【連載】早慶戦直前特集 最終回 東條航

野球

 早々に優勝の可能性が消え、6連敗を喫するなど苦しい戦いが続いたワセダ。いったいチームには何が起こっていたのか。慶大との最後の大一番を前に、東條航主将(文構4=神奈川・桐光学園)にここまでを振り返ってもらった。

※この取材は5月24日に行ったものです。

「本当に苦しいときに打破できるほどの一体感がなかった」

主将がチームをけん引する

――今季ここまでを振り返ってみていかがですか

本当に苦しいシーズンになっていると思います。

――現在のチームの雰囲気はいかがですか

この前大差で法政に負けたんですけど、その法大2回戦のときから話し会う機会というのがすごく増えているので、負けて良かったという試合はないんですけど一体感と言うものを意識して、いまは雰囲気は悪くないと思います。

――開幕して何か感じた点などはありましたか

明大との一戦目ができすぎてしまったので、一点を守るような練習をしてきたのに、明大から10点もとって少し勘違いした自分たちがいたのかなという部分がありました。そこから点をとれると思ってしまって、2回戦で2点で終わるというのはある程度計算していたんですけど、守備のミスであったり、後ろにつなげる打撃をやってきたのに打ちにいって凡打が増えたりでその2点を守りきれませんでした。1戦目で大差で勝ったことが逆に悪かったのかなと思います。

――明大1回戦で大差で勝って、2回戦に臨む際になにか変化があったのですか

臨み方としては特に変わらずまた0-0から始まると思っていたんですけど、正直けっこう自信があっていま思えばそれが過信だったのかもしれないですけど、しかも1回戦の9回にエラーで点をとられているのでもう一回気を引き閉めていこうというのはあったんですけど、心のどこかで全員がちょっと勘違いしたのかなというのはあります。

――明大戦で、一勝一敗一分で迎えた4戦目というのはどう臨まれたのですか

正直チームとしての雰囲気もあまり良くなくて、みんな手応えを感じていただけに3回戦で大敗したことでショックが大きかったかなと思います。そこでの切り替えができなかったです。

――開幕前に思い描いていた戦い方はできていますか

できてないですね。全然できていないです。開幕前は打者陣は3点以上で、投手陣は良いと思っていたので、まあ実際悪くはないんですけどピッチャーを中心とした守りの野球というのを目指していたので、3点以内のロースコアのゲームをやっていこうと話してました。

――昨春優勝を果たしたときと何が違うと思いますか

きょねんの春と比べて力がないとかそんなことあまり思わないんですけど、いまテーマにしている一体感というものが法大2回戦ではけっこう出てきたんですけどそれまで全然足りていなかったので、ベンチの一体感ですかね、ワセダらしさというのか、それが足りなかったと思います。

――開幕前の取材で、キャンプなどでコミュニケーションが取れているとおっしゃっていましたがそれでも一体感は足りなかったですか

そうですね、悪くはないと思ってたんですけど…リーグ戦は空気も違いますし、本当に苦しいときに打破できるほどの一体感がなかったなと思います。

――連敗しているときに何かチームに向けて話したり声をかけたりしたことはありますか

きちんとみんなの前で話したのは、法政2回戦のときの朝に全員の前で話して、みんな違う方向を向いているひとつの軸を持っていないチームは弱いと思ったので、信じる人は監督(岡村猛、昭53二文卒=佐賀西)とか徳武さん(定祐、昭36商卒)とかしかいないので、信じる人をしっかり信じて、指示を守るなかで自分の工夫や意思をしっかりもってやっていこうと話して、とにかく一体となってスタンド、グラウンド関係なく一体感を生むために自分がなにができるのかをしっかり考えて取り組もうと話しました。

――一番印象に残っている試合はやはり明大戦になりますか

そうですね、でも立大戦もだいぶ苦しかったですけど。どの試合も印象に残ってますね。

――その立大戦には、チームとしてどのように臨んだのですか

勝てるかなーというのがあって、9回まで勝ってたのにあそこで一本打たれてもうそこでけっこう雰囲気は悪かったですね。

――岡村監督と何か話し合ったりはしたのですか

いろいろ話はしました。チームの雰囲気であったり、高梨(雄平、スポ3=埼玉・川越東)のファースト起用であったりいろいろ話しました。

――高梨選手が一塁手として試合に出場したことについてはいかがですか

すごく負担が大きいので、自分たち野手からしたら申し訳ない状況だったなと思います。

――どの試合も安打数は多いのですが得点に結びつかない場面が多くみられました。それについてはいかがですか

打てないのは(春季)オープン戦のときからある程度予想してたんですけど、監督にも言われてるんですけどチャンスでの三振がすごく多くて、明大初戦も打ったわけではなく相手のエラーから始まりましたし、チャンスでバットに当てないと何も動かないというのがありました。2回戦もチャンスで三振ばっかりだったと思うんですけど、やっぱりそこが痛いかなと思います。

――選手に焦りなどはあったのですか

焦りというよりはどうやったら点が入るかというイメージがわいていなかったというのが正直なところだと思うんですけど…。ヒット数は負けてないと思うしチャンスもなくはないんですけど、そこからどうやって相手のいやがる展開に持っていくかというのができていなくて、四球がとれていないので塁も埋まっていかないので、相手が一点ならいいやと思いきって攻めてくることが多かったですね。

――投手陣は踏ん張っているように思われるのですがいかがですか

そうですね、本当にピッチャーは頑張ってくれてるので、ただもっと頑張れると思うので、もっとすごいものを持っていると思うので現状に甘んじることなくもっとやってほしいとは思いますね。

――立大戦で勝ち点を落とし優勝の可能性が消滅しましたが、そのとき感じたことは

ひたすらに悔しかったですね、本当に。

――優勝がなくなったところからチーム全体としてどのような切り替えを行ったのですか

結果としてあまり切り替えできていないんですけど、チームが泥沼の中でも(法大)2回戦で3点とってちょっと敗戦のなかでも光を感じたかなというのはありました。

「満足しているところは何もない」

――ご自身の成績について、ここまで振り返っていかがですか

そんなにめちゃくちゃ調子が悪いってことはないんですけど、四球が全然とれていないので自分の中で四球がとれないというのはあまり調子が良くないときなんです。タイムリーエラーもしましたし、満足しているところは何もないですね。

――ここまで通して感じた課題は

課題だらけなんですよね。バッティングではもう少し絞り球を自分の中ではっきりしなきゃいけないというのと、打てるときと四球が取れるときって共通していて、相手にすごい球数投げさせて打席内でピッチャーの球を見ているんですよね。打てないときは、フェアゾーンに入ってしまうというか、良いときは振りきってるんでファウルになってくれるんですけど、調子悪いとちょっと当てにいく分ファウルになってしまうので、もっと打席内で振ることというのをやっていかないといけないのかなと思います。

――打撃において技術面で何か変えたところはありますか

間の取り方に関してはけっこう自分のなかで良くなったかなと思ってるんですけど、結果として自分のなかでちょっと良くなったと思ってるぶん、打ちにいくことがすごく多くて、打ちにいかなきゃはいけないんですけど無駄な球も、打てない球も打ち始めたというのがよくあって、そこから崩しているのかなと思います。

――何か岡村監督、コーチなどにアドバイスを受けたりはしたのですか

毎日のように受けてます。上からしっかり切り込むというのと、右肩が下にもぐってしまう癖があるのでそれを意識していて、結果としてついてきてないんですけどいつできるようになるかわからないんで、諦めずにいまできなくてもいいのでできるようになるまで根気強くやっていこうとは言われています。

――守備に関しては特に何も言われたりはしなかったのですか

明大戦でエラーしたとき、中村もすごくエラーしたので二遊間で呼ばれて、センターラインでしっかりつくっていくという風に言われているので、二遊間がそういう基礎的な面でミスをしていたらチームがこうなってしまうと言われました。

――開幕前におっしゃっていた「二遊間でグラウンドをコントロールする」というのはできていると思われますか

明大戦で崩れてしまったのは良くないんですけど、もっとできるという部分のほうが多いので、まだまだ全然足りてないなと思います。

――リーグ戦後半は打順が変動することも多かったですがそれについてはいかがですか

打順が変わったからと言ってやることが変わるわけではないですし、自分らしさが出せればいいかなと思っていたんですけど出せずに終わってしまいました。

――失策はしてしまいましたが安定感のある守備は健在だと思われるのですが

守備に関しては特に自分は不安を持ってないです、いまのところ。練習でやってきたことがそのままできているので、エラーついてしまいましたけどあれは特に考えてできることじゃないので、身体が動かなかったのでしょうがないととらえて、エラーしたらその分練習するしかないと思っています。

キーマンは「全員」

――早慶戦は勝ち点1同士の戦いとなりますが

4位5位争いですよね(笑)。でも先輩方のおかげで歴史というものがあるので、観客が入る一番最高の舞台で野球ができるので、そこは気負いすぎることなく誇りをもって戦いたいなと思います。

――今季の慶大に対する印象はいかがですか

けっこう自分たちと似たような戦いをしているというか、頼りにしていた白村明弘(4年)がけっこう崩れ気味で苦しい戦いをしていたと思うのですが、最近の戦いを見ていて立て直している部分はあるので強いチームだなとは思います。

――慶大で特に注目している選手はいますか

白村と松本(大希、4年)ですね。白村は闘志をけっこう全面に出してくるので、やっていてすごく楽しい選手だなという印象はあります。

――昨春も昨秋も早慶戦は楽しみながらプレーされているように思われるのですが

そうですね、いろいろな友達も見に来るので、観客もすごく多いですしほかの大学に申し訳ないくらい幸せな環境でやれるので、本当に自分としては楽しみな試合です。

――どういった試合をしたいなどありますか

見に来てくれた人たちに見に来てよかったなと思える試合にしたいですね。

――ご自身はどのようなプレーをしたいなどありますか

自分が打って『紺碧の空』を聞きたいです。今季聞いてないんで一回も(笑)。

――早慶戦でのキーマンも4年生ということになりますか

4年生ももちろんですけど、一体感という面を意識したいので全員というのがありますね。

――早慶戦に初出場される選手もいるかと思いますが、そのような選手にはどう声をかけられますか

プレッシャーがかかってる場面ではないので、楽しんでやってこいよとは言いたいですね。

――最後に早慶戦への意気込みをお願いします

チーム一丸となって、ワセダらしく、学生らしく戦っていきたいなと思います。

――ありがとうございました!

(取材・編集 山田祥子)

◆東條航(とうじょう・わたる)

 1991年9月11日生まれ。174センチ、75キロ。神奈川・桐光学園高出身。文化構想学部4年。内野手。右投右打。今季から打席で構える前にバットを一振りする動作を取り入れた東條主将。手首のかえる位置の確認と体をつっこまないようにするのが目的だそう。「自分が打って紺碧を聞きたい」という主将の一振りに期待がかかります