかは、明治1試合目はいい試合というか、いいゲーム運びができたけど負けてしまったという感じだったんですけど、2戦目に17対4で負けてしまって。選手の中でも改めて危機感が芽生え出してきたので、そういった意味では空き週がなくてそのまま東大戦に入れたことが良かったのかなと思っています。
――立大戦2回戦で勝ち越してから伊藤樹投手(スポ1=宮城・仙台育英)とベンチ前で話していましたが、何を話していたのですか
吉野(蓮、1年)というピッチャーが出てきて、仙台育英出身だったので。それで持ち球とかどういうタイプのピッチャーかという確認はしていました。それと、その次の回に樹が投げるということを知っていたので、本当に最終回頼むぞと言いました。
――この勝利が一番大きかったなというのはありますか
やっぱり立教1回戦、延長で勝ち切れたというところは本当に良かったですし、あそこで負けていれば2戦目も同じように負けていて、勝ち点を落としていたんじゃないかというぐらいのゲームだったので、本当にそこは勝てて良かったです。
――勝っても驕らないようにしようと話したと以前おっしゃっていましたが、できていますか
そうですね。今は勝っても驕らずに謙虚にいけているんじゃないかなと思うので、それも早慶戦までも継続させて、勝ち点を奪えるような展開に持っていきたいと思っています。
――東大2回戦や立大2回戦は二桁安打とよく打っていましたが、打線の状態はどう見られていますか
4年生2人がもっと打てば楽な展開になるとは思うんですけど、後輩であったり、同級生の松木(大芽、スポ4=石川・金沢泉丘)だったり代打陣などが頑張ってくれて、点は取れているしヒットは打てているという状態です。あとはもう4年生2人が活躍できるかというのが勝負の鍵になってくるんじゃないかなと思います。
――よく粘っている投手陣はどう見られていますか
他大みたいに150km/h超えるようなピッチャーは少ないんですけど、それでも低めに丁寧に丁寧に四球なく投げてくれているので。後輩ばっかりなんですけど、本当に頼もしいというか、頼りになるピッチャー陣だと思います。
――ここまで、リーグ戦を通してチームとして成長できた部分はありますか
やっぱり負けている中でも、春は負けていたらお通夜みたいな、暗い雰囲気の中試合をすることが多かったんですけど。今はもうそういう雰囲気は感じられなくて、負けていたとしても絶対いける、1点を大事にしていこうということを常々言っているので、本当にその気持ちというのは成長できた部分かなと思っています。
――今季のチームのいいところはどこですか
春はできていなかった、明るく楽しくというか。楽しくというのはちょっと違うかもしれないんですけど。チームの雰囲気として各段に良くなっているという自負はあるので、そこが結果につながっていっているのかなと思っています。
――次に個人について伺います。ここまで当たりはいいもののファインプレーに阻まれたり、野手の正面を突いたりする打球が多く、打率を残せていませんが、振り返っていかがですか
感じとしても悪くはないんですけど、そうやって正面飛んだり、ファインプレーされたりするってことは何かが足りない、何かが狂っている証拠だと思います。残りは気持ちなのか技術なのか分からないので、しっかり練習をしてやれることは全てやって、早慶戦に臨みたいと思っています。
――9日にあったオープン戦では三塁打も放っていましたが、やはり神宮となると緊張しますか
いや、そういうことではないです。ピッチャーのレベルも、当然プロに行くようなピッチャーもいますし、その中でも打っていかないといけないというところもあるんですけど。緊張は多少しているんですけど、それはあんまり関係ないのかなとは思っています。
――春は、声掛けを折内健太郎副将(文構4=福島・磐城)に任せるようになったとおっしゃっていましたが、今季はどうしていますか
今シーズンもキャッチボール前は折内に任せていますし、試合前の円陣は、その日によって違うんですけど、大体4年生がやってくれています。本当に信頼できる同期がいるので、楽に試合に臨めたりはしていますね。
――ずっと後ろに蛭間拓哉選手(スポ4=埼玉・浦和学院)がいますが、積極的に打とうというよりも、つなごうという意識ですか
そうですね。それは本当にずっと変わり続けてはいないんですけど、後ろにいいバッターがいるので、後ろのいいバッターにどうしたらアウトにならずにいいかたちでつなげるかとことは常に考えています。
――東大2回戦の先制タイムリーについて振り返っていただけますか
あの時は確か左ピッチャーだったので、スライダーを頭に置きながら打席に入りました。初球スライダーをファールにして、次真っすぐ来るんじゃないかなというところで真っ直ぐを狙って打てたので、あの打席は良かったかなと思います。
――立教戦では途中からファーストを守っていましたが、普段から練習されていたのですか
いや、全くしていないですね。
――言われた時はどう思いましたか
びっくりしましたし、ファーストをやると思わなくてファーストミットを持っていってなかったので、次から持っていくようにします(笑)。
――誰のファーストミットを借りたのですか
あれは島川(叶夢、スポ3=熊本・済々黌)のを借りました。
――夏にフォームを変えて、飛距離が伸びるようになったとおっしゃっていましたが、神宮では発揮できていますか
その時よりも若干打球の角度が下がってしまっています。それがいいのか悪いのかどうかは別として、ライナーで、オープン戦などでもライナーで外野の頭を越える打球というのも打てているので、飛距離自体は伸びているのかなとは思います。
――ここまできて、もう少しこうすれば良かった、こうできたななど思うところはありますか
数も質も求めてやってきて、やってきたことに自分は間違ってないと思うので。そこはもう自信を持って言い切れることなので、結果は出ていないですけど、ああすれば良かったっていうのはないですかね。
――守備に関してはここまで無失策ですが、課題はありますか
サードに関していえば一番守りやすいポジションではあるので、課題というよりかは本当に必死に食らいついて捕って、必死に投げてアウトにできればそれでいいという考えなので。課題は山のようにあるんですけど、ノーエラーでこれていることは自信につながっています。
――ピッチャーに積極的に声を掛けているように見えますが、下級生にはなるべく声を掛けようと意識していますか
そうですね。下級生が頑張ってくれて今のチームがあると思っているので。やりやすくするのが4年生の仕事なのかなとは思っているので、そこは意識して声を掛けるようにしています。
――なんと声を掛けていますか
多いのはいいイメージを持っていこうというか、自分のイメージをいいものにして、どんどん投げ込んだらいいからというのは言っています。あとは、結果は二の次でいいから思い切って腕振れよというのは言っています。
――セカンドからサードになって位置的に内野のまとめにくさを感じていますか
そういうのは全くないです。サードはホットコーナーと言われるくらいなので。誰よりも声出して誰よりも熱くやれたらいいなと思っています。
大学に来て良かった
東大2回戦で先制打を放った中川
――次に、野球人生を振り返っていただきたいと思います。4年間、大学野球を振り返っていかがですか
4年間結果が出なかった、苦しんだ4年間だったんですけど、その分自分の野球人としての引き出しは増えたような気がしているので、大学に来て良かったなと今思います。
――大学で一番印象に残っている出来事は何ですか
3年秋にベストナインを取れたことが一番大きかったかなと思います。
――初めて上京して、家族と離れてみて大変でしたか
高校も寮だったので、その辺は全然問題ないです(笑)。
――西谷浩一監督(大阪桐蔭高)とは最近話しましたか
ドラフトがあったので、昨日も連絡させていただいて。その報告とお礼と次また頑張りますというのは連絡しました。
――ドラフトを終えて、心境はいかがですか
その日はすごく落ち込んだんですけど、そんなにくよくよもしていられないので、次は早慶戦に向けて頑張ろうかなとは思っています。
――社会人野球での目標を教えてください
1年目からレギュラー取って、夏にある都市対抗で優勝できたらいいなと思っています。
――大学4年間、ずっと小宮山悟監督(平2教卒=千葉・芝浦工大柏)でした。監督からどんなことを学びましたか
準備の大切さであったり、野球に対しての思いというか、簡単にまとめると準備という話にはなるんですけど。試合での取り組みというか、試合での気持ちの持ち方であったり、練習の大切さというか、継続することの大切さを学びました。
――早慶戦へ心境を教えてください
勝ち点というよりもまずは1試合、トーナメントのつもりで1試合、1イニング、1球を大切にしてやっていきたいと思っています。
――春の早慶戦との心持ちの違いはありますか
春は優勝も何もなかったので、秋につなげるための春にしようということを言っていたんですけど、今シーズンは訳が違うので。自分たちにとって最後の早慶戦になるので、なんとしても2連勝して勝ち点取りたいなと思っています。
――どんな対戦になりそうですか
早稲田が勝つとしたらロースコアのゲームだと思うので、少ないチャンスをものにして、最小失点で、守り抜いて、4対1、5対1、それぐらいで勝てたら最高のゲームだと思います。
――勝ち切るために何が必要ですか
技術はここから伸びることは少ないと思うので、チームの士気であったり、雰囲気を大切にして。あとはもう早稲田のスローガンである一球入魂、一球を大切にして、一球に魂を込めて戦うことが必要になってくると思います。
――今季の慶應はどんなイメージがありますか
守備も攻撃も隙が少ないという印象があります。
――慶應の投手陣のイメージを教えてください
大体のピッチャーが球速も上がって、状態は良さそうなので、そこを警戒しながらそれを打っていかないと勝機はないと思っているので、しっかり打てる準備を2週間したいと思っています。
――慶應の増居翔太投手(4年)についての投球についてどう思いますか。また、どう向かっていきたいですか
コーナーに投げ分けられるコントロールももちろんあるんですけど、今季に関しては球速自体も3、4km/h上がっていると思うので。本当にいいピッチャーと対戦できるので、甘い球は少ないと思うんですけど、ない訳ではないので、その甘い球を一球で仕留められたらいいなと思っています。
――外丸東眞投手(1年)についてはいかがですか
増居ほど球威はないと思うんですけど、うまく投球してくるピッチャーなので。それに合わせようとしたら相手のツボだと思うので、しっかりと振り切ること、多少詰まっても先でもしっかりと振り切ったらヒットゾーンに落ちてくれると思うので、しっかりと振り切るということを意識してやりたいと思います。
――打者で特に注意したい選手は誰ですか
萩尾(匡也、4年)、廣瀬(隆太、3年)は元からいいバッターだったんですけど、さらに磨きがかかってすごいバッターになっているので、そこの前にランナーを出さないということを頭に置きながらやりたいと思っています。
最後の勝利に導いていけたら
悔しさをぶつけ、雪辱を晴らす
――チームメイトにはキャプテンとしてどんな話をしていますか
立教戦からずっと言っていたんですけど、勝敗は前日までに決まるということです。この準備期間が本当に大切になってくるというのはずっと言い続けています。
――監督からは何かお話はありましたか
監督からも本当に同じようなことです。全員でやっていかないといけないというのは常々言われています。
――4年生では何か話し合っていますか
特にはないんですけど、メンバー外の4年生が今でも必死になってメンバーに入ろうとしている姿を見ているので。入れなかった4年生のためにもしっかりと出る4年生、メンバーに入っている4年生はしっかりと頑張らないといけないなとは思っています。
――野球を辞めるメンバーが多いですが、しんみりした雰囲気はありますか
いや、もうないですね。早慶戦に勝って、最後の野球人生を最高のかたちにしようみたいな、そう思っているんじゃないですかね。
――早慶戦まで、個人的に何を重点的に取り組んでいますか
バットスイング、素振り。ボールを打つのもやっているんですけど素振りをしっかり行うようにしています。今までも素振りをしていたんですけど、その割合というか、ボールを打つのとバットスイングするのと割合を半々くらいにして、自分のいいイメージで神宮を意識して、慶應相手を意識することによって素振りすることを意識してやっています。
――フル回転している伊藤樹投手は、どう見られていますか
今季は抑えであったり、先発であったり大事なところを1年生に任せてしまっているんですけど、それでもあいつは物怖じせずに、淡々と投げているので、本当に頼もしく思います。
――加藤孝太郎投手(人3=茨城・下妻一)のこれまでの投球を振り返っていかがですか
春と同様に抜群の安定感で、チームのエースといえるぐらいの存在になってくれたので、樹同様に後輩ですけど本当に頼もしく思います。
――加藤投手には早慶戦でどんな投球を期待しますか
ゼロに抑えてくれればそれでいいんですけど、あいつはコントロールもいいので。しっかりと守備からリズムを作れるようなピッチングを期待したいと思っています。
――松木選手は今季で野球人生が最後だと伺っています。どんなプレーをしてほしいですか
松木も本当に朝から晩まで野球をしているような、本当に野球が好きな人間です。本当にその努力が今結果として実を結んでいると思うので、最後まで努力をし続けて本当にいい結果を残してくれたらと思っています。
――当日はどこに注目してほしいですか
やっぱり3番バッターとしてチャンスメイクするのはもちろんなんですけど、チャンスが来ればそのランナーを返すというところもこだわってやっていきたいと思っています。本当に点を取る気持ちというか、執念というか、そういうところにも注目してほしいと思っています。
――あとこのチームでできるのももう少しです。キャプテンとしてどんな役割を果たしたいですか
最後の最後まで諦めずというか、何点差で勝っていても負けていても、1点を大切にして1アウトを大切にして最後の勝利に導いていけたらいいなと思っています。
――最後に意気込みをお願いします
本当に2ヶ月間勝ったり負けたりもしましたけど、そこで負けたら何の意味もなくなると思うので、本当に最後2連勝できたらいいなと思っています。
――ありがとうございました!
(取材・編集 臼井恭香)
◆中川卓也(なかがわ・たくや)
2000(平12)年7月28日生まれ。175センチ、81キロ。大阪桐蔭高出身。スポーツ科学部4年。内野手。右投左打。学生生活において、単位はほぼ取り終わったという中川選手。卒業まで残すのは卒論と早慶戦の勝利だけです。「一球入魂」を忘れずにチームを勝ちに導きます!