全員でつかみ取った! おととしの王座優勝校との激闘を制し、3年ぶりとなる王座出場権を獲得!/女子筑波大戦

庭球男子

 ポイントが決まった瞬間、思わず歓声が起こった。それは2018年以来、実に3年ぶりとなる全日本大学対抗王座決定試合(王座)への出場が決まった瞬間であった。王座出場校決定トーナメント2週目は王座への出場権がかかった準決勝が行われ、早大はシードの筑波大との一戦に臨んだ。試合はダブルスを1勝1敗とすると、シングルスでは3勝2敗と勝ち越し。最後は3勝3敗となってから、ルーキーの梶野桃子(社1=京都外大西)が早大の王座進出を決める1勝をもたらした。チャレンジャー精神を持ち、応援も含めて全選手が気迫を出して戦った早大。チーム力を発揮しておととしの王座優勝校である強敵を打ち破り、1つの山場を乗り越えた。

 

ダブルスで勝敗をタイに戻す1勝をもたらした石川・神鳥組

 ダブルスは前回と変わらない布陣で試合に入った。D1の前田優歩(社3=沖縄尚学)・吉岡希紗(スポ3=三重・四日市商)組は、昨年の全日本学生選手権(インカレ)優勝ペアである阿部宏美・川出莉子組と対戦。試合は序盤から相手ペアのペースに。川出の素早い前衛の動きに苦しみ、ボレー、スマッシュともに高い技術力を見せる川出に次々とポイントを決められた。さらには阿部の威力のあるサーブやストロークにも苦戦し、第1セットを0-6で落とす。雨での中断を挟み、第2セットはボレーを決めにいき、反撃を見せたゲームもあった。しかし第1セットからの流れは変えられず、ストレート負けを喫した。D2の石川琴実(社3=神奈川・白鵬女)・神鳥舞(スポ2=東京・早実)組は雨での中断の後、3-3から2ゲームを連取。そのまま第1セットを獲得する。しかし、第2セットの中盤で前田・吉岡組が敗れ、勢いに乗った筑波大ペアにミスなく積極的に攻められ、このセットを落としてしまう。ここで敗れてしまうと苦しい展開となる中、第3セットは先にリードを許したが最大3点差以内で粘り強くついていく。そして5-7から石川の相手前衛の横を抜くショットなど、ミスを恐れない積極的なプレーで5ポイントを連取して逆転。チームを鼓舞する勝利で早大は勝敗をタイに戻した。

 シングルスはまずS2、S5の選手が試合に入った。S2の安藤優希(スポ3=東京・日出)は次々と鋭いストロークをコートの左右に打ち込んでくる相手に対して粘り強く戦った。足を動かし、スライスなども織り交ぜて相手のショットに対応。これが相手のミスを誘い、流れを呼び込んだ。最後まで集中力を発揮して戦った安藤は6-2、6-1で勝利。シングルスは早大が先に1勝を手にした。S5の押川千夏(社3=福井・仁愛女)は思いきりラケットを振って速いストロークを打ちこんでくる相手に対して、第1セットは防戦一方の展開になってしまい、落としてしまう。しかし第2セットは押川のストロークが決まるポイントも増え、激しいラリーが続く展開となる。5-6の第12ゲームでは0-40と追い込まれてから取り返し、タイブレークに持ち込む。しかし、最後は先に押川のミスが出てしまい、第3セットに持ち込むことはできなかった。S4の渡邉優夢(社1=兵庫・相生学院)は後ろに下がらずに強いストロークを左右に振り分けて攻める。デュースとなったゲームもものにして、第1セットは6-1と差をつけて獲得した。第2セットは相手も強い球を打ち、互いにゲームを取り合う展開となるが、渡邉も第1セットからの攻めの姿勢は崩さず。7-5でこのセットを獲得し、早大の勝利に王手をかけた。

 あと1勝。早大の命運はS1、S3の2人に託された。S1の神鳥は昨年のインカレで敗れた相手である阿部とのエース対決に臨んだ。第1セットは神鳥のペースに。コートの中に入って果敢にライン際に突き刺さるようなストロークでポイントを重ねる。ショットが決まるたびに声を出し、気迫のプレーで第1セットを6-2で獲得した。第2セットも第1セットと同じように攻撃的にプレーしたが、阿部に徐々に対応されてしまう。中盤からは阿部のハイレベルなショットに押されて劣勢となり、このセットを落とした。第3セットは攻めにいってのミスが続き、流れを引き寄せることはできず。相手に大きくリードされてしまい、敗れた。S3の梶野は3-0から一気に6ゲームを奪われ、第1セットを落としてしまう。しかし、隣のコートでS1の神鳥が試合に入り、第2セットから調子を取り戻した。第2セットは長く、速いテンポのラリーが続く展開となる。互いにゲームを取り合う緊迫した展開となり、ゲームカウント6-6。タイブレークもポイントを取り合う展開となり、5-6と先にマッチポイントを握られたが、諦めずに6-6、7-7とくらいつく。そして初めてセットポイントを握ると一気に2ポイントを連取し、望みをつないだ。運命の第3セット。神鳥が敗れ、全てがこの10ポイントで決まる。応援がコートの横に並び、緊迫した空気が漂う中、梶野はミスなくラリーした。相手が先にミスをしてしまうポイントが続き、序盤で4-0。そのリードをしっかり守り抜いた。最後は相手がボールをネットにかけ、ゲームセット。3年ぶりとなる早大の王座進出が決まった。試合後、激闘を戦い抜いた梶野をねぎらう部員たちの歓喜の輪が広がった。

 

試合後の梶野をねぎらう部員たち

 「信じられない気持ちが大きい」(杉田主将)。劇的勝利を飾った試合後、杉田主将は言葉にできない大きな喜びを口にした。おととし、王座の連覇が途絶えるという苦しい経験をした中で4年生がサポートとしてチーム力を高め、下級生が試合で勝利をもたらした。「最初から最後まで絶対にポジティブな集団でいくぞ」という試合前の主将の言葉通り、選手たちは気迫を全面に出してプレー。負けてしまった選手も最後までくらいつき、応援も含めたチーム全体で雰囲気を高めて、つかみ取った勝利だった。1つの山場を乗り越え、今後はトーナメント優勝がかかった慶大戦、そして王座と試合が続く。この流れを継続して、王座奪還へ。チャレンジャー・早大は突き進む。

(記事 山床啓太 写真 横松さくら)

結果

〇早大 4―3 筑波大


▽女子ダブルス
D1● 前田優歩・吉岡希紗 [0-6、2-6] 阿部宏美・川出莉子
D2○ 石川琴実・神鳥舞 [6-4、3-6、10 -7] 我那覇真子・照井妃奈


▽女子シングルス
S1● 神鳥舞 [6-2、3-6、1- 10] 阿部宏美
S2○ 安藤優希 [6-2、6-1] 塚田結
S3○ 梶野桃子 [3-6、7-6(7)、10 -5] 照井妃奈
S4○ 渡邉優夢 [6-1、7-5] 我那覇真子
S5● 押川千夏 [2-6、6(5)-7、7-5] 西尾萌々子

杉田栞主将(社4=埼玉・山村学園)

――王座進出が決まっての今の率直な感想をお願いします

信じられない気持ちが大きいです。私たちの代が選手としてコートに入って活躍できる人が少なくて、ここまで1年間悩みながらやってきたということを踏まえると、本当にチーム力が求められるなと。入っている子たちが後輩だからこそ、私たち4年がどれだけチーム力を高めて、日ごろからやっていけるかというところを目標としていたので、そのいろいろな試行錯誤が報われました。おととしに連覇を途切れさせてしまったのを経験したのが3、4年の2世代で、本当につらい経験をしたところもあって、そういうのも全てひっくるめると言葉にならないです。

――今日の試合を迎えるにあたって部員たちにはどのようなことを話していましたか

前回は向かってこられる立場になってプレッシャーを感じてしまっている部員が多かったのですが、今回(の相手)はおととしの王座のチャンピオンなので、迷いなく私たちはチャレンジャーだなというところは伝えていました。その中でこのチームで戦うのもあと長くて1カ月なので、一戦一戦を大切に楽しんでいければそれでいいというところを伝えました。あとは真面目な分、結構ネガティブになってしまう、試合中に「ああ、またうまくいかなかった」と悩んでしまう子が多くて。「私たちは最初から最後まで絶対にポジティブな集団でいくぞ」というのをしつこいくらい言い続けて、それをみんな実現して実行してくれたかなと思います。

――ダブルスの試合については統括していかがでしょうか

ダブルスは本当に厳しい嫌な時間がありました。ダブルス1の方は相手が本当に強敵でどう立ち向かっていくべきか悩むところはあったと思いますが、それでも最後まで諦めない姿勢や、1ポイント1ポイントで気迫を出して戦ったことが全体にいいムードを流してくれたなと思います。ダブルス2も「自分たちが勝たないといけない」というプレッシャーはあったと思います。それでもダブルス1も頑張っているし、応援も全力で頑張っていて、しっかり全員で戦うという意識をもってコートに入ってくれました。それで本当にファイナルの10ポイントタイブレークでも一緒に盛り上がって、ポイントを取るたびにみんなで喜ぶことができて。本当に団体戦らしく勝利できた要因なのかなと思います。

――その後のシングルスの試合については振り返って

シングルスも最初に入った2人はたぶん緊張していたとは思いますが、どちらも3年生なので、「自分たちが頑張らないと」と自覚を持って毎日やってきてくれたのが、しっかりコート上でも出ていました。特に押川(千夏、社3=福井・仁愛女)も自分が取らないといけないと思って辛いポジションだったと思いますが、相手も強くて。それでも最後までファイトして、どうにかしてでもチームにいい雰囲気を伝えようと戦っていたのは本当に良かったと思います。それが周りに伝わっていたからこそ、シングルス4の渡邉(優夢、社1=兵庫・相生学院)も、セカンドは競りましたが取りきれたというところもあったと思います。安藤(優希、スポ3=東京・日出)もみんなの力を上手く利用して勝ってくれる選手なので、それが本当に今回も光っていたと思います。シングルス勢は負けた試合も周りにいい影響を与えるような負け方でした。神鳥(舞、スポ2=東京・早実)と梶野(桃子、社1=京都外大西)も本当に最後まで諦めずに頑張ってくれて、神鳥は強敵相手に気持ちを出して頑張ったのが梶野にも伝わって。(梶野は)セカンドを取れるか取れないかという感じでしたが、神鳥の頑張りによって頑張らなければと思えたと思います。とても全体がいい影響を及ぼし合いながらシングルスは勝ち越せたのかなと思います。

――最後はルーキーの梶野選手が決めてくれましたが、これについてはどのように思いますか

昨年、(梶野には)自己推薦の受験指導をしていたのですが、梶野と高校生の頃から関わりあって、早稲田に憧れを持ってくれて、一生懸命に勉強も頑張ってきてという姿を本当に近くで見ていて。私も必死にサポートしてやっと入学できて一緒に頑張ろうというところで、(梶野は)最初はサポートから始まりましたが、そこから試合に出る選手まで上り詰めて、こんなに大切な試合で勝つことができました。梶野に関しては私自身も本当にうれしいですし、感慨深いものは本当に多くありました。

――王座進出が決まりましたが来週の試合もまたあります。そこへ向けて意気込みをお願いします

本当にここで一旦、山は乗り越えたという感じはありますが、来週はこの流れを断ち切ることなく、勝って王座に乗り込みたいなという気持ちが大きいです。特に王座の直前にあたる時期で、あまり修正する間もなくいってしまうと思います。春の早慶戦でも勝って秋の早慶戦でも勝って、慶応にいい流れを渡すことなく。こっちがどんどんポジティブな雰囲気をまとって戦い抜いて、もっといいチームを作っていきたいなと思っているので、ここからさらにチームを引き締めていきたいなと思います。