あまりにも早い幕切れだった。一年の集大成である全日本大学選手権。現体制が始動してからセンターコート進出を目標に掲げてきた。迎えた初日は中国学連2位の中国学園大との試合に臨んだ。唐木沙彩主将(スポ4=千葉・柏井)の調子が上がらず、チーム全体としても序盤からミスが目立つ。第1、3セットを失うと最後まで相手エースに対応できずに、セットカウント2-3(21-25、25-19、23-25、25-23、14-16)。フルセットの末に敗れ、早大女子バレーボール部の一年が終わった。
14時を少し回ったころに始まった試合前のアップ。会場には独特の雰囲気が漂っていた。声が出ず、コートに笑顔が見られない。選手たちの表情にはっきりと見られる緊張の色。第1セットの開始を告げる高い笛の音が会場に響き、その不安は現実のものとなった。立ち上がりに5連続失点を喫し、さらにエースの唐木が精彩を欠いてスパイクや返球にミスが出る。取り組んできたサーブとブロックも機能せずにこのセットを失った。第2セットに入ってもペースをつかめず、序盤からリードを許す展開となる。だが、この流れを断ち切ったのは平山璃菜(スポ3=東京・文京学院大女)と唐木に代わって途中出場した加納茉未(社3=北海道・札幌大谷)だ。平山はプッシュやハーフボールを使いながら得点を重ね、加納は高さを生かした強打でポイントを挙げる。この二人の活躍で第2セットを取り、試合を振り出しに戻す。
途中出場し、力強いスパイクを放つ加納
1セットを取ったことで次第に立ち直った早大。リベロの中川知香(スポ2=神奈川・橘)が粘り強く相手のスパイクを拾うと、及川香菜(スポ3=宮城・古川学園)を中心にアタッカーが要所でスパイクを決める。両チームが1セットずつを取り、試合はフルセットにもつれ込んだ。セッターの芹澤友希(スポ2=茨城・土浦日大)は、森佳央理(スポ1=群馬・高崎女)や復調した唐木をはじめとする各アタッカーにバランス良くトスを供給して攻撃を組み立てる。それに対して高い技術を持つ両レフトにトスを集める中国学園大。試合は僅差のまま終盤を迎える。12-11と1点リードした場面でツーアタックを決められ、流れは相手に傾いたかに見えた。だが、続くプレーで中川がレシーブしたボールが直接相手コートに返って再びリードすると、13-14と1点ビハインドで芹澤が強気のツーアタックを決める。しかし、あと一歩及ばなかった。14-15。相手エースが放ったスパイクはブロッカーの腕に当たり、コートの外へ。思わず天を仰ぐ選手たち。1回戦での敗退、そして4年生の引退が決まった瞬間だった。
一時はコートの外で仲間を見守ることしかできなかった4年生
「この結果に対して悔しいという一言で現実を受け止められません」。試合後に目を腫らしながらこのように話した及川。浮足立ってしまい、本来の力を発揮することができずに初戦で姿を消した。これをもって引退となった三人の4年生。複雑な気持ちはあるだろうが、「ずっと1部で定着してもらって活躍してほしい」(関根早由合副将、スポ4=神奈川・橘)と後輩に思いを託した。この悔しさを糧に早大女子バレーボール部は再起を誓う。
(記事 渡辺新平、写真 川浪康太郎、谷口武)
セットカウント | ||||
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早大 | 2 |
21-25 25-19 23-25 25-23 14-16 | 3 | 中国学園大 |
スタメン | ||||
レフト 唐木沙彩(スポ4=千葉・柏井) レフト 及川香菜(スポ3=宮城・古川学園) センター 関根早由合(スポ4=神奈川・橘) センター 森佳央理(スポ1=群馬・高崎女) ライト 平山璃菜(スポ3=東京・文京学院大女) セッター 芹澤友希(スポ2=茨城・土浦日大) リベロ 中川知香(スポ2=神奈川・橘) |
コメント
唐木沙彩主将(スポ4=千葉・柏井)
――いまの率直なお気持ちをお聞かせください
もっとこのチームで試合したかったなという気持ちでいっぱいです。
――きょうの試合を振り返ってみていかがですか
序盤は、試合中なのに何か考えていたのか自分でも分からないんですけど、いろんな気持ちがばあって出てしまいました。途中から加納(茉未、社3=北海道・札幌大谷)に代えてもらって気持ちも落ち着きました。加納や他のメンバーが私の代わりに頑張ってつなげてくれました。私が戻ってきたときも、きっちり頑張りましょうと温かく迎えてくれて、その気持ちがあったおかげで私も次のセットから切り替えられてプレーできました。みんなに感謝の気持ちでいっぱいです。
――きょうまでの調整はいかがでしたか
入れ替え戦が終わってからだんだん(調子が)上がってきた感じで、良い雰囲気や流れで調整できたと思います。
――きょうはチーム全体として試合前に硬い表情で笑顔が見られませんでしたが、試合前の雰囲気はいかがでしたか
アップの雰囲気は悪くはなかったと思うのですが、相手が静かなチームで、試合が始まったらそれに合わせてしまいました。緊張も個人個人見られて、そこが一つ吹っ切れるまでがちょっと遅かったかなと思います。
――きょうの試合では課題として取り組んできたサーブとブロックはいかがでしたか
やっぱり1、2セット目はサーブも攻められていなかったし、結構相手のレフトに苦戦してブロックも思い切り跳べませんでした。思い切りに欠けていたと思います。
――4年間を振り返ってみていかがですか
4年間、ワセダのバレーボール部に入ってたくさん成長できたし、バレー部に成長させてもらってここまで来られました。これまでの先輩たちにも感謝していますし、また、一年間振り返って後輩にもすごく感謝しています。4年間でたくさんの人に出会えて、みなさんに感謝の気持ちでいっぱいだし、自分自身もこの4年間を通していろんなことを学べました。すごく悔しいのですが、良い4年間だったと思います。
――具体的にはどのようなことを学ばれましたか
1年生のころは自分でバレーボールを考えるとか自分のプレーを考えるといったことができなくて、やらされたことに対してこなすということが多かったのですが、重ねるごとに何が足りなかったとか自分のプレーを振り返りながら、考えながらやるということができるようになりました。特に4年生ではチームのことをまとめるというのもあったから、自分のことだけじゃなくてチーム全体を見て何が足りないかということを考えるようになり、視野も広くなったと思います。また、一人一人をしっかりと見て自分からしっかりと関わっていこうというのができるようになりました。しっかり仲間のことを考えたりだとか、自分一人じゃなくて誰かと一緒に努力しているといったバレーボール本来のものを4年間で学べました。これまでは一人でという感じが多かったのですが、4年間を通して仲間の大事さとかつながりというのをうまく学べました。
――同期のみなさんに言葉をかけるとしたらどのような言葉をかけたいですか
4年間いろんなこともあったんですけど、もうただただありがとうと伝えたいです。
――後輩のみなさんに対してはどのような思いでいらっしゃいますか
初めは『後輩』という感じだったし、何を考えているか分かりませんでした。ですが、だんだんと(後輩たちも)それじゃいけないと分かってきて自分も何かやらなきゃいけないだとか自分から発信してくれるようになりました。また、チームのために動いてくれたり、役割というのを自分たちで見つけてそれを全うしようとやってきてくれたりしたので、こっちもすごいやりやすかったです。このチームのキャプテンで一年間やってこれて良かったと思います。
――今後バレーボールとどのように関わっていこうとお考えですか
自分自身が企業とかでプレーしたりということはないのですが、バレーボールは大好きだし、今後も関わっていきたいと思います。後輩の応援に足を運んだりだとか、あとは小学生バレーボールのチームのコーチをやってみたいなだとか、クラブチームで環境は違うのですがバレーボールを楽しく続けていきたいなと思います。
関根早由合副将(スポ4=神奈川・橘)
――あと1点、2点というところでしたが、いまの率直な気持ちは
まさかこのトーナメント1回戦で負けるとは考えもせずに臨んだ試合でした。でもゲームが始まってみると、緊張というか、この大会で終わりというのが頭にありつつ、このメンバーとバレーをするのも最後なんだということとかをいろいろ考えてしまいました。そうしたら、いままでと違った体みたいな感じになってしまって、何かに取りつかれたような変な感じがして、(インカレって)こういうものなのかと感じた試合だったなといまでは思います。確かにこうフルセットで戦ってみて、第5セットも現にどっちに転ぶか分からない状況でした。それでも私たちには関東1部の意地というものがあったので、それを持って臨みましたが、結果的にこういう悔しい結果になって、これで自分引退してしまうんだなという試合でした。
――取りつかれた感覚というのは、開幕が近づくにつれて感じていったのでしょうか
きょうもアップの時から声をかけ合いながらできてはいましたが、いざ試合が始まると、声が通らない、周りの声も聞こえないといった状況でした。自信を持ってやろうやろうと言ってはいましたが…。
――試合前のアップから表情が硬く見えましたが
緊張もありましたが、それぞれの学年が最後の試合でもありましたし、みんながこの少ない4年生3人のためにという思いで大会に臨んでくれました。決起会でもみんなの口からそういう言葉が聞けて、すごくうれしいなと思いましたし、自分も自分にできることをしっかりやって楽しんで終えたいなと思って臨みました。
――試合の方ですが、その硬さが立ち上がりに影響したということでしょうか
そうですね。サーブキャッチから崩れて、最後の1点を決めるスパイカーも決められませんでした。もうちょっとボールに魂を込められたんじゃないかなと思っています。
――第3セットからは、より1点をめぐる激しい攻防になりました
途中沙彩(唐木沙彩主将、スポ4=千葉・柏井)が抜けて、自分も後ろに(ローテーションが)回ったらリベロと交代してしまうので、コートに4年生が抜ける状態がありました。その間は3年生中心にやってもらっていましたが、3年生というポジションは大事だなと思いました。きょねん私もそう言われてきましたが、3年生が中心となって4年生の緊張をほぐすためにも頑張らなくてはいけないポジションでもあります。来年を見据えてのいいプレーをすることが3年生にとって大事と言われてきて、そういう気持ちが3年生にもあっただろうし、4年生も感じていました。そんな中で3年生は頑張ってくれてセットも取ってくれたし活躍もたくさんしてくれて、すごく感謝しています。
――きょうの関根選手のプレーの方はいかがでしたか
何も後悔が残らないと言ったら嘘になりますが、この代になってからセッターも変わって。セッターとセンターって、速攻なども含めて息の合うことが大事で、私は3年間黒木さん(黒木麻衣主将、平27スポ卒)にトスを上げてもらっていて、息も合っていました。自分の代になって後輩のトスを打つということになって、不安もいろいろありました。後輩も頑張ってくれているし、大変なこともありましたが、しっかり練習し合ってこの一年間できたと思っています。
――これで引退となってしまいましたが、まだ実感などはありませんか
実感は湧かないですね。学生として本気でやるバレーボールがこれで最後になってしまったのは、信じられないというか考えられないというか。学生最後と思うのは、まだ実感湧かないです。
――4年間の大学生活を振り返って、どんな4年でしたか
私たちの4年間は、すごくいい4年間だなって思います。1年の春は2部からスタートして、秋に1部に上がれて、1部で戦えることができました。2、3年は2部に落ちてしまいましたが、自分が4年生の時に1部にまた上げることができました。1部と2部って全然違うと思うので、1部の舞台で活躍できるチャンスを後輩に残せたということは、自分的には良かったなと思います。
――最後に、同期と後輩に向けてのメッセージをお願いします
4年生3人は本当にいろいろなことがあったし、迷惑もかけてしまいましたが、2人には感謝しきれないぐらい強い思いがあるし、大好きな人たちです。引退しても、いくつになってもずっと仲間でいたいです。後輩には、ずっと1部で定着してもらって活躍してほしいですし、心の底からありがとうと言いたいです。
高園佳苗(文構4=東京・田園調布学園)
――試合を終えたいまの気持ちは
1回戦で負けるつもりはなくて、一戦ずつ頑張っていこうとやってきました。目標としていたところに全然届かず、少し悔いがあります。
――チームの雰囲気はいかがでしたか
アップから悪くはありませんでしたが、いざ試合に入ると、緊張で硬いなという印象はありました。
――1点の遠い試合でしたが、外から見ていて感じたことはありますか
自分たちがリードしていても追われているような、そんな雰囲気がありました。勢いに乗り切れない部分があるなと感じました。
――引退となってしまいましたが、何か思うことはありますか
まだ引退を実感しているわけではありませんが、自分の大学四年間のバレーが終わったんだなとこれから実感していくと思います。
――主務としてのこの一年の振り返りをお願いします
最初は不安からのスタートで、いっぱいいっぱいでした。でも後輩や同期、監督、OGやOBなどの普段面倒を見てくださる皆さんが助けてくれて何とかやってこられたので、感謝しています。
――同期のお2人へ何か伝えたいことはありますか
自分はずっと控えで、2人はずっとコートに立っていたので、お疲れ様という気持ちです。
――後輩の方々に向けて伝えたいことは
きょうの試合が次の代につながっていくと思うので、ことしの経験を生かしてほしいです。
及川香菜(スポ3=宮城・古川学園)
――いまの率直なお気持ちをお聞かせください
この結果に対して悔しいという一言で現実を受け止められません。
――今大会を振り返ってみていかがですか
勝ちたいという気持ちが空回りしてしまいました。歯車が狂って途中から4年生のサラさん(唐木沙彩主将、スポ4=千葉・柏井)という中心軸が抜けてしまい、自分たちが引っ張らなきゃという気持ちはあったのですが。自分たちの力不足だったなと思います。
――試合前にはチーム全体として表情が硬かったですが、雰囲気はいかがでしたか
緊張してがちがちというほどではなかったのですが、一人一人の表情を見ると緊張しているなとは感じました。
――4年生に対してどのような言葉をかけたいですか
本当にありがとうということだけですね。
――来季は4年生としてチームをけん引する立場になりますが、どのようなチームづくりをしていきたいとお考えですか
トーナメント戦を振り返ってみるとリーグ戦は勝っても負けても次の試合があるのですが、トーナメントでは次の試合がないのでその細かいところでのミスが命取りだなということは感じました。軸としてしっかりとコートに立つのはもちろんですけど、そこは4年生としてしっかりと厳しくやっていこうかなと思います。
平山璃菜(スポ3=東京・文京学院大女)
――初戦敗退となりましたが、いまの率直な心境を聞かせてください
もっと4年生とやりたかったです。
――試合前、緊張などはありましたか
個人的にはあまりなかったのですが、試合が始まってみるとみんな緊張していて、上級生としてそれを和ませることができなかったです。4年生ももちろん最後の大会で緊張したと思うし、その4年生が伸び伸びできるような環境を自分がつくれなかったなと思います。
――サーブやスパイクといった個人としての出来はいかがでしたか
やっぱりまだまだだなというのが率直な感想ですね。
――いろいろなことがあった1年でしたが、この1年で得たものは何でしょうか
苦しいことも楽しいことも、始動してからこのメンバーで1年間色んなカベを乗り越えてきて、その中で4年生がチームを引っ張ってくれて1部の舞台に立てたということは大きかったと思います。ことしのチームは、各学年一人一人が自分の役割をコートの中でも外でも全うするという自分たちのチームスタイルというのが、チームが始まってから一番成長した部分かなと思います。
――今大会で引退することとなった4年生に対してはどのような思いですか
自分たちが入学した時2年生で、一番一緒に戦ってきた学年なので、やっぱり最後思い切ってプレーさせてあげたかったし、勝って笑って終わらせたかったなと思います。
――4年生として迎える来季に向けた意気込みをお願いします
ことし4年生が3人でこのチームを引っ張ってくれて、1部の舞台であったり、かたちではないものでもたくさんのことを残してくれたと思うので、それを自分たちがしっかり受け継いで、この悔しさを来年にぶつけたいと思います。