第1回は統括という立場で三菱電機・早稲田大学インターナショナルオープン(早稲田オープン)の運営全体を指揮する加藤翼(社2=和歌山・慶風)と長倉謙伸(スポ2=静岡)のお二人。ここまでの準備期間における大会の裏側、彼らの思う大会の魅力、そして統括として、大会成功にかける思いを伺った。
※この取材は3月1日に行われたものです。
「テニスの面での相乗効果も感じられる」(加藤)
統括の仕事を経験し、テニスの面でも成長を感じるという加藤
――統括とは具体的にどう行ったお仕事をされているのでしょうか
長倉 内容としては主に特別協賛の三菱電機さんをはじめとして協賛していただいているムトウユニパックさんや大塚製薬さんといった企業の方に、僕らとOBの方で挨拶に行くことと、それ以降の企業の方々との対応ですね。パンフレットに広告を出してもらっている企業の方とのやりとりが主な仕事になっています。
――運営の全体を見るという役割もあると思いますが、その部分ではいかがですか
長倉 これから大会期間に入ると役職ごとに指示を出したり、全体を見ることがメインとなってくると思います。これまでも全体の仕事を促進させることはしてきました。
――統括に決まった経緯というのはどういったものだったのでしょうか
加藤 例年男女1人ずつ、山田(菜津子、文構2=石川・大聖寺)、加藤でやる予定だったんですけど、山田が副務だったので。副務と統括となると仕事が多くなってしまって厳しいので、山田は降りることになって。それで長倉がやることになったんですけど、長倉も蓋を開けてみると副務になっていて(笑)。
長倉 そうなんですよ。副務をやるとは全然思っていなくて、「じゃあ統括やるよ」って言ったらうっかり、なんか、藤井竣介(商2=愛知・昭和)から「副務をやってくれ」と頼まれて(笑)。
――副務と統括となるとやはりお仕事の方は大変ですか
長倉 まあ大変ですね。あと稲門会の副務の方もやっていて、3つ掛け持ちしているんですけど。掛け持ちしているから大変だと思われて、割と統括の仕事は加藤が、副務の仕事は山田がやってくれるんですよね(笑)。なので意外とできなくはないなといった感じですね。非常に助けられています。
――統括としてはいつ頃から動き出していますか
長倉 王座が終わった9月、10月あたりですね。徐々にそのぐらいから前年度統括の佐藤さん(祥次、スポ3=大分舞鶴)からお話を聞いて、できるところからスタートしました。
加藤 最初なにやったっけ?
長倉 ITF(国際テニス連盟)の日本テニス協会の担当の人にパクトシートっていう大会の概要みたいなものを提出しました。そのあとは挨拶文の作成だったり、名称が去年から変わったので、最初は名前はこのままでいいのかっていう段階から始まって。結局変えましたね。
――『三菱電機・早稲田大学フューチャーズ国際トーナメント』から『三菱電機・早稲田大学インターナショナルオープン』に名称が変更となった経緯というのは
加藤 『フューチャーズ』っていう名前を使ってはいけないとテニス界で決まったらしくて、それでヘッドコーチの弥起(石井)さんやOBの方に相談して、大会名を変更しました。
――内容的に変わった部分というのはあるのでしょうか
長倉 制度が変わって、予選の数が減って日程がちょっと短くなって。ただ運営として僕らがやることは特に変わってはいないですね。
――統括の仕事をする上で苦労した部分などはありますか
加藤 名前が変わって、企業の方に説明をするのが結構難しくて。例年だったら「今年もよろしくお願いします」ってなると思うんですけど、まず「名前が変わったね、なんで?」と言われることも多くて、そういうところから説明するのを、OB、OGの方に手伝ってもらって、自分たちもできる限り説明するっていうことには苦労しましたね。
長倉 やっぱり偉い方との連絡のやりとりというのは大変ですね。ちょっと日本語が苦手なので(笑)。丁寧な言葉遣いとかわからなくて、ネットとかで調べながら(笑)。ただ勉強になりますね、「ご足労」とか(笑)。
――統括という立場から見て、ここまで運営全体の動きとしてはいかがですか
加藤 そうですね、いつも準備は早くしていこうって毎年なっているんですけど、今回も今となってバタバタしている面もあって、そこは少し余裕を持ちすぎていたかなと反省しています。
長倉 やっぱり、遅いですね(笑)。ちょっとギリギリな部分が多いですね、どの役職も。僕らがちゃんとやるように言っていなかった責任もあるんですけど。
――開幕1週間ほど前ですが、大丈夫そうですか
長倉 大丈夫だと思います。なんとかなると思います(笑)。
加藤 大丈夫かな?
長倉 大丈夫。なんとかなります(笑)。
――今大会、例年と比べてグレードアップした部分はありますか
加藤 今年制度が変わって、この制度では初めての大会なので、選手のレベルが上がっていると思います。最初なので、選手たちもどのくらいのレベルの人が出て、どのくらいのレベルの人が出ないのか、出なきゃわからない部分もあると思うので。エントリーリストを見ると昨年よりもレベルが上がっているというのがわかると思いますね。
長倉 テニス全体の制度が全世界で変わって、本当はATPポイントっていうのが取れる大会だったんですけど、今年から取れなくなって。なので、そのさらに下にトランジションツアーっていう括りができて、トランジションポイントっていう新しいポイントが取れる大会になっています。そのポイントを取って、チャレンジャーに出る資格をもらえる仕組みになっています。なのでグレードとしては下がったと思われるんですけど、レベルとしては最初なので上がっていると思います。
加藤 来年以降はわからないんですけど。
――統括のお二人のコンビネーションはいかがですか
加藤 男女でやるよりは男子同士で同期なので、気楽にコミュニケーションは取れると思います。
長倉 ただやっぱり華がないので・・・(笑)。そこはちょっと厳しいですね。
――統括として力を入れているポイントなどはありますか
長倉 新しくAgStyleさんっていうテニスの動画を撮ってくれる人たちにお願いして、試合を撮ってもらってYouTubeに載せてもらえるので、配信の面では良い試合を良い画質でお届けできるようになりました。準決勝、決勝は自分たちでライブ配信もします。
加藤 やっぱり、僕ではないですけど、早大の選手にはなるべく頑張って欲しいですね。島袋さん(将、スポ3=三重・四日市工)だったり、田中(優之介、スポ2=埼玉・秀明英光)や千頭(昇平、スポ2=愛知・誉)は出ると思うので、頑張って欲しいですね。
――他大学でも国際大会を運営している大学がありますが、意識する部分はありますか
長倉 僕は特に(笑)。あまり意識していないですね。
加藤 慶大とか亜大とかにはお互いに審判の派遣に行ったりもしていて。チーフの本多映好(スポ2=岩手)が「こっちは何日に行くから何日に来て」みたいに連絡を取ってやっていますね。
――今大会早大ならではの特長などはありますか
加藤 インドアのコートが毎年選手の控え室と言いますか、選手がいる場になっていて、そこで選手同士が楽しそうに会話をしたり、部員たちが外国人選手とコミュニケーションを取ったりというのがあるので。僕たちにとっては身近にプロの選手と触れられる機械ではありますね。
長倉 毎年ウェルカムパーティもインドアのコートでやっていて。お菓子とかコーヒーとか毎日置いていて、あと出前も取れます(笑)。去年自分トーナメントデスクをやっていて、外国人選手から結構好評でしたね。
――外国人選手は出前でどんなものを頼まれることが多いのですか
長倉 外国人選手は丼モノが多かったですね。
加藤 出前の手配とかも全部学生運営でやっています。
昨年の様子。インドアのコートが解放され、選手たちがコミュニケーションを取れるのは大きな特長のようだ
――海外の選手と関わる機会も多いと思いますが、その点に関して工夫している点などはありますか
加藤 僕らだったら外国人選手からメールが届いたりして、例えばビザの申請を手伝ってくれっていう内容だったりが届いて。国際交流かはわからないんですけど、英語が全然わからないので、Google翻訳を使って(笑)。それでなんとか対応したりしていますね。日本とは違って、「Hi!」みたいな感じですね。
長倉 去年は藤井颯大(スポ2=京都・同志社国際)が英語を喋れるので、ブログの担当が手伝ってもらって、外国人選手にインタビューとかをしていましたね。
加藤 彼(藤井颯)は帰国子女で結構しゃべれるので。日本語の方が怪しいレベルですね(笑)。
――学生が運営することの意義であったり、早大庭球部にプラスになる部分というのは何か挙げられますか
加藤 他の役職でも新しく新一年生が入ってきて、この早稲田オープンを手伝ってもらったりしているので、そこでの交流もこの大会を通じてできますし、今まであまり関わりのなかった部員同士も同じ役職になって親密になることもあると思います。
長倉 僕ら統括は企業の方とのやりとりであったり、社会に出て役に立つことをやらせてもらえて、すごく成長できていると感じます。
加藤 僕は自分から統括をやってみたいと思っていて。就職とか全然考えていなくて、どういう職に就きたいとかもあまりないんですけど、こういうのをやってみるっていうのも初めてで、せっかくの機会なので、良い経験になると思ったのでやってみたいと思いましたね。上の人とのやりとりであったり、そういう面では成長していると思います。テニスもちょっと忙しくてあまりできていない時期があったんですけど、新進(関東学生新進選手権)で初めて関東学生に上がれて。テニスの面でも成長を感じるので、テニスの面との相乗効果もあったんじゃないかなと思います。
長倉 忙しいと逆に色々とうまくいくっていうのは感じますね。
「『歴史に残る大会』にしたい」(長倉)
多忙ながらも統括の仕事をこなしてきた長倉
――早大の庭球部にとって、今大会を開催するメリットというのを感じる部分はありますか
加藤 身近にプロの選手を見るとモチベーションが嫌でも上がるというか。長い試合をやって、18時とかになってもそのあと各自で自主練をしたりっていう風景も見られるので、モチベーションが上がるっていうのはプラスになるポイントなのかなと思います。
長倉 この大会を開くことでOBの方々に協力してもらうことも多いので。あまりOBの方とつながる機会もあまり多くないので、見にきてくれたOBの方に挨拶したりすることでもつながれるっていうことで、そういった人間関係が庭球部員の今後につながっていけばと思っています。
――今大会はどんな人に見に来てもらいたいですか
長倉 OBの方以外でもテニスに興味のある人は誰でも来て欲しいですね。観客がたくさんいればいるほど盛り上がりますし。
加藤 先日の新進の決勝も予想以上に人がいたので、あれ以上は目指したいですね。
――多くの人に会場に足を運んでもらうために取り組んでいることなどはありますか
加藤 3月3日に東伏見のダイドードリンコアイスアリーナでイベントがあるらしくて、そこに東伏見商栄会の人と連絡を取ってビラ配りをさせてもらって、一言言わせてもらう機会も設けてもらえるそうなので、そこでもアピールしたいと思っています
長倉 ポスターとかは色々なところに配ったり、貼ったりしていますね。
――早大の選手とのヒッティングイベントや石井ヘッドコーチによるコーチングイベントもあるそうですね
長倉 そうですね、学生のトップの選手たちと打てるイベントと、石井コーチのクリニックと、キッズ向けのイベントの3つを行う予定ですね。
加藤 去年とかは好評で、定員オーバーで。毎年人気と聞きますね。
――テニスをやっている人にとってはそういったイベントは魅力的ですよね
加藤 そうですね、学生トップの選手と打てる機会っていうのは貴重だと思うので。僕らでもそんなにないので(笑)。
――開幕間近に控えていますが、現在の心境や大会に向けての抱負などはありますか
長倉 統括になった時に、加藤と「歴史に残る大会にしよう」と誓ったので(笑)。口だけそういうことを言っていたので(笑)。統括として、みんなに「いい大会だった」って言ってもらえるように、できる限りの事はやっていきたいですね。
加藤 やっぱり1週間前になって、不安というか、何かできることはないかと思っているんですけど、もう1週間しかないので。今からでもできることがあればどんどんチャレンジをして、『歴史に残る大会』にしたいですね。
――今からチャレンジできそうなことは何かありますか
長倉 ちょっと今ある仕事で精一杯ですね(笑)。
加藤 線審がちょっと人数が足りなくて、近い大学とかに声を掛けようとしている段階で。向こうとしても身近にプロだったり早稲田の選手たちと交流を取れるっていうのはいい経験になるんじゃないかなと思っているので、それを実行しようとしているところですね。
――今大会の統括という役職はご自身の中でどういった位置付けで捉えていますか
長倉 統括として大会を運営するっていうのは貴重な体験ではありますしこういう経験を通してテニスにもつなげられたらいいかなと思っています。忙しいと逆に物事がうまく運ぶって感じているので、意外といろいろやっていた方がいいなと思うので。今大会が終わっても、色々なことにチャレンジしていきたいなと。でもやらないなと(笑)。これを機にいろいろチャレンジしていければいいかなと思います。
加藤 僕は統括という仕事を降りてからも、今佐藤さんにいろいろ教えてもらっているように、来年の引き継ぎだったりと統括としての内容は続くと思うので。僕は統括以外にも庭球部のITと広報もやっていて、そこを今後は自分から積極的に忙しくしていって、テニスも向上させていきたいと思いますね。
――統括という立場から見た今大会の見どころは何かありますか
長倉 本当は学生に主審をやってもらって、そこを見どころと言いたかったんですけど(笑)。やっぱり早大の選手の活躍は一番見て欲しいですけど、僕ら運営も人数少ないながらも頑張っているので。グッズは今回結構関わっていて、今年はアシックスさんの商品で全てそろえているので、そこは売り切りたいですね。
加藤 僕の見どころは、僕の同期の千頭くんがすごくワイルドカードが欲しいというアピールがすごいので、弥起さんが基本的に決めるんですけど、出場して、優勝して欲しいですね(笑)。彼の活躍は期待したいですね。プレーもファイターなので。
――最後に、この記事を読んでいる方にメッセージをお願いします
加藤 僕今回これが初めてのインタビューで、早スポデビューなんですけど、今後はテニスの結果の方でもデビューできるように、春関(関東学生トーナメント)の方でも楽しみにしておいてください!
長倉 今回は統括としてこうやって記事に出させてもらって。今は庭球部の副務と稲門会の副務をやっているので、来年は主務を目指してがんばりたいと思います(笑)。今、藤井竣介くんが主務をやっているんですけど、彼の座を奪えるように、副務の仕事頑張っていきたいと思います!
――ありがとうございました!
(取材・編集 石﨑開、林大貴)
開幕まであとわずか!大会の成功へ向けて尽力します
◆加藤翼(かとう・つばさ)(※写真右)
1998(平10)年5月29日生まれ。和歌山・慶風高出身。社会科学部2年。今回の取材が『早スポデビュー』になったという加藤選手。大会の統括の経験を経て、テニスの面での躍進も狙います!
◆長倉謙伸(ながくら・けんしん)(※写真左)
1998(平10)年7月11日生まれ。静岡高出身。スポーツ科学部2年。「主務の座を奪う」と宣言した際、同じ部屋にいた藤井竣選手は余裕の笑みを浮かべていました。主務の覇権争い(?)からも目が離せません!