【連載】『大舞台での逆襲』 第6回 有原航平

野球

 ケガで出遅れはしたものの、先発、中継ぎで7試合に登板し、防御率はリーグトップの0.87。エースとして、今季もワセダの投手陣の柱としてフル回転した有原航平(スポ3=広島・広陵)。しかし、有原本人は今季の成績に悔しさをにじませる。今季を振り返りながら見えてきた、早慶戦への思いとは――。

※この取材は10月26日に行われたものです。

「自分が勝つことより、チームが勝つことの方が大事」

チームの勝利へのこだわりを語る有原

――今季の成績を振り返って

最初の東大戦に先発できなかったのは悔しかったのですが、あとはある程度試合はつくれたと思います。でも、自分に勝ちがついていないので、もう少し粘ることができればもっと良かったと思います。

――ケガで出遅れはしましたが、全体的に見るとかなりの好成績を残しています。その要因はどこにあると思いますか

いや、特に自分では好成績という意識はないです。ただ、出遅れて今までより投げていない分、頑張ろうという意識はありました。

――今季には、どのような気持ちで臨んでいましたか

投げる試合は全部勝って、5勝したいと思っていました。

――ケガをしてしまった時の心境は

まあ…、デットボールだったので、しょうがないかなと切り替えることはできたと思います。

――登板することができなかった東大1回戦は、どのような気持ちで見ていましたか

先発の吉永(健太朗、スポ2=東京・日大三)は(夏季)オープン戦からずっと投げていたので、大丈夫だろうなと思ってみていました。

――東大2回戦は1イニングを無失点に抑える好投を見せ、次の明大2回戦で先発復帰しました。1回戦で投げたいという思いはありましたか

それはありました。でも吉永はオープン戦から頑張ってきていたので、吉永が1戦目、自分が2戦目で、という認識でいました。

――昨季より成長した部分はありますか

球速が落ちなくなりました。

――そのための練習をしたのですか

そういうわけではないです。普通に練習して、体力もついて、走りこんできた結果だと思います。

――今季の特徴として、味方の援護があるまで粘り強い投球ができているように思いますが、何か今までと意識的な面での変化があるのですか

とりあえず、味方が点を取ってくれるまで我慢すれば、という思いで投げています。先制点を取れば、チームが勝つ確立がかなり高くなるので。監督さん(岡村猛監督、昭53二文卒=佐賀西)にもいつも言われていることなのですが、「先には点を取られるな」ということを意識してやってきた結果がでたのかなと思います。

――今季で最も印象に残っている試合はどれですか

サヨナラ勝ちを決めた立大3回戦です。自分に勝ちはつかなかったんですけど、チームが負けられないという状況で、この試合の勝利でチームがひとつになれた気がしました。

――今季は好投しても勝ち星に恵まれない試合が多くありますが、どう捉えていますか

自分が勝つことより、チームが勝つことのほうが大事だと思いますが、自分がもっと頑張っていれば、3勝、4勝できたのかなとは思います。

――12回を1失点に抑えた法大1回戦の投球は見事でした。

良いピッチングはできたんですけど、やはり味方に点を取ってもらった直後に同点ホームランを打たれしてしまったので、そこがもったいなかったと思います。

――12回を投げた経験は今までにありましたか

12回は初めてです。

――初めての12回の投球でしたが、スタミナ的にどうでしたか

もう絶対に負けられないという気持ちだったので、大丈夫でした。

――この試合のように、味方の援護が無い状況ではどのような気持ちで投げていますか

ピッチャーは野手に助けてもらって勝つ試合もあるので、野手が打てないときはピッチャーが助けるという気持ちで投げています。

――試合が終わった瞬間はどんな気持ちでしたか

負けなくて良かったというのが一番でした。

――この試合で同点ホームランを喫した蔵枡孝宏選手は広陵高校の後輩ですが、振り返ってどうでしたか

あいつは良いバッターなので。すごく仲は良いんですけど、やはり後輩に打たれるというのは悔しいですね(笑)。

――試合後に連絡はとりましたか

直接連絡を取ったわけではないのですが、「甘いボールが来たのでラッキーでした」と言っていたみたいです(笑)。

――六大学には広陵高出身の選手が多くいますが、特に仲が良い選手はいますか

全員仲が良いです。シーズン中は無いですが、シーズン後はよくみんなで集まります。同級生なので明大の福田(周平)が一番多いです。

――法大3回戦の敗戦で優勝の望みが絶たれてしまった時の心境はどうでしたか

4年生がいるチームは今季が最後ですし、優勝したかったので、すごく悔しかったです。

――今のチーム状況はどうですか

優勝はなくなったんですけど、リーグ戦の優勝と早慶戦の勝利の2つを目標にしているので、うまく切り替えて、良い準備ができていると思います。

「エースとしてはまだまだ」

エース有原が宿敵を封じる

――今季は、有原選手から横山貴明選手(スポ4=福島・聖光学院)への継投が多く見られましたが、どう振り返りますか

今季はけっこうピッチャーを代えるタイミングが早いです。今までは代えずに打たれることが多かったのですが、自分は横山さんに任せれば抑えてくれると思うので、本当に今季は助かっています

――ピンチでマウンドを託す場面も多く見られましたが、途中でマウンドを降りることに悔しさはありますか

ありますが、チームが勝つためには自分より横山さんの方がいい時もあるので、それはしょうがないかなと思います。

――来季は横山選手も卒業し、有原選手が投手陣のまとめ役という存在になるかと思いますが、それについてどう感じていますか

ここ最近は、3年生は自分しかベンチに入っていないので、他の3年生の分も頑張りたいです。あとは後輩たちにも良い投球ができるように、自分にできるところはアドバイしていきたいと思います。そういう面からしっかり引っ張っていきたいと思います。

――今の投手陣のなかで特に期待している選手はいますか

みんな頑張って欲しいですが、やはり吉永にはもっと調子を上げてほしいと思います。

――今季もワセダの投手陣をけん引する活躍でしたが、エースとしての意識は高まりましたか

やっぱりマウンドを途中で降りてしまうというのは、エースとしてまだまだだと思うので、自分が先発の試合は最後まで投げるということを意識していきたいです。

――先日のプロ野球ドラフト会議で、横山選手がプロの球団に指名されたことについて、どう感じていますか

寮のラウンジで野球部のみんなでテレビ中継を観ていたのですが、指名された瞬間は大盛り上がりでした。やはり、身近な先輩がプロに行くというのはうれしく思いました。来年、プロで活躍されたら自分も頑張ろうと思えるので、本当に良かったと思います。

――指名された時の横山選手の反応はどうでしたか

もう、今までに無くうれしそうな感じでした(笑)。

――来年は自分もという思いはありますか

ありますね。

――有原選手の場合、高校でプロに行くという選択肢もあったかと思いますが、大学に進学した決め手となったのは何でしたか

自分自身、このまま(プロに)行っていいのか、という思いが強く自信がありませんでした。そんななか、ワセダから声をかけてもらって、なかなか行ける大学ではないので、大学に行ってから(プロに)行こうと思いました。

――大学の3年間で、自信はついてきていますか

そうですね。高校のときより自信はついてきたんですけど、やはりまだまだ頑張らなくてはいけないですね。

――プロへ向けて、現時点での課題はありますか

全てにおいてレベルアップしないといけないと思います。

「今季は変わったな、というところを見せたい」

――勝ち投手になったものの4失点を喫した今春の早慶戦を振り返って

ヒットは最初から打たれていましたが、途中までは失点を抑えることができました。試合後半になって、早慶戦ということもあり疲れがたまっていて、7回くらいに一気に4失点してしまい頼りなかったと思います。今季は変わったな、というところを見せるためにも、しっかり抑えたいです。

――今季の慶大の印象はいかがですか

加藤(拓也、1年)が良いピッチングをしていて、後半になると白村さん(明弘、4年)が出てくるので、先に点を取って、自分はしっかり抑えなくてはいけないと思います。

――慶大の打撃陣についてはどのような印象を持っていますか

今季は1、2、3番がかなり打っていて、4番に打点が多いので、先頭打者を出さないということを意識して投げたいと思います。

――今季の慶大の打線のなかで、最も警戒しているバッターは誰ですか

いつも横尾(俊建、2年)と答えているんですけど、松本さん(大希、4年)や谷田(成吾、2年)も今季は当たっているので、クリーンアップには気をつけたいと思います。

――早慶戦では、どんなピッチングをしたいですか

ヒットは打たれるとは思いますが、粘り強く投げて、最後まで一人で投げたいと思います。

――ワセダの今季の早慶戦のキーマンは誰になると思いますか

やはり、中村(奨吾、スポ3=奈良・天理)が打つと点が入るので、頑張ってもらいたいです。

――今年で引退される4年生のなかで、一番影響を受けたのは誰ですか

試合だと、いつも声をかけてくれるので東條さん(航主将、文構4=神奈川・桐蔭)。投手では、身近にいて刺激になったので横山さんですね。

――早慶戦への意気込みをお願いします。

優勝は無くなってしまいましたが、早慶戦は特別な戦いなので、2連勝で終わらせたいと思います!

――ありがとうございました!

(取材・編集 高田麻里)

有原

◆有原航平(ありはら・こうへい)

1992年(平4)8月11日生まれ。188センチ、92キロ。広島・広陵高出身。スポーツ科学部3年。投手。右投右打。今春からバッティングが好調で、今季もヒットを3本放っている有原選手。春から続けている直原大典学生コーチ(人3=大阪・土佐)と中村選手との練習を継続している成果とのこと。この3人は、よく一緒にご飯を食べに行くほど私生活でも仲が良いそうです