それは立花玲央（人４＝千葉英和）にとって大きな賭けだった。最終学年目前での外野手から内野手への転向。これまであまり経験してこなかった一塁手として、活躍の場を見つけるのは困難であるとも思われた。しかし、春季オープン戦でチャンスをつかむと、東京六大学春季リーグ戦（春季リーグ戦）では、見事に５番打者としてスタメン入り。３年時まで一度もベンチに入ったことがなかった立花にとっては、初めてのことだらけのリーグ戦であったが、与えられた役目をしっかりと果たし存在感を示した。そして、迎える集大成の秋。主力の一人として臨むラストシーズンを前に今何を思うのか。
※この取材は８月２６日に行われたものです。
大きな決断の先に
――４年生になる直前に外野から内野に転向されましたが、それはなぜですか、きっかけなど教えてください
もともと外野での出場機会がなかなかなかったのと、監督さん（髙橋広、昭５２教卒＝愛媛・西条）からファーストやってみないかと勧められて、４年生という節目だったので出るチャンスができるだけ多い方を選ぼうかなと思ったからです。
――転向はすごく悩みましたか
いや、もう監督さんが言うからには出られるチャンスが少なからずあるのかなと思って迷わず決めました。
――転向して大変だったことは何ですか
反応スピードですね。外野だったらある程度考えながら（打球を）追えるのですが、考える暇がないほどの速さで（打球が）来たりします。高校生の時に少しだけやっていたのですが慣れるのが、なかなか大変でした。
――大変だったことを踏まえて具体的にどういう練習をしましたか
監督さんからは背の高いファーストが欲しいということで自分が選ばれて、背が高く内野からの送球が少しそれてもカバーできるということで（試合に）使ってもらっているので、カバー練習をしています。送球をわざと悪いところに投げてもらって、それをカバーするという練習です。
――春季リーグ戦では５番一塁手でスタメン、その時の率直な感想をお聞かせください
３年までベンチにも入っていなかったので、最初は本当にこれが神宮の雰囲気かと思いながらやっていました。
――初のリーグ戦はいかがでしたか
基本的にどのピッチャーも初対戦で、レベルも高かったのですごく良い経験だと思いました。
――開幕戦では石井一成主将（スポ４＝栃木・作新学院）からリラックスするようにジェスチャーを受けていたので、相当緊張されていたように思われました。そのあたりはいかがでしたか。
早慶戦になっても試合前吐き気がしました。
――リラックス方法などはあるのですか
緊張とちゃんと向き合うみたいな…。
――ではその緊張を乗り越えてこそ良い結果を出せるということですか
そうですね。
――どういうことを意識してプレーしましたか
特に細かいことは考えてなかったですね。
――５番という打順はどうお考えですか
ちょっと自分にはもったいないかなと思っていました。沖縄キャンプあたりで調子が良かったのでそのまま使ってもらって５番という感じであったので、ちょっと物足りない結果だったかなと思います。
――春季リーグ戦５位という結果はどう感じましたか
やはり去年２回リーグ戦優勝して、ことしは四冠だという気持ちで臨んでいたのでショックですが、今の実力が５位なのだということをちゃんと受け止めなければいけないなと思います。トーナメントではなくリーグ戦なので、もろに実力が出た結果だと思うので。
――どういう点が悪かった、また課題などはありますか
全体的に投打がかみ合っていなかったかなと思います。
――チームではどういう話し合いをされたのですか
なかなか勝てない中でもメンバー外の人や、応援に来てくれている人たちの気持ちもちゃんと考えてやっていくというのが挙がりました。
――立花選手ご自身はどういうシーズンでしたか。良かった点、悪かった点など教えてください。
悪いところは、やはりリーグ戦を通してデータが取られてしまうのでそれで自分の弱いところを突かれて苦しんだ場面があったので、弱点を克服しなければならないと思いました。
――具体的にどういうところを弱点として捉えていますか
インコースを攻められることが、後半すごく多くなってきたのでやはりデータを取られているなと思いました。
――一方良かった、自信になったところはどこですか
心配していた守備も何とかこなせてそれはすごく自信になりました。
「悔いの残らいように」
昨季はシーズンを通して主軸を任された
――ご自身のチーム内での役割は何だとお考えですか
どうなんですかね。自分でもちょっと分からないです（笑）。
――春季リーグ戦を戦い終えて、何か心境の変化などはありましたか
自分はこの先野球をやらないので、これが最後という思いがあるので春よりは勝ちたいという気持ちがもっと強くなっていると思います。
――夏はどういった練習をされていますか
先ほども言いましたがインコースが弱いのでどう打つかというのと、全体的に振りをちょっと増やしました。スウィングの量とか…。
――チームで何か練習メニューが変わったりしましたか
量を確保するようになりました。
――守備を見ていて体がとても柔らかいなと思ったのですが日頃やっていることはありますか
その真逆でかなり体固いです。チーム一固いといっても過言ではないくらいです（笑）。
――柔軟をやっていたりはするのですか
柔軟はやっているのですが関節が固いでどうしようもないです（笑）。
――立花選手が４年生ということで、立花選手から見た４年生とはどんな学年ですか
仲がすごく良いと思います。
――他の学年とは違った特徴、色などはありますか
ふざける人が多いかもしれないです。
――４年生から見るチームの良さを教えてください
ふざける人が多いと言ったのですが、基本的に真面目かなと思います。キャプテンを中心に練習もしっかりしていて。この前（８月２０日）オールスターゲームで他の大学の選手と戦ったときに特にそれを感じました。
――大学で野球をやめられると思いますが、その理由は何ですか
社会人野球に行くということはどうしても野球で企業を選んでしまうので、野球をやめた後にそこで働いたときに自分のやりたいことと違ったらすごく後悔するかなと思ったからです。自分が何をしたいか、どういう仕事をしたいかを優先しました。
――野球をやめる決断をするにあたってすごく迷いましたか
（いや、）３年生で（試合に）出てない時点であきらめていたというか野球の道はないなと思ったので。
――本気で野球をやる最後のシーズンだと思いますがラストシーズンに掛ける思いを教えてください
チームの方針としてもそうなのですが、一戦一勝でいきたいなと思います。本当に一試合一試合自分の最後の野球人生なので、一試合一試合大切に戦っていきたいなと思います。
――主将の石井選手についてはどう思っていますか
尊敬しています。
――どういうところを尊敬していますか
やはりストイックですね。ストイックで真面目なところです。
――立花選手がワセダを選んだ理由は何ですか
六大学で野球をやりたいなとずっと思っていて、現役の時に一番行きやすいのはどこかなと思って立大をずっと受けていたのですが駄目で、一浪して立大に行けたらいいなと思っていたのですが、ちょっと早大もいけるんじゃないかと思って受けて受かったので来ました。
――オフはどう過ごしていますか
出かけるのと家でのんびりするのが半分半分くらいですね。
――例えばどこに出かけるのですか
新宿とかですかね（笑）。
――肘をケガされていると思うのですが、今どういった状況ですか
今はもうそんなに、もう（大丈夫です）。
――どういった状況でケガをされてしまったのですか
デッドボールですね。
――今のご自身の調子はいかがですか
ケガと、あと体調不良を起こしてしまってコンディション的には今はあまり良くないかなと思います。
――長身を生かしたプレーが印象的ですが、こんなプレーを見てほしいなどありますか
やはりカバー練習をしてきたので難しい送球でもカバーできると思っているので、そこはちょっと見てほしいなと思います。
――スタメン争いは激しいと思いますが、そのあたりはいかがですか
今（試合に）出ていないですし、（スタメン入りできるか）あやしい感じなのですが、切磋琢磨（せっさたくま）しています。体調不良を起こして（調子が）下がってしまったので（試合に）出られるようにもう一回コンディションを整えてやっていきたいなと思います。
――秋季リーグ戦が間もなく開幕すると思うので最後にあらためて意気込みをお願いします
ワセダのユニフォームを着るのも最後ですし下手したら野球のユニフォームを着るのも最後になるかもしれないので、本当に悔いの残らないようにというのと、さっきも言ったように一戦一勝で目の前の試合を全力で戦えたらいいなと思います。
――ありがとうございました！
（取材・編集 網代祐希）
本気で野球をする最後にシーズンに懸ける想いは人一倍だ
◆立花玲央（たちばな・れお）
１９９３（平５）年７月４日生まれ。１８６センチ、８２キロ。千葉英和高出身。人間科学部４年。内野手。右投左打。色紙には『最後に懸ける想い』と書いてくださった立花選手。本気で野球をやる最後のシーズンとなるため、今までの野球人生を懸け、神宮で最高のパフォーマンスを見せてくれることでしょう！