関東学生選手権(夏関)もいよいよ最終日。この日は男女の単複で決勝戦が行われ、男子シングルスでは高畑里玖(社2=兵庫・相生学院)が慶大の白藤成との対戦に臨んだ。また、男子ダブルスではここまでシードとしての実力を遺憾(いかん)なく発揮してきた丹下将太(教3=東京・早実)・高畑組と二次予選からの出場ながら快進撃を続けてきた山口柚希(スポ1=鹿児島・鳳凰)・吉野郁哉(スポ2=兵庫・西宮甲英)組の早大対決が実現した。どちらも熱戦が繰り広げられ、結果は高畑が単複二冠を達成。また、丹下にとってはこれがうれしいダブルスでの初タイトルとなった。
フルセットの末に勝利した高畑
まずは男子シングルス決勝が行われた。相手の白藤は現在の慶大において2番手格の選手であり、来年の団体戦でも主に上位での対戦が予想される相手だ。第1セットは高畑のペースとなる。最初のゲームをブレークして直後にブレイクバックされるが、第3ゲームから5ゲームを連取。ラリーの中でしっかりと足を動かし、深く突き刺さるストロークにスライスなどを織り交ぜて相手のリズムを崩すことでミスを誘った。さらにファーストサーブも高い確率で入れ、優位に試合を進めて第1セットを難なく獲得した。このままいきたいところだったが、第2セットは調子を上げた相手に苦戦する展開に。相手のフォアハンドの威力が上がって激しいラリーが続き、互いにサービスキープし合う。その中で第9ゲーム終了後にはメディカルタイムアウトを取るなど、体力的なきつさもあったか後半は球が浅くなりがちになり、相手に攻めきられてしまう。並行カウントで迎えた第11ゲームをブレークされ、そのまま5-7でこのセットを落とした。第3セットも序盤は苦しい展開が続いたが、第1ゲームの高畑のサービスゲームで気合いを入れ直し、15-40からなんとか挽回してキープ。「ネットに行くということを意識した」(高畑)と果敢に前に上がって攻め、直後の第2ゲームでは相手のドロップショットをゆるく返し、次の球で角度をつけてネットぎりぎりの逆クロスに決めるスーパーショットのボレーでブレークに成功した。この2ゲームで流れを取り戻した高畑は勢いに乗って一気にゲームを連取。見事、フルセットの末に白藤を下し、初の学生タイトルを獲得した。
午後からは男子ダブルスの決勝が行われた。試合は第1セットから王座出場ペアが山口・吉野組に襲い掛かった。第1、第2ゲームはそれぞれ山口、丹下の強力なサーブから展開し、互いにキープ。しかし、第3ゲームは丹下・高畑組がリターンから積極的にストロークを打ちこむ。山口・吉野組は2人とも前に上がって対応しようとしたが、相手の強力なストロークの前にボレーミスが続き、丹下・高畑組が先にブレークを奪った。その後は「リターンゲームで相手にプレッシャーを与えられなかった」(吉野)と強力なファーストサーブを高い確率で入れてくる丹下と高畑の前に山口・吉野組は持ち味をなかなか発揮できず、第7ゲームにもブレークした丹下・高畑組がこのセットを6-2で獲得した。第2セットは山口・吉野組がサーブ力を上げ、第4ゲームまでは互いにキープし合う。それでも「高い集中力を出せた」(丹下)と第5ゲームの山口のサーブでワンチャンスをものにしてこのセットも丹下・高畑組が先にブレークに成功。あとは丹下・高畑組がこのブレークを守り抜き、同士討ちを制して夏関を制覇した。「相手が強すぎました」(山口)と決勝戦は完敗だったが、山口・吉野組は初めて最終日まで勝ち残り、準優勝という結果を残した。
試合を決め、ハイタッチする丹下・高畑組
高畑の単複二冠、そして丹下のダブルスでの初タイトル獲得というかたちで幕を閉じた夏関。8月の全日本学生選手権では物足りない結果に終わった高畑が復調し、いいかたちで夏関を締めくくることができた。丹下も新体制の初陣で結果を残すことができたのは大きい。さらには山口・吉野組の快進撃も今後のチームにとってプラスになるだろう。今度は休む間もなく全日本学生室内選手権が始まる。王座からずっと連戦続きだが、夏関ではいい流れに乗ることができた。今年最後の大会でも実力を存分に発揮し、新体制の強さを見せつける。
上からシングルス優勝の高畑、ダブルス優勝の丹下・高畑組、ダブルス準優勝の山口・吉野組
(記事・写真 山床啓太)
結果
男子シングルス
▽決勝
〇高畑里玖 [6-1、5-7、6-0] 白藤成(慶大)
男子ダブルス
▽決勝
〇丹下将太・高畑里玖 [6-2、6-4] ●山口柚希・吉野郁哉
コメント
高畑里玖(社2=兵庫・相生学院)
※シングルスの試合終了後に実施
――優勝おめでとうございます! シングルス優勝を決めての今のお気持ちはいかがですか
うれしいです。初めての学生タイトルだったので。今大会、丹下さんが負けたということもあって正直ちょっと狙っていて、王座後で疲れもあって決勝で厳しい時間帯もありましたが、そこを乗り越えられたので体的にきつい中優勝できたのは自信になりました。
――大学4年間でこうするというのが頭の中にある程度あったと思いますが、2年秋での学生タイトル獲得というのはどうでしょうか
関東のタイトルというのはあまり意識していなくてインカレ優勝というのを目標にして、1年目もインカレインドア準優勝で悔しかったのですが、そこから今年のインカレも負けてしまって。関東学生のタイトルを狙っているよりも正直、もうちょっと上を見て戦っていてレベルの高い人と最近やっていたので、その中で自分も調子が上がって経験が今回の優勝につながったかなと思います。
――今日の試合の第1セットを振り返って
第1セットは自分が結構粘る感じで相手のミスを誘うというのを意識してうまくはまってくれて、自分の流れでいいテンポでポイントを取って簡単に取ることができました。
――ファーストサーブもよく入っていたと思いますがその辺りは
今日は結構センターサーブが良くて、フリーポイントのサーブがあって楽に取れる場面もあったので、大事な場面で思いきり打てたのは良かったかなと思います。
――ラリーの中で粘り強さを意識していましたか
相手が一発があるので、特にスライスとかで1回テンポを変えたりして相手の得意なテンポを崩すというのを意識していました。
――第2セットは振り返って
第2セットは第1セットと同じ戦い方をしてしまって、結果的には途中で相手がどんどん良くなってきて自分が押されるというかたちになってしまってどんどん向こうのペースになってしまって。惜しかったのですが向こうの方がしっかり攻めにきていたというところで取られてしまったと思います
――途中でメディカルタイムアウトを取っていましたが
体的にしんどい部分もありましたし、ここ数カ月手首のけががあまり良くなくて、一応念のためというかたちで取らせていただきました。
――第3セットに入った時はどういうことを考えていましたか
正直、1ゲーム目の自分のサーブも15-40までいって結構負けが見えてしまったのですが、そのゲームでしっかり声を出してファイトして粘ってキープしてから自分の流れが来たかなと思います。ストローク戦で向こうが良かったのでなるべく早くネットに行って。ネットプレーも苦手じゃないので、ネットに行くということを意識したら、前に行った時のポイント獲得率が高かったので、強気に行けて良かったなと思います。
――ネットプレーは自信がありましたか
そうですね。シングルスのネットプレーは結構前に行って取るのが好きで、そこから自分の中でも気持ち的に上がります。
――ネットプレーで言うと第2ゲームのブレークを決めたポイントがありましたが
あれは本当に自分でもスーパーショットだなと思って、だいたい狙っていたのですがまさかあんなにいいところに行くとは思っていなくて。しかもブレークポイントで得意なネットというかたちで取れたので気持ち的にもだいぶ上がりましたし、そこから一気に自分の流れに乗れたので良かったなと思います。
――今大会のシングルスを振り返って
3回戦ぐらいまではしっかり集中して相手との差も少しあったので、とにかく自分で簡単なミスをしないことを意識して結構集中してしっかり勝てて。準々決勝で矢島くん(淳揮、法大)に第1セットを取られて危ない流れだったのですが、学生になって最後まで諦めないというメンタルとか泥臭く戦うということを覚えて、その結果が今日もそうですがファイナルは最近ほとんどダブルスを通して負けていなかったので、ファイナルセットにいっても自信がありました。気持ち的にはだいぶ強くなっているのかなと思いました。
丹下将太(教3=東京・早実)・高畑里玖(社2=兵庫・相生学院)
――優勝おめでとうございます! 優勝を決めての今のお気持ちは
丹下 僕自身ダブルスでのタイトルは初めてなので素直にうれしいというのと、新体制になって初めての優勝なので僕個人としてもチームとしてもうれしい優勝だったんじゃないかと思います。
高畑 ほっとしていて、単複優勝できたのですごくうれしいです。ペアが丹下さんだったのですごく心強かったです。
――丹下さんは主将になる中での優勝ですがこれは意味合い的にも大きいのではないでしょうか
丹下 やはり選手としてチームを引っ張っていくことが多くなっていくと思うので、その中で優勝という結果で示せたのは大きかったのかなと思います。
――今日の相手は山口さんと吉野さんのペアでしたが試合前に考えていたことは
高畑 弱点をお互いに知っていたので、とにかくそこを徹底的に突こうかなと思っていました。
丹下 お互い手の内を知った中での試合で、その中でどれだけファイトできるかというのが鍵になってくると思っていたので、今日の試合はそういったところで最初から最後まで集中して声を出して戦えたので良かったと思います。
――今日の試合の第1セットを振り返って
高畑 第1セットはブレークしてからこっちに流れが来てそのまま勢いで押しきれたかなと思います。
丹下 試合全体を通して2人ともサーブが良くて安定してキープできていたので、相手のリターンゲームでどんどんチャレンジするという展開をつくれました。常にリードするというか自分たちから仕掛けられるという展開をつくれたのでいい試合だったと思います。
――第2セットは1ブレークアップで取れましたが振り返って
丹下 第1セットは相手のサーブを2ブレークできたのですが、そこを相手も修正してきて簡単にブレークできない展開が続きました。その中でも我慢してワンチャンスをものにしてブレークできて、そこの高い集中力を出せたので良かったと思います。
高畑 第2セットは相手のサーブの確率が良くなってきてなかなかブレークできなかったのですが、なんとか2人の得意なリターンで頑張って崩していくというのが頭にありました。第2セットもサーブは良くて、低いところを狙ってボレーで一発で決められないという作戦が組めたので、しっかり話し合いながら勝ち取れた勝利だったと思います。
――ファーストサーブが良かったのは集中力が要因としてあるのでしょうか
高畑 ファーストサーブを入れた時の獲得率が高いというのがわかっていたので、頑張ってファーストサーブの確率を上げようという話をしていました。
丹下 僕は前の試合の準決勝でファーストサーブの確率があまり良くなくて苦しむ展開が多かったので、ファーストサーブの確率というところは今日の試合のテーマとして掲げて臨むようにしました。
――今大会のダブルスを振り返っていかがですか
高畑 王座の数日前からうまくダブルスはやるということではなくて、お互いの強さを活かしたプレースタイルというのを2人で話し合いました。王座から今大会も続けて各個人がやることをお互いにしっかり確認し合いながらできたので、その結果が優勝につながったのではないかなと思います。
丹下 高畑も言ってくれたように自分たちのできることとやらなければいけないことを明確にして戦えたので、それがいいプレーになって最終的に結果として優勝につながったんだと思います。
――インカレインドアに向けて意気込みをお願いします
高畑 夏関をいいかたちで終われたので、このまま突っ走って単複優勝を目指したいと思います。
丹下 僕もまだシングルスのタイトルが新進(関東学生新進選手権)はありますけど、全国でのタイトルがないので単複狙っていきたいなと思います。今年最後の試合になると思うので悔いなく終われるように頑張りたいと思います。
山口柚希(スポ1=鹿児島・鳳凰)・吉野郁哉(スポ2=兵庫・西宮甲英)
――準優勝という結果で終わりましたが、この結果についての評価は
吉野 僕たちは二次予選からだったので、そう考えると準優勝という結果は良かったなと思います。
山口 本戦が始まって王座からの疲れもあって、なかなか気持ちも入りにくいところもありましたが、ここまで2人でよく頑張れたというのは不思議でいつもとは違う楽しさでできたので、ここまで勝ち上がれたことは素直にうれしいです。
――いつもとは違う楽しさというのは具体的にはどういったものでしたか
山口 練習試合で本当に勝てないし、春関もすぐ負けてしまったりインカレも本戦に上がったもののすぐ負けてしまったりと長く勝ち上がることが少なかったので、いつもとは質が違うというか。確率もそうですし、いつもとは展開も違いましたし、おもしろいぐらいに自分たちのパターンにはまった試合が多かったので、本当に楽しくできました。
――今回の相手が丹下さんと高畑さんということでストロークとサーブが非常に強い相手だと思いますが、対策などはありましたか
吉野 自分たちのやるべきことをやらないといけないかなと思ってサーブとかリターンとかを入れることを意識したのですが、プレッシャーを感じてしまった部分も結構あってそこでミスをしてしまったので、敗因はそれかなと思います。
山口 前のインタビューでも言いましたが0-6で負けていたので、気持ちでは逆にノンプレッシャーでやりました。それでもやはり差があってその中で何かできないかなと考えてはいましたが、なかなか乗れずに自分たちのペースにはできなかったので、きつい時間が続きました。雰囲気は良く最後まで戦えたので僕は次の大会に向けて頑張ればいいかなとプラスに捉えています。
――今日の試合の第1セットを振り返って
吉野 完全に自分のサービスゲームを2回ブレークされたというのが大きいと思います。それは自分のサーブが入ってなかったのが一番の原因で。そこを取れなかったのと、リターンゲームで相手にプレッシャーを与えられなかったというのがあります。
山口 僕はリターンですかね。前の試合まで高い確率で取っていたのが今日は低かったので、そこは改善するべきかなと第1セットは思います。
――第2セットは振り返って
吉野 セカンドは1回しかブレークされてなくて。あんまり悪くなかったよね。
山口 悪くはなかったんですけど、相手が強すぎました。主将の意地がありました。
吉野 かな。
山口 はい。
――相手の突き球の前に持ち味を発揮できていないように見えましたが
吉野 全体的にボレーで決めないといけない場面でミスが増えてしまって、突き球も速いですしそこでもうちょっと正確なボレーをしないといけないなと感じました。
山口 僕は基本ストロークを打つ人間なのですが、今日はどうしても変えないといけないと思って。チャレンジしたのはいいのですが、やはり僕ダブルスが下手な選手なので、もうちょっと練習してネットプレーも頑張りたいなと思える試合でした。
――インカレインドアに向けて意気込みをお願いします
吉野 僕は高畑さんと組むんですけど、高畑さん。チャンピオンと組ませていただくので、1回だけ組んだことがあるくらいであまり一緒にプレーしたことがないのですが、最初から相手が強いので今自分のできることを精一杯して、また一つずつ予選から勝ち上がっていきたいなと思います。
山口 とりあえず僕はオフが欲しいんですけど、明日からまた移動なので、気を緩めすぎず。相手はどんな選手か把握してないですが、レベルは高いと思うのでシングルスを練習して本戦に行けるように、とりあえずけがをしないことと、最後まで集中力高く自分の良さを出してファイトしていきたいなと思います。