投手陣奮闘も拙攻目立ち無得点。全早慶戦での勝利はまたもお預け

野球
TEAM
全慶大
全早大
(早)●竹内、吉野、増田、早川、小島-岸本

 県岐阜商高の吹奏楽部、各地から集まった大学野球ファン、そして野球が大好きな地元の子供たち。大観衆が詰めかけた全早慶戦が、ことしは岐阜県・長良川球場で行われた。岐阜市での開催は実に24年ぶりのこと。試合開始1時間前から両校の応援合戦が始まると、それぞれの陣営は配られたハリセンやメガホンをたたき、割れんばかりの声援を送った。しかし、球場からあふれる熱気とは対照的に、試合は終始静かな様相を呈する。投手陣はOBから現役への小刻みな継投で慶大打線を1失点に抑えたが、打線が沈黙。走者を出しながらも盗塁や犠打失敗が重なり、つながりのある攻撃にならなかった。最終的には三塁すら踏ませてもらえず0-1で敗北。岐阜の地に得点時の『紺碧の空』を響かせることはできなかった。

 全早大の先発はOBの左腕・竹内諒(平29スポ卒=現Honda鈴鹿)。3回に全慶大の河合大樹主将(4年)に適時打を浴び失点したが、次打者を抑え、複数点は許さない。続く4回に迎えた2死満塁のピンチも切り抜け、貫禄の投球を披露した。5回からは同じくOBのサブマリン、吉野和也(平29社卒=現トヨタ自動車)が登板。抜群の安定感で2回をいずれも三人で切って取り、チームを鼓舞する。7回以降は現役勢が力投。増田圭佑(文4=茨城・江戸川学園取手)早川隆久(スポ2=千葉・木更津総合)が1回ずつを任され、共に走者を背負いながらも電光掲示板に0を並べた。そして最後はエース小島和哉主将(スポ4=埼玉・浦和学院)が最終回を三者凡退に封じ、取られた点数は9回合計でわずかに1。各投手が慶大打線を冷静沈着にいなし続け、粘り強さが見られたことはこの試合の一番の収穫だろう。

久しぶりに早大のユニフォームに身を包み、躍動した竹内

 好投に応えたい攻撃陣だったが、きょうは『打線』が『線』にならない。初回こそ連打で好機をつくったが、後続が続かず無得点に終わると、2回以降は単打で走者が出ても一塁に釘付けになる場面が多々見られた。5回には先頭の岸本朋也副将(スポ4=大阪・関大北陽)が安打で出塁したが、続く小太刀緒飛(スポ4=新潟・日本文理)の犠打が捕手正面に転がり二封。6回には2死から西岡寿祥(教4=東京・早実)が投球モーション前に盗塁を仕掛けるも失敗し、精彩を欠く攻撃が続いた。そんな中でも活躍が目立ったのは、中前へクリーンヒットを2本放った岸本だ。岸本はこの日、早大の正捕手を示す『背番号6』を初めて着けて出場。その責任を十分に感じ取ってプレーした。その岸本は今試合の攻撃について、「打てる打てないというよりは、バントのミスとか盗塁のミスの飛び出しとか細かいことができずにチャンスがつくれていない」と語った。つくった好機を生かす以前に、つくれるはずの好機をつくれていなかったといえよう。

5回に犠打を失敗し、好機を広げられなかった小太刀

 投手陣の好投とは裏腹に攻撃陣からは得点の気配が感じられなかった早大。慶大と放った安打数は6で並んでいただけに、余計に拙攻が悔やまれる結果となった。早大はこれで夏季オープン戦の東洋大戦、東北学院大戦に続き3連敗。悪い流れを食い止めるべく次戦は駒大と相対する。悲願の六大学制覇の準備に残された時間はもう多くはない。浮き彫りになった課題を修正し、東京六大学秋季リーグ戦開幕を最高の状態で迎えたい。

最後の打者となり、天を仰ぐ岩本

(記事 小松純也、写真 尾崎克、瀧上恵利)

早大打者成績
打順 守備 名前
(指) 田口喜将 .000 投ゴ    二ゴ       四球         
走指 宮崎剛 1.000                         三安
(二) 西岡寿祥 .250 左安    二ゴ       三ゴ       捕犠
(三) 福岡高輝 .250 左安       中飛       二ゴ    三邪
(左) 山田敏貴 .333 二併       三振       左安      
  池田賢将 .—                           
  岩本久重 .000                         二ゴ
(右) 加藤雅樹 .000    三振    三振       三振      
(捕) 岸本朋也 .667    中安       中安    遊ゴ      
(中) 小太刀緒飛 .000    三振       捕ゴ            
  藤野恭平 .000                      三振   
(一) 吉澤一翔 .000    三邪       三振       左飛   
(遊) 真中直樹 .000       中飛                  
  黒岩駿 .000                遊ゴ         
  檜村篤史 .000                      三振   
早大投手成績
名前
竹内諒 2.25
吉野和也 0.00
増田圭佑 0.00
早川隆久 0.00
小島和哉 0.00
コメント

竹内諒(平29スポ卒=現Honda鈴鹿)

――久しぶりのワセダとしての登板だったと思いますが、どんな思いで試合に臨みましたか

久々にワセダのユニフォームを着た登板だったので、招待してくれたことに感謝しつつ、楽しく思い切って投げようという気持ちで臨みました。

――久しぶりの早慶戦の雰囲気はいかがでしたか

やはり独特で、現役時代を懐かしく感じました。

――慶大打線の印象はいかがでしたか

やっぱり、振れる打者が多いという印象で、甘いところに投げると打たれてしまうので、すごく手強い打線だなと思いました。

――現役のワセダの投手陣と何かお話しされたりしましたか

ほとんどの選手とはしゃべったんですけど、みんなやっぱり個人個人の意見を持っていて、今後に期待できる選手が多くて楽しみです。

――今のワセダの課題はなんだと思われますか

自分はまだ一試合しか見てないのでそこはまだよく分からなかったです。

――竹内さんは3月にワセダを相手に投げたと思うのですが、その時のワセダと今では何か違うと感じたことはありますか

その時はワセダが相手だったのでベンチの雰囲気とかは分からなかったんですけど、きょうはワセダのベンチに入ってみんなと応援して、すごく活気のある雰囲気だなと感じました。

小島和哉主将(スポ4=埼玉・浦和学院)

――ブラジル遠征を終えてチームの今の状態はいかがですか

実践は多く積めたと思うんですけどその分練習があまり出来ていないです。そういう意味で低めの見極めとかが今日はちょっとよくなかったので、その辺はリーグ戦までにもうちょっと練習を積んでいきたいなっていう課題が見えましたね。

――ブラジルではほとんど実践でしたか

そうですね。試合ばっかりでした。

――今日の試合に関して、OBの方々とはどんな話をしましたか

久々に会ったっていうのもあるんですけど、いろいろな話をしましたね。あと社会人のピッチャーはテンポがすごくいいというか、一球一球の間合いが短くて、なので野手も守りやすいっていうのはすごい感じました。そういうところは見習わないといけないなと思いますし、一緒に来たピッチャーにもそういうところは勉強してほしいと思いました。

――今日の0-1という結果についてはいかがですか

負けたのはすごい悔しいです。やっぱり細かいミスが出ているので、そこをもう少し修正していけばもっといい試合ができるんじゃないかなと思います。

――今日のご自身の投球は1イニングだけでしたが、こちらについては

いやもう普通です(笑)。いたって普通でした。

――先日の東洋大とのオープン戦(6回1失点)についてはいかがでしたか

戻ってきてすぐ試合だったのであまり調整とかもなかったんですけど、それにしてはフォアボールも1個しかなかったですし、思いの外抑えられたのでよかったとは思います。ただ体力が少し落ちているので、ちょっとそこは練習しないとなとは思います。

――今後、開幕までにチームの状態はどのように上げていきたいですか

春のリーグ戦は1カード目の立大戦で落として流れを悪くしてしまったところがあったので、やっぱり1戦目から全力で入れるように、そしてしっかり勝ち点を取れるように、しっかり準備していきたいと思います。

――個人としては体力の部分が一番重点的に上げたいところですか

そうですね。体力とフォームがばらけているところがあるので、そこはちょっと練習しないとなと思います。

岸本朋也副将(スポ4=大阪・関大北陽)

――背番号6での出場でしたが、それに関しての意気込みはありましたか

背番号6というのは1つの目標にしていたので、そこを付けさせてもらうというのは、しっかりと結果を残さないといけないということでもあると思うので、いい意味で責任のあるようなプレーをしていきたいと思います。

――その中で2安打でしたが、どのように振り返りますか

センターを中心に打ち返せていたのは良かったなと思いますけど、ランナーのいる打席でチャンスを広げられなかったのは反省点だったかなと思います。

――打線全体を振り返っていかがですか

打てる打てないというよりは、バントのミスとか盗塁のミスの飛び出しとか細かいことができずにチャンスがつくれていないので、打つどうこうより、一つの手段でそういう細かいことができていれば(得点が)0にはならなかったかなと思います

――OBの先輩方とバッテリーを組んでいかがでしたか

社会人でやられている分、自分たち(のチームの投手)より幅広い投球をされていたので、勉強になる部分がありました。

――試合前は何か話されましたか

どういうスタイルでいくかというのを聞いた上で、自分はこういうふうに攻めたいですと話したら、「自分のやりたいようにやったらいい」という話し合いをして、竹内さん(諒、平29スポ卒=現Honda鈴鹿)と吉野さん(和也、平29社卒=現トヨタ自動車)とうまくやり切れた結果、こういうふうに1失点に抑えられました。

――現役投手陣の調子はいかがですか

悪くはないのかなという感じですね。早川(隆久、スポ2=千葉・木更津総合)は先頭(打者)を出してしまったんですけど、その後4番の郡司選手(裕也、3年)を抑えられましたし、増田(圭佑、文4=茨城・江戸川学園取手)も2アウトからフォアボールを出してしまったんですけど、その後バッターを三振に取ってというふうに。完璧ではないですけど、0に抑える部分はできているのかなと思います。

――観客も多かったですが、雰囲気として感じ取ったものはありますか

リーグ戦に近い雰囲気はあったので、1対0でも負けは負けなのでそこは悔しいなと。見にきていただいた人に申し訳ないなという気持ちはあります。

――ブラジル遠征はいかがでしたか

最初は環境が違うので慣れない部分もあったんですけど、後半につれて時差とかにも慣れて冷静になったかなと思います。

――今後への意気込みをお願いします

リーグ戦(東京六大学秋季リーグ戦)の初戦にベストのコンディションに持っていけるように、残りの(夏季オープン戦)4試合も勝ち切っていいかたちで迎えたいなと思います。

西岡寿祥(教4=東京・早実)

――きょうはスタメンでしたがどのような気持ちで挑みましたか

春にケガがあって手術も終わってスタメンでまた使ってもらっているので、特に何も考えずに今まで自分がやってきたことがまた普通にできればいいかなと。その中でまず僕の役割をちゃんとやるということと、やっぱり僕自身の中ではバッティングでもっと結果を出したいと思っています。

――ブラジル遠征はいかがでしたか

ブラジル遠征から僕が復帰というか、手術していたのでそれまで練習していなくて。でもいきなり試合入れてプレーもそんなに違和感なくできたので、練習量が落ちたというのはあるんですけど、観光も含めてすごく楽しかったです。また行きたいなと思います。

――先日頭への死球がありましたがその影響は大丈夫ですか

一応頭に当たったので、その影響で日曜日(8月19日 東洋大戦)ベンチに入っていなくて、きのうまで様子を見るという形でした。でも元々打撲だったのでオール早慶(全早慶戦岐阜大会)は自分としても出たいのできょう出させてもらいました。

――では現在死球の影響というのは

もうないですね。怖いというのもないですし、大丈夫です。

――きょうは第1打席で安打が出ましたが、あの場面を振り返っていただけますか

やっぱり積極的に振っていきました。2番だからといってコツコツしていると怖さもないかなと思って。僕的には2番だけど甘い球は積極的にフルスイングという感じでやっているので、打球は上がらなかったんですけど甘い球打ててヒットになったので。でもそれ以降の打席はもうちょっと工夫できたかなというのはあります。

――レギュラー争いも激しいと思いますが、ご自身のアピールポイントはなんだと考えていますか

元々僕は守備に自身を持ってやっているので、守備をとにかく普通にやって。きょうちょっと盗塁で挟まれたこともあったんですけど、足も使っていって。野球なんで打って守って走って全部でアピールしていきたいなと思います。

――最終学年として目標としている成績を教えていだだけますか

春は出れなかったので、まず春の前に掲げていた全試合フル出場です。打率も上位狙いたいですし、無失策は当然で盗塁も上を狙いたいです。全部の部門で成績を残したいと思っています。

福岡高輝(スポ3=埼玉・川越東)

――第一打席に久しぶりに安打が出ました。調子はどうでしたか

調子はそんなに良くないですが、色々練習で自分で試行錯誤して徐々に良くなってきているかなという感じですね。

――その後の打席では安打が出ませんでした。振り返ってどうでしたか。

最後の打席は内容が悪かったけど、他の打席は自分的には悪くはなかったので、プラスには捉えられています。

――慶應の投手陣はどのような印象でしたか

点取られないのは良いピッチャーが多いということだと思います。そのピッチャーたちをしっかり打てるようにならなきゃいけないので、これからまた練習しっかりやっていきたいと思います。

――今日は打線のつながりがありませんでした。要因はなんだと思いますか

そもそもチャンスがつくれていなかったです。きょうは普段と打線が少し違うので、次は打てるように頑張ります。

――代表遠征やブラジル遠征などの遠征が続いていますが、疲れなどはありませんか

自分は全然疲れはないです

――昨日は2つの失策がありました。きょうは無失策でしたが、どのように修正されましたか

昨日は集中しきれてない部分がありました。しかしきょうは応援もあって観客もいて、リーグ戦に近い雰囲気で試合に入れたので、自分もすごい集中していけました。それで無失策だったと思います。

――秋の目標を教えてください

ずっと春も言ってたんですけど、秋は首位打者をとりたいです。首位打者をとってチームを優勝に導けるように頑張りたいです。

早川隆久(スポ2=千葉・木更津総合)

――ここ最近、1軍戦で失点が続いていましたが、きょうの試合はどういった部分を修正して臨もうと思っていましたか

2試合、(JX-)ENEOSと東洋大のときで、やっぱり勝負所で出されて失点する場面が多かったので、そこはもう落ち込んでてもどうしようもないということで割り切って投げようという気持ちで投げた結果、ピンチは招きましたけど抑えることができました。そういう面では割り切りが良かったかなというのはあります。

――東京六大学春季リーグ戦の期間中に左肩を負傷したとうかがいましたが、その影響はもうないですか

ちょっとまだ連投するとなったら怖いですけど、だいぶ治りつつはあるので、投げれないことはないかなという感じではあります。

――サマーリーグの早慶戦では完封されていましたが、9回を投げることに関しては

9回を投げることに関してはできないこともないですけど、次の日の代償というのが大きいかなというのは感じます。

――これまで下級生のメンバー外の選手と試合をすることはそれほどなかったと思いますが、それに関してはいかがでしょうか

下級生の中でも2年生が最上級生としてプレーするリーグだったので、そういう面では責任感というのがものすごく強くて。自分がやらないとこのチームが勝てないというふうにも思ってたので、自分がやらなきゃという責任感でサマーリーグはいいピッチングができたかなというのはあります。

――今、投手陣全体としての状態はどうだと思いますか

先発の柱として小島さん(和哉主将、スポ4=埼玉・浦和学院)と西垣(雅矢、スポ1=兵庫・報徳学園)、今西(拓弥、スポ2=広島・広陵)がしっかりしてるので、中継ぎがどう頑張るかというのが今後の課題になってくると思います。中継ぎの中での支えとなれるようなピッチングをしていかないと、ちょっと秋もしんどいかなというのはあります。

――秋は中継ぎで、という方向ですか

そうですね、秋は後ろでロングリリーフできる態勢でもいれるように、なれればいいかなと思います。

――ではきょうの投球について。まず、調子はいかがでしたか

調子というよりは、サインが最初は見えてたんですけど、途中から(暗くて)見えなくて。ブロックサインにしてそこから立ち直ることができたので良かったかなと思います。

――先頭打者を出して、その後岸本朋也捕手(スポ4=大阪・関大北陽)がマウンドに行かれたと思いますが、どんなことを言われましたか

それこそサインが見えなくて、じゃあブロックサインに代えようかというふうになりました。

――その後は無失点でしのげましたが、結果としてはいかがですか

結果としては、ここ2試合の1軍戦での結果がやっぱり悪かったので、無失点で切れたということは自分の中でもいいきっかけになればなというのはありますね。

――では最後に、秋に向けて意気込みをお願いします

やっぱり優勝しないといけないので。小島さんを支えられるように後ろで自分もバックアップしないといけないので、自分もしっかり調整して秋のリーグに臨めればなというふうに思います。