新潟医療福祉大とフルセットの激戦も初戦敗退 涙・悔しさを糧に強い早大へ

女子バレーボール

 昨年に引き続き、今年も新型コロナウイルスの影響を大きく受けた大学バレー。早大は秋に実現した、たった一度の関東1部リーグ昇格へのチャンスを生かせず、悔しさの残るシーズンを過ごした。その一年の歩みを昇華させるべく、成績に確かに刻むべく臨んだ集大成の全日本大学選手権(全日本インカレ)。初戦となる2回戦で新潟医療福祉大と対戦した。目標とするベスト8への足がかりとしたいこの試合は、第1セットを先取されてから逆転に成功。しかしあと一歩及ばず、フルセットの激戦の末にセットカウント2−3(21−25、25−20、25−20、21−25、11−15)で敗れた。

 第1セットは序盤から一進一退の攻防を繰り広げるも、7−5としてから相手の攻撃につかまった。長いラリーで失点するとサーブカットに乱れも出て、7−9と先行される。9−12の場面で取ったタイムアウトでは、エースの中澤恵(スポ3=大阪・金蘭会)から「練習でやってないことは試合でもできないから」と檄が飛んだ。ここから冷静さを取り戻した早大は、秋重若菜(スポ1=大阪・金蘭会)の軟打や藤井陽奈子(政経1=香川・高松一)のストレートを狙ったスパイクで14−14と追いつくが、同じくタイムアウトで態勢を立て直した新潟医療福祉大に16−20とリードを許す。相手セッターのライトを生かした速いトス回しを前にブロックがまとまりを欠き、その後も得点を重ねられ21−25でセットを先取された。

 続く第2セットも先の読めない緊迫した展開となった。これが最後の大舞台となる橋本美久主将(社4=福島・郡山女大付)はともに3年生の中澤と山下日和(社3=千葉・市船橋)を中心に攻撃を組み立て、7−4とリードを奪う。サーブとコンビのミスが出て一時9−11と逆転を許すも、山下がネット際の処理や鋭いクイック、相手レフトを仕留めるブロックと大車輪の活躍を見せ、16−12。終盤粘る相手を中澤の力強いスパイクで振り切り、最後も山下のブロックが敵陣奥に決まって25−20でセットを取り返した。

厳しいマークと対峙する中澤

 第3セットは6−7の局面から中澤の緩急をつけた3連続得点で先行すると、そのリードを守った。相手の厳しいマークをかいくぐって中澤が得点を続け18−14とすると、終盤は要所で山下と秋重が橋本主将のトスを打ち切った。25−20でセットカウントを2−1とする。後がない新潟医療福祉大は第4セット、リベロを中心とする堅い守備から決定力のあるレフトにボールをつないだ。6−10とされた早大だったがタイムアウトを要求するとその直後に橋本彩里(教3=東京・早実)のクイックで得点し、点差を3点以内に抑えて追随する。橋本主将のツーアタックで14−16と食らいつくと、ベンチまでボールを追う藤井のガッツあふれるプレーも出て、ついに19−19と追いついた。しかしその後は、追い込まれながらも冷静だった相手に効果的に得点され、21−25で最終セットに持ち込まれる。

 このチームでの戦いを終えるのか、それともより先に進むのか。大きな意味合いを持った第5セットは、早大の3連続得点で幕を開けた。しかしタイムアウトを挟んで連続のサービスエースを決められ、4−5とリードを許す。コートに入る下級生に大きな重圧がのしかかるだろうこの場面だったが、コートの先頭で手を叩き、普段よりも大きな声を出してチームを鼓舞したのは橋本主将だった。そしてその姿に応えるように秋重が躍動し、幅広いコースにスパイクを打ち込んでいく。先行されながらも中澤がブロックアウトを奪い10−10としたが、終盤の勝負強さが光る相手に対して勝利への「あと一歩」はあまりにも大きかった。10−12から中澤がブロックにつかまり10−13。マッチポイントとされると相手の速攻がコートに刺さり、11−15。ホイッスルが響き、試合は終わった。

得点が決まると橋本主将(中央)の周りに笑顔が集まった

 現体制最後の一戦を、フルセットながら敗れて終えた。全日本インカレ初戦での敗北がこのチームの最後に残した結果となり、攻守の要となってきた中澤は試合後に涙をためて悔しさをにじませた。しかし、この結果だけが早大の1年間の全てではない。試合のできない中で多くのことを考え、工夫してきたはずだ。コートの内外を問わず多くの喜びを分かち合い、多くの悔しさを味わったはずだ。先輩から後輩へ、そしてその後輩へ。世代を超えて思いが受け継がれていく大学スポーツにおいて、積み重ねたことが無駄になる瞬間は決してない。橋本主将は「今までやってきたことは絶対に間違っていなかった」と仲間たちに言葉を送った。コートの先頭に立ってボールをつなぎ続けた背番号1の姿。また、学連・坂内歩美(政経4=埼玉・早大本庄)がコートの外からチームと大学バレーを支えた姿。二人の思いと、何よりも1年間味わった悔しさを糧に、早大は冬を越え躍進する。

(記事 平林幹太、写真 紀洲彩希・平林幹太)

セットカウント
早大 21-25
25-20
25-20
21-25
11-15
新潟医療福祉大
スタメン
レフト 中澤恵(スポ3=大阪・金蘭会)
レフト 秋重若菜(スポ1=大阪・金蘭会)
センター 橋本彩里(教3=東京・早実)
センター 山下日和(社3=千葉・市船橋)
ライト 藤井陽奈子(政経1=香川・高松一)
セッター 橋本美久(社4=福島・郡山女大付)
リベロ 神戸彩有(文構2=長野・松本県ケ丘)
コメント

橋本美久主将(社4=福島・郡山女大付)

――試合を終えて率直な感想は

絶対負けたくない試合でしたし、負けられない試合に最後の最後で負けてしまったのが本当に悔しいです。悔しかったです。

――この試合をもって引退ということになりますが、今日で大学バレーを終えたという実感はありますか

全然実感できなくて、「もう明日から無いの?」「引退なの?」みたいな感じです。みんなが点数を取って喜んでいる写真を昨日見ていたのですが、自分がその輪からいなくなるのかと思ったらすごく寂しくて悲しかったです。すごく喪失感があります。

――今日はフルセットで競り合い、試合が進むにつれて良いプレーも出ました。内容は振り返っていかがですか

周りから見ていても思われていたように、ブロックでワンタッチを取ってそこからコンビを作るとか、自分たちがやろうとしてきたことができた場面はありました。ですが今までこのチームでやってきて、出してはいけないミスややってはいけないことも出てしまいました。どちらともが出た試合だったなと感じます。

――同期の坂内さんにかけたい言葉があればお聞かせください

ずっとコートに入っていた私にはチーム全体が見えなくなっていた、私にはできない声かけができる人なので、私ができないチームにとってプラスになることをやってくれていました。今までありがとうと言いたいです。そして、ずっと一緒にやってこられてよかったということを伝えたいです。

――後輩にかけたい言葉はありますか

今日最後に負けてしまって、「今まで自分たちがやってきたことは間違っていたのか」とか「もっとこうしなきゃいけなかったのかな」と反省が残っていると思います。ですが今までやってきたことは絶対に間違っていなかったし、いっぱい考えてやってきたことは大事だし、すごくいい経験をしてきたと思います。そういうことを忘れずに、次の全日本インカレではこの先まで勝ちにいってほしいなと思います。

中澤恵副将(スポ3=大阪・金蘭会)

――率直な感想は

悔しいです。相手を見ても結果的にも、勝てる試合でしたし、勝たなきゃいけない試合でした。出だしからサーブで狙われるなどしてあまり得点が決められなくて、苦しくなった時にそれをはね返してでも決めるのがエースなのに、それができなかったことが悔しいです。今日フルセットでたまたま勝てていたとしても、悔しかったと思います。

――試合の入りからセッターをはじめ相手に揺さぶられました。やりづらさはありましたか

相手には友人もたくさんいたのですが、春高バレーに出た子がいるなど豊富な経験を生かしてバレーをしていました。こういう舞台への慣れも感じましたし、相手の思い切ったプレーや力の入りすぎていないプレーに上回られたと思います。自分は高校までそういう立場でしたが、大学で3年間やってきてそういう部分がなくなってしまった気がしています。

――あと1年でどんな選手になりたいですか

大学で3年間やってきて、1年生の時が一番上手かったかなと感じることがあります。もっと上のチームとたくさん練習試合をしたり、(関東)2部リーグだけを見ず 「1部に行きたい」とか「プロに挑戦したい」とか、目標をもっと上に掲げたいです。チームの中では自分は上手いかもしれないですが、全日本インカレとか大きな舞台に来てみると全然下手くそだなと感じますし、もっともっと練習しなきゃと思います。知っているつもりだろうけどバレーのこともまだまだ知らないと思うので、もっと勉強して自分で自分のことを追い込んで、来年は絶対に今年目標にしていたベスト8を達成できるように頑張ります。

――これからチームを引っ張る立場になると思いますが、どんな集団にしていきたいですか

経験がない中で上を目指していく、相手と対等になるためにはもっと努力して、相手よりも数をこなさなければいけないと思います。1部を目指すことに、最近バレーを始めた子もいるとかそんなことは関係なくて、謙虚に毎日努力できるチームを自分の行動から作りたいです。継続してきた練習を信じて、1部などの強いチームとやるときも「自分たちは弱いから」とか「格上に負けるのは仕方ない」とかではなくて、勝ってやるんだという気持ちで向かっていける負けず嫌いなチームにしていきたいです。

――4年生の二人にかけたい言葉はありますか

プレーにおいてはいつも「大丈夫だよ」と声をかけてくれたり、自分が駄目な時でも怒らず「全然駄目じゃん!」とか冗談めかしていつも自分を盛り立ててくれました。いつも良いことを言ってくれて、申し訳ない時もたくさんあったけれど、ありがとうと伝えたいです。普段は生意気な後輩の私にも気さくに話しかけてくれて、本当に感謝しています。

秋重若菜(スポ1=大阪・金蘭会)

――初めての全日本インカレでした。試合を振り返っていかがですか

最初はすごく楽しみでした。初戦というのもあって緊張とかはなく、すごく勝ちたいと思って挑みました。

――相手セッターは速いトスを多用していました。やりづらさなどがありましたか

大学バレーは速いテンポが多いので、やりづらさというのは特になかったのですが、上手かったなって印象です。

――コートの中ではどのような声をかけ合っていましたか

今日は常に楽しもうという感じだったので、とにかく攻めよう、ずっと攻めようって先輩からも声かけてもらいました。それに応えようという感じで仕上げていました。

――攻めを貫こうとする分、相手からのマークも厳しかったと思います。どのような心境でしたか

サーブとかもすごく狙われているのが分かって、狙われているな、きついなとは思いました。それでも、やっぱりそれ以上に自分が決めないという責任があったので、その思いで頑張りました。

――現体制での試合は最後となりました。4年生の二人に向けて伝えたいことはありますか

4年生の二人は、本当に優しくて大好きです。(橋本主将は)セッター1人ながら下級生を引っ張っていて、本当に勝たせてあげたいという気持ちが大きかったので勝たせてあげられなくて申し訳ない気持ちです。でも優しいので、謝らないでと言われると思います。「4年間お疲れ様です。ありがとうございました。大好きです」と言いたいです。

――今後は新しい体制での戦いが幕を開けます。どのようなチームにしていきたいですか

これまでも3年生と1年生が主体でやってきたのであまり顔ぶれは変わらないと思います。ですが選手層をより厚くして、もっと粘りや高さのある一段階レベルの高いチームにできると思うので、そこを目指してやっていきたいです。