第3回は石川琴実(社3=神奈川・白鵬女)、吉岡希紗(スポ3=三重・四日市商)、前田優歩(社3=沖縄尚学)の3年生勢が登場。今年はいろいろな時期がありながらもチームの主力として確実に成長してきた。そして王座出場校決定トーナメントではダブルスの試合に出場し団体戦を戦った。そんな3人に今年の試合の振り返りや4年生への思い、チーム上昇のターニングポイントなどを語ってもらった。
※この取材は10月28日にリモートで行われたものです。
3年生になってから
質問に答える吉岡
――学年が上がってからここまでを振り返っていかがですか
石川 3年になってから最初の方は、本当に結果が出ない時期というか、練習してもあまり自分自身で思っている通りに結果と結びついていなかったり、テニスも思うようにいかない時期が多かったのですが、早慶戦をきっかけに自分のテニスが少しずつ良くなっていって。それでインカレ(全日本学生選手権)もダブルスは優勝できてシングルスもベスト16で、先日行われたトーナメント(王座出場校決定トーナメント)でもダブルスは出た試合で全て1本を持って帰れたのは、その時期を乗り越えられたからかなと思っています。
吉岡 私は3年になってからを振り返って、意外とコロナも関係なくというか普通に春関(関東学生トーナメント)とかインカレができて、単純にすごく早く感じて。その中でJOPの試合とかにもたくさん出て、思うように結果が出なくて焦りとかも感じていたのですが、この前のインカレで優勝できたというのはすごく良かったなと思っているところはあります。それでもやはり3年ということでチームのことも考えていかなければいけないという立場になっていて、王座が終わったら代交代になるので、今までとは違うようになってくると思いますが、自分のテニスをおこたらずチームのためにも動いていきたいなとは思っています。
前田 3年を振り返っての感想としては、私は3年目の春の早慶戦で初めて団体戦に出場させてもらって、それまでは先輩方とかも強くて背中を見て、その先輩たちが卒業してからは私も団体戦を頑張ろうという意思を持ってやっていて。早慶戦で勝てたことは良かったなと思っているのですが、早慶戦を勝てたのは応援の力に助けられた部分はあったので、個人戦ではあのようなプレーをずっとできるようにしないといけないなと思っているのが今の現状です。
――吉岡さんは早く感じたということでしたが、大会があまりなかった昨年と比べて今年は全然違うなと感じますか
吉岡 そうですね。去年の思い出がないと言ったらよくわからないのですが、試合がほとんどなかった時期が多かったのでその分、今は充実していて。充実しているからこそ早く感じるのかなと思います。
――3年になって役職とか部の仕事も増えたと思いますがそちらに関してはいかがですか
石川 私は副将補佐という役職をやっていて、具体的には4年生がいない時にチームを引っ張っていくというのと、選手層の練習が中心にはなってしまいますが、4年生が就活とかで抜けられることも多かったので、その時にコーチ陣と相談してメニューなどを決めるとか、そんな感じのことをやっています。
吉岡 私は役職としては分析委員なのですが、今の4年生の先輩方がやってくださっているので、分析委員としてはあまりやっていないです。
前田 私は無職……(笑)。役職はないのですが、なんか大変そうなところがあったら手伝うようにはしています。
――石川さんが副将補佐をしていますがその仕事の手伝いなどはされますか
前田 はい。まあでもだいたい石川選手の考えていることは合っているので、「それでいいんじゃない」という感じでアドバイスしています(笑)
――今年になって後輩たちも増えましたが意識的に変わったことはありますか
石川 後輩とのコミュニケーションは多く取るようにしていて、やはり練習が一緒なので選手層であれば選手層と関わることが多いので、育成層の子とも自分からコミュニケーションを取るようにしています。
吉岡 コミュニケーションを取るように意識していて、今まで私たちが1年生だった時に仕事が大変だった経験があるので、今1年生がやってくれている仕事の状況をちゃんと自分たちがわかるようにしようとしています。
前田 私は意識的に変わったこととしては、練習でも何でもすぐにあきらめてしまっていたのが、神鳥もいましたが1年生が入ってきてくれて一緒に練習する機会が増えてから自分ももっと頑張らなければと思うようになって。後輩が入ってきてくれたことは自分自身が頑張るモチベーションになっています。
試合を振り返って
全日本学生選手権はいい大会になったと振り返る石川
――ここから個別の大会の振り返りをしてもらおうと思いますが、まずインカレを振り返っていかがですか
石川 インカレは自分的には結構いい大会になったなと思っています。今までダブルスでの戦績はありましたがシングルスで戦績が出ていなかった中で、予選から勝ち上がって16まで行けたというのは自分の中でも自信になったし、高校の時のシングルスの最終戦績もベスト32だったので、それを1個超えられたのは良かったかなと思います。ダブルスに関しては春関の悔しさとかを全部ぶつけて、結果を出さないといけない大会でしっかり結果を出せたことは本当に良かったと思います。
吉岡 私はシングルスでは押川(千夏、社3=福井・仁愛女)とあたってしまって負けてしまいました。シングルスは勝ちたい気持ちの方が強くなってしまって、体が追いついてこなかったというかうまく自分のプレーが出せなかったので、すごく悔しい気持ちで終わってしまいました。ダブルスは石川とペアを組むとなった時からインカレは石川と優勝したいという気持ちがあった中での優勝ができたので、それはうれしいなと思います。
前田 私はまずはシングルスで本戦出場ができて良かったなというのがあって。それでも欲を言えば1回戦も10ポイントまでいったので勝たなければいけなかったなとは思いますが、意外とシングルスも頑張れたなというのがシングルスの印象です。ダブルスはあまり目標を立てて挑んだというよりかは、予選からのスタートだったので一つずつ勝つことを目指していて。それも10ポイントで負けてしまったので、やはり大会で目標をしっかり立ててプレーすることを今後の大会では心がけようかなと思います。
――各々で戦績は違うと思いますが、得られた課題と収穫でいったらどちらの方が大きいと思いますか
石川 私は収穫の方が多いなと思っていて。ダブルスの話になってしまいますが、1年生で結果を出してから周りからの評価とか勝たないといけないプレッシャーとかで自分がダメになってしまっていて。そこをインカレでは考えないようにしていたわけではないですが、初心に戻ってテニスを楽しもうという気持ちで試合に入れて、それが結果的に自分の中ですごくいい方向に行って、結果もついてきたというのが収穫になります。
吉岡 私はどっちも得られました。課題としてダブルスで優勝できたことは良かったのですが、その中でもできることはあったし、思い通りにいかない部分もあったので、そこは課題が見つかったところです。収穫としてはノーアド10ポイントだったということもあって、思いきってプレーができた方に流れがいくという試合の状況の中で、10ポイントで向こうに流れがいっていても、勝ちきれたということで、悪い雰囲気になってしまっても切り替えて強気で行ったら流れは変わってくるというのはかなり感じました。そこは自信がついたという部分でもあるので収穫だなと思います。
前田 私は課題の方が多かったなというのがあります。勝ちきれなかったり、取りきりたいところで締められなかったりして自分の詰めの甘さというのが出てしまったかなという印象があるので、王座では課題を克服できるように、毎日の練習もそうですが、試合で結果として出るように頑張りたいなと思います。
――インカレ後は団体戦があるかどうかわからない時期がありましたが、その期間はどのように過ごしていましたか
石川 主将の杉田さん(栞、社4=埼玉・山村学園)がこの期間を無駄にしないでもう1段階レベルアップしようと日頃から言ってくださっていました。今のままでは勝てないというのもわかっていたし本当に毎日できることを、自分自身のレベルアップだったり、チームのレベルアップにつながるような練習だったり雰囲気で日々過ごしていたように思います。
吉岡 あるかないかわからない状況ではありましたが、あるつもりで練習はしていました。準備できる期間がたくさんあるというようにプラスに捉えられていた部分があったと思うので、その点で(試合が)延びてしまいましたが、いい練習ができたのではないかなと思います。
前田 あるかどうかわからない状況だったのですが、あると思ってやっていましたし、4年生の先輩方がサポートとして入ってくれることが多くて、そのサポートがいてくれたからモチベーションを保ち続けながら頑張ることができたかなと思います。
――その後の王座出場校決定トーナメントでは皆さんはダブルスとして出られましたが振り返っていかがですか
吉岡 私のポイント的に誰と組んでもD1で出ることが決まっていたのですが、その中でD1の試合はすごく厳しい戦いになることはわかっていました。反省点としてもっと思いきったプレーができていたらなというのがあって、実際の試合では気持ち的にあまり強気で行けなかった部分があったり、守りに入ってしまったというか、そういう部分が出てしまった試合になったのでそこは反省点でもありました。隣でD2がやっているのを見てもっと自分の試合で盛り上げられていたらもっとチームの雰囲気が良くなったのではないかという課題が残る試合になってしまったと思います。
前田 私はトーナメントでダブルスに3戦とも出させていただきましたが、どの試合も勝てなくてチームに1本を持って帰ってくることの難しさとか、自分の実力のなさを痛感したなというのが一番の印象です。やはりダブルスは団体戦の流れをつくるためにすごく大事になってくるので結果が全てではないですが、やはり勝たなければなんの意味もないし、王座では同じ思いをしたくないのでもっと頑張らなければなと思いました。
石川 ノーアド10ポイントという団体戦では初めての形式で、本当に一つのミスで流れがどっちにいくかもわからないし、どっちが1本を取れるかというのも、勝ち負けが何ポイントかでついてしまう試合でした。そういうところで自分たちから取りにいけていたというのが、団体戦で勝てた要因だったのかなと思います。
――準決勝の筑波大戦が印象に残っているのですが、この試合を振り返っていかがですか
石川 筑波との団体戦は本当に試合をしてみないとどっちに転ぶかわからない状況で勝ちきれたというのは、本当に筑波よりも王座に行きたいという気持ちをみんなが持っていたからなのかなとは思っていて。最後は梶野(桃子、社1=京都外大西)にかかってしまいましたが、本当に1年生とは思えない堂々としたプレーでめっちゃ緊張したと思いますが、その中でも自分のこと、みんなのことを信じて戦ってくれていました。勝っても負けてもではないですが、あの時はこのチームでやってきて良かったなと思いました。
吉岡 石川が言ってくれたように、梶野にかかってしまいましたが梶野も堂々と戦ってくれたというのもあったし、チーム全員が王座に行きたいという気持ちを持って、応援も全員が全力でできていてチームが一つになれて勝ちにも結び付けられたのではないかと思います。全員が気持ちを一つにして応援とかプレーができていたからこその勝ちだと思うので、すごいゲームだなと思いました。
前田 私は筑波戦を振り返ってやはりチーム力で勝ったなというのは思っていて。自分がすごく不甲斐ない試合をしてしまったので、梶野にかけてしまって申し訳ないなというのは一番に思ったし、負けて自分が何もできていないというのもありましたが、とりあえず勝ってくれてありがとうと、勝ってくれた人に言いたいです。
――石川さんは神鳥さん(舞、スポ2=東京・早実)とのペア、前田さんと吉岡さんというペアが2試合でありましたが、組んでいる相手に対する印象はいかがでしょうか
石川 神鳥は心強いですね。気持ちが強いのでどんな相手に対しても絶対に勝ちに行くというか、そういう部分では引っ張られています。
吉岡 前田と組むのは団体戦でしか組んだことがないのですが、今まで下地さん(奈緒、令3社卒)と組んできて、動きとかプレーとかが似ている部分があって、組んでいる回数が少ない感じがあまりしないです。前衛にいてくれる時の安心感というのが前田に対してはすごくあるなと感じます。
前田 希紗は1年生の時から主力としてチームを背負って戦ってくれていて、団体戦とかそういった面で経験値がすごく高いと思うので、信じてやっています。
4年生への思い
ダブルスでの活躍が期待される前田
――今の4年生が率いるチームの雰囲気はどのように感じますか
石川 今すごくいい雰囲気でできているなとは感じています。早慶戦前もありましたが、選手層でやっている子たちが考えすぎてしまう人たちが多いということを結構言われていて、それをいい方向に引っ張ってくれているのが4年生の方々なのかなと思っていて。精神的な部分などでのサポートがすごく大きくて、だからこそ選手も気持ちよくプレーできていると思うし、選手、サポート関係なくチーム一丸となって戦えているという雰囲気につながっているのかなと思います。
吉岡 石川とほとんど一緒ですが、選手でやっている人たちがほとんど3年生以下になってきている分、4年生はサポートとしてチームのことを考えてくれていて。コート内のメニューとかも客観的に見てメニューを考えてくれたり、アドバイスとかをしてくれたりするので、選手とサポート、3年生以下と4年という関係性がすごくいい雰囲気でできているチームなのではないかなと思います。
前田 2人が言ってくれたことと似ていますが、本当に普段の練習からサポートしてくださっていて、どうしても選手層の練習はしーんという雰囲気になってしまう時があるのですが、そんな時もずっと明るくポジティブな声掛けをしてくださっていて。そのおかげでみんな試合に対して勝たなければという意識が強かったのですが、もう「楽しんで」と言ってくださるので、思いきって試合に送ってもらっています。
――今年のチームと昨年のチームで違うなと感じる部分はありますか
石川 去年は4年生が戦力というか団体戦の面でも結構引っ張ってくれていて、それについていくというようなかたちだったと思いますが、今年はそこが違って。試合に出るのが3年生以下が多かったということもあって、やはり4年生の思いというのを結果として返せるのが選手しかいないというとことに難しさはありました。関係性というか立場が去年と今年で違うかなと思います。
吉岡 去年までだったら4年生がコート内で引っ張ってくれていて、プレーで見せてくれるのに私たちがついていくというかたちでしたが、今年はコート外から声を出してくれたり、チームのことを考えてくれたり、という点で去年とは違うかたちにはなります。それでも去年の先輩方も今年の先輩方もチームのことを一番に考えているというのが伝わってくるなと思います。なので違ったかたちではありますが、勝ちたい気持ちとかはチームとして同じです。
前田 去年は4年生についていった感じで今年のチームはやはり4年生がサポートしてくださっていて、それは王座優勝することでしか返せないかなとは思うので、本当に結果を出したいという思いが強いです。
――こちらの勝手な印象だったら申し訳ないのですが、今年になってチームが上昇してきた雰囲気があります。それはどこかでターニングポイントなどがあったのでしょうか
石川 春の早慶戦かなとは私は思っています。春関で思うようにチームとして結果が振るわない状況で、慶応は上位独占みたいな感じだったのですが、今までの早稲田というのはどうしても勝たなければいけないとか、勝てるところを計算していたというか、そういうところがどこかでみんなの頭の中にあって。なんですけど、早慶戦前のミーティングとかで4年生の方が試合を楽しんでほしいとか、そういう本当に結果が出ていない中でも前向きな言葉をかけ続けてくれていて。杉田さんはよくポジティブ集団と言っているのですが、みんなが試合に対して前向きにやれて、なおかつ試合を楽しめているというところが最終的な結果にはつながっているのかなと思います。
吉岡 今までの早稲田は勝つのが普通という雰囲気があって、負けたらやばいみたいなそういう勝たなければいけないという雰囲気がずっとある中でプレーしている部分があって。受け身で戦ってしまっていたというのがあったのですが、今年に入って石川が言っていたように春関でみんなが思うような結果が出せない中、他大は結果を残していて早稲田としてはチャレンジャーになるだけという気持ちになれていて。早慶戦前も相手にチャレンジャー精神で戦いに行くという気持ちでみんなができていて、変にプレッシャーを負うことなくのびのびプレーができていたので、そこがいいプレーにつながって勝ちにつながったのではないかなと思います。その早慶戦でいい結果が出たからこそ、考え方は間違っていないというようにみんなが思えて、その後の試合とかでもチャレンジャー精神を忘れずにしていこうというような気持ちでできているので、チームがいい方向に向かっているのではないかなと思います。
前田 春関で本当に結果が振るわなくて、早慶戦まであと何週間なのに、春関で本当にみんながことごとく負けてしまって。その春関後ぐらいに松崎さんが何か言わなかったっけ?
石川 言った。
前田 こっちが泣きそうになりながらなにかで言ってくれて。
吉岡 「俺も考え直す」みたいな。
前田 本当にめちゃくちゃきつい練習をやってきたのですが、勝たなければいけないとか負けられないという気持ちの方が強くて、練習をすごくしているはずなのに結果が出なくて。春関で負けたあとに、思いきってやってではないですが、「そんな気持ちはいらないんだから」みたいなことを言われて。それでなんか選手の気持ちの持ちようが良くなったかなとは私は思います。それで早慶戦もチャレンジャーで行くことができて勝てたかなと思っていて、きっかけは私はそこかなと思います。
――王座ではどのようなプレーをしていきたいですか
石川 王座はこのチームで戦える最後の団体戦で、4年生を笑顔で送り出したいというのが一番にあるので、勝ち負けにこだわりすぎずに今できる自分の全力のプレーを出したいなと思っています。
吉岡 関東は7本で戦うところを王座は5本になってしまうということで、1本がより大事になってくるとは思いますが、今まで戦ってきたようにチャレンジャー精神で楽しんで戦うことで結果は出てくるし、悔いなく終わりたいなと思うので自分ができる力を最大限に発揮できるように頑張りたいです。それと4年生のためにも、いいチームでできる最後の団体戦ということもあるので、最後は優勝して終わりたいなと思います。
前田 みんな本当に強いし、自分のベストを出せば結果はあとからついてくると思うので、本当にその日のベストを尽くせるような準備をして王座奪還したいと思います。
――改めて王座に向けて意気込みをお願いします
石川 ベストなプレーをしてこのチームで王座優勝したいと思います!
吉岡 コロナの制限もあって13人しか愛媛に行けないのですが、行けなかった人たちの気持ちも背負って最後は優勝して終わりたいなと思います!
前田 今までサポートしてくれている4年生、同期、後輩のためにも王座優勝を目指して頑張りたいと思います!
――ありがとうございました!
(取材・編集 山床)
◆石川琴実(いしかわ・ことみ)
神奈川・白鵬女子高出身。社会科学部3年。
◆吉岡希紗(よしおか・きさ)
三重・四日市商高出身。スポーツ科学部3年。
◆前田優歩(まえだ・ゆうほ)
沖縄尚学高出身。社会科学部3年。