【連載】『WASEDA is all in』 第6回 小野田俊介

野球

ケガを乗り越え復活を果たした小野田俊介(社4=東京・早実)。出遅れたもののここまで2本塁打、6打点と改めてその存在感をアピールしている。開幕前、ことしの目標を春秋連覇と語った小野田。今回は優勝を懸けて争う天王山を前に、ここまでの苦難と賜杯奪還への意気込みをうかがった。

※この取材は5月24日に行われたものです。

予想以上に大きかったケガの影響

ケガの状態について語る小野田

――まず、ケガも含めていまの体の状態はいかがですか

遅れている分、練習量というのは必要ですし、その中で上手くバランスを取りながらやっている状態なんですけど、正直そんなにいいという感じはしないですね。

――ケガの影響というのはやはりまだありますか

自分が感じるだけではなくて、どこかしらに出ているのかなというあるんですけど、やっぱりその中でもうまくケガの状態を見ながらやっていかなくてはいけないと思うので、その辺のむずかしさはありますね。また早慶戦に向けてしっかり調整していきたいと思います。

――2月の取材の際には、ケガはあまり成績に影響しなかったとおっしゃっていましたが、それでも手術を決断したのはなぜですか

ケガをしたのが秋のリーグ戦前だったので、手術のタイミングについては監督さんに一任したのですが、そしたら秋のリーグ戦は何とかやってくれということだったので出場しました。それまでにもケガをしながらリーグ戦に出るというのを何度か経験していたので、調整が難しいというのは見えていたことなんですけど、それでもやれるんじゃないかというのが自分の中であったので。それでシーズン後にという感じですね。

――迷いはありませんでしたか

冬の練習は全くと言っていいほどできなくなるので、感覚的な部分や体力的な部分で不安はありました。

――リハビリのトレーニングはきつかったですか

地道で毎日という感じだったので、単調な日々が続いてはいました。

――どのようなトレーニングをされていたのですか

最初は(膝の)曲げ伸ばしから始まって、それから徐々に負荷をかけてトレーニングをしていくというのが段階としてあって、最後に動きを入れていってと、大きく3つの段階に分かれていました。どれも患部の様子を見ながら徐々にやっていかなくてはいけなかったのでもちろん焦りもありましたね。

――本格的な練習というのはいつから始めましたか

4月入ってからですね。少し無理やりやった感じもあります。

――ケガをしている中でもレベルアップはしなくてはいけないという気持ちはあったと思いますが、どんなことを目標に練習には取り組んでいましたか

試合戻った時にきょねんの秋と同じような感覚でプレーできるようにというのを目指したのですが、予想以上に空いた期間が長くて今は感覚がよくない状態なので、そういった部分で難しさはありました。

――リハビリ生活の中でお世話になった人はいますか

トレーナーの佐藤琢哉(スポ4=千葉・船橋)にずっと見てもらいました。目白の方の整形外科のリハビリに通っていたんですけど、そこについてきてもらったり、ケアをしてもらってきていたので、いまやれていることに関して感謝しています。

――ロサンゼルスと宮崎でのキャンプには参加できませんでしたが

チームに迷惑をかけたと思うし自分自身遅れているというのもあったので、やれることをこっち(東伏見)でやろうというのを考えていました。

――オープン戦が始まり、外野陣がそろって好調でしたが焦りは感じましたか

逆に吉澤(翔吾、スポ4=東京・日大三)がそこに入って、チームが調子よくリーグに臨めたというのは、チームの勝利に関していいことだと自分の中では思っていました。

――チームに迷惑をかけてしまっているという気持ちはどのように整理していましたか

早く復帰して、試合で勝利に貢献する、というのが一番のモチベーションだったので、そこだけを目標にやっていました。

――全治半年に及ぶケガというのは今まででも初めてでしたか

そうですね。一番長かったです。

――4月5日のオープン戦が久々の実戦だったと思いますが、打席に立ってみてどう感じましたか

ボールが全然見えないな、というのが印象で、予想以上だったのでそこでの焦りはありました。

――それから調整というのはどのように行ってきましたか

なるべく多くピッチャーの球を見られるようにバッティング練習をさせてもらったりだとか、バットを振ったりだとかですね。今でもまだ足りない部分はあるのですがそういった工夫をしてきました。

自分が打線を引っ張りたい

――シーズンについて、ここまで振り返ってみて個人の出来栄えは

ムラがあるな、というのが一番です。スイング量やランニング量が絶対的に少ないので安定感が足りていないのはそういうところからきていると思います。そこは試合前の集中力だったり、試合前の何日かの練習での集中力で挽回していきたいなと思います。

――点数をつけるとしたら

40、いや、30点くらいじゃないですかね。

――チームとしては今季振り返ってみていかがですか

ピッチャーが苦しいときに打線がカバーしたり、なかなか相手ピッチャーを捉えきれないときにピッチャーがロースコア踏ん張っていたりという面では、お互いカバーしあってよく機能しているんじゃないかと思います。

――ことしの『ワセダの野球』というのはどのような野球を目指していますか

監督さんがよくワセダの野球の神髄を語ってくれているのですが、守りに対しても打席での1球に対しても強い気持ちを持ってということをおっしゃっています。もちろん守りも守るし、攻撃も打ってということで、本当に1球に集中するという雰囲気があると思います。

――それを踏まえると投打でカバーしあっている今の状況は理想的ということですか

そうですね。

――初打席は、いきなり1点ビハインドの8回2死二塁という重要な局面でしたが、心や体の準備というのはできていましたか

代打で使ってもらう以上、消極的になるわけにはいかないので、何とかくらいついてというかたちで打ちました。最初の打席でなんとかヒットでつなぐことができたという部分ではほっとしました。

――2ストライクからの変化球でしたが狙っていたんですか

ある程度の読みと対応でうまく拾えたかなという感じですね。そんなにうまくボールを待てたわけじゃなかったです。

――初出場のときにはもう感覚としてはいまに近い感じはありましたか

全然でしたね。あのころは。オープン戦も2打席しか立っていなくて、シートバッティングはやっていましたが実戦では3打席目くらいだったので、自分の中でも結構ドキドキな部分はありました。

――立大3回戦は、初スタメンとなりましたが試合前の調子はいかがでしたか

調子というのが、今季は戻ってすぐだったのではっきり分からない状態で進んでいますね。でも調子どうこうじゃなくて出していただいたからにはやってやろうという気持ちでしたね。調子はそんなにいい悪いなかったと思います。

――常に調整が少し遅れているという感じですか

自分が今どれくらいなのかが分からない感覚でした。

――逆転の3点本塁打となりましたが打った瞬間の手ごたえはいかがでしたか

1点ビハインドでランナー二、三塁の場面だったので外野フライを、と思って打った打球だったので飛距離的に入るか微妙なところでしたが入ってくれて良かったと思います。

――犠飛にはなったかなという感じですか

はい。

――本塁打について何か声はかけられましたか

ベンチ戻ったらみんな頭をたたいたりしてきて、少し貢献できたかなと思ってほっとしました。

――東大2回戦では通算10本目の本塁打を放ちました。以前目標と語っていた杉山翔大選手(平25スポ卒=現プロ野球・中日)の9本という記録を超えたことに関して何か思うことはありますか

杉山さんが打ったホームランというのは勝負どころやいいところでのが多かったので、もちろん超えられたということはうれしいですけど、まだまだもっと勝負どころでのホームランというのを目指していきたいと思います。

――過去に10本塁打を打った選手の中には、仁志敏久氏(平6人卒=元プロ野球・読売)のような打撃はもちろん守備が素晴らしい選手がいました。これからどのような選手を目指していきたいですか

僕には足が速かったり、守備範囲が広かったりというのはあまりないので、やはり長打の部分で貢献していかなければと思います。(本塁打の)数が増えることというのはもちろん目標にはしています。

――先週の明大戦では思うような結果が残せなかったと思いますが、どのようなところが悪かったと思いますか

やはり自分の中で迷いだったり配球に逆をつかれてという部分で自分から崩れてしまった印象があります。

――明大戦のときも調子はあまり分からないという感じでしたか

1回戦の感じでは、自分の中で良かったかなというのがあったんですけど、そのあたりの不安定さというのが、やはり課題かなと思います。

――来週の早慶戦に向けて不安材料になったりはしないですか

1週間空いて早慶戦に臨むことができるので、今週、来週で(状態を)もう一回つくり直して新しいかたちで早慶戦に臨みたいなというふうに思います。

――状態をつくり直すということですが、それはどのようにしていきたいですか

一回戻すということですね。本当にゼロに。フラットにしてからきょう明日で戻して、新しい気持ちで火曜日からの練習をやっていけたらなと思います。

――開幕前に4番に座りたいということを話していましたが、これから秋のシーズンも含めてその気持ちに変化はありますか

やはり自分がバッティングの中心になっていかなくてはいけないという気持ちはあります。そのかたちとして4番だったり3番、5番とかいろいろあると思いますが、4番をきょねん打たせてもらってことしもやってやるという気持ちはあります。ですけど、チームを引っ張っていきたいという気持ちの方がいまは強いです。

――いまは6番としての役割を全うしたいということですか

そうですね。

――遅れてきたものの打点は6を挙げていますが

打点がそれだけあっても、今好調な武藤(風行、スポ4=石川・金沢泉丘)、茂木(栄五郎、文構3=神奈川・桐蔭学園)がつくったチャンスというのをつぶしている部分もかなりあるので、むしろそっちを課題としてとらえたいと思います。

――今季ここまで30点ということでしたが、その中でも収穫や自信を深めたことというのはありますか

自分の感覚がなかなか戻らない中でリーグ戦をやるということに対していい経験にもなりましたし、打ている日もあれば打てない日もあってムラがあるなというふうに自分の課題を見つけられたという部分に対しては収穫があったのかなと思います。

――背番号『24』をつけて3季目となりますが、この番号に思い入れというのはありますか

1年生に自分が入ってきた時に、土生さん(翔平、平24スポ卒=現プロ野球・広島東洋)と一緒にライトをやっていて、その時はもうキャプテンだったので背番号は10でしたがそれ以来24をつけている人がいませんでした。その後にいただいた番号ですし、歴代の先輩を見るとすごい人ばかりなので、自分もつけるに値する選手になりたい、背番号に恥じないプレーをしたいと思います。

――開幕前には、プロ野球に行けたとしても通用するか不安があるということをおっしゃっていましたが、今季結果を残してもその気持ちに変化はありませんか

もちろんプロに関しても社会人野球に関しても簡単なものではないと思いますし、気持ちというのはそんなに変わっていませんね。

負けられない大一番

現役最多の10本塁打を記録している

――ベンチからの声がことしはとてもよく聞こえますが、練習や試合にきょねんより明るく臨めているということですか

ベンチワークの面ではすごくみんなに気を配ってもらってベンチがうまく回っていて、それが守備だったり打線の流れだったりに影響を与えてもらっていると思うのでそれはすごくありがたいです。

――きょねんからチームについて変ったことはありますか

大きくはないですね。

――岡村監督はどのような人ですか

一歩一歩というふうに基礎を大事にされる方ですね。ふとした時にアドバイスをくれて、それが的を得ていることが多々あるのですごくアドバイスはありがたくいただいています。

――優勝をかけた早慶戦を前にチームの雰囲気はどうですか

勝ち点4を取っていますが優勝は決まっていませんし、早慶戦に勝たなくてはいけないという部分でも緊張感があって浮かれた感じはないですね。ピリピリではないですけど、厳しい雰囲気の中で臨めるのではないかと思います。

――ことしの慶大のイメージはいかがですか

思い切りがいいというのが一番にありますね。

――気をつけなくてはいけない選手はいますか

ことしはクリーンアップの谷田(成吾)、横尾(俊建)、藤本(知輝)が機能しているので、やはり警戒したいなと思います。ピッチャーで言ったら三宮(舜)が、高校時代から知っているのですが、ストレートに力と伸びがあるので押されないようにということを気を付けてやっていきたいと思います。

――どんなところが試合のカギを握ると思いますか

どっちが先制したとしても、点の取り合いというか、両チームともガンガン攻めていくと思うのでそういった時に競り勝てるかというのが大事だと思います。

――好機をいかに生かせるかということですか

そうですね。

――きょねんは4試合で3本塁打を放つなどとても相性のいい相手のように思えますが

早慶戦で打てているということで、苦手意識を持つよりは全然いいと思います。ただ何か意識したことで結果がいいのではなく、いつも通りの準備をして試合に臨んだ結果がそうなっているので、気持ちを変えるとかいうつもりはないですね。

――優勝がかかっているということで例年よりさらに観客が増えると思われますが緊張はありますか

いままで色々な大舞台で野球をやらせてもらってという経験があるので、そんなに大きな緊張にはならないかなと思います。

――自分の役割というのはどのようなことだと思いますか

いまうちのクリーンアップが調子いい状態でここまできているのですが、次の試合がどうなるかわからないので、苦しいときに自分が雰囲気を変えられたらいいなと思っています。

――具体的な目標や数字はありますか

じゃあ決勝打を目標にしたいです(笑)。

――最後に意気込みをお願いします

優勝の懸かった早慶戦というのも自分の中で初めての経験なので、試合になってみないと分からない部分もありますが、自分の力を全部出して、とにかく勝利に貢献したい。それだけです。

――ありがとうございました!

(取材・編集 伊藤広真)

小野田

◆小野田俊介(おのだ・しゅんすけ)

1992(平4)年10月15日生まれのA型。182センチ82キロ。東京・早実高出身。社会科学部4年。外野手。右投右打。同じ外野手の中澤彰太選手(スポ2=静岡)や重信慎之介選手(教3=東京・早実)とコミュニケーションを取ることが多いという小野田選手。時には自分が指示を受けることもあるそうで、先輩、後輩の間でいい関係が築けているようです!