今年1年間、正捕手を務めながら打線では4番を任され、攻守の要となった岩本久重(スポ3=大阪桐蔭)。今季はなかなか満足のいく打撃ができず、不振に苦しんだ。しかし、立大1回戦では久しぶりのマルチ安打を放つなど、確かに復調の兆しを見せた。チームの状態はいいと言う岩本。今季最後の大勝負、渾身の一振りで宿敵を撃破せよ。
※この取材は10月28日に行われたものです。
「4番としての責任はまだ果たせていない」
笑顔で質問に答える岩本
――今年は春から4番、正捕手として出場してきましたが、ここまでを振り返って率直な感想をお願いします
個人的に思ったような成績は残せていないですし、打つ方がもう少し結果を残していかないと、4番としての責任はまだ果たせていないかなと思います。春も優勝できなかったということで、そこで自分がもっと打てていたらだったり、抑えられていたらだったり、悔いは残っています。秋も、連勝できるところをできなかったり、いい意味でいい経験はできていると思いますが、思うような結果が出ていないシーズンだなと感じます。
――4番・捕手という重要な役どころを両立することの難しさなどは感じましたか
まずは守備で抑えて試合をつくらないといけないということで頭を使いますし、4番として打つのを両方やることは難しさは正直あります。でも、そこをできる選手になりたいと思っていますし、日々試合をやる中で勉強しいい経験はできているかなと思います。
――岩本選手はプレッシャーを感じることはあるんでしょうか
自分は大事な試合や打席はワクワク、楽しむタイプなのですが、凡打が続いたり、ヒットが出なくて考え込むことが今季はあったかなと思います。
――今季ここまでで一番印象に残っている打席もしくは試合はありますか
打席で言うならば、初戦の明治戦で入江投手(大生、4年)から初打点、先制点を取ってチームの勢いをつくれたことは良かったと思います。
――開幕戦では2安打3打点の活躍でしたが、開幕時の状態はいかがでしたか
そうですね、色々と対策を練っていい準備はできていたと思います。
――法大2回戦以降はヒットの出ない試合が続きましたが、原因はどこにあったと思いますか
タイミングがズラされて、相手バッテリーも打たせないように配球してくるので、そこで泳がされたり、詰まらされたりと、相手の術中にはまっていました。しっかり自分のところに呼び込んで打つというところができていなかった、タイミングが全然合っていなかったなと思います。
――ではその不振の間に誰かに相談する、もしくはアドバイスをもらうことはありましたか
日頃から徳武コーチ(定祐、昭36商卒=東京・早実)にいつも見てもらっているので、試合終わった時から平日もマンツーマンでやっていました。
――徳武コーチから具体的にアドバイスやお話はありましたか
やはりスイングが崩れていたので、そこをしっかり自分のスイングをするためにティーバッティングから始めて、自分のスイングを思い出させるじゃないですけど、いい状態に持っていくことをしていました。
――立大1回戦では久しぶりのマルチ安打となりましたが、なにか復調のきっかけはあったんでしょうか
監督さん(小宮山悟監督、平2教卒=千葉・芝浦工大柏)がミーティングの時に、「結果を恐れるな、結果は後からついてくるんだ」と話を仰っていて、その時自分は結果を追い求めていて、積極的にプレーできていなかったなと感じました。なので、(立大戦では)思い切って結果は後からついてくると信じてプレーしました。
――その小宮山監督のお言葉はチーム全体に向けたものだったんでしょうか、それとも岩本選手へ個人的にかけられたのでしょうか
全体ですね。寮を出発する前のミーティングでありました。
――守備について、佐藤孝治助監督(昭60教卒=東京・早実)が捕手としての技術力が向上したと仰っていましたが、ご自身の今季の守備について振り返っていかがでしょうか
投手と配球の呼吸は合ってきたと思います。しっかり相手ビデオの分析など準備はしっかりできていて、抑えられているところもあるので、そこはいいなと思います。でも、盗塁を刺せていないので、自分はスローイングが持ち味だと思っているので、そこはちょっとダメですね。
――その盗塁を刺せていないというところで、ご自身で原因だと感じていることはありますか
リーグ戦前半はストライク送球ができていなくて、ベストボールを放っていったらアウトだったっていうのもありますけど、焦って投げたり、いつも通りの送球ができていないと感じていました。また、相手も分析して走るタイミングや投手の癖を踏まえてかなりいいスタートを切られていました。そこは捕手がカバーしないといけないんですけど、盗塁阻止に関しては投手と捕手の共同作業だと思うので、残り早慶戦しかないですけど、投手と捕手でしっかり盗塁をさせないようにしたいと思います。
――岩本選手、以前投手陣に関して「準備力が素晴らしい」と仰られていましたが、具体的にどういった準備をされているんでしょうか
まず試合前の準備でいうと、相手バッターのスイングや傾向を一緒に見ながら、例えば早川さん(隆久、スポ4=千葉・木更津総合)だったらこう攻めよう、徳山(壮磨、スポ3=大阪桐蔭)だったらこう攻めようという準備を予めしてるというのが1つあります。球場レベルの準備もありますし、ブルペンで後から出てくる投手の準備、心の準備が今季はできていると感じます。
――1年間バッテリーを組んだ早川選手はドラフトでは4球団競合でしたがご覧になっていましたか
はい、早川さんと一緒に寮のラウンジで見ていました。
――ドラフト後、早川選手とお話をすることはありましたか
おめでとうございます、頑張ってくださいと言いました。
――早川選手との1年間は大きな経験、刺激になったと思いますが、いかがでしたか
そうですね、ドラフトと競合されるような投手(の球)を捕らせてもらってすごく光栄ですし、やっぱり受けていて楽しかったと思います。
――具体的に早川選手のどういった部分に刺激を受けましたか
素晴らしい球を投げるんですけど、気持ちの面で抑えてやるんだ、だからお前もしっかり捕ってくれという、コミュニケーションっていうのは、早川さんを通じて大事だなと再確認しました。ピンチの場面だとどうしても弱気に、守りに入ってしまうんですけど、早川さんは全くそういうのがなくて、冷静に、かつ熱いというかすごいメンタリティーだなと思いますし、そういうところは刺激になります。
――来年は岩本選手も早川選手のように早大を引っ張っていく立場になると思いますが、いかがですか
そうですね、まずこのリーグ戦を獲ることが来年に繋がりますし、そのために自分が打って守らなくてはいけないと思います。優勝からずっと遠ざかっているので、(優勝を)体感して、来季以降も優勝を続けるぞという風にしたいので、そういう意味でも早慶戦を獲りたいなと思います。
――来季は最上級生となりますが、岩本選手の代のカラーなどあれば教えてください
ちょっと考えたことないな(笑)。でも、結構個性的というか、自分の芯をしっかり持った選手が多いなと思うので、その個性の強いみんなが一つの方向を向けば、すごくいいチームをつくれると思うので、個性を生かしたチームをつくっていきたいなと思います。
――やっぱり今の4年生と比べても、岩本選手の代は個性が強いなと感じますか
まあ、そうですね(笑)。でも、今の先輩たちは今までと違って、チームのために動いてくださる先輩たちが多いので、その先輩たちを自分たちは見ているので、いいものを見させてもらっていると思います。個性は強いなりにも、チームに対して俺はこうやってしていこうというものが見え始めているので、みんなチームのためにやってくれると思います。
――岩本選手の代では誰が中心となって引っ張っている、もしくは今後引っ張っていくと感じますか
やっぱり自分が引っ張ろうとは思っています。4番を打たせてもらって、正捕手としてマスクも被らせてもらっていますし、まずはプレーでしっかり引っ張るというのはもちろん、早川さんのように言葉や姿勢で引っ張っていこうと思います。
――岩本選手以外で、中心になっていく選手がいれば教えてください
投手で言えば徳山。投手をまとめていると感じます。あと、野手で言えば丸山(壮史、スポ3=広島・広陵)が引っ張ってくれていると感じます。
――現在、学年ミーティングなどを行われているという風に伺ったんですが、どのようなことをお話されているんでしょうか
まずミーティングを始めたのはすごく早かったです。始めた理由として、もっと早稲田の野球部の部訓や一球入魂の精神だったり、先輩方が残された言葉の意味をもう一度しっかり理解して、言葉の重みを知った上で、自分たちの色を出して、いいチームをつくっていこうと話をしています。
打倒、強力打線
法大1回戦で適時打を放ち、ガッツポーズする岩本
――では、ここから早慶戦のことについてお伺いしていきたいと思います。まずは、今季の慶大のイメージを教えてください
やっぱり強打です。全部打って勝ってきているので、その打線をしっかり抑えて勝ちたいと思います。
――捕手の立場で特に警戒している選手はいますか
4番の正木くん(智也、3年)はすごく当たっていて、ホームランも打っていたので要注意人物だなと思います。
――早大の中では誰がキーマンになると思いますか
早川さんはそうなんですけど、やっぱり2戦目で勝てていないというのがあるので、2戦目でよく投げている徳山がキーマンになるかと思います。打線は、自分がしっかり打ってやろうと思います。
――今季の早慶戦は観客も増え、両校の優勝のかかった試合ということで、春よりもさらに盛り上がった試合になることが予想されますが
優勝が懸かった早慶戦は初めてなので、プレッシャーや一球への気持ちは今まで以上のものがあると思うんですけど、絶対に慶応より強い気持ちで挑もうと思っています。
――早慶戦に向けチームの状態・雰囲気はいかがですか
すごくチーム状況はいいと思うので、勢いというか、みんなが一つになって戦うんだというのを、早慶戦までの間に束になってやりたいと思います。
――岩本選手個人が特に早慶戦に向けて準備していること、意識して練習に取り組んでいることがあれば教えてください
まずはしっかり強力打線を抑えるために投手とコミュニケーションをとってやり残したことがないように、後悔しないように、相手ビデオの分析やブルペンのコミュニケーションなど、しっかり守りからやっていこうと思います。また打つ方も、今まで崩されてきたので、アウトになったとしても自分のスイングをして、納得のいく打撃をしたいと思います。
――では最後に、早慶戦、優勝に向け意気込みをお願いします
優勝はずっと目標にしていたことなので、慶応よりも強い気持ちで、闘志むき出しでやっていきたいなと思います。
――ありがとうございました!
(取材・編集 松下瑞季)
◆岩本久重(いわもと・ひさしげ)
1999(平11)年4月21日生まれ。181センチ、92キロ。大阪桐蔭高出身。スポーツ科学部3年。捕手。右投右打。ドラフト1位で楽天入りが決まった早川選手のことを尋ねると、嬉しそうに笑顔を覗かせてくれた岩本選手。4年生の花道を飾るためにも、伝統の一戦では、気迫溢れるプレーを期待しています!