第7回は、藤井颯大(スポ=京都・同志社国際)と谷垣絢也(スポ=東京・足立学園)の2人が登場。同学部で取る授業も一緒だったことから仲のいい2人に、早稲田での4年間の部活生活、そしてさまざまな思いを語ってもらった!
早稲田入学までの歩み
笑いの絶えない対談となった
――テニスを始めたのはいつ頃でしょうか
藤井颯 僕は7歳の時にアメリカのカリフォルニア州で始めました。きっかけは近くにテニスコートがあっただけなのですが、そのテニスクラブが遊びみたいな雰囲気でテニスをしていたのがきっかけです。
――最初は遊び感覚という感じでしたか
藤井颯 家に近いし、スポーツをするのが好きだったので遊び感覚で始めました。
――親に連れられてという感じでしょうか
藤井颯 あ、そうですね。親が昔テニスをやっていたみたいで、それで始めました。
谷垣 僕は遅くて高校から始めました。中学でもやろうか悩みましたが、あまりにもテニス部が弱かったので(笑)。テニス部じゃなくて、真面目にやっていたサッカー部に入って、高校からテニスをやろうと思いました。両親もやっていて、やりたいなと思ったので始めました。
――谷垣さんは中高一貫校の足立学園の出身ですよね
藤井颯 あのヤンキー学校です(笑)
谷垣 そんなわけないじゃん!(笑)
藤井颯 不良しかいない学校で。
谷垣 いやいやいや。
藤井颯 大学はテニスやってたっけ?
谷垣 大学? やってるだろ!(笑)
一同 (笑)
――早稲田に進学した理由はなんでしょうか
谷垣 結構長くなるね。
藤井颯 いや?
谷垣 なんないの?(笑)
藤井颯 薄すぎて(笑)
谷垣 簡単に収まるの?(笑)
藤井颯 うん。僕は先に慶應から声がかかって、同志社じゃなくて他の大学も選択肢があるんだなと思って。慶應の方が魅力的だったんですけど、100パーセント早稲田の方が入れると言われたので早稲田にしました(笑)。慶應はなんか落ちる可能性があったけど、早稲田は本当に100パーセントという理由です(笑)
谷垣 同志社も100パーセントじゃん。
藤井颯 あー、確かにね。やっぱりブランド?高学歴のブランドが慶應と早稲田にはあったのでそっちを…
谷垣 そんな浅い理由だったっけ!? もっと…
藤井颯 なんかあったっけ?
――高校の時に早稲田の練習に参加などはされましたか
藤井颯 あー。1回来てくださいって言われて慶應、中央、早稲田と回って、早稲田に来たその日に「100パーセントなんだけど」って言われて「あ、行く行く」って(笑)
谷垣 軽っ! 飲み会みたい(笑)
藤井颯 「付き合う?」「あー付き合う付き合う!」みたいな(笑)
一同 (笑)
――谷垣さんは早稲田に入った理由はなんですか
谷垣 僕は現役の時にものすごく勉強しなくて、本当に低い学校しか受からなくて。このまま勉強から逃げていたらまずいなと思って浪人することを決めて、本当は立教の観光学部に行きたかったのですが、勉強していたら早慶も入れるということがわかりました。それなら一番好きなスポーツをやろうかなと思って早稲田のスポ科を選びました。
藤井颯 かっこつけた理由(笑)
谷垣 正当な理由でしょ(笑)
――早稲田に入ってそこでもテニスを続けようと思った理由はなんでしょうか
谷垣 早稲田と慶應に受かったら部活に入るつもりはなくて、テニスはしないつもりでした。あまりにも強いので場違いな場所だなと思っていたのですが、1回体験に来てみて、厳しい先輩もいましたが、優しく接してくれる先輩もいて、颯大とかも初日ぐらいから話しかけてきてくれて。意外とトレーニングもついていけないほどではないかなと思ったので入部することを決めました。
藤井颯 初日に体験に来たんですよ。ランニングのメニューがあってめちゃくちゃ遅れているんですよ。それでもう1人体験いたよね?
谷垣 いたね。
藤井颯 で、その2人がめちゃくちゃ遅れていて、最後まで走り切って「あ、これはもう来ないな」って(笑)。「もう明日からは来ないわ」ってみんなで言っていました。
谷垣 たぶんきついなと思われて。
藤井颯 「こんなのやるやついないだろ」って言っていて、やっぱりもう1人の子は来なくなりました。でもなんかひたすら帰ってくる子がいて、気づけば入部していました。
谷垣 そうですね。
藤井颯 おもしろかったよ。
谷垣 おもしろくねーよ!(笑)
「アドバイスがなくてもいてくれるだけで安心して試合することができた」
質問に答える藤井颯
――入部当初はどういった目標を持っていましたか
谷垣 入部当初はとにかくテニスを上手くなりたいというのがあったのでそこが漠然とした目標でした。で、もう1個、自分の実力もあまりわかっていなかったのですが、だいたい関東大会とかは出られたらいいなとは思っていたけど、そんな甘くはなかったと…。
藤井颯 (笑)。いけてどこまでいったっけ?
谷垣 いけて一次ファイナルとかかな。
藤井颯 結構頑張っていて、応援もしているのですが、おもしろい試合になって(笑)。頑張るがおもしろく転換されていって。
谷垣 途中からふざけちゃったりするので。
藤井颯 でも頑張ってたね。
谷垣 頑張ってた。頑張る時は頑張ってた。
藤井颯 俺応援行ったっけ?
谷垣 ほとんどここ(東伏見)でやっていたからね。
藤井颯 遠くから見ていました。
――藤井さんはどういった目標を持っていましたか
藤井颯 もうイメージでは早稲田はやば強いやつの軍隊みたいなイメージだったので、よければメンバーに入りたいなというぐらいの低い目標で入りました。大学でもいい戦績を残せられたらいいなってぐらいの目標でした。
――最初は具体的なイメージはなかったという感じですか
藤井颯 具体的にはまったく。メンバーに入れるなんて思ってもいなかったし。
谷垣 そうなんだ。
藤井颯 うん。もちろん入りたいのですが、もう本当にすごいやつしか集まっていないので、その中でちょっとメンバーを目指してみようというぐらいでした。
――お互いに初めてお会いした時はさっきも言っていた通り体験入部の時ですか
藤井颯 いつか覚えてる?
谷垣 たぶん4月の上旬ですね。みんなは普通12月とかには会いますが、僕が入ったのが遅かったので。4月上旬の体験入部の日だと思います。
藤井颯 体験入部…。話したっけ?
谷垣 ちょっと。
藤井颯 俺結構話しかけるんよ。たぶんいい人間性なので(笑)
谷垣 危ない危ない(笑)。「見られたいんで」って言ったら危なかった(笑)
藤井颯 いいやつみたいに接したら、こいつ頑張ってテニス部に入るのかなと思って、ちょっと話しかけたかもね。
谷垣 でも入学式でテニス部だと知らないでテニス部の集団を見て。こいつ入学式の時すごくうるさいんですよ。絶対あいつがいる部活とかクラスには行きたくないなと思ったら部活にいて「まじか…」って(笑)
一同 (笑)
谷垣 「こいつテニス部なのかよ」って思ったのを覚えていますね。
藤井颯 うざ(笑)
――初対面の谷垣さんから見た藤井さんの印象はそういうことでしたが、藤井さんから見た谷垣さんの印象はどうでしたか
藤井颯 最初は周回遅れでひたすら走っていました。走る時になんか頭がぶれずに足だけぴゅんぴゅんしているんですよ。「気持ち悪いなー」と(笑)
谷垣 おい(笑)。頑張ってるだろ(笑)
藤井颯 ただただ遅れているのによく頑張るなって。よく言えばちゃんと頑張る子なんだなと思いました。
谷垣 勉強していて体力なくなっていたからね。
藤井颯 よく走ってたなって。
谷垣 あ、でも第一印象は良かったですよ。喋ってないで「こいつか」と思って、喋ったら「ああ、いい人なんだな」とは思ったので。
藤井颯 「こいつは絶対ばかなんだな」って印象じゃないの(笑)
谷垣 いやいや。そんなことないですよ。
――今のお互いの印象はどうですか
谷垣 教職を2人とも取っていて、スポーツ科学部で部活も一緒で練習する時間とか会う時間が多かったので、一緒にいすぎるとちょっとうっとおしくなってくるんですよ(笑)。
藤井颯 (笑)。
谷垣 うっとおしくなってくるのですが、今みたいに部活を引退してあまり会わないと、会ったら楽しいなと思います。
藤井颯 確かに。お互いめっちゃ学校とかで一緒にいたかな。印象というよりずっと一緒にいるので全部知っているぐらいです。知った上だとやっぱりお互いサイコパス?
谷垣 噓でしょ(笑)
藤井颯 なんだろうね。まあ谷垣の場合は、自分いい人だと思っているのですが、実は内心そんなこと思っていないのに表面上だけいい人という、中身を出せない谷垣がいるっていう印象(笑)。難しいな(笑)
谷垣 で、自分は?
藤井颯 自分は誰にでも話しかけて優しくて誰にでも愛される人で…(笑)
一同 (笑)
谷垣 そうやって自分で言っているのがサイコパスってこと?(笑)
藤井颯 いやいやいや
谷垣 どうするん!? こんなの書けないじゃん(笑)
藤井颯 まあ会う時間が一番多かったので、親友と書いておいてください(笑)
谷垣 本当にやめてください(笑)
――入学当初は高校のテニスと大学のテニスで違いは感じましたか
谷垣 これ僕の方が薄いので僕からいきますね(笑)。僕は全然違うなと思いました。高校の時は初心者に毛が生えたような子たちばかりだったので一発打てば終わるとか、3球以内に終っちゃうようなテニスでした。大学生はみんなレベルが高くて、高校から始めた子も少なくてみんなミスが少ないというのが印象的でした。あとトップのレベルを見ることも多くなって、それで感じたのはそのトップのレベルでもミスが少ないというのと、緊張した場面でしっかりいつも通りにできる選手が強いんだなと感じました。
藤井颯 ミスが少ないのはそうですが、コートをカバーするディフェンス力が高校生と比べて桁違いだなと思いました。オムニとハードコートの違いというのもありますが、大学生ではボールを打つ力よりもディフェンス力が勝ってしまうから、打つよりもディフェンスでカバーできる脚力がめちゃくちゃすごいなと思って。その中で関東に来て、自分に自信を持っている人ばかりでこいつには勝つだろうとか、この人よりは俺はこれがすごい、みたいなのを自分で持っている人が勝っているし、そういう人ばかり集まっているなと思いました。特に早稲田には。
――1年生の時にお世話になった先輩はいますか
谷垣 いっぱいいるね。
藤井颯 俺大山弘太(平31社卒)しか思い浮かばない(笑)
谷垣 俺も大山さんだった。
藤井颯 いいじゃない。お互い共通しての。
谷垣 共通しているのは大山さんですね。2個上の、僕らが1年生の時に3年生だった先輩です。
藤井颯 なんかテニス部の中でももう1つの部活があって(笑)。
谷垣 もうちょい書けるように言えよ!
藤井颯 (笑)。いやこれは書ける。庭球部の中にももう1つのチームがあって大山チームって言うんですけど(笑)。大山がトップなんですよ。後輩が大山さんの支えによって励まされて頑張れてきて、いろいろなことも教えてもらえて大山さんは僕の中で神のような存在で(笑)。いろいろ教えてくれて励ましたりもしてくれて。
谷垣 なんかテニス部にいるのですが、テニス部の部員っぽくないんですよ。「お前ら勉強もした方がいいよ」とかそういうのを言う人で。だからもう一つのチームという感覚もあるのですが、「大学生だからこういう遊びもおもしろいよ」とかそういうのを広げてくれるような先輩でした。
藤井颯 確かに。
――お世話係みたいな感じですか
藤井颯 お世話係ではないな(笑)。
谷垣 お世話係ではないですね。お世話係というよりは後輩と遊ぶのが好きという感じで一緒に遊んでいましたね。
藤井颯 テニス部のルールがあるのにも関わらず、その集団の1人じゃなくて違う意見を紹介してくれるような人。賢いね。
谷垣 変わってますね(笑)
藤井颯 2人共通して大山さんでお願いします
――尊敬している選手がいれば教えてください
谷垣 尊敬している選手…。3人でもいいですか。1人は島袋(将 令2スポ卒=現有沢製作所)さんですね。もう1人は古賀大貴(令2スポ卒)さん、もう1人は藤井颯大です。
藤井颯 うわー!(笑)なんか最後だけ無理やり(笑)
谷垣 島袋さんはプロとしても頑張っていますし、人格的にも成長しようというのがプロらしくて、素晴らしいなと思います。大学生の時から「プロになるんですか?」って茶化して言うと「まだ大学生なので練習も頑張ります」みたいな返答をしていたのでさすがだなと思いました。で、大貴さんは僕が1年生の時に教育係をしてもらって。先輩に怒られることがあって、僕が何かやらかすと大貴さんも一緒に罰を受けないといけないんですね。2時間ぐらい一緒に掃除しないといけないんですけど、その時に大貴さんに先輩が連絡して「お前、今日掃除な」って言われて。その日は試合でわざわざ帰ってこないといけなかったのですが、大貴さんに言ったら「まじかよ」とかじゃなくて、「それは僕が練習に行ってなかったのが悪いです。ごめんな」って言われて、その時にすばらしい先輩だなと感じました。
藤井颯 号泣したらしいです(笑)
谷垣 藤井颯大のすごいところはこんなに楽しくテニスをする選手はなかなかいなくて、早稲田大学庭球部という型にはまっちゃうと試合中とかはそんなに騒げないんですね。それなのに自分のペースで自分の個性を出して。王座(全日本大学対抗王座決定試合)の決勝戦とか見るとわかりますが、あれだけ叫んでいる選手もなかなかいないですし、応援がそれにつられて一緒に叫ぶというのも珍しい光景で。それを引き寄せるパワーみたいなのがすごいなと思います。
藤井颯 録音しておけば良かった(笑)。僕は一番すごいなと思うのが佐藤祥次(令2スポ卒)さんで、あんなに小さい体で腰とかも痛めたりしているのにも関わらず、練習にも入って試合して。やっぱり誰にもないぐらいの根性、忍耐力?が…。
谷垣 すごく図太いよね。
藤井颯 図太い。で、その人はディフェンスにはすごく自信があって、「自意識過剰なんじゃね」って思うほどなんですけど、それでも強い選手相手にも頑張って対等にディフェンスをして。小さな体で体が痛いにも関わらず頑張れるのはすごいなと思って、佐藤祥次さんを尊敬しています。
――同級生の千頭選手や田中選手が活躍していましたが、当時そのことについてどう感じていましたか
谷垣 お前への質問だよ。
藤井颯 (笑)。スポーツ推薦で僕と千頭(昇平 スポ=愛知・誉)と田中(優之介 スポ=埼玉・秀明英光)と清水映里(スポ=埼玉・山村学園)の4人が入りました。それで男子はその2人と映里は1年生からめちゃくちゃ活躍して、「あれ? 俺メンバーじゃなくね?」って思うこともあって「俺はたまたま入れたんだな」って思わせる瞬間もありました。それでもやっぱりあの2人はテニスに対してもめちゃくちゃ執着心があって、昇平とかは試合中の顔からわかりますが、命かかっているんじゃないかってぐらい顔がガチで。あの2人がいたからこそ連覇も続いていて、それに見合った努力をめちゃくちゃする2人なんだなと思いました。すごいなと思う部分もありましたが、自分も同じ枠として部活に入ったからこそ、あいつらみたいに試合で勝てる選手になりたいという、悔しい思いがありました。どうだった?
谷垣 いいこと言うじゃん。
藤井颯 (笑)。言えるときは言っておく。
――藤井さんは2年生の時から団体戦に出て、リーグ戦、王座と出た試合で全勝することができましたが振り返っていかがですか
藤井颯 3年生は全勝じゃなかったのですが、それがあったからこそテニス部に入って良かったなと思うのがありました。もしも選手じゃなくて大学でも活躍できなかったら本当に悔しい4年間だったなと振り返りますが、2、3年のリーグと王座は全ての努力が報われるって感じる瞬間だったので、今としては頑張ってきて良かったなって思います。けど、当時2年生の時にリーグとか王座とかに出ていた時は、試合で勝てるのはめちゃくちゃうれしかったのですが、チームが勝つよりも自分が勝てばいいなって思っていて別に周りの選手がどうとか…。
谷垣 出てきちゃったよ、サイコパスが(笑)
藤井颯 (笑)。自分が勝っていたらチームが負けても自分のせいじゃないしって思っていたので当時は…、いやこれ最後の部分全然いらなかったね。全然いらなかったので2、3年生の時に優勝できたのがもう最高の思い出でした! 以上です!
――谷垣さんはサポートというかたちでしたが王座連覇についてどのように感じますか
谷垣 サポートという立場でも王座の連覇はうれしかったです。特に2年生の頃から颯大のベンチコーチをやっていて、よく颯大の試合を見なければいけないことがあったのですが、3年生の王座の時に慶應の伊藤竹秋とやっている試合はもう最初から颯大が信じられないぐらい緊張していて。周りはそう思っているのかいないのかわかりませんが、足も動いていなくてこれどうしようと思っていました。その時は応援でベンチにも入っていなくてなかなか伝えられなくて、そこのもどかしさとかは感じながらもセカンドセットから颯大が巻き返してくれて勝って、勝利に貢献してくれて。優勝したっけ? あの時。
藤井颯 王座の決勝はダブルス1―2で、1―3になって2―3で(あの試合で)3―3になったのか。
谷垣 なので結構大事な、颯大が落としていたら負けていたかもしれない試合だったので、その時はうれしかったですね。サポートして応援していて良かったなと思う瞬間でした。
藤井颯 最高やな、お前。最高やわ。
――その時も含めて藤井さんは試合に出て応援がどのように見えていましたか
藤井颯 あー。もう谷垣からのアドバイスは本当に役に立たなくて(笑)
谷垣 役に立つアドバイスしてないしね(笑)
藤井颯 そうなんですよ。ベンチに帰ってきて「やばい、負けてるんだけど」みたいな話をすると「つらいなあ」「頑張ろうかあ」みたいな(笑)
谷垣 (笑)
藤井颯 選手にかける言葉も難しいんですよね。僕も優之介とかになんて声かけるのかわからないので。それなのに俺には何ができるのかと考えて、負けた試合も「いやーごめんな。俺何もできなかった」って。試合をしているのは僕なので一緒に負けた責任を背負ってくれるのは、俺に対して思いやってくれているなと思いました。誰よりもベンチから声を出して、アドバイスがなくてもいてくれるだけで安心して試合することができたよ(谷垣の方を見ながら)
谷垣 泣いちゃうわ。
――今年はコロナで予期せぬ事態となりましたが、この1年を振り返っていただけますか
藤井颯 俺、4年生がめちゃくちゃ薄いんよ。
谷垣 な。
藤井颯 取材とかでこの前気づいたんだけど。
谷垣 早慶戦に出なかったしな。僕はコロナの期間中はびっくりしましたね。就活もあったのであまり部活にも参加できていなくて。コロナ中に週に1回リモートでみんなで会って話したりしていたのですが、おもしろいなと思った取り組みが1個ありました。男子部全員ですべらない話をするというのがあって、グループを何個か分けて。その企画は結構、僕は好きでしたね。
藤井颯 関係ないじゃん(笑)。
谷垣 全然関係ないのですが、トレーナーの小野って子が優勝したので、ぜひ取材とは別で小野にその話を聞いて。それでコロナ期間という中で最終的に早慶戦もやらせていただいて、しっかり勝利を収めて引退できたというのは本当にうれしかったですね。欲を言えば藤井颯大が出ている試合をベンチで見たかったというのがありますが、まあしょうがないですね。
藤井颯 そうですね。2、3年生でもう気持ちよくなっちゃって(笑)。就活とかの学生時代に頑張ったことで日本一15連覇に貢献したという話をよくするんですよ。それもあってめちゃくちゃ16連覇を目指して頑張りたいという思いは強くなりました。周りからはそう思われていないかもしれないのですが、みんなが練習できない期間もめちゃくちゃ練習していて。
谷垣 そうなんだ。
藤井颯 プロの人と練習したり、1人でひたすら縄跳びを跳んでいたりして。「これが終わったら日本一16連覇したい」っていう気持ちが強かったんですけど。いつリーグなくなったっけ? 王座とか。
谷垣 7月ぐらい?
藤井颯 知るのが早くて最後に早慶戦とかインカレがあったとしても、個人戦よりも団体戦で勝った時の方が喜びが大きかったので、モチベーションの低下はすごくありました。最終的には練習しなくなっちゃって(笑)
谷垣 けがでね! けががあったので。
藤井颯 早慶戦も日本一16連覇につながる試合と認識した方がいいのですが、「別に早慶戦ってただのおじいさんたちの楽しみでしょ?」というぐらいの認識だったので。
谷垣 後輩に出番を分けてあげたんだよな。
藤井颯 そう!(笑)来年日本一16連覇してもらうために僕じゃなくて他の人に頑張ってもらおうって。
谷垣 だから教育実習行ったもんな。
藤井颯 はい(笑)。ちなみに女子の試合はオンラインで見ていたんだけど、男子は一切見ていない。
谷垣 なんで!? 勝つから?
藤井颯 教育実習が楽しかったなって(笑)
谷垣 やばいな。見ろよ!(笑)
藤井颯 まあモチベーションの低下は感じました。めっちゃ練習してたんよ。
谷垣 知らなかった。
藤井颯 まあそんな練習してるアピールもいらないしね。
谷垣 いや練習しているのは知っていたけど、週3ぐらいだと思ってた。
藤井颯 まあ回数は少なくなったけど。あの時が一番頑張っていました。
――谷垣さんは早慶交流試合に出ていかがでしたか
谷垣 楽しかったですね、本当に。後輩の池田文隆(政経2=カナダ・Glebe Collegiate Institute)と終始楽しみながらやろうと言って、ずっと楽しく。それで田中優之介とかも応援に来てくれたり、後輩とかも応援に来てくれて、応援と一緒に楽しくプレーできて良かったですね。
「慶應じゃなくてここだったからこそ、この変なやつにも出会えている」
笑顔の谷垣
――早稲田の4年間で一番印象に残った試合を教えてください
谷垣 それはさっき言っちゃったやつです。伊藤竹秋の試合ですね。本当に3―6で取られて、やばいやばいと思って。でもセカンドセットに入ったら藤井颯大が強くなったんですよ。いけるんじゃないかと思って(笑)。僕が勝手に思っていたのですが、これいけるだろと思いました。いつも守備的な選手でボールを拾うのですが、ファーストセットは全然拾えなくて。それでどうしようって思いましたが、セカンドセットから結構動けるようになってきて、いけるいけると思っていたら1―4になって(笑)。
藤井颯 いけるって思っていたのお前だけだから(笑)
谷垣 1―4になって、みんなもうすごくやばい雰囲気になってるんですよ。「負ける負ける」みたいな。でもいけるだろうと僕は信じて見ていて、3―5になって相手のマッチポイントもありましたが、相手の子もすごく緊張していて。
藤井颯 でもマッチポイントまでは緊張していなかったよね。イケイケみたいな。
谷垣 向こうはすごくイケイケでしたね。伊藤竹秋ってこんなに強いんだというほど。藤井颯大が押されて、それでも颯大って結構ピンチから強いんですよ。そこからの粘りで横の動きがものすごく早いんですよ。ただただ拾ってただただ返すという(笑)。もうすごかったですね。その試合は本当に感動しました。
藤井颯 応援すごかったね。
谷垣 応援も颯大もすごかったよね。ファイナルセットなんて記憶にない?
藤井颯 ファイナルセットはもう秒でした(笑)。
谷垣 なんであんなに競ってたのって感じだよね(笑)。それがやっぱり一番印象に残っている試合です。
――藤井さんはどの試合が印象に残っていますか
藤井颯 なんか難しいね。いっぱいあるし他の人のもあるから。あの昇平の逸崎との試合かな。僕の同期の千頭君が2年生の時にリーグ戦の最終戦で慶應と4―4になって。スコアは覚えていないのですが、ファーストを取ってセカンドで1―4とかになって、そこでねんざしたんですよ。もうつり始めていて、ねんざして。それでほとんど動けないからボーラーにボールを全部ベースラインまで運んでもらって、つっているからサービスもあげられなくて、相手から「時間がやばい」みたいなことを言われて。時間をとりすぎるとポイントを取られるので。そのような中でどうやったかわからないのですが、つっているのにも関わらず根性で動いて。もう無理だと思ったんですよ。「これ今日連覇が途切れるのかな」って。技術じゃなくて気持ちで勝ったような試合が、千頭にしかできなかっただろうなって思わさせられて、責任を背負って勝利につなげたのは自分には絶対できないなって思いました。かっこいいね(笑)
谷垣 かっこいいね(笑)。
――テニスでもそれ以外でも早稲田に来て良かったことは
谷垣 …。
藤井颯 …。
谷垣 これ即答しないといけない質問だけどね(笑)。
藤井颯 あ、いきます。きれいごとになるのですが、僕が1、2年生の時とかはみんな強いのでメンバー争いだったり、インカレ上位になるとあたったりして、早稲田はみんなライバルでした。お互いを潰し合わなきゃ試合でも上位を取れない。その中で坂井(勇仁 平31スポ卒)さんの代はインカレが終わってリーグ、王座が始まるのですが、そこから4年生はあたることもないし、ここからはお互い仲間になろうよという感じがあって。今まではもっとこうした方がいいよというアドバイスは全然なくて、一人一人自分が強くなる道を探していく感じだったのですが、インカレが終わった瞬間、チームが勝つためにみんながお互いにアドバイスをあげて、一緒に勝つ仲間のように変わったんですよ。メンバーはそう感じて、強い人が一人一人いる中みんなで頑張ろうって言う力ってすごいんだなと思って、それが早稲田にしかないんじゃないかなって。早稲田にしかない経験ができたかなと思いました。難しいね。
谷垣 確かにね。
藤井颯 ナイスじゃない?
谷垣 ナイスだね。僕は本当につまらない回答になってしまうのですが、一番早稲田でしか出会えない人たちに出会えたというのが、テニスをやっていなかったら出会えていない人たちに出会えたというのが、一番良かったですね。そこで同期と一緒に過ごした4年間というのはかけがえのないものだったなとはすごく思います。
藤井颯 慶應でも良かったんじゃない?
谷垣 て思うじゃん!(笑)それがずっとあったから最初から言えなかった(笑)。慶應でも慶應の人たちと出会うしなって。でも慶應じゃなくてここだったからこそ、この変なやつにも出会えているので良かったかなと思います。
――後輩で特に期待している選手はいますか
谷垣 いっぱいいるね。武藤洸希(スポ3=東京・大成)は一番頑張ってほしいなというのは思います。もともと高校生の時から実力もかなりあって。スポーツ推薦で入ってきてなかなか結果を出せなくて3年間くすぶっているのですが、今年は彼がしっかり試合に出て勝たないといけない役目でもあると思うので、最上級生としてチームを引っ張っていってくれるとうれしいなというのは4年生全員思うかなと思います。
藤井颯 いいね。
谷垣 あともう1人、1年生のレギュラーとかではないのですが、学連に入る子がいて。1年生の女子は2人しかいないのですが、その中で学生連盟とかやってチームを支えないといけない笠原(綾乃 人1=東京・早実)さんという子がいるのですが、その子にも期待していますね。プレーヤーとしてだけじゃなく、他の面でも頑張ってほしいなと思います。
藤井颯 僕は丹下君が頑張ってほしいなと思って。なんか1年生の時はあまり勝てなかった?
谷垣 あたる相手が強かったね。
藤井颯 あまり勝てなくて、思い悩んでいように僕たちは感じて(笑)。努力していて、しかもめちゃくちゃ真剣に考えてちゃんとテニスと向き合っているので、最近は新進優勝や、早慶戦もしっかり勝って、やっと実力を出せるようになってきたなというのがうれしいです。もっといけると思うので、期待しています。
谷垣 本当にここで言えないのですが、みんなに頑張ってほしいなと思います。
藤井颯 日本一がかかっているので。4年生は4人くらいメンバーから抜けたんだっけ?
谷垣 そうだね。
藤井颯 ピンチと言ったらピンチですが、みんな頑張ってここまで来ているので、自分たちの手で日本一をつかんでほしいです。
――テニスでもそれ以外でもいいのでこれからの目標を教えてください
谷垣 僕は人生の目標として結婚して幸せな家庭を…
一同 (笑)
谷垣 幸せな家庭を持って家族に看取られながら死ぬというのが…
藤井颯 でも彼女とは
谷垣 彼女とは?なに?
藤井颯 別れ…
谷垣 そうなんですよ。別れちゃったんですよ。
藤井颯 しかも自分から?(笑)
谷垣 違うよ!それは
藤井颯 結婚したかったのに?
谷垣 結婚したかったのに遠距離になっちゃって。就職してからなるのですが、向こうの時間も奪うし、もったいないじゃないですか。他にはみんなと定期的に会ったりして、大学の友達だけじゃなくて今まで築いてきた人たちと楽しくすごせたらと思います。
藤井颯 仕事とかで普通に仕事をこなせる人になって、仕事の方では問題のない上で、もう1人の自分がいてめちゃくちゃ遊んで(笑)。仕事はなんの問題もない上でめちゃくちゃ充実した私生活を送りたいというのが目標です。まあ恋愛はしなくていいや。
谷垣 恋愛? 嘘つけ! 絶対嘘じゃん(笑)
藤井颯 友達と会ってお酒を飲んでネットフリックスを見て(笑)、旅行してお金も貯めて。自分の私生活が楽しい人生にしたいです。
――早稲田に入学したい受験生に向けてメッセージをお願いします
藤井颯 この前樋口(廣太郎 スポ=福岡・柳川)君と加藤(翼 社=和歌山・慶風)君があがった大学別の恋愛事情みたいなのがYouTubeにあってちょっと被ってしまうのですが、大学に入ったらまじで最初の1カ月ぐらいはめちゃくちゃいろいろな友達を作った方がいいというのがあります。自分の友人関係がめっちゃ広がったら後々厳選して仲良くなる友達を選んで。めっちゃいい出会いがあって、おもしろい人に会ったり、オリンピック選手ともつながっちゃったり。とりあえずシャイにならずいろいろな人と、あっちも求めていると思うので、小学生に戻ったくらいの気持ちで友達を作ると…
谷垣 戻ったってずっとそれじゃん(笑)。ずっとその気持ちでしょ(笑)。
藤井颯 うるせーな(笑)。1回思春期あったんだよ。
谷垣 あったの!? うそでしょ(笑)
藤井颯 1回あったんだよ(笑)。シャイにならず、いっぱい話して友達を作ってほしいというアドバイスです。
谷垣 早稲田じゃなくてもね。受験生全員に(笑)。早稲田のやつは特にシャイになっている場合じゃないと。
藤井颯 そう。1回経験しているから。
谷垣 確かに僕もせっかく自由な早稲田と言われている雰囲気で、オープンな人が多い大学なのでかしこまらずに、かっこつけずに交友関係を広げていくのがいいのではないかと。
藤井颯 恥ずかしがっちゃうよね。本当にもったいない。素がおもしろいんだよね。
谷垣 素を出せる人はぜひ、早稲田に。
藤井颯 なんだっけ。なんか言おうとしたな…。忘れちゃった。さっきのもう1回言って。思い出せるかもしれないから。
谷垣 今の? 最初から? 無理でしょ。
一同 (笑)
――改めて王座16連覇がかかる後輩たちに向けてメッセージをお願いします
谷垣 来年は男子も女子も入ってくる子が少ないのかな。今のところそんなに多くなくて、今いる戦力の成長が大きなカギになると思うので、全員で一体となって来年、16連覇をつかみとってくれたらうれしいです。
藤井颯 16。年々積み重なるごとに緊張が大きくなると思うので、もう卒業したから俺たちは関係ないけど、「頑張れ」って思います(笑)
谷垣 いる? その一言(笑)
――最後にお互いに向けて一言お願いします
藤井颯 いやできないですね(笑)
谷垣 (笑)
藤井颯 やるか。なんか優しいが腹立つような言葉を送りたいな。
谷垣 そういうことね。一言ですよね?
藤井颯 難しいね。いける?
谷垣 会えて良かったけど、嫌い(笑)
一同 (笑)
藤井颯 谷垣のおかげで…テニス強くなれたよ。
谷垣 ちょっと腹立つ(笑)
――ありがとうございました!
(取材・編集 臼井恭香、山床啓太)