全日本選手権もいよいよ終盤戦を迎えた。ここまで単複ともに勝ち上がってきた白石光(スポ3=千葉・秀明大秀明八千代)は4日に男子シングルス準々決勝、5日に男子ダブルスの準決勝に臨んだ。シングルスでは第6シードで国内トップレベルの選手を相手にストレート負け。ダブルスも上杉海斗(江崎グリコ)・松井俊英(ASIA PARTNERSHIP FUND)組を相手に第2セットはタイブレークに持ち込んだが、及ばなかった。これで白石の全日本選手権は終了。シングルスでベスト8、ダブルスでベスト4と4年連続初戦敗退からの躍進を見せた一方で、悔しい気持ちも芽生えた大会となった。
シングルスは試合が進むにつれて相手のペースになっていった
まずは4日、山﨑純平(日清紡ホールディングス)との準々決勝に臨んだ。山﨑は全日本選手権でおととしはベスト8、昨年はベスト4という戦績を残しており、国内トップクラスの選手だ。序盤は白石が試合前の狙い通り、積極的に前に出る。長いラリーが続く中、ネットプレーや前に出てきた相手に対して厳しいストロークを打ちこんでポイントを奪い、先にブレークに成功した。しかし、直後にブレイクバックされてしまう。「粘り強いストロークに対して少し付き合いすぎてしまった」(白石)とラリーの中で相手に深いストロークを打たれたことや、強力なサーブに苦しんでなかなか攻めにいくことができない。第9ゲームではデュースでブレークポイントがあったが、チャンスを活かしきれず。すると次のゲームでブレークされてしまい、第1セットを落とした。第2セットはギアの上がった相手に押される展開に。スピードの上がった相手のストロークやファーストサーブを立て続けに決められ、相手の勢いを抑えることができなかった。このセットを1-6で落としストレート負け。ベスト4進出とはならなかった。
ダブルス準決勝の相手は上杉・松井組。互いに年齢は大きく離れているが、どちらもデビスカップの日本代表にも選ばれた経験を持つ実力者同士のペアである。第1セットは相手のペースに。果敢に前に詰めてくる相手のプレースタイルが「プレッシャーになって良くなかった」(白石)とファーストサーブがなかなか入らず、先にブレークされてしまう。ここまで好調だったサービスキープがうまくいかず、1-6と大きく差をつけられてこのセットを落とした。第2セットは「ファーストサーブの確率を重視して入れる」(白石)ことで、サービスキープをできるようになっていった。第4ゲームでブレークしたが、直後にブレイクバックされ、並行カウントのままタイブレークに突入。こちらも一進一退の攻防が続いたが、最後は相手に逃げ切られ、勝利とはならなかった。
タイブレークに持ち込んだが、惜しくも敗れた白石・田島組
「まだ自分はできた、悔しいと思えていることは収穫」(白石)。最終結果について、白石はこう評価する。プロになることを表明して臨んだ今大会。4年連続初戦敗退からの躍進を見せた一方で、白石は結果に満足することなくさらなる高みを見ていた。サーブ力や普通のストロークの質などハイレベルな戦いの中で見えた課題に取り組み、大学卒業、プロ転向までの約1年半でさらに実力を上げていく。全日本選手権は終わったが、息つく間もなく全日本大学対抗王座決定試合が始まる。「単複6戦全勝できるように頑張っていきたい」(白石)。全日本選手権には区切りをつけ、前人未到の16連覇を目指す戦いに向かっていく。
(記事・写真 山床啓太)
結果
男子シングルス
▽準々決勝
●白石光 [4-6、1-6] 山﨑純平(日清紡ホールディングス)
男子ダブルス
▽準決勝
●白石光・田島尚輝(やまやコミュニケーションズ) [1-6、6(5)-7] 上杉海斗(江崎グリコ)・松井俊英(ASIA PARTNERSHIP FUND)
コメント
白石光(スポ3=千葉・秀明大秀明八千代)
※4日の試合終了後
――今日の試合を振り返っていかがですか
ゲームスコアで言うと第1セットの4-4のブレークポイントを取れなかったというところで自分の中で少し逃げ気味になってしまって、5-4でブレークされてしまったというのがあります。純平君の粘り強いストロークに対して少し付き合いすぎてしまった部分があって、第2セットに入ってから徐々に相手もちょっとずつ攻めてきてそれがプレッシャーになりました。自分も序盤に付き合っていた分、攻めにいきづらくなって何をしたらいいのかわからない状況が続いてしまって。ハマってしまったというのが一番正しい言い方かなと思います。
――昨日のインタビューでどれだけ前に行けるかというところを重視していましたが今日やってみて実際はいかがでしたか
トライはしていました。サーブアンドボレーも混ぜたしラリーの中からボレーに行くという展開も少なくなかったとは思いますが、自分が行きたいところで純平くんの球が深かったり、行きたいと思って打っているショットに対して純平君が予想以上に深く返してきたり、そこで行きづらくなっていたというのがあって。行こうとはしていましたが、結果として結びつかなかったかなという感じです。
――何をしたらいいのかわからない状況と仰っていましたが、それは相手によるところと自分によるところの両方という感じですか
こっちが精神的にディフェンシブになってしまったというところを純平君がうまく突いてきたというところですかね。やはり向こうの方が守っているけど気持ち的に攻めている気がして、そこが精神的に向こうの方が強かったかなと感じました。
――今大会はベスト8という結果になりましたがこの結果については
正直、ベスト8という結果は悪くもないし良くもないと思っています。やはりベスト8だけどシードを守っただけになっていて、純平君みたいにトップシードに勝てなかったということを考えると、ベスト8という響きより低いかなと感じていて。ベスト8だけど現状維持、みたいな。もうちょっとワンランク上の選手に勝つためにはまだまだ足りないところが見えました。結果に満足はしていなくてそれよりもうちょっと上に行きたかったなという印象が強いです。
――足りないところとは具体的にはどのようなところですか
今回やった相手だけではなく他の試合も見ているとやはりニュートラルなボール、普通に打っているボールの球の質。ゆっくり打っている時でも深さや威力というのが、やはり違うなということを感じていて。攻めていなくても攻められない球を僕のタイプだったら追求しないといけないなというところで、ボールの深さというのとプラスで攻めも必要だし、サーブ力も必要だし課題は山積みだなという印象でした。
――明日のダブルスに向けて意気込みをお願いします
僕らは今大会、リターンもボレーもすごく良くて精神的にもイケイケの状態で。田島は学生ではないですが、若さというのが取り柄だと思うので元気に全ポイントでファイトしつつ、アグレッシブなプレーやトリッキーなテニスが僕と田島の良さなので、そういうところを求めていけばチャンスはあると思います。それでチャンスはあると思い続けて2人でプレーしたいと思います。
※5日の試合終了後
――今日の試合を振り返っていかがですか
相手が立ち上がりからすごく良くてプレースタイル的にもどんどん前に来るというのはわかっていたのですが、それでもそのスピードに対応しきれませんでした。ファーストサーブの入りもそれがプレッシャーになって良くなかったです。やはりセカンドサーブになると思いきり打って前に来られるとわかっていた分、ファーストサーブを入れなければという思いから、確率が低くなってしまって。セカンドサーブになるとリターンダッシュや、リターンから返しても前に詰めるというのが松井さん、上杉さんの得意なパターンだったので、それを第1セットはあまり封じ込められませんでした。それでも第2セットからは相手のリターン力が落ちたというのもありますが、自分たち的には第1セットよりもファーストサーブの確率を重視して入れることでキープにつながって。1回、ワンブレークしてすぐブレイクバックされたのはもったいないところだったと思いますが、第2セットに関しては本当にどっちが取ってもおかしくないというか、タイブレークも5-7ですし、紙一重のセットだったかなと思います。第1セットを取られるくらいまで対応しきれなかったのは反省点ですが、それを第2セットになって修正して6-7まで持っていったというのは良かったかなと思います。
――ダブルスのベスト4という結果についてはどう思いまsか
良かったと思います。今回はコロナによって16ドローという少ないドロー数での開催ということで、まず出られるかも僕らはギリギリで。ギリギリ出られたところからベスト4まで来られたというのは普通に見たらいい結果だと思います。それでも今日もチャンスはあったし、決勝を戦いたかったという気持ちはあるので半々ですね。昨日のシングルスと同じような感覚です。やはりベスト4に満足してはいけないなという思いと、悪くはなかったかなという思いと。
――ダブルス全体を通して見えた課題や収穫は
やはりサーブ力。上杉さんはデビスカップ(の日本代表)に選ばれているし、松井さんも日本代表で戦っていたダブルスプレーヤーということで、やはり1個のワンブレークでも大きな差異になってしまうし、一気に流れを持っていかれるというのは学生とは違っていて。流れを1回渡したらもう取り戻すのは難しいと感じて、ベスト4まではキープ力はいいと言っていましたが、このレベルになってきてセカンドサーブをあれだけ打たれると、プレッシャーもかかるし。そういうところが今日はレベルが違ったなと感じるのでシンプルにサーブリターンですね。ダブルスのペアリングとかは相手によって変わってくるしそういうところよりも個々の技術をもっと磨いていく必要があるなと感じました。
――今後に向けて意気込みをお願いします
これで僕の全日本選手権は終わってシングルスでベスト8、ダブルスでベスト4という結果で、今までの自分だったら満足してしまっていたと思いますが、これで悔しかったなと思えていることが成長したかなと。やはり昨年やおととしでこの結果だったら調子に乗っていたかもしれないと思いますが(笑)、今年にプロになることを表明して挑んだ大会でこの結果で。まだ自分はできた、悔しいと思えていることは収穫だし、精神的に考え方も変わってきたのかなと思います。なので来年はこれ以上、厳しくなるのはわかっていますが、シングルスベスト8以上、ダブルスベスト4以上を目標に頑張りたいと思います。そして王座がありますが、このまま行くと思っていなかったので「このまま愛媛に」というぐらいの感じです。約2週間半、遠征に行かないといけないぐらいの準備はしてこなかったので正直、慌てています(笑)。それでも王座にシフトチェンジしないといけないので、この全日本選手権は一旦、自分の中で区切りをつけて。今度は団体戦ということでチームのことを考えて行動しないといけないですが、この1、2週間僕がいなかった分、ダブルスのペアリングも合わせられていないし、サイドも違うのでそういうところも池田とコミュニケーションを取っていかないといけないし、ちょっと慌てています。いろいろ明日に移動とかがあってテンパっていますが、王座16連覇は前人未踏なので、リーグ戦の慶應にリベンジするのはもちろん、優勝を目指して僕は単複6戦全勝できるように頑張っていきたいと思います。