【連載】新体制始動特集『Next Gen』最終回 嶋﨑徹夫監督

庭球男子

 連載最終回を飾るのは、嶋﨑徹夫監督(平元商卒=神奈川・桐蔭学園)。新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、3月初旬から大会の延期・中止が続々と決定し、庭球部も難しい判断を迫られた。『連覇』を狙う男子部、『奪還』を目指す女子部。部をマネージメントする監督という立場から感じる、選手たちの現状について伺った!

※この取材は3月25日に行われたものです。

「自ら考えて判断して行動して欲しい」

質問に答えてくださる嶋﨑監督

――コロナの影響で大会が続々と中止になってますが、庭球部は現在どのような形で練習を行っていますか

 早稲田大学全体として体育各部は練習を継続している(※3月末に大学側から当面の活動自粛を求められ、庭球部は現在活動自粛中です)と思うので、1日練習できる日は2月と3月は今まで通り練習行っています。6月まで国際大会が中止になって、一部の学生は海外に行ったり、早稲田オープンも3月上旬に予定していたのですが試合そのものがなくなったことが、例年との大きな違いとしてはあります。今は大学各校との対校戦を個別に組み試合をやったり、部内戦をやったりと、練習成果を確認できる場をあえて多めに取って対応しています。早稲田については現時点で4月20日まで授業がないということで、例年よりも2週間以上1日練習する機会が持てたのですが、その分体力面での疲労やけがをするマイナス要素も出てきたので、うまく(コンディションを)整えられるように休みを多めに取る形で対応せざるを得ないのかなと思います。少なくとも最近小さなけがをする選手が出てきたので、強度を弱めるだとか休養を取る形で、いいコンディションに持っていく。ヤマ場は5月上旬にある関東学生トーナメント(春関)の本選なので、その後に早慶戦(早慶対抗試合)も予定されているのでコンディションを整えさせていきたいなと思います。

――現在の4年生の代は監督から見てどのような代ですか

 男子は木元(風哉主将、社4=埼玉・早大本庄)、女子は清水(映里主将、スポ4=埼玉・山村学園)が主将となります。上級生が非常にしっかりしてる代ということで、監督・コーチ陣は上級生が頑張っている印象を持っています。男子は木元が主将なのですが、副将の田中(優之介、スポ4=埼玉・秀明英光)なども自覚を持ってやってくれていると思います。田中はチームの中でもトップクラスの実績を持ったメンバーなので、大学1年の時にインカレインドア(全日本学生室内選手権)で優勝できたのですが、それ以降大きな学生大会でタイトルをシングルスでは獲得できてないので、上級生として『真のエース』になることがチームとして非常に重要です。ライバルの慶應も今村(昌倫、4年)君、羽澤(慎治、3年)君、さらに新人の藤原(智也、1年)君と層が厚いので、エースが2人できれば3人ということで、エース級に全員が勝てる形をつくっていきたいと思います。新2年生の白石(光、スポ2=千葉・秀明八千代)の最近の活躍は目覚ましいのですが、上級生が『真のエース』となりチームを引っ張ってくれることが大事かなと思います。それ以外にトップクラスには千頭(昇平、スポ4=愛知・誉)もいますし、彼はジュニアの頃から活躍しておりプロを志望しているということで、学生大会で優勝できるように頑張って欲しいと思います。

――女子部の方はどうでしょうか

 女子は清水が主将で、昨年の全日本選手権ではベスト8に進んだということで、主将としての全体マネージメント。あと個人の戦績についても『真のエース』は自分であるという意識を持ってやってくれていると思います。去年女子は王座(全日本大学対抗王座決定試合)を落としているので、そこはこれからの学生大会で大きな活躍を。エースとしての自覚を持てば勝てると思うので、この調子で頑張って欲しいと思います。最上級生では下地(奈緒副将、社4=沖縄尚学)と倉持(美穂副将、商4=東京・早実)についても清水が海外遠征でいない間に主将代行をしてもらう場面が多いのですが、その中で自分のテニスだけでなくチームマネジメントについて、誰が主将になってもおかしくないくらいリーダーシップを取ってやってくれていると思っています。3年生以下も頑張ってくれているのですが、最上級生の3人が今後リーダーとして引っ張っていくことがチームの勝利に結び付くと思っています。

――男子部は『連覇』、女子部では『奪還』を目指していく中で、最上級生以外で鍵となってくる選手はいますか

 男子の方だと新2年の白石が、ここ最近の大会でインカレ(全日本学生選手権)チャンピオンの今村君や羽澤君など各大学トップクラスの選手に全部勝ってきているので、今彼が大学ナンバーワンと言っても過言ではないと思ってます。今度の春の関東学生トーナメントやインカレ、リーグ(関東大学リーグ)、王座で勝って初めてのエースだと思うので、活躍してもらうことを大いに期待しています。新2年の丹下(将太、教2=東京・早実)についても新進(関東学生新進選手権)で優勝と、初めてのタイトルを獲得できたことは大きいと思います。それ以外の対校戦でも他校のエースクラスに勝ててきているので、そこの成長はチームの戦力アップに大きくつながったと思います。あと新2年の小久保(蓮、スポ2=愛知・名古屋)も同じクラスの選手には絶対負けない強さを持っていますから、期待できる選手だと思います。あと新1年生で結構入ってきたのですが、アスリート選抜入試の池田(朋弥、スポ1=愛知・誉)や高畑(里玖、社1=兵庫・相生学園)は今すぐ団体戦に出しても勝てる強さを持っている選手なので、伸びていって欲しいなと思います。ダブルスという意味では新進でベスト4に入った畠山(尚、スポ3=神奈川・湘南工大付)・増田(健吾、社2=東京・早実)組。ダブルスは団体戦の鍵になるので。最近ダブルス3に出させてかなり勝てるようになったので、ダブルスという観点では今後その二人がさらに伸びていくことがチームの鍵になってくると思います。現状に満足せず、頑張って大学テニス界のダブルスのエースになって欲しいと思います。女子は新2年の吉岡(希紗、スポ2=三重・四日市商)です。清水の背中を追ってくれていると感じることが多く、こないだの島津全日本室内選手権でもプロに勝ったりと、本戦に上がったりしているので実力を付けているなと感じます。より高いレベルに行くためのチャレンジも始めたので、早稲田の次のエースとして彼女に期待したいと思います。あと今の新2年の安藤(優希、スポ2=東京・日出)、石川(琴実、社2=東京・白鵬女子)、押川(千夏、社2=福井・仁愛女子)、渡邉(早和子、社2=愛媛・新田)は横一線。関東の学生の中でも中位以上にはきている感触は持っているのですが、それではまだ物足りないと思っています。今言ったメンバーの中からより上位に上がる選手が1、2名出れば、チームとしてもかなり戦力が保ったことになると思います。松本(妃那、スポ3=福岡・柳川)、田中(李佳、スポ3=兵庫・相生学院)は万全でない部分もあり、奮起を促したいと思います。新1年生では高校でトップクラスだった神鳥(舞、スポ1=東京・早実)が入ってくるので、彼女がさっき言ったメンバーを押し除けてシングルス3に入れれば、それはさらなる戦力拡充につながると思います。

――他大と対校戦を組んでいく中で、収穫はありましたか

 男子は今年卒業したメンバーが団体戦のダブルスの中心だったので、今まで出ていなかったメンバーをダブルスに出すことになるので、3本取るためにはどのようなメンバーがいいのか。どういう形で戦うのか試行錯誤している段階です。畠山・増田組にめどが立ってきたり、その上位についても他校の強豪ペアに勝てるようになってきたことが収穫かなと思います。シングルスは比較的メンバーが揃ってきているので、昨年まで下位で出てたメンバーが上位で出たらどうなるのか。丹下とかは他校のエースにも勝ち始めたので、そういった新ペアや新戦力がどこまで通用するのか。チームの戦力としてなってくるのかを確認できつつあるのは、収穫かなと思っています。逆に女子は対校戦をやった中で、関東の中堅クラスの新2年生が他校の上位とやると厳しいという結果も突きつけられたので、底上げやもう一回レベルアップするためにきちんと整理して、取り組んでいきたいと思っています。リーグまではまだ時間があるので、その中で底上げを図っていく必要があると認識しました。

――監督自身は、現在どのような形で指導をされているのですか

 今監督という立場で私がおり、それ以外に石井弥起ヘッドコーチがいて、松崎コーチ、丸山コーチ、長塚コーチ、藤岡コーチ。あとトレーナーの小黒コーチ、管理栄養士の山口コーチと8名がいます。技術のコーチが5人いて、コンディショニングコーチ1人、管理栄養士1人とチームが勝つためのスタッフは揃っている中で、私自身は各コーチの良さを引き出せるように適材適所で配置するとともに、各個人が最大限の能力を発揮できるような全体マネージメントを考えるようにしています。それと全体を見ることが私の仕事です。いい人も目立ちますがもっと頑張って欲しい人もいるし、体調や調子が良くない人もいるので、課題や問題があった人を個別にフォローするのが自分の役割だと考えています。

――早大の学生が中心となって企画する早稲田オープン(早稲田大学インターナショナルオープン)が2月末に延期(3月末に中止)となりましたが、そこまでの流れについてお聞きしてもいいですか

 今回三菱電機さんがスポンサーとなることが最後になることが決まっている中で、集客数を増やそうということで1000人を目標にしていました。目標を達成するためにはもう少し広報を頑張ろうということで、従来のポスターを作っての周辺テニスクラブの告知だけでなく、YouTubeを使い認知度を上げようとしました。テニスファンの方たちがYouTubeを見られてもいるので、そういう人たちに早稲田オープンの取り組みを知ってもらおうということです。今の準備状況や、どういうことに困っているのかについてをオープンにYouTubeに載せたりとしたことで、いろいろな方から早稲田オープンがあるということの認知が少なからず上がってきたのかなと思っています。新しい広報のやり方を立ち上げたことについては、新たな取り組みは難しかったのですが学生が対外部に頼むという意味では、どのような効果を狙っているからやりたいのだということを資料を作って説明する部分では、学生も立派な資料を作っていたので、すごい頑張ったなと印象を持っています。そう言った意味では、残念ながら中止になり効果が十分に発揮できない、その可能性が高いのですが…。学生が取り組めば、かなりできることが分かったと思いますし、本人たちも難しさを知った上でやってみてやり方やを今回つくってくれたので、来年以降やり方を継続して是非やって欲しいと思います。

――今は来年に向けて動かれてるのか、それとも中止の処理活動を現在はされているのですか

 現時点では延期の開催もあるのですが、学生大会の開催も不透明な状況の中で先に国際大会を決めてやることはできないので、学生大会の日程が決まってから決めようと思っています。国際大会は6月の第二週まで大会を全面中止という方針が出ているので、そこまで国際大会ができない。6月や7月に早稲田オープンを移動するとインカレ前の開催になってしまうので、やろうと思えばできるのですが、学生大会への準備を怠ってしまうことになるので、正直開催が厳しいのが現状です。

――(最後に)今年一年部員に期待することはありますか

 男子部も女子部も一緒なのですが、早稲田は自由な大学だと私は思っていまして、自ら考えて判断して行動して欲しい。この6年間、部に関わっていく中で自分の考えは変わらないと思います。その中で従来からのいい伝統を引き継ぐことも大事なのですが、時代が変わる中で新しいことをやっていって欲しいなと思います。学生のスローガンも『革新という伝統』ということを掲げているので、前例踏襲でなく新しいことにどんどん挑戦する。うまくいかないこともあると思うのですが、チャレンジをすることと試行錯誤して良いものを見つけることが大事だと思います。革新という言葉は大事だと思うのですが、言葉だけでなく日々の行動に移していって欲しいと思います。

――ありがとうございました!

(取材・編集 大島悠希)

◆嶋﨑徹夫(しまざき・てつお)監督

平成元年商学部卒業。神奈川・桐蔭横浜高出身。昨年より土橋登志久前監督(平元教卒=福岡・柳川)の後を受けて、監督に就任。土橋前監督時代も、監督補佐として精力的に部に貢献されてきました!