昨年度、日本一の監督として早大野球部の歴史に名を残した岡村猛監督(昭53二文卒=佐賀西)。しかしその中で取りこぼした試合や果たせなかった「四冠」という目標。全国の頂を狙う指揮官に春季リーグ戦(リーグ戦)、そして一年の目標を語ってもらった。
※この取材は2月13日に取材したものです。
「監督としての力が不足していた」
チームの現状について語る岡村監督
――現在はオフ期間ですが、どのような練習を行っていますか
基礎基本的な練習というのは1年間継続してやっているんですけれど、いよいよ2か月後にリーグ戦が開幕ということで実践的な練習に入ってきたところですね。
――練習がお休みの日は何をされていますか
オフは家族と食事をしたり、映画を見たりしてリフレッシュしています。
――普段は練習以外で選手の皆さんと交流される機会はありますか
あまり学生のプライベートには立ち入らないようにして、ある程度距離を取りながら対応しています。ただ新3年生の多くは成人を迎えたので、その学年全体が成人を迎えたということでお祝いをしました。
――昨年度を振り返って
おととしがなかなかチームの成績が振るわず、期待に添えなかった部分がありましたけど、去年は春のリーグ戦で優勝もできましたし、全日本大学選手権(全日本)のタイトルも獲れました。秋は残念ながら(リーグ戦)優勝できませんでしたけれど、安定した戦いができたなと思います。
――先ほどおっしゃった通り、春はリーグ戦、そして全日本で優勝されましたが、早慶戦で勝ち点を取ることができませんでした
悔しい思いですよね。せっかく優勝したのに早慶戦では勝ち点を取れなかったというのは非常に悔しい思いをしたということで。まだまだ僕の監督としての力が不足していたというところだと思います。
――その後の夏の期間で軽井沢合宿を復活させて、秋に向けて十分に準備されていました
春はね、明大戦が4回までもつれたということで、大分ダメージを選手たちも受けて早慶戦に臨んだと。まあ、ほっとしたという部分もあるとは思うんですが、やっぱりまだまだ肉体的にも精神的にもタフではなかったという反省から、秋に向けて夏もう一回心身共に鍛え直したというところで、秋はケガ人が途中で出たりしたのもあって3敗して法大に優勝を持っていかれましたが、ある程度強くなったんじゃないかなと思いました。最後の早慶戦もしっかりと戦えましたし、優勝は逃しましたけど戦いぶりとしては、みんなしっかり戦ってくれたと思っています。
――春は早慶戦、秋は優勝した法大との試合と、選手たちにとって一勝の重みがひしひしと感じられた一年だったのではないでしょうか
どうでしょう、それは今年の春のリーグ戦を戦ってみないことには、その一勝の重み、ワンプレーの重みといったものを選手たちがどう感じていたのかということの検証は難しいところですね。結果で、その重みをどう受け止めて、どう感じたっていうのを見極めていきたいなって思いますね。
「人間性を磨き、高める」
監督として再びチームを日本一へと導く
――秋のリーグ戦終了後、新たな取り組みとして冬季オープン戦や静岡合宿なども行われていました
やはり昨年度の4年生が抜けて新しいチームになったということで、チーム作りに着手をして一日でも早くチームとしての戦い、チームとしてのまとまりといったものを作っていく必要があるなと思いました。オープン戦をやって新しいチームとしての課題、合宿をやってコミュニケーションを円滑にして、チームとしての形を早く作りたいなと思ってやりました。
――静岡合宿では実践練習なども行われましたか
高校生と一緒に練習したので、高校生にも手伝ってもらって基本的な練習をメインにしながらも実戦的な練習もある程度できたと思っています。
――合宿が終わって1か月以上経ちますが、チーム作りという点において手ごたえなどは感じられますか
けがで合宿をリタイアした選手もいましたし、テストもあってチーム全体での練習というものが2月に入ってまだまだ10日くらいしかできていないので、その辺の成果や感触といったものはもう少し経たないと感じられないかなと思います。
――それはオープン戦などを通して感じられるということですか
そうですね。これからはより実践的な練習、そして実践を通して、その手ごたえがあるのかないのか感じてくるのかなと。やはり新しいチームになって、レギュラーメンバーの顔触れも一部変わってくるので、どうしても昨秋の早慶戦のときのチームと比較しがちになるのだけれども、あれはあのチームとして一年経った形でのチーム力。今年はこれからスタートするという意味でのチーム力。まあ、ある程度力に差があるというのはやむを得ないのかなと。ことしもこれから一年かけて、チームとしての力をつけられればと思います。
――その新チーム発足から2か月以上経ちますが、岡村監督から見た今年のチームの印象は
まだフルメンバーがそろっていないので、少し小粒になったような気はします。ただそんなに大きな穴があるわけではないと思っていますし、昨年度の4年生が抜けた穴を十分皆でカバーして、力を合わせて戦えばいいと思います。やはりちょっと大人しい部分も感じたりして、まだまだつぼみの段階かなという気がします。
――東條航主将(文構4=神奈川・桐光学園)とはどのようなお話をされましたか
ポジションがショートということもありますし、常にチームの中心にいてリードしてほしいという話はしてあります。4年生のテーマとして「人間性を磨き、高める」というのを今年掲げています。普段の生活から野球に全てが通じていくという気持ちで取り組んでくれていますから、それは僕が目標としている方向と一致しているので、信頼して任せていますね。
――岡村監督としては昨年度のチームを維持させるというよりも、また一から作り直すというイメージなんでしょうか
選手の顔ぶれも変われば、当然チームのスタイル、カラーというのも自ずと変わってきますので、また新しいチームカラーで戦って行きたいなと。ただ、そのカラーがどのようなカラーなのかは見てのお楽しみに、ということにしましょうか(笑)。
――今年の打撃陣について
別に打撃を変えるってわけでもないし、「健棒ワセダ」、ワセダらしい打撃っていうものをさらに徹底して、つなぐ打撃をやって行きたいなと思います。だからどう変える、一から作るというか、そんなに方向が変わるわけではないので。打ち方が変わるのではなく、やる選手が変わるというだけであって、打撃に関してはそんなに変えようという気はありません。ただ、少し打線の太さが細くなるかなと気もします。その辺をどう補っていくかというのが課題かもしれません。
――その補うという部分が、昨年度からの変化にあたるということですね
変わるは変わるでも、去年よりも打つかもしれません。みなさんは多分弱くなるだろうというような予想があるかもしれませんが、こればっかりはふたを開けてみないとわかりませんね。去年以上かも分からないし、期待と不安が半々ですね(笑)。
――お話を伺っていて、岡村監督の指導方針としては理想とするレベルまで選手を高めるというよりも、選手自身に任せる部分が多い気がしますがいかがでしょうか
個人個人の能力や特性に応じて、また打線というのは1番から9番まであって、それぞれの打順での役割というのもあるし、ゲームの展開に応じて対応できるようにする。まあ、当たり前でしょうという意見もあるかと思いますが、とにかく次にどうつなぐか、つなげられるかというのが大切なことなのかなと。どのレベルというよりも、その打順、その場面での役割を果たせるレベルにするということだと思いますね。ただ誰がどの打順に入るのかというのは様々な事情によって変化してくるので、現在持っている戦力でそれを補えるようにしっかりと準備しておくということだと思います。
――次に投手陣についてですが、昨春のリーグ戦、そして全日本での優勝と様々な経験を積んだ選手がそのまま残っていますね
非常に大きな経験をさせてもらったし、一球の重み、一球の厳しさというのも感じたシーズンだったと思います。去年の経験が全て生きてプラスになって成長できれば、それに越したことはないのだけれど、ただまだ大学生だから去年良かったから今年はそれ以上に良いだろうというのはみなさんが期待する部分だとは思うんですけれど、そういった保証はどこにもないし、当然他校はワセダの投手陣を研究してくるだろうし。さらには、ことしのチームのウィークポイントはキャッチャーが変わるということで、今度誰がマスクを被るのかということで、私も誰が成長して出てくるのかというのを楽しみにしています。だから投手陣だけということではなくて、やはりバッテリーとして見ていかなくてはいけないんじゃないかと思っています。
――そのバッテリーですが、捕手陣にはどのような指導をされていますか
キャッチャーはそれぞれ社会人チームの練習に参加させて、高いレベルで経験を積ませています。もちろんキャッチャーだけでなく、うちの主力の選手たちには社会人のレベルや厳しさを学ばせるために練習に行かせています。
――新入生もすでに練習に参加していますか
早実勢は1月の中旬から来ていますし、それ以外の指定校推薦や自己推薦といった連中も2月に入って練習に参加させています。
「目標は日本一」
――このオフ期間に選手のみなさんに身につけて欲しいことなどはありますか
基礎基本の重要性と目的意識ですね。何のためにやっているのかと、練習1つ1つには目的があるはずなので、その目的の意識を高める。基礎基本は何のためにやるのかと、キャッチボールは何のためにやっているのかと、そういう目的意識を持ってやって欲しいです。それはなぜかというと、社会人の練習に参加したトレーナーが学生と社会人の違いという部分で意識の違い、1つ1つの練習をやるのにも集中して、目的意識をもっているところは学ぶべきだと感じるということを言っていたので、選手に紹介してもう少し1つ1つの練習の意義・目的を意識してやるということを伝えました。だから、ウォームアップであったりキャッチボール、トスバッティング、ここをもっと精度を高めるようにはいってあります。そういうのはつまらない練習なんですよ。毎日やるんだけれど、どうしても見過ごされがちになる練習なので、そこをもう一回意識もってやって行こうと。だから終始一貫して僕が言っているのは、基礎基本の徹底・反復ですね。それも慣れてくるとだんだん荒くなるので、そこをもっと意識もって精度を高めてやって行こうということです。
――リーグ戦開幕までに組まれたオープン戦の中には、社会人チームとの試合も組まれていて、選手にとっても良い経験になるのでは
やはり社会人はレベルが高いですから、意識レベル、技術レベルが高いチームと練習試合やることで多くのことが学べると思っています。
――ことし一年間の目標は
目標は日本一ですね。春も秋も日本一になると。常にそれが目標なので。それと早慶戦に勝つというのが二大目標ですね。
――最後に春季リーグ戦に向けて、意気込みをお願いします
日本一獲るためには、リーグ戦で優勝しなくてはいけないと。リーグ戦で優勝するためには白星を10個、とにかく重ねていくと。そのためには一戦必勝でとにかく戦って行くということ以外ないです。
――ありがとうございました!
(取材・編集 廣瀬元宣)
岡村
◆岡村猛(おかむら・たけし)
1955年(昭30)4月1日生まれ。佐賀西高出身。1978年(昭53)第二文学部卒。岡村監督が掲げるもう一つの目標は「香気」。泥臭いと言われるワセダ野球とはまた違う、「ワセダらしさが香る野球」というのをぜひ神宮で披露してもらいたいです。