全日本学生選手権(インカレ)もいよいよ佳境に入った。大会7日目は男子の方では単複で準々決勝が行われた。早大からはシングルスでベスト8に残っていた4人の選手が出場。ベスト4を多くの早大の選手で占めることが期待されたが、準々決勝を突破したのは同校対決を制した丹下将太(教3=東京・早実)だけであり、他の3人は敗れた。特に昨年のインカレでシングルス優勝を成し遂げ、連覇が期待された白石光(スポ3=千葉・秀明大秀明八千代)がまさかの敗戦を喫するなど、この日の試合は波乱の展開となった。
同士討ちを制して準決勝に進出した丹下
同じ3年生同士の丹下、小久保蓮(スポ3=愛知・名古屋)はベスト4進出をかけて同士討ちに臨んだ。まず試合の流れをつかんだのは丹下であった。第1セットは小久保に自分のテニスをさせず、6-1と大きく引き離して獲得する。続く第2セット。「簡単にゲームを取らせない意識」(小久保)を持って再び試合に臨んだ小久保は、第5ゲームでブレークを許したが、直後にブレイクバックに成功するなど、本来の粘り強いテニスを取り戻し始め、反撃の兆しを見せる。しかし第2セット後半、小久保がミスを連発してしまう。もどかしげな様子を見せる小久保に対して丹下は冷静にプレーし、第2セットも6-4で獲得し、準決勝進出を決めた。渡部将伍(教3=東京・早実)は慶大の実力者・藤原智也と対戦。序盤からロングラリーが続く展開となる中、粘り強くプレーするものの、先にミスをしてしまうポイントが多かった。第1セットは第1ゲームからいきなり3ゲームを連取されるなど、終始劣勢のまま2-6で落としてしまう。後がない第2セット。このセットもロングラリーが続く。その中で第6ゲームではラリーの中で先に強打や前に上がってのスマッシュなどを繰り出し、積極的に攻撃してブレークに成功した。しかし直後にブレイクバックを許してしまい、3ゲームを連取され万事休す。初のインカレで渡部はベスト8で終戦となった。
昨年のインカレで優勝し、連覇を目指して今大会に臨んだ早大のエース・白石。しかし、2連覇にかかる期待や学生王者という立場が重圧となって重くのしかかった。前日のダブルスの試合で2セットともタイブレークを取りきれずに敗れて迎えたシングルスの準々決勝。第1セットは第8ゲームでブレークに成功して5-3とするも、いまいち取りきることができずにタイブレークへ。ここでは白石が守りに入ってしまい、相手の勢いのあるネットプレーなどに押され、落としてしまう。第2セットはなかなか本調子とまではいかなかったが、白石が意地を見せて声も張り上げてプレーし、6-3で獲得する。勝負の第3セット。白石が第2ゲームでブレークするも、またもや直後にブレイクバックを許してしまい、流れに乗れない。そうしているうちに4-3の第8ゲームから相手に完全に流れがいってしまい3ゲームを連取されて敗れた。試合後、「プレッシャーに押しつぶされそうになった感じがすごくて」と振り返った白石。重圧の中でなかなか本来のテニスの感覚をつかめず、インカレの連覇という偉業がいかに難しいことであるかを痛感させられる結果となった。
白石は連覇を果たすことはできなかった
インカレ連覇とはならなかった白石。今後は学生王者、チームのエースとしての立場からくるプレッシャーを跳ねのけるようにさらにテニスを磨いていく必要があるだろう。9月のリーグ戦の中止が発表され、それに代わる団体戦がどのようなかたちになるかはまだわからないが、そこでも1番手として1本を取りに行く姿勢に変わりはない。今回の準々決勝では4人中3人の選手が敗れ、唯一丹下が準決勝に進出した。次戦では決勝進出をかけて今回、白石を破った田口涼太郎(近大)と対戦する。おそらく準々決勝の勢いそのままに来るであろう田口との試合は難しいものになるだろう。相手の勢いをいかに封じ込め、タイトルがかかった一戦に進むことができるか。
(記事・写真 山床啓太)
結果
男子シングルス
▽準々決勝
○丹下将太 [6-1、6-4] ●小久保蓮
●渡部将伍 [2-6、4-6] 藤原智也(慶大)
●白石光 [6(5)-7、6-3、4-6] 田口涼太郎(近大)
コメント
白石光(スポ3=千葉・秀明大秀明八千代)
――ベスト8という結果に終りましたがこの結果はどういった評価になりますか
もちろん2連覇を目指していたというのもありますが、ベスト8で終わったのは誰が見ても良くない結果だと思うし、優勝しないといけない立場だったのを感じていたので、悔しい結果でした。精神的に2連覇という周りの期待とか、プレッシャーを自分の中で感じていてこの1週間、正直テニスがあまり良くなくて。プレッシャーからラケットが振れなかったり、ボールが浅くなって相手に攻め込まれたり、相手のプレーがいいというよりは、自分の気持ちが引いている分、相手がのびのびできてしまいました。そういう精神的な面から相手のプレーの質を上げてしまったりしたかなとすごく感じていて。それを感じていることにもプレッシャーがあったし、難しかったです。去年とかは楽しかったのですが、今年はきついというイメージで精神的に病んでるとかではないですが、プレッシャーに押しつぶされそうになった感じがすごくて。あまりそういうのはないタイプなのですが、やはり今まで2連覇している人がそういないということを考えると、みんな精神的に戦っていたんだなと。去年の今村さん(昌倫)さんでもベスト4だし、今回も羽澤選手や田形選手も負けているし。それを跳ねのけるくらいのプレーをこれからもっと磨いていかなければいけないと感じました。
――昨日に引き続き今日もタフな試合になりましたがコンディション的にはいかがでしたか
自分であまり言いたくないのですが、競った試合には結構自信があって。劣勢になった時に負けるというのはそんなになくて、昨日のダブルスだとセットポイントを取りきれなかったり、そういうところからついてないなと感じていて、今回は噛み合わないなと。自分がやろうとしていることに対してうまくいってくれないとか、そういうのが今大会はずっとあって。なんか勝負どころで取りきれない。テニスの調子も気持ちが引いている分、アグレッシブさとかそういう自分のいいところがなかったと思います。
――今日の試合でいうとファーストセットのタイブレークでは相手に押されているように見えましたがそれもそういった面がありましたか
ファーストは5-3だったし、タイブレークにいった時点でダメだったと思いますが、終始押されていました。それに対してやはり跳ね返すボールも気持ちの面で引いている分飛んでいないし、精神的にきつかったです。
――セカンドセットについてはいかがでしたか
やはり意地というかそういう面でセカンドを取りきれました。試合を捨てずにファイトしましたし、セカンドセットで攻撃的にもいけました。それでも全部同じ話につながるのですが、追いついていてもなんか自分の中でイライラしているというか、ストレスが溜まっている状態が続いていて自分がしたいテニスができていなくて。大会を通して楽しくやりたかったなと思います。
――こういったプレッシャーを跳ね返すためにはどういった部分が必要になってきますか
まだわからないですがこれからもし来年のインカレに出るとしても、プレッシャーはかかってくると思います。やはりテニスの質。今はディフェンシブなプレーが主体なだけに、気持ちまで守ってしまうともっと球が浅くなったりするのにつながってくると思っていて、攻めるテニスができていれば、プレッシャーを感じていようが攻めるだけですが、今は守りがメインなだけに気持ちで守ってしまうと本当にダメになってしまうので。もうちょっと攻めのテニスというのを展開できたらもっといい方向につながるのかなと思います。
――次の試合に向けて意気込みをお願いします
正直、絶対1本と言われていますが、人間ですし勝負だから負けることもあるというのを考えた上で、今後もプレーします。チャレンジャー精神でいきたいし、この前の昭和の森(オープン)で羽澤選手に負けて、田口選手に負けて慶應、近大のトップにこうやって負けるとなると、もうどうなるかわからないので、リーグ王座はとりあえず全勝を目標に、精神的にもっと楽に戦えるように工夫していきたいと思います。JOPとかも出ると思いますが、そっちでは精神的にのびのびできるので。学生大会は出るかわからないです。本当は出たくないですがそこに挑戦したいという思いもあります。去年優勝して両方取って、今年はベスト8で負けても、もうプロになるしここで逃げてもいいじゃんって思う自分もいれば、ちょっとそれはダサいというか、もう1回気を引き締めてチャレンジしたいという自分もいて。タイトルを取っているからいいとは思いますし、そこは悩ましいですが、個人的にはラストの来年にもう1回挑戦したいと、インカレで優勝して終わりたいと思いますし、このままベスト8で負けて終わりたくないと思っています。テニス的に成長できればいいと思います。
小久保蓮(スポ3=愛知・名古屋)
――今回は丹下選手との同士討ちということでどういったことを考えて試合に臨みましたか
丹下とは日頃から練習したりして、相手のタイプとかも知っているのでやり慣れている部分もあって。逆に向こうも自分のやりやすいところとかやりづらいところとかを知っているので、対戦する時はやりづらいイメージがあって入りました。僕が粘り強いプレーをするのですが、どこに打ってくるとか練習をいっぱいしていて知られているので、相手に嫌にプレーをさせるというのが難しいというか、そこを逆にできれば自分もチャンスになるかなと思って試合に入りました。
――ファーストセットは1-6でしたが振り返っていかがですか
ファーストセットは自分の動きが硬かった部分があって、結構一気に離されて相手にのびのびされて、自分のくらいつくテニスができなくて。終始劣勢状態になってしまって、1-6になっていまいました。もっとサーブキープしたりして、ついていけばチャンスはあったかなと思いました。
――硬くなってしまった要因はどのようなところにありますか
試合が続いていて昨日1日空いてしまって。いろいろ体のコンディションとか整える難しさというのを感じました。
――セカンドセットについては振り返っていかがですか
セカンドは体も動いてきて、自分のテニスをやらせるタイプなのでしっかり相手にやらせることを意識したのと、あとは簡単にゲームを取らせない意識をしたらいい感じまではいきました。それでも最後の大事な場面とかでこっちのミスが目立ってしまって取りきれなかったかなと思います。
――ベスト8という結果に終わりましたがどういった評価になりまsか
大会が始まる前まではベスト8とか、16を目標にしてやっていたのですが、いざ入ってみるともっと上も狙えたのではないかという気持ちも出てきたので、今大会はいい意味で自信にして、今後の練習に活かしていきたいと思います。
――どうなるかはわからないですが、リーグ戦に向けて意気込みをお願いします
僕が出るのは勝たないといけない立場になってくると思うので、しっかりプレッシャーとかも押し返してチームの勝利に貢献できたらなと思います。