早大が誇るWエース、島袋将(スポ3=三重・四日市工)と千頭昇平(スポ2=愛知・誉)の二人と、彼らを支える4年生の町田亮副将(スポ4=福岡・柳川)が第4回に登場。関東大学リーグ(リーグ)では中大戦、慶大戦で最後の一本まで勝敗の決まらない大接戦となったが、そこで勝利をもぎ取ったのが島袋と千頭だった。しかし、その勝利にはサポートの町田の存在が不可欠だったと口をそろえる。大熱戦の裏側から普段の交流、そして王座に向けた意気込みまでたっぷりとお話を伺った。
※この取材は9月26日に行われたものです。
「(町田さんは)時に優しく、時に厳しい」(島袋)
同じ寮で生活する3人は普段から仲がいいそう
――まず、町田選手は4年目にして対談取材初登場です。後輩お二人から、どのような先輩か紹介してください
一同 パチパチ(拍手)
島袋 時に優しく、時に厳しいといった感じですね。
千頭 島袋さんがうまく言ってくれたんですけれども、真面目なのか真面目じゃないのか、真面目な面と不真面目な面、2つありますね。
――何かエピソードはありますか
島袋 すぐふざけちゃうんですよ(笑)。けどスイッチが入ると固くなるというか、真面目になりますね。
――テニスのことになるとスイッチが入るのですか
千頭 いや、テニス不真面目ですよ(笑)。
一同 (笑)。
――では今度は町田選手が後輩お二人を紹介してください
千頭 怖いなぁ(笑)。
町田 じゃあまずは島袋から。島袋は・・・ギャグセン(ギャグセンス)が高いですね。しゃべっていてもポンポン面白いことが出てくるんで、すごいところだなと思います。話が聞きやすくて面白い。これは部員みんなが思っていて、ただテニスが強いだけではないですね。
島袋 どこがや(笑)。全部真逆やろ(笑)
――千頭選手は
町田 千頭君は精神的にまだ、中学校1年生ぐらいです・・・(笑)。でも、テニスに対してはすごい真面目です。真面目過ぎて、完璧を追い求め過ぎてしまうというか。良さでもあり、これから改善していってほしい部分でもありますね。
島袋 なんで僕のことは褒めてくれないんですか>
町田 めっちゃ褒めたじゃん。話が聞きやすくて面白い。
――ここの三人は普段から仲がいいのですか
島袋 寮が一緒なんですよ。一人部屋なのでずっと一緒にいるというわけではないんですけれども。
町田 千頭とは同じ3階なんですけれども、めっちゃ僕の部屋にちょっかいをかけてきます。
千頭 いつも(町田選手の部屋の前を)通るので、サーって音立てて通ってみたり、ドンドンってドア叩いて逃げたりとか(笑)。
町田 あと僕の部屋の前にごみを置いていくんですよ。
島袋 たち悪(笑)。
千頭 ちゃんと部屋にごみ箱はあるんですけれども、自分のごみにするの面倒くさいなって思ったら…。
町田 これが中学校1年生と言われる所以(ゆえん)ですね。
――他に仲のいいエピソードはありますか
町田 島袋とは部屋でゲームしたりします。
島袋 僕の部屋にプレイステーション4があるので、それでたまに「やろうぜ」ってラインがきて。
――どんなゲームをされるのですか
島袋 サッカーです。『ウイイレ(ウイニング・イレブン)』ですね。町田さん弱いんですよ。
町田 いやこの前は俺が勝ったじゃん!この前3試合やって僕の2勝1引き分けだったんですよ。
千頭 あと僕は島袋さんとは地元が近いです。
島袋 そうなんですよ。僕と千頭は小学校くらいから戦っていて、大学に入って初めて同じチームになったという感じですね。
――では入学前からお互いのことをよく知っていたのですか
島袋 知っていましたね。今もなんですけれども、ずっと僕のことをナメていますね(笑)。
千頭 (笑)。
――関東大学リーグ(リーグ)後のオフは何をされていましたか
島袋 僕はケガしていたので治療しつつ、映画を見たり、外でご飯食べたりとかしていましたね。
――映画は何を見ましたか
島袋 『アントマン(アントマン&ワプス)』です。僕(前作の)1は見ていなくて話が飛んでいたんですけれども、(続編からでも)面白かったです。
――『平成最後の夏』ということで、この夏の思い出は何かありますか
島袋 僕はアジア大会(アジア競技大会)でインドネシアに行ったことですね。それでメダルを取れたことが一番の印象的なことかなと。それ以外は海も行っていないですし、花火も見ていないですね。でも、あとバーベキューしましたね。それくらいです。
――インドネシアでの思い出はありますか
島袋 僕8月はほとんどインドネシアにいて。アジア大会が始まる前の2週間くらいも千頭といたんですけれども、その時に卵があたったんですよ。それで熱出して、結構きつくて。それなのに同部屋だった千頭が、(千頭選手の)試合前にスピーカーで音楽をガンガン部屋中に流し始めて。僕それのせいで寝られないんですよ!そこからこいつは部屋でトレーニングし始めて、歌い始めて。それはイラっとしましたね(笑)。それ以外は楽しく過ごせましたけど。
千頭 (爆笑)。
町田 お前ら絶対同じ部屋になっちゃ駄目だよな(笑)。
――千頭選手はインドネシアでの思い出はありますか
千頭 僕はほとんど毎日島袋さんのいびきに悩まされていましたね(笑)。でもそういう何気ない日常を送れているのが幸せですかね。何事もなく日常を送ることができたのが平成最後の思い出ですね。
――インドネシアでは試合以外でどこかに行かれたりしましたか
千頭 つぼ八行きました。
島袋 ショッピングモールにあった日本食チェーン店の。ホテルにご飯が付いていなくて、つぼ八にほぼ毎日通っていました。そこの日本人の店長と仲良くなって、色々サービスしてくれましたね。
――町田選手はゼミ合宿には行かれましたか
町田 きのうおとといと秩父に行ったんですけど、そこでラフティングして。ラフティングめっちゃ楽しかったです。川を下ったんですけれども、結構激しい波で。めっちゃ楽しかったです。でもそれ以外は特に何もできなかったので、僕の夏休みは王座が終わって(引退して)からですね。どこでもいいから海外に行きたいです。インドネシア以外の(笑)。あとはバイトしてお金を貯めて、後輩たちに奢ってあげたいなと思います。
一同 おー!
町田 インカレインドア(全日本学生室内選手権)もちゃんと応援に行くので、後輩たちには頑張ってほしいです。
島袋 その頃にはお金貯まっていますね。
大熱戦の裏側
早慶戦でチームの応援に応える千頭
――それでは本題の方に話を移します。町田選手と千頭選手は夏の個人戦を振り返ってみていかがですか
千頭 「(自分)出てましたっけ?」みたいな感じの成績ですね。インカレ(全日本学生選手権)はベスト32で…。ファイトといいますか、どうしても勝ちたいという思いがなかったですね。リーグで法政と当たった時も自分が調子悪いのは確かだったんですけれども、本来の自分ならそんな中でもなんとかして勝とうと思っていたはずだなと思います。でも色々考えて最後に逸崎君(凱人、慶大)と対戦した時は最善を尽くせて。今はすっきりしましたね、モヤモヤしていたものがなくなって。すっきり終われた夏でした。
町田 僕は4年生なので最後の大会だったんですけれども、インカレも夏関(関東学生選手権)も1回戦で負けて、納得いく終わり方ではなかったかもしれないんですけれども、それも含めて自分の実力だったんだと思って。逆にそれからチームのために何かしっかりできることを、と考えられるようになりましたし、インカレに行く前にこっち(東京)で練習試合をしたんですけれども、島袋にも千頭にも勝っていたので、記憶に残る選手になれたと信じています(笑)。
――島袋選手はフューチャーズに続き、アジア大会にも出られました
島袋 フューチャーズはシングルスは思うように勝てなくて。ダブルスで上杉さん(海斗、江崎グリコ)と組んでフューチャーズのタイトルを取れたっていうのはすごいうれしかったですし、アジア大会前ということで勢いをつけられたかなと思います。アジア大会は、ベスト4に入れたのは運が良かったというのもあるんですけれども、準決勝のもうちょっとのところで勝てたと思うと悔しいです。けれども強い相手にもしっかりと戦えるんだなと強く感じた大会でした。
―疲れはありましたか
島袋 移動は疲れましたね。インドネシアは飛行機で7時間ぐらいかかったので結構疲れました。
――移動疲れがコンディションに響いたりなどは
島袋 それはないですね。向こう着いてからしっかり休憩も調整もできたので。プレーには影響全くなかったです。
――インカレ後リーグまでどんな練習をしていましたか
島袋 僕がいなかった分、ダブルスの練習が多かったですよね。
町田 そうだね、島袋が戻ってきてからはダブルスをしっかりやってましたね。
島袋 シングルスに出る選手はシングルスの練習もやってと言う感じで。齋藤さんとのペアリングを試したりもしました。
――リーグを迎えるにあたって不安はありましたか
町田 インカレの結果は去年と比べたらよくはなかった、シングルスのタイトルを獲れなかった、ベスト4には入りましたけど主力が16を前に負けたというのもあって、他大学の方が力をつけているなという不安はありましたね。
――結果としてリーグは全勝優勝となりました。結果から振り返っていかがですか
町田 正直運にも味方された優勝でしたね。もう一回やって優勝できるとはっきりとは言えない結果だったと思います。
――島袋選手は特に印象に残っている試合は、やはり中大戦でしょうか
島袋 中大戦は自分に懸かっていて、本当に追い込まれていたので、望月との試合は本当に雨に救われたなと思います。これも運ですよね。すごく悪い流れだったときに雨で次の日に順延になって、そこで自分自身気持ちを切り替えることができて、勝つことができたと思います。
――プレッシャーはやはり大きかったですか
島袋 色々頭のなかによぎって、リーグもここ何十年と負けていなくて、ここで負けたら次の慶應戦も厳しくなると。最後の方は本当に色々よぎっていたんですけど、それを気にしていてはダメだと思って、仲間の応援と一丸となって戦えたのが良かったと思います。
――町田さんはベンチから見ていていかがでしたか
町田 順延になって次の日のプレーは、本当に勇敢だったと思います。相手も相手でプレッシャーがあったと思うんですけど、島袋の方が大きなプレッシャーが懸かっているのは間違いなくて、その中で一球一級やらなきゃいけないことをしっかりやれていて、諦めずに戦っていたのが本当に良かったと思います。ベンチにいながらすごくそれを感じたので、チームとしてもすごくうれしかったですし、島袋という一人の選手の成長が間近で見れて本当にうれしかったです。
島袋 ありがとうございます(笑)。
――次の慶大戦では羽澤慎治選手(慶大1年)と対戦しましたが、振り返っていかがですか
島袋 完敗でした。振り返ってもなにもないくらい、完敗でした。本当に何もできなかったので、王座では借りを返せるように、約二なにもさせないくらい圧勝したいと思います。
千頭 あの、きょう夢で島袋―羽澤が試合してるの見て、島袋から6-1、6-0でした!
――それはすごい!正夢になるといいですね
島袋 夢にまで出てくるなんて、そんなに俺のこと思ってくれてるんやな。
町田 夢に出てくる人って忘れそうな人らしいよ。
島袋 おい!
一同 (笑)
――千頭選手はリーグで印象に残っている試合を挙げるとするとどの試合になりますか
千頭 法政の岡垣戦と最後の早慶戦ですね。岡垣との試合は団体戦としても個人戦としても絶対にやってはいけない試合をしてしまった(S2●千頭2-6、0-6岡垣光祐(法大2年))というか、本当に試合を捨てたと言われてもおかしくないような試合をしてしまって。本当は何とかしないといけないところなのに、「きょうは調子が悪い、打っても入らないしどうでもいいや」って思ってしまっていました。その日の夜にすごく考えていたらモヤモヤしてきて、「俺ってこんなヤツだったけ」って。「こんなにすぐに投げ出す人じゃないだろ」って。テニスの問題じゃなくて心の問題、気持ちの持ち様が絶対大事だなと思って、いろいろ悩んでいたんですけど、そこで助けてくれたのが今隣にいる町田さんでした。町田さんが、「お前は最善主義者だ」って言ってくれたんですよ。ね?
町田 もっとちゃんと説明したよ(笑)。『今ある制約の中で、最善を尽くす』っていうこと。
千頭 他にもいろいろ教えてもらって、でもその中で一番この言葉が心に残っています。中央戦は出なかったんですけど、弥起さんに練習しとけよって言われて、慶應戦は出ることになって。最後はまさに最善主義でしたね(S2〇7-6(5)、3-6、6-2逸﨑凱人(慶大4年))。
――途中で足をつりながらも、気迫を感じました
千頭 (島袋選手を横目に)隣のコートの試合がすぐに終わってしまって・・・
島袋 すまんって(笑)。俺も弥起さんに、「千頭に少しでもパワーを与えるために1ゲームでも多く戦え」って言われてました。
千頭 まあそれで僕に勝敗が懸かることになったんですけど、楽しかったですね。
――町田さんは千頭選手の試合を外から見ていていかがでしたか
町田 最善主義っていう言葉には、千頭は調子が悪い時でも悪いなりにどうにかできることで勝負してほしいっていう思いを込めて伝えたんですけど、まさに逸崎戦ではそれができていたと思います。(千頭選手は)あの試合も万全の調子ではなかったと思うんですけど、一球でも多くコートに入れる、走る、声を出す、足をつってしまってからはスライスでもいいからどうにかコートに入れて相手の嫌がるところを突くっていうことができていたので、千頭昇平は最善主義者だと改めて思いました。
――やはり団体戦ではベンチコーチが重要になってくるのでしょうか
島袋 そうですね、僕は町田さんから、テニスの面だけでなくメンタル面のアドバイスもいただいてます。
――ベンチコーチはどのように決定するのですか
町田 希望を取る感じです。
千頭 僕は小林紀輝(スポ4=千葉・秀明八千代)って人に、風呂場で相談して決めました(笑)。
――島袋選手はどうして町田さんを選んだのでしょうか
島袋 まずは信頼を置いてる人ですね。あとは固すぎず、でもふざけすぎない人がいいなって。
町田 まさに、俺だ・・・
島袋 最近ちょっとふざけが過ぎてるんですけどね(笑)
「4年生のためにと思ってくれているこんなにかわいい後輩たちがいるので、少しでもそれに応えられるように」(町田)
中大戦で勝利後、島袋(左)と抱き合って喜ぶ町田
――リーグを終えて、率直な感想はどのようなものでしたか
町田 危機感の方が大きかったと思います。中央、早慶戦とギリギリで勝って手放しでは喜べない状況で。すぐ先に王座がありますし。
――現在チームはどのように進んでいますか
町田 選手はもう一回練習の中で追い込んで、時間はないですけどフィジカル、メンタル両面を鍛え直してから臨めるように、今は練習量も増やして、士気を高めて頑張ろうという雰囲気です。
千頭 みんな危機感を感じているんですけど、僕はああいった接戦を勝ち切れたことは自信にしてもいいんじゃないかなと思ったりもしてます。危機感にしても自信にしても向上心は持っていると思うので、あと少しですけどチームがさらにいい状態に上がっていければ競った試合でも勝てると思いますし、競る前に圧倒して勝つこともできると思います。最強のチームを目指しています。
――王座に向けて、他大の状況はどう見ていますか
町田 関西二つ、慶應、地方も強いですし。
千頭 全部。
島袋 一戦一戦気を抜かずにやる必要があると思います。
――愛媛でのプレー経験はありますか
千頭 フューチャーズで。オムニだったんですけど。
島袋 キレイなコートです。
――遠征ということで不安はありますか
島袋 行きのバスではしゃいだりしすぎないように。
町田 僕らも初めてなので分からないですけど、サポ―トも選手もいち早く案れることが大事かなと思いますね。
――王座ではどんなプレーを見せたいですか
千頭 やっぱり僕はスーパーファイターなので、人々が見入ってしまうような、応援したくなるように、頑張ってる姿を見せたいです。
島袋 僕もですね。スーパーファイトで頑張ります。
――町田さんは王座でのご自身の役割は何だと考えていますか
町田 やはり、僕のベンチワーク。島袋を勝たせるベンチワーク、そして千頭のメンタルケア。王座最大の見どころは、町田亮のベンチワークでしょう!
――最後に、王座への意気込みをお願いします
千頭 今年の4年生を楽しく笑顔で終わらせてあげたいので、やんちゃで可愛げのある先輩たちを笑顔で送り出したいという一心で頑張ります!
島袋 4年生の方々を優勝というかたちで送り出せるように、14連覇達成できるように、僕自身は全勝で優勝に貢献したいです!
町田 少しでも4年生のためにと思ってくれているこんなにかわいい後輩たちがいるので、4年生がそれに応えられるように頑張っていきたいと思います!
――ありがとうございました!
(取材・編集 石﨑開、松澤勇人)
王座でも『最善主義』を尽くします!
◆町田亮(まちだ・たすく)(※写真中央)
身長183センチ、体重70キロ。福岡・柳川高出身。スポーツ科学部4年。
◆島袋将(しまぶくろ・しょう)(※写真右)
1997(平9)年7月30日生まれ。身長183センチ、体重75キロ。岐阜県出身。三重・四日市工高出身。スポーツ科学部3年。全日本学生ランキング男子シングルス3位、男子ダブルス4位(2018年9月付)。今季の主な戦績は、関東学生トーナメント男子シングルス準優勝、アジア競技大会男子ダブルス銅メダル。
◆千頭昇平(ちかみ・しょうへい)(※写真左)
1998(平10)年10月22日生まれ。身長175センチ、体重68キロ。愛知県出身。愛知・誉高出身。スポーツ科学部2年。全日本学生ランキング男子シングルス5位、男子ダブルス14位(2018年9月付)。今季の主な戦績は、全日本学生選手権男子シングルスベスト32。