【連載】王座直前特集『挑む』 第1回 畠山尚主将×増田健吾

庭球男子

 第1回は早大のD1ペアである畠山尚主将(スポ4=神奈川・湘南工大付)・増田健吾(社3=東京・早実)組が登場。ペアを組んでから3年目の今年は全日本学生選手権(インカレ)や王座出場校決定トーナメントで苦しい戦いが続いた。そしていよいよ今回の王座が2人で挑む最後の大会となる。集大成を控えた2人に個人戦、団体戦の振り返りや、畠山が主将としてチームをどのように見ているかなど様々なことを語ってもらった。

※この取材は10月27日にリモートで行われたものです。

「つまらないやつ」「一癖ある人」

笑顔で答える畠山(上)と増田

――長くペアを組まれていますがお互いの印象はどのように感じますか

畠山 すごくつまらないやつだなと思います。

増田 (笑)

畠山 つまらないというか、そうですね。物事をこなすのはあまり上手くないというイメージですね。

増田 (畠山さんは)少しひねくれているじゃないですけど、一癖ある人だなと思います。こだわりが強いというか、そんな感じに思いますね。

――こだわりが強いなと思ったことなどはありますか

増田 結構掃除が好きで隅から隅まで掃除するとか、あとカブトムシが好きとか、そんな変わったところがあります。

畠山 異論ないですね。その通りだと思います。

――畠山さんから見て不器用ということでしたが、最近そのように感じたことはありましたか

畠山 3年生はもう部活の中心になっていろいろやることがあります。それをやってくれている時の取り組み方だとか、そういったところがまだ3年生なので何もわからないと思いますが、そういったところをこれからもう少し頑張ってもらいたいなと思いますね。別に悪いとかじゃなくて、これから頑張っていってほしいです。

――2人はよく話す方ですか

畠山 僕があまり喋らないので、その中で言ったら喋る方だと思います。

増田 全く一緒ですね(笑)

――普段はどのような話をされることが多いですか

畠山 テニスの話をすることが多いですね。基本的にオンコートで喋ることが多いので、ダブルスの話が中心になります。

増田 (畠山さんが)結構テニスの動画とかダブルスの動画とかを送ってくれることが多いので、そういったプロの選手の動画とかを一緒に見て話しています。

――畠山さんは主将をされていますが、増田さんの目から見てどのように映っていますか

増田 結構4年生は人数が少なくて、かつ実際にメンバーとして出ている人も少ない中で、主将の重荷というかそういったものは今までよりもたぶん重いのだろうなと思いますし、そうした中で4年生のみんなといろいろ話し合ってやってくれているなと思います。

「不甲斐ない試合をしてしまった」(増田)

――ここまでの試合を振り返っていただきたいのですが、まずはインカレを振り返っていかがでしょうか

畠山 春関(関東学生トーナメント)では2回戦で負けてしまって、予選からのスタートになってしまったのですが、うまくいかないながらも最低ラインの本戦に行くということはクリアして。同校対決になってしまったのですが、その時に自分たちにできたプレーはできたのかなと思います。正直に言ったら優勝を目標にしていたので、残念な結果にはなりましたが、個人戦では一区切りをつけられたかなと思います。

増田 優勝を狙っていたのでそこで負けてしまったのは悔しかったですが、負けた相手が同期で悔いのある終わり方ではなかったなと。やれることは全てやれたかなと思うので、悔しいけど悔いは残っていないという感じですね。

――全日本学生室内選手権(インカレインドア)後はなかなか個人戦で結果を残せなかったと思いますが、その辺りの期間については振り返って

畠山 組んでからずっと戦績的な面で言ったら結果を残すことができてインカレインドアでは準優勝という結果を収めたのですが、決して満足してしまっていなかったかと言われれば嘘になるので、そこで2人ともどうすればいいのか悩んで。個人戦優勝という目標はありましたが、そことのギャップみたいなところがあったのかなという感じです。

増田 インカレインドアがあってから春関とインカレの2大会があって、正直春関で負けてしまったのは少しやらかしというかそういうのがあって。インカレで結果が出なかったのは春関で勝てなかったせいだし、負けた相手も第2シードで同期だったので傍から見たら結果は出てないですが、そこに関して(手応え的に)結果が出なかったなとは思っていなくて、ドロー的に仕方がなかったのかなと思います。

――そのような中、プレーなどで良かったなと感じるところはありますか

畠山 ずっと組んできて徐々にレベルアップしていると感じることはできていましたし、まだ王座があるので集大成ではないですが、その時は調子が悪いながらもそれまで練習してきたことなどをやりきれました。そういったところは2人としては以前と比べたら成長した部分なのかなと思います。

増田 プレーとかはそんなに変わってないというか大きく目立つところはなかったと思いますが、試合に臨む態度や気持ちの持ち方や試合前に入る準備など、そういったところで成長を感じられたかなと思う試合でした。

――インカレ後、団体戦があるのかどうかわからない期間がありましたが、その期間はどのように過ごしていましたか

畠山 インカレが終わってからはリーグがあるのか、王座があるのかわからない時期があって。正直、個人戦の目標が優勝だったのでそれが達成できなくてちょっと気持ち的にテニスにあまり乗り気にならないというか、身が入っていなかったのですが、(団体戦を)やると決まってからは切り替えて今までやってこれているのかなと思います。

増田 リーグとか王座があることを信じてやっていたので僕的にはそんなにモチベーションの変化はなかったです。

――やはり開催されると決まってからは気持ち的にも上げていけましたか

畠山 そうですね。主将としてもそうですが僕自身、今までリーグに出たことがなくて今回がリーグとしての団体戦は初めてだったので、すごく楽しみな気持ちもありながら頑張ることができたと思います。

増田 僕もやるとなってからは具体的な目標ができたのでそこに向けて一層、身が入ったかなと思います。

――王座出場校決定トーナメントでの試合を振り返っていかがですか

畠山 正直、良くはなかったかなと思います。というのも技術的な部分もそうですが、試合に臨む姿勢というか「絶対に勝つんだ」という2人のいい状態がお互いに言わなくてもわかっている部分があると思いますが、それがないまま2試合を戦ってしまったかなと思いました。

増田 結果として2試合とも負けてしまって良くはなかったです。そこで今までよりも特に悔しい思いをしたというか、不甲斐ない試合をしてしまったなと感じました。

――今回はトーナメントというかたちでしたが、リーグ戦として出る団体戦が初めての中で感じたギャップなどはありましたか

畠山 勝たなければいけない試合というところで、いくら練習で試合を想定してやっているとはいえ、やはり本番独特の雰囲気というのはありましたし、サポートを3年間してきてサポートの立場から見るものとは全く違うなと感じました。

増田 僕もサポートと選手は全然違うなと感じました。サポートの時は「選手って大変なんだろうな」とぼんやりと思っていたのですが、実際に(選手として)立ってみると、実際の試合に出る重みとかプレッシャーというのがサポートの時に思っていたものよりもはるかに大きくて。そこを乗り越えて勝つということは大変なことなんだと初めて感じました。

――特にお2人はダブルスの1番手として出ていますが、そういったところで感じるものはありますか

畠山 他大学もその大学で一番強い人が出てきて、そこに挑戦できているということは素直にうれしいし、僕たちはチャレンジャーなので、思いりやることをやりきって、戦っていければいいなと思っています。

増田 D1としてプレッシャーももちろんありますが、プレッシャーを感じるよりものびのびと自分たちの好きなプレー、得意なプレーでやっていった方が僕たちは強いと思うので、あまりプレッシャーを感じすぎることなく楽しんでやろうと心がけていました。

――決勝の早慶戦ではまさかの敗戦というかたちになりましたが、この早慶戦を振り返っていかがですか

畠山 負けてしまったことは本当に悔しかったです。負けてしまってからいろいろ振り返った時にしっかり準備できていたのかとか、練習中にしっかり声かけできたのかとか、そういうことを全て見直すきっかけになりました。幸い、あれが最後の試合ではなかったので、最後の王座に向けてしっかり自分たちを見直すいい教訓になったかなと思います。

増田 いろいろ反省が出てやるべきことは山のようにあって。この王座までの期間でやれることをやるだけでは解決しない問題もあると思いますが、その中でこのトーナメントが終わってからの3週間でできることというのを考えてやっていこうと話して、それを実際にやっているので本番に向けてまた頑張っていけたらなと思います。

――相手の慶応の印象はいかがでしょうか

畠山 毎年そうですが慶応は単複ともにレベルの高い選手が揃っていますし、単複ともにインカレチャンピオンがいるということは例年とは違う意味でプレッシャーになります。そんな簡単に勝てる相手ではないなということは感じています。

増田 テニスも強いですし、それぞれ一人一人の思いも強いなとリーグ戦で感じました。特にリーグ戦ではずっと慶応が早稲田に負けていて、今年こそはというチャレンジャー精神でガッツあるプレーをしてきたので、そういうところは率直にすごいなと思いました。

――王座でも羽澤選手と藤原選手のペアとは当たる可能性が高いと思いますが、このペアの印象はいかがでしょうか

畠山 羽澤選手はいろいろな舞台を経験してきて、経験値も高いですし、藤原選手も決してダブルスプレーヤーというわけではないですが、一つ一つのショットが丁寧で思いきりのいいプレーをしてくるので、ペアとしての完成度は高い2人だなと思います。

増田 インカレインドアも優勝していますし、インカレも優勝していますし、率直に強いペアだなと感じます。それでもそこにひるんでいても仕方がないし、勝てるチャンスは僕たちにもあると思うのでそういった意味で格上だと思いすぎず、自分たちも勝てると思っています。

「今まで積み上げてきたことをおごることなくコートで表現したい」(畠山)

――今のチームの雰囲気はどのように感じていますか

畠山 早慶戦が終わってから、引きずることなく切り替えて全員が取り組んでくれていると思います。王座まで2週間あるのでそこまでしっかり計画を立てて、やるべきことをこれからしっかりやっていければ、チームとして自信を持って臨めるようになると思います。

増田 (早慶戦での)敗戦を通じて一人一人王座へのモチベーションが高くなってきていると思うので、チームの雰囲気としてはいい状態だなと思います。

――トーナメント決勝での敗戦の後、畠山さんは主将としてかけた言葉などはありますか

畠山 かけた言葉といいますか、試合後のミーティングでは練習してきたこととか、早稲田で過ごしてきたこととかの全てが出た試合だったなとみんなには話して。これから勝つためにはそういった細かいところまで見直していく必要があると全体には言いました。

――その中でチームとして取り組んでいることなどあれば教えてください

畠山 本当に細かいことなのですが、時間をしっかり守ることや挨拶、返事などテニスに関係ないこともテニスに全てつながっているという思いでやっています。できていない人がいたらしっかり注意しますし、あとは全員でトレーニングをすると決めているので、それを毎日継続してやっているところです。

増田 畠山さんの言うように時間厳守だったり、チームとして動いていることを一人一人が再認識してチームのためにできることを、という心がけを一人一人が持ってもらえるように話してはいます。

――やはりテニス以外のことというのもテニスに直結してくるものなのでしょうか

畠山 (つながるかは)わからないですけど、人間性というのはどんな競技でも必要なことで、それが結果として表れるというように今までも全員が感じる場面が多々あったと思います。やはりチーム戦なのでいかにみんながチームのためにテニスに関係ないことでもやるかという意識づけがすごく大事だと思っているので、気づくための訓練だと思ってみんなやってくれればなと僕は思っています。

増田 僕は練習の態度が試合に直結するかと言われたらあまりそうは思わない派なのですが、ただ部活をしている以上、人間性を高めるとか自分の付加価値を高めるということに重きを置く場所だと思っているので。テニスよりもそういうことは大切なことで、そういった意味ではプレーとか試合態度とかにつながるのかなとは思います。直結はしないと思いますが、一つ一つの積み重ねが教育の場である部活動では大切にしていかなければいけないなと思っています。

――王座で意識する相手などはいますか

畠山 意識する相手というのはどこの大学もあまり変わらないので一戦一戦、当たる対戦相手をリスペクトして全力で勝ちにいこうと思っています。

増田 僕もそんなに意識する相手はいないのですが、誰が来ても勝てるように準備していきたいなと思います。

――王座ではどのようなプレーをしていきたいと思っていますか

畠山 僕たちは別に組んだ当初から何かがうまくできたわけでもなくて、地道に自分たちのできることを積み上げてきて今はこういうポジションにいます。うまくやろうとせずにできることを少しずつ、今まで積み上げてきたことをおごることなくコートで表現したいなと思っています。

増田 僕は率直に勝ちにこだわりたいなと思います。人に勇気を与えるプレーとか人それぞれでいろいろあるとは思いますが、そういうことよりも試合に勝って9本あるうちの1本を取ってくることが僕の使命かなと思うので、そういうことだけを意識してやっていこうかなと思います。

――王座に向けて意気込みをお願いします

畠山 王座では16連覇という記録がかかっていますが、今まで先輩たちがつないでくれたものを守れるように優勝を目指して頑張りたいと思います。

増田 僕も16連覇に向けて、本当にそこだけだと思うのでやれることは全てやって。あとは畠山さんと組むダブルスもこれで最後なのでそういうところでも悔いの残らないような大会にしたいなと思います。

――ありがとうございました!

(取材・編集 山床啓太)

◆畠山尚(はたけやま・なお)

173センチ。神奈川・湘南工大付高出身。スポーツ科学部3年

◆増田健吾(ますだ・けんご)

174センチ。東京・早実高出身。社会科学部3年。