【連載】春季リーグ戦開幕前特集『奪還』 第8回 小島和哉

野球
 昨秋、並み居る好投手たちを抑え、見事最優秀防御率のタイトルを手にした小島和哉(スポ3=埼玉・浦和学院)。名実共にワセダのエースとなった左腕はこの春もチームに勝利を呼び込めるか。さらなる高みを目指し取り組んだこの冬のトレーニング、そして春への意気込みを聞いた

※この取材は3月30日に行われたものです。

「同じ大学生相手なら圧倒したい」

快く取材に応じる姿勢は入学当初の2年前と何ら変わらない

――まずは昨年の投球を振り返って良かった点、悪かった点を教えてください

 良かった点は、全体を通してあまり自分の調子が良くなかった中で、フォームとか技術的な部分ではなく、気持ちの部分で攻めていけたということです。今までは結構『かたち』にこだわってやっていた部分があったので、ダイナミックな投球ができたのかなとは思います。悪かった点は、試合をうまくつくれなかったり、余計な四球や失点が多かった部分です。後でビデオを見返してみても、「この球要らなかったな」とか「なんでこの場面でこの球投げたんだろう」と思ったことが多かったので、冷静に相手を見て投げることができていなかったかなと思います。

――昨秋は最優秀防御率のタイトルを獲得されましたが、新たな目標はできましたか

 タイトルというよりは1試合投げ切ることが大事だと思っています。その中で、取られても1点、ヒットも5本以内に抑えるという目標を立てています。

――その目標はいつごろ立てましたか

 さらに上のステージで野球をやろうと考えていて、そのためには同じ大学生相手になら圧倒できるピッチングができないと通用しないと思っているので、そこを考えたときにトレーナーの方と話し合ったのがきっかけです。

――今1試合投げ切るという話が出ましたが、秋に対談した際も『完投能力』という部分を重要視されていました。そこは今も変わらずということですね

 そうですね。完投するにはできるだけ球数も多くならないよう気を付けなければならないし、カウントを悪くせずにどんどんストライクを入れられるようなピッチングが必要だと思っています。そういった部分のテンポなどはかなり意識してやっています。

――それは三振を狙うよりも打たせて取るということですか

 逆に三振を取るとしても三球三振を目指したり、打たせて取るとしても1球で打ち取れるならベストかなと思います。

――この冬はどんな目標、テーマを持ってトレーニングを行いましたか

 1、3戦目を投げ切れる体力をつけるためのランニングをメインにして、その目標に対して自分に今何が足りていないのかというと「試合の中で波がある」ということかなと。抑えた次の回にいきなり球が荒れ出してしまうこととかもあって、『安定性』や『再現性』というものが不足していると思っています。一球一球のフォームがバラバラだからハマったときはいいけどハマらなかったときは良くないというのがあるので、フォームを固定することを重要視しました。トレーニングのメニューもただ重いものを持ち上げるということではなくて、上半身と下半身を連動させながら、かたちがぶれない状態をキープすることを意識してやりました。

――フォームを固定したということですが、この冬で投球フォームをいじったりということはありましたか

 いや、特にはいじってないです。

――食事の面では何か変えた部分はありますか

 食べる量を1日7食に増やして、練習の合間にもカロリーの高いピーナッツ類を取るようになりました。大体20粒ぐらい食べるとおにぎり1個分になるらしいので、ランニング中にも食べたりしています。

――冬のトレーニング期間の1日のスケジュールはどのような感じでしたか

 9時に練習が始まって午前中はランニングメニュー中心、午後は体幹やピッチングを中心に行っていました。大体17時ぐらいまでやっていました。

――冬を越えて、成長を実感している部分を教えてください

 今のところ球が荒れることが少ないかなという気がします。あとは真っすぐで打者を押せているかなと感じています。真っすぐは昨年までは外角に投げてカウントを取ったり、決め球ぐらいにしか使っていなかったんですけど、今は初球からでも厳しいコースに投げられているのでそういう意味では成果が出ているのかなとは思います。

――逆にまだまだだなという部分はありますか

 感覚的な部分なんですが、自然とやっていてうまくいく回数が増えたという感じなので、どの練習がどの部分につながっているのかイマイチつかめていません。それが分かればもっとブレが少なくなるのかなと思います。

――では今はとにかく練習を重ねて、うまくいく回数を増やしていっているということですね

 そうですね。とりあえずトレーニングをやり込んで、調子が悪かったときでも球種を変えるなどして試合をつくるというのが完投するには大事かなと思っているので。

――実戦が増えてきていますが、冬にやっていた練習もまだ継続していますか

 はい。毎日やることは続けてやっています。

――続いて実戦の話に移ります。これまで春季オープン戦を行ってきて、ご自身の投球を振り返っていかがですか

 真っすぐでどんどん押せているのはいいかなと思っています。あとは追い込んでからの変化球が甘くなってしまうことが多いので、そこは改善していかなければいけないなと思っています

――オープン戦は他の投手と比べると登板機会が少ないですが

 そうですね。あまり投げてないですね。ユニバーシアードの選考合宿などもあって球数を減らすなどの考慮をしてもらっていました。

――その点での試合勘のズレなどはありますか

 結構ありますね。

――それは具体的にどういった部分ですか

 自分が投げた時の打者の反応を見られないという部分です。特に変化球を投げるときはそこを見ながら調整することが多いので。ブルペンでも打者を立たせてはいますが、もともと打つ気がないので(笑)。

――ユニバーシアードの選考合宿の件ですが、内容はいかがでしたか

 少し打たれてしまいました。

――では手応えもあまりないということですか

 そうですね。あまりないです。

――では少しプライベートな話題に移らせていただきます。冬は母校・浦和学院高には行かれましたか

 あいさつ程度ですが行きました。監督さんとは会えなかったですけど、いろいろ気に掛けてくださっていて、「高校の頃とフォーム違うんじゃないか?」とかそういう話も会ったときはします。

――今ちょうどセンバツが行われていますが、元センバツ優勝投手として懐かしいなどと思いますか

 毎年懐かしいなと思いながら見ていますね。

――オフの日はやはり寝ていることが多いですか

 そうですね。昼ぐらいまではまず目覚めないんで(笑)。

「安定感あると思わせたい」

今季は第一先発の最有力候補。『先発完投』を目指す

――話を戻して今度はチームのことについて伺います。まず捕手ですが、この春からは岸本選手(朋也、スポ3=大阪・関大北陽)が主にマスクを被っています。秋とは捕手が変わるという点についてはいかがですか

 やりやすさという点では岸本も小藤(翼、スポ2=東京・日大三)もあまり変わりません。ただ小藤と組んでいることの方が多かったので、岸本とは自分のピッチングの話をして多めにコミュニケーションを取っています。

――ことしのチームはどのようなチームですか

 特に今の4年生は、みんな優しくて人柄もいい人が多いです。あとは個性が強いですね(笑)。

――投手陣の雰囲気はいかがですか

 学年関係なく意見を出せる組織になってきているし、下級生もどんどん出てきていて今まで固定化されてた部分が結構入れ替わっているので、競争心もあっていいなと思います。

――春季リーグ戦が始まってからの話ですが、警戒するチーム、選手はいますか

 自分の同期はどの大学にもいい選手が多いので、同い年には負けたくないという気持ちが強いですね。この前の選考合宿でも明大の渡辺(佳明)や逢澤(崚介)、法大だったら小林(満平、いずれも3年)といった同級生がいたので、彼らには打たれないようにしたいです。

――試合前のルーティンですが、新たなものは見つかりましたか

 今はピーナッツばっかり食べてるので、ピーナッツありだなとは思ってますけど。それかあんパンもいいかなとは思いますね(笑)。

――春季リーグ戦に向けて髙橋広監督(昭52教卒=愛媛・西条)や脇健太朗投手コーチ(社4=早稲田佐賀)から何か言われていますか

 沖縄遠征のときに、大竹さん(耕太郎、スポ4=熊本・済々黌)と柳澤さん(一輝、スポ4=広島・広陵)と自分が中心になって投手陣を引っ張って、何か意見があれば学年を気にせず言ってほしいというふうに言われました。自分もチームが良くなるためにいろいろ言っていきたいですし、ただ言うだけでなくて下級生からも意見を聞いていきたいと思います。学年的にも自分のことだけでなく、チームのことも考えるというのが役目だと思っています。

――先発で行くというふうには言われていますか

 そうですね。言われています。

――現段階で自信のあるボールは何ですか

 ツーシーム系の右バッターの外に逃げていく球には自信あります。投げる割合としては少ないと思いますけど。

――新たな球種にチャレンジしたりというのは

 いや、それはないですね。

――ストレートの球速は冬を越えて上がった感じはありますか

  マックスはそれほど変わらないですけど、平均は少し上がってきました。ただ、自分は球速というよりかは、キレやコントロールで勝負していく投手だと思うので(球速に)そこまで大きなこだわりはないです。

――昨年とことしではここが違うという部分はどこですか

 大学入ってきてから完投した試合がほぼないので、完投するというのはもちろんですが、安定感あるなと周りに思わせたいですね。

――ワセダのエースとして投げていくという気持ちは持っていらっしゃいますか

 そうですね。自分もそうでしたけど、上級生が頑張る姿というのは下級生から見ても「頑張ろう」という気持ちが出るものだと思います。だからこそ背中で引っ張れるような投手を目指していかなくてはいけないなと思っています。

――最後にことし一年間の目標をお願いします

 個人的には最初に言った1試合1失点5被安打以内の投球を毎試合することが目標です。チームとしては自分が投げた試合は負けないようにすることです。とにかく勝ちにこだわってやっていきたいと思います

――ありがとうございました!

(取材・編集 田原遼)

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◆小島和哉(おじま・かずや)

1996(平8)年7月7日生まれ。175センチ、76キロ。埼玉・浦和学院出身。スポーツ科学部3年。投手。左投左打。オフの日は部屋掃除をよくやるそうで、多い時には3日に1回。時間のある時には本を全て取り出して本棚の中まで掃除機をかけてしまうという徹底ぶりです。今季も小島投手の気迫あふれるピッチングに期待しています!