TEAM | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 計 | |||||
愛知大 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | |||||
早 大 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 3 | 0 | × | 3 | |||||
(早)○大竹-道端 ◇(三塁打)茂木 |
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『四冠』奪取への物語の最終章、明治神宮大会がついに幕を開けた。東京六大学野球連盟代表の早大は、大会2日目からの登場。初戦の相手に北陸・東海3連盟代表の愛知大を迎えた。試合は、早大先発・大竹耕太郎(スポ2=熊本・済々黌)と愛知大先発の中川誠也の投げ合いで両軍6回まで無得点の展開に。しかしその直後の7回、2死満塁のチャンスで茂木栄五郎(文構4=神奈川・桐蔭学園)が先制の3点適時三塁打を放つ。このリードを大竹が守り切り、初戦を見事な完封勝利で飾った。次戦の準決勝は17日、道都大と上武大の勝者と行われる予定だ。
負けたら終わりの一発勝負。先制点の重要性がいつにも増して高い短期決戦だが、あと一本が出るまで長かった。相手先発は、プロ野球・中日から育成ドラフト1位指名を受けた左腕の中川。初回、先頭の重信慎之介副将(教4=東京・早実)が内野安打で出塁すると、すかさず盗塁を決める。その後2死一、三塁となったが、石井一成(スポ3=栃木・作新学院)は外角低めいっぱいの直球の前に見逃し三振に倒れた。2回以降も中川を攻略できず、6回までスコアボードに0が並ぶ。しかし7回、ようやく試合が動く。2死走者なしの場面で大竹が技ありのセーフティバントを決め、この打球が内野安打となる。さらにつないで満塁として、打席に迎えるは茂木。「何としてでも返そう」。納得のいく当たりではなかったものの、初球の直球を捉えると、打球は左中間を破っていった。走者一掃の適時三塁打で3点を勝ち越し。やはりこの男は頼りになる。早大ファンの誰しもをそう確信させる一打だった。
大きな期待に応える適時打を放った茂木
神宮のマウンドに冷たい雨が落ちる中でも、そこに立つ大竹の姿は普段と変わらなかった。5回、味方の失策などで2死一、三塁と3イニング連続でピンチを背負う。しかし、「(地面も濡れていて)内野のエラーはあるかもしれないからその後をしっかり抑えよう」という道端俊輔(スポ4=智弁和歌山)の助言で落ち着いて投げることができた。8回までを無失点に封じると、大竹は9回のマウンドにも向かう。2死から安打を許すが、後続をしっかりと抑え、秋季リーグ戦の慶大2回戦に続く完封勝利。「春のベスト時に近い」(髙橋広監督、昭52教卒=愛媛・西条)と、指揮官も太鼓判を押す好投を見せた。
変幻自在の投球で要所を締めた大竹
リーグ戦とは天候も雰囲気も異なった試合でも、浮き足立つことなくいつも通りの少ない点差を守り切る野球をできたことは大きい。一方、これまで好守でチームを支えていた中澤彰太(スポ3=静岡)が終盤に負傷で交代したのは痛手だろう。武居直宏(法4=東京・早大学院)や寺本雅弘(スポ4=東京・早稲田)ら4年生外野手の活躍に期待がかかる。「明治神宮大会で優勝して残り半分のぼた餅を食べたい」。重信が秋季リーグ戦優勝祝賀会の時に語った言葉だ。『グランドスラム』まで、あとは準決勝と決勝。残すぼた餅も食べ尽くし、満腹の締めくくりをしたい。
(記事 谷口武、写真 豊田光司、三井田雄一)
早大打者成績 | |||||||||||||||||
打順 | 守備 | 名前 | 打 | 安 | 点 | 率 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | ||
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1 | (右) | 重信慎之介 | 3 | 1 | 0 | .333 | 二安 | 遊飛 | 見振 | 四球 | |||||||
2 | (二) | 河原右京 | 4 | 1 | 0 | .250 | 投ゴ | 二ゴ | 遊飛 | 左安 | |||||||
3 | (三) | 茂木栄五郎 | 4 | 2 | 3 | .500 | 中安 | 右飛 | 遊飛 | 中3 | |||||||
4 | (一) | 丸子達也 | 3 | 0 | 0 | .000 | 二飛 | 二ゴ | 見振 | 四球 | |||||||
5 | (遊) | 石井一成 | 4 | 1 | 0 | .250 | 見振 | 三飛 | 中安 | 空振 | |||||||
6 | (捕) | 道端俊輔 | 4 | 1 | 0 | .250 | 右飛 | 投安 | 左飛 | 三ゴ | |||||||
7 | (中) | 中澤彰太 | 3 | 1 | 0 | .333 | 左安 | 一ゴ | 投直 | 四球 | |||||||
走中 | 武居直宏 | 0 | 0 | 0 | — | ||||||||||||
8 | (左) | 川原孝太 | 3 | 0 | 0 | .000 | 二ゴ | 見振 | 見振 | 投ギ | |||||||
9 | (投) | 大竹耕太郎 | 4 | 1 | 0 | .250 | 空振 | 遊失 | 投安 | 投ゴ |
早大投手成績 | ||||||||||
名前 | 試 | 勝 | 敗 | 回 | 安 | 振 | 球 | 失 | 責 | 防 |
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大竹耕太郎 | 1 | 1 | 0 | 9 | 5 | 4 | 2 | 0 | 0 | 0.00 |
コメント
髙橋広監督(昭52教卒=愛媛・西条)※囲み取材より抜粋
――厳しい試合展開でした
最初ここに来る時も1点勝負だから相手のリーグとか関係ないし、投手も中日の育成ドラフトの1位ですからね。それぐらいの力があって、特にワセダは左だから打てないだろうと思っていました。
――大竹耕太郎投手(スポ2=熊本・済々黌)が好投してくれました
良く投げてくれましたね。ちょっとリーグが違うと相性が合うかどうかわからないですからね、やってみないと。だから最初緩い球を打たれて、道端(俊輔、スポ4=智弁和歌山)と緩い球はダメだなと話して、速めの球をインコースに攻めて、向こうが(タイミング)合いだしたら外の緩い球で。初対面というのはやりにくいですね。六大学ならわかってるんですけど。そこでも調子が良かったから対応できてました。
――故障明けからは万全に近いですか
春のベスト時に近い。そんなに問題はないですね。
――早慶戦での完封で吹っ切られましたか
もちろんそうですね。それまで本人も調子は回復してるけど不安ですよね。投手陣はいい調子で今大会入れていますね。全日本(大学選手権)の時はがたがたでしたが。
――その大竹投手のバント安打から得点しました
普通野球の常識からすれば、2死走者なしで投手なら生きる必要はないですよね。あれで生きてそのままつながらなかったら肩は冷えてて。勝つときはいいようにね、結果オーライですね。終わって(次の回の打順が)1番からの方がいいんですよね。でも、勝てるときはいいように回りますからね
――チャンスで茂木栄五郎選手(文構4=神奈川・桐蔭学園)が打つ予感はありましたか
ちょっと外を攻められて本人も外への意識がありましたから、何とかしてくれるのではないかと。あそこで決めなかったらタイブレークでしょうからね。
――タイブレークも意識しましたか
もちろん。全然点を取れてないわけですから。かといって、大竹も(点を)取られそうな雰囲気はなかったですからね。試合時間も早かったし、これはタイブレークだなと。
――チーム打率は低いですが、ここぞというときに打ちますね
大きいですね。川原孝太(文構4=静岡・掛川西)なんか闇夜の満月だなんて言いましたけど(笑)。「どうしてですか」って聞かれて、めったに出ないからだって言って。それで早慶戦で(殊勲打が)出るから大したもんです。
――四冠という意識で臨んでいると思いますが
神宮がやっぱり六大学のホームグラウンドであるし、六大学の威信をかけて代表でやっているのだから、他のリーグには負けられないぞということは言ってあります。ただ受けて立ったらダメなので、相手がどこであろうとなめてはいけないし、びびってもいけないし。倒すことだけを考えてます。
――中澤彰太選手(スポ3=静岡)の状態は
ちょっと雰囲気としては今大会は無理でしょうね。
――ここまで春からもスタメンを代えずに来ています
いじらざるを得なくなりましたね。
――リーグ戦から今大会への持っていき方を全日本大学選手権から変えた部分はありますか
それはないですけど、私の考えとして、リーグで通用した投手でも他リーグの打者とはやってみないとわからない。同じような結果を求めるのはちょっと無理。打線は水物ですからね。全日本の時は投手が打たれるとは誰も思ってなかった。疲れもあったのだろうけど、他リーグの各打者の打ち方が違うから戦わないとわからないですよね。
――四冠への1歩目を踏み出した感覚はどうですか
これからですよ。一戦一戦。
――他のチームはワセダに勝ちたいという気持ちが強いと思いますが
違うリーグの打線にワセダの投手がどう対応されるかわかりにくいので。どの程度通用するかはやってみないとわからないです。ワセダの投手はどっちかというと球威があってどんどん押していくようなタイプではなく、緩急でいく投手ですから、コンパクトに来られると崩されやすい投手ですよね。
――雨の影響は
野球選手は一番やりたくないですよね。気分も乗らないし寒いしね。雨降ってる中で野球するのは大嫌いですよ(笑)。
――またここからですね
トーナメントで準々決勝、準決勝、決勝ですからね。とりあえずきょう準々決勝をクリアしたと。
重信慎之介副将(教4=東京・早実)※囲み取材より抜粋
――初戦は3-0で勝利しましたが、試合を振り返っていかがですか
なかなか点が取れなくて厳しい展開だったと思うのですが、いままでもずっと厳しい展開の中でやってきたので絶対に点を取れるというのはありました。チーム全体で焦りはなかったので、最後に3点取れたのだと思います。
――ご自身は初回に内野安打、盗塁がありましたが、その場面を振り返っていかがですか
内野安打になったのは地面が濡れていていつもより打球が速かったというラッキーがあって、初回に塁に出られたので積極的に仕掛けていこうと試合前から決めていたので走りました。
――1番打者として打席に入るときにどのようなことを心掛けていますか
もちろん塁に出ることです。ヒットではなくてもいいので、塁に出ることを頭に入れています。甘い球が来れば初球からいきますし、カウントが悪くなればなんとか粘ってボールを見極めることを意識しています。
――重信選手といえば脚に注目が集まりますが、相手から警戒されている中で塁に出た後どのようなことを意識していますか
どこも警戒してくるのは仕方のないことで、それをこちらが意識するのではなく、走るぞという意識は隠せないので積極的に走っていこうと思っています。
――相手から注目される雰囲気はいかがですか
楽しいですね。
――優勝に向けて試合は続いていきますが、改めて意気込みをお願いします
もちろん優勝というのは大きな目標ですが、その前に目の前の一戦に向かって全力で戦っていきたいと思います。
茂木栄五郎(文構4=神奈川・桐蔭学園) ※囲み取材より抜粋
――きょうの試合を振り返っていかがでしたか
リーグ戦同様に厳しい試合になったなと思います。
――相手投手に対する攻略法はどのように考えていましたか
取れるときに取れたらいいなという気持ちでいました。いい投手だという情報も入っていたので、競った試合になるとは思っていました。少ない好機をどうものにしていくかということを考えながら、試合前は取り組もうと思っていましたね。
――決勝打の場面ではどのような思いで打席に入りましたか
大竹がセーフティーバントをして出塁して、重信、右京がつないで絶好の場面で回してくれて何としてでも返そうという気持ちで打席に入りました。
――真っ直ぐは狙っていたのですか
そうですね、ずっと真っ直ぐにタイミングを合わせていたので。ただ本当は右中間くらいに飛んだかなと思ったのですが、打球を見たら左中間に飛んでいたのでまずいなと思ったのですけれど。でもいいところに飛んでくれてよかったです。
――ご自身では思い切り引っ張ったというイメージだったのですか
そのつもりだったのですけれど、左中間でした。
――ということはまだ自分の中では万全ではないということですか
自分のイメージしている打球は全然飛んでいないですね。
――右中間に飛ばすことがご自身が考える自分らしさなのでしょうか
打ったコースがどこだったのかということがまだ分かっていないのですけれど、あれが少し甘いコースだったならやはり右中間に飛んでいなければいけないなと思いますね。厳しいコースなら左中間でもいいのですけれど、自分の感覚的には右中間に飛んで欲しい感触だったのでまだスイングが負けているのか、タイミングが取りきれていないのかは分かりませんが、まだ修正すべきところはあるなと感じています。
――とは言え貴重な一打になったと思いますが
本当にいい場面で(仲間が)回してくれるので。それがたまたま結果につながっているというだけで、自分としてはしっくりきていないのですけれど結果的にチームが勝てているので、プラスに考えていこうかなと思っています。
――打席に入る際に声を上げることがなくなっていましたが
早慶戦の最終打席からやめていました。プロに行ったらやめようと考えていたのですけれど、プロに入ってやめるのも変かなと思いまして(笑)
――そのルーティーンをやめて何か変化は感じていますか
最初は少し違和感があったのですけれど、今は対投手にだけ集中できていると思います。でもあまり変わりなく、いろいろなことを考えながらできているなと思います。
――あまり相手の情報というのは事前になかったのでしょうか
そうですね。春もそうだったのですけれど、データはあるはあるのですけれどその日の相手の調子といいますか、対自分という形で変わってくると思うので。その日その日で自分で考えて対策をしなければ、と思っています。球がどういったイメージで来るのかといったことは頭に入れますけれど、実際は(打席に)立ってみないと分からないので、その場その場で対応しているといった感じですかね。
――リーグ戦が終わってから今大会までどのような準備をされていましたか
秋のリーグ戦が本当にふがいなかったので、何とか取り返したいという気持ちで練習をしていました。
――特に打撃面で考えてきたことは何かありましたか
強く振る中でボールをしっかりと捉えるということを意識して打撃練習をしてきました。
――きょうの勝利で四冠へまた一歩近づいた訳ですが、その点に関してはいかがですか
四冠を目指してやってきたのでそこを取れたらいいなと思うのですけれど、やはり目の前の試合というのを今までも大事にやってきたので。まだ先は見ずに一戦一戦という気持ちでやってきてきょうも勝てたので、次も苦しい試合になると思いますがそういうゲームを物にして、勢いのついた状態で勝っていきたいなと思います。目の前の試合に集中するだけです。
大竹耕太郎(スポ2=熊本・済々黌)
――初戦のマウンドを任されました
調子自体はキャッチボールをしている時から感触があまり良くなかったんですけど、それなりに9回をまとめることが出来て。それが自分の長所というか取り柄なのでそれを出せたと思います。
――投球内容を振り返って
序盤少しコントロールを崩す場面が多くてヒットも打たれたんですけど、そこから徐々に改善できたのでそこは評価できるかなと思います。
――きょうの投球の組み立ては
相手も初見ですし、自分も初見なので相手のデータというのがあまりないんですけど、そういったなかで1打席目の反応を見つつ、そこからいろいろと変えながら。相手の反応を見て、2打席目からしっかりと考えて投げていました。その結果として、終盤は安打を1本で抑えられたと思います。
――悪天候の中での試合となりましたが
雨が降っていたんですけど試合はあると思っていたので、そこで気持ちを切らさないようにとしっかり考えてやっていました。
――4回のピンチの場面を振り返って
地面もぬれていて、自分もショートゴロで出塁したり、そういう感じで味方のエラーというのは想定内だったので。それは想定していたというか。キャッチャーの道端さん(俊輔、スポ4=智弁和歌山)も「 内野のエラーはあるからそのあとしっかり抑えよう」というふうに言っていたので、慌てずに投げられたところが良かったかなと思います。
――6回まで両チーム無得点の試合展開でした
高校から0-0の試合というのがほとんどで、慣れているので。リードがない場面でもいい意味で変わらない感じで、平常心で投げれました。
――球数も少なかったですね
きょうはある程度コースに投げ切ることができれば飛ばされない感じがあったので、省エネで130キロくらいに抑えて。勝負どころで少しギアを上げるような感じでリラックスして投げました。
――7回には意表をつくバント安打を決めました
打てる気がしなかったので、塁に出るにはそれしかないかなと思って転がしました。
――結果として先制点につながりました
相手投手に走者を出すと少し乱れる感じがあったので、どうにかして走者を出すということが勝ちにつながるかなと思いました。
――前回の慶大戦から2試合続けての完封勝利となりましたが
まだ1回戦で、次からさらに打線も強力になってくると思うので、ここから真価が問われるかなと思います。
――次の試合に向けての意気込みをお願いします
短期決戦で、2日空いてまた試合が続くのでしっかりと調整して気持ちもテンション上げて頑張っていきたいと思います。