【連載】インカレ直前特集『SUMMER WARS』 第6回 古田伊蕗副将×上唯希副将

庭球男子

 連載第6回に登場するのは、プレーで引っ張る男女副将コンビだ。自身初のシングルスベスト8を狙う古田伊蕗副将(スポ4=静岡・浜松市立)と、単複優勝で有終の美を飾りたい上唯希副将(スポ4=兵庫・園田学園)。同期である二人に、4年間での変化や最後のインカレへの思いを伺った。

※この取材は7月22日に行われたものです。

「脱『準』を目指して頑張ります」(上)

早慶戦ではチームを勢いづける勝利を挙げた古田

――まずは全日本学生室内選手権(インカレインドア)の振り返りからお願いします

古田 インカレインドアは田中優之介(スポ2=埼玉・秀明英光)に一回戦で負けました。ケガ明けであまり練習できていなくて納得がいかに部分もあったんですけど、その中でやれることはやったかなとは思います。優之介が強かったですね。

 ダブルス優勝でシングルスは準優勝でした。王座(全日本大学対抗王座決定試合)前にぎっくり腰になって、治さずにプレーしていたのでコンディションは良くはなかったんですけど、その中でシングルス決勝まで行けたのは自信になりました。ただ、最後はやはりフィジカル負けしたなと思う部分があったので、夏に向けては技術よりも熱い中で戦い抜く体力をつけたり、ケガをしないということを気を付けていきたいと思います。

――次に関東学生トーナメント(春関)の振り返りをお願いします

古田 僕たちは4年なので就職活動があったんですけど、上だけはすごく勝っててすごいなと思いました(笑)。僕自身は、シングルスではここまでは行こうと決めていたノルマは達成できたので、それはよかったと思います。ベスト8を懸けた試合で今回優勝した川橋勇太(筑波大)と対戦して、いけなくはないと思えたんですが、勝ち切れなかったので次は勝てるように仕上げていきたいです。ダブルスは初めて名越(大地、社1=兵庫・相生学院)と組んで、お互い緊張もあったんですけどインカレ予選までつなげることが出来たので、このチャンスを生かして本戦に上がれるように頑張っていきたいと思います。

 シングルスは就職活動であんまりテニスをしていなかったんですけど、勢いに乗って決勝まで行けたのはよかったと思います。(決勝で対戦した)筑波大の森崎さん(4年)には高校時代からあまり勝ったことがないのですが、春関でも負けてしまったので、全日本選手権で私のテニス人生が終わる前に彼女に勝って引退するという目標が出来ました。苦手な相手ですが、インカレで当たって勝つことが出来たら最高だと思います。昨年の夏関(関東学生選手権)、インカレインドア、春関とずっと準優勝できているので、脱『準』を目指して頑張ります。ダブルスは、私がシングルスでへとへとになっちゃって、大矢(希女子主将、スポ4=愛知・名古屋経大高蔵)に迷惑をかけたので、インカレではそんなことが無いように頑張ります。

――インカレインドア決勝と同じ対戦カードとなった清水映里選手(スポ2=埼玉・山村学園)との対戦はいかがでしたか

 インカレインドアの決勝も、春関もシーソーゲームで本当に長くて、どちらかがブレークしたと思えばブレークバックして、キープしたらキープで続くという試合になりましたね。清水とは普段から一緒に練習していて、体力的には清水と試合するのが一番きついですけど、一番楽しいです。清水も思い切って来てくれるし、私が自分の力を一番出せるのも清水との試合ですね。インカレは清水が第一シードで私が第二シードだと思うので、決勝でまた当たっていい試合が出来たらなと思っています。

――春関で15年ぶりの無冠に終わったことに対しての危機感はありますか

 女子部におきましては、ダブルスに課題が残ってしまいました。早慶戦(早慶定期戦)でもダブルスで2-0にすることが出来なかったので、レギュラーはダブルス強化練習を行っています。

古田 男子もタイトルが取れなかったことに対する危機感はすごくあって、ダブルスもシングルスも強化練習を行って少しでもインカレでの勝利に近づくための努力はしています。ただ、単複共に決勝には進んでいるので。あと一歩足りないものは何かということを念頭に置いて練習に取り組んでいました。

――最後に早慶戦の振り返りをお願いします。男子部は古田選手が流れを呼び込みましたね

古田 早慶戦は正直に言うと、慶大のオーダーが想定していたものと結構違っていて、実際に僕が対戦したのは伊藤竹秋君(慶大1年)だったんですけど、一年生ということで思い切りプレーしてくる相手に対してしっかりと自分のプレーをして、たぶん女子より早く試合を終えることが出来たので良かったです。しっかり勝って流れを引き寄せることが出来たので、自分の仕事は出来たかなと思います。

――上選手はチームの勝利を決める勝ち星をあげましたね

 ダブルスを1-1のタイで折り返した後にオーダーを考えている中で、下級生に負担をかけないように、大矢と私が絶対に一本取ろうと話していました。そして、大河(真由、スポ3=千葉・秀明八千代)か田中(李佳、スポ1=兵庫・相生学院)が勝ってくれればいいと考えていました。大矢と私が勝って有言実行できたのは良かったのですが、二人とも相手が一年生で、特に私の試合は勝敗が懸かっていたので、相手が伸び伸びプレーできていなくて、そこは経験の差が出たかなと思います。

――4年生、副将になって変化したことはありますか

古田 たぶん僕らは何も変わってないです(笑)。

一同 (笑)。

古田 その分伸び伸びプレーさせてもらっています。仕事に関して言うと僕は坂井(勇仁主将、スポ4=大阪・清風)に、上は大矢に頼ってしまっている部分が大きいです。変わった部分というと、少なからず4年になって危機感は増しましたし、部についてももっと自分が考えていかないといけないと思うようにはなったと思います。ただ、現状としてはテニスをしっかり頑張っていくという役割は変わっていないです。

 副将になったからといって変わったことはないんですけど、4年になって変わったことは、団体戦では自分が絶対取らなくてはいけないという思いは強くなったかなと思います。私たちは二人とも言葉で指導するタイプではないので、プレーで引っ張っていけたら良いなと思います。結果をしっかり残せるように古田と頑張ります。一緒に頑張ろうね。

二人 イェーイ(笑)。

――今の課題を教えてください

古田 最近は体力が落ち気味になっているんですが、自分のテニスは『走る』テニスなので、インカレまでにすごく暑い中でも走り切ってプレーをやり切ることが出来るようにまずは体力をつけることですね。あとは、勝つためのここで一本というところを、しっかり振り切れるように日々の練習に取り組んでいきたいと思います。

 昨年一年間はランキングが一位だった関係で全て第一シードになってしまって、特にインカレは気負ってしまった部分が大きかったですね。ダブルスも三連覇がかかっていましたし、どちらも試合を楽しむことが出来なかったかなと思います。昨年のインカレは結果も悪かったですが、楽しめなかったという印象が強いので、ことしはシードを気にせずに最後の夏を楽しむことが出来れば、結果は自ずとついてくるのかなと思います。

「後輩の皆さん僕のところに来てください」(古田)

同学年ならではのトークにも華が咲いた

――ここで話を少し変えて、新一年生のプライベートでの印象を伺いたいと思います

 女子は例年に増して個性豊かな子がいるなと思います。キャッキャしている子もいれば、ド天然な子もいますね(笑)。私は結構後輩と話すのが好きで、この前も一年の松本(妃那、スポ1=福岡・柳川)と話してたんですけど、彼女が真っ黒すぎてインスタグラムのストーリーに投稿したりしましたね(笑)。そんな感じで仲良くしているんですけど、色々な子がいるから話していて楽しい学年ですね。

古田 一年生は男子も個性的なやつが多いです。いい意味で変なやつが多いですね(笑)。

 自分も中々だけどね(笑)。

古田 僕は寮なので、一番名越とか武藤(洸希、スポ1=東京・大成)とかとよく話すんですけど、面白いですね。僕はあまり自分からいけるタイプじゃないので、武藤とかはよく僕の部屋に遊びに来たりするのでありがたいですね。後輩の皆さんきてください(笑)。

――一年生の時を思い出して、お互いに変わらないな、変わったなと思うところはありますか

 変わらないのは髪の毛ですね。

古田 それは変わったらおかしいでしょ。

 一年生の時はそんなに話してなかった気がする。

古田 めちゃくちゃ話してたよ。

 話していたらしいんですけど、私の中では印象に残ってなかったです(笑)。今は話していてすごく印象に残るので、私の中ではすごく仲良くなったと思います。私たちはプリンスに契約してもらっているんですけど、その展示会が表参道であって、初めて新宿まで二人で歩いて帰りました。

古田 え、それ仲いいエピソード?

 そう(笑)。いつもは坂井がいるんですけど、たまたまいなくて、二人で新宿まで歩きました。

古田 これが仲良くなったエピソードです。

 真面目な話では一年目はレギュラーじゃなかった中で、勝ち取るために結果も残して頑張って、団体戦の流れを握るキーマンになっているので、すごく努力していたんだなと思います。

古田 上は何も変わっていないです。あえて言うなら髪が伸びましたね(笑)。変わらない部分は、昔からめちゃくちゃ強いっていうことですね。一年生の頃から単複でキーマンであることは変わっていないので、上さんは昔からとても強くて憧れの選手の一人です。

 絶対に思ってないでしょ(笑)。

古田 本当に一年生の頃から団体戦で活躍している坂井や上を見て、あんなふうに活躍したいなと思っていました。変わってはいないですね。

 変わってないってことでいいよ。

古田 4年になってピリッとしたわけでもないし、相変わらず「ほなまたな~」みたいな感じです。あ、でもちょっとかわいくなった?

 ありがとう(笑)。

――先日サッカーのW杯がありましたが、庭球部の「ハンパないって」エピソードを教えてください

 最近だと嶋崎さん(徹夫監督代行、平元商卒=神奈川・桐蔭学園)ですね。練習で学生と一緒に走ったんですけど、女子よりも早くてハンパなかったです(笑)。

古田 トライアスロンとかもやってる人だもんね。

 後は澤田(実梨、文構4=奈良・帝塚山)の黒さがハンパないです。最近まで白かったんですけど、パッと見たら顔が黒光りしていてコイツハンパねえなって思いました。

――続いて、無人島にだれか連れて行くなら誰でしょうか

 人ですよね。

古田 人はいらないか。「私ナイフがあれば十分だから」って言ってね。

 そんなことない(笑)。でも、イブッキー(古田)は候補にいたら真っ先に外すと思う。

古田 外されました…。

 無人島なら泳げる人がいい。

古田 泳げるよ。

 海に潜って魚取ってきてくれる人がいいです。

古田 そんな人間中々いねぇよ(笑)。

 私は泳げないから火おこしを頑張るので、魚を取ってきてほしいです。

古田 じゃあ小池(秀輔)だね。学生トレーナーの小池。あいつ水泳部なんですよ。

 じゃあ小池君にしておきます。

古田 僕は勝手なイメージだけど、一年の女子の杉田(栞、社1=埼玉・山村学園)を連れて行ったらすごくいろいろ知ってそう。なんか強そう。

 確かに無人島から来ましたって言われても違和感はないかな。

古田 変な土地に連れていかれても心ひとつ乱さずに「頑張りましょうか」って言いそうです。メンタルがすごく安定してそう。

 じゃあイブッキーは何するの?

古田 俺は杉田を見て手を合わせてる。

 一年生なのにかわいそう(笑)。確かにどこでも生きていけそうなオーラは出てる気がします。

古田 拝みつつ一緒に頑張ります。

――オフの日は何をしていますか

 就職活動で半年くらい遊べなかったので、今は色々な人とご飯に行ったりしています。就職したら全国転勤なので、こっちで楽しんでおこうと思って遊んでます

古田 上ちゃん俺と全然遊んでくれないじゃん。きつい?

 二時間が限界かな。十分超えたごとに千円ね(笑)。

古田 高いなー。二時間コース考えとくわ。

古田 僕もふっかる目指してます。でも、飲んでばっかりだな。この間はたこ焼きパーティーして、次の日は春山さん(亮太、平30法卒=宮崎西)と飲みに行きました。その次の日は姉と下北沢に行って、そのあとテニスクラブの先輩と銀座でイタリアン食べてました。怒濤(どとう)のオフでしたね。でも、基本は寝てます。

――テニス部以外だとどういう人と遊びに行きますか

 この前は法大の子とご飯に行きました。来週はインターンで仲良くなった早大の子とご飯に行きます。幅広く色々な子と遊んでます。

古田 高校の同期は会ったりしますね。たまーになんですけど、慶大の逸崎(凱人、4年)、畠山(成冴、4年)、明大の本城(和貴主将、4年)、法大の前崎(直哉主将、4年)とか小宮山(僚、4年)との「一個下に負けるな」グループラインがあって、飲み会が開かれたりはします。

 私は、フリーの日は毎日会っている部活の人とかよりも、違う人と遊んでリフレッシュすることが多いですね。

古田 僕は毎日会っている人の方がむしろ安心しますね(笑)。たまに違う人もいいと思うんですけど、同じ人でも部活の時と遊んでいるときはまた違うので、部活の顔を知っているからこそ外で馬鹿みたいにはしゃぐのが楽しいですね。寮だから感覚がおかしくなっているのかもしれないです。

「一番は楽しむこと(上)

最後のインカレを見据える上

――最後にインカレの話に戻りたいと思います。まずインカレに対するイメージを教えてください

 私は正直岐阜のコートは好きじゃないです。でも、体力や暑さなどの色々な面で一番ハードなインカレで勝ってこその学生テニスかなと思います。一番勝つのが難しいインカレで勝つことが、一番うれしいのかなと思いますね。

古田 僕も岐阜のコートはあまり得意じゃないですね。(球足が)遅いし跳ねるんですよ。坂井みたいなスピンボールが来ると押されて、どんどん追い込まれてしまうことが多くあったので、そういった意味では好きではないですね。暑さに関しては、自分は暑さに強くて体力があると思っているので、勝手に相手が疲れて(足を)つってくれたらラッキーと思っています。上も言っていたように、学生テニスをしている人にとっては、インカレで勝つことが一番目指すところだと思うので、自己最高のベスト16を超えて、優勝することを目指して頑張っていけたらいいと思っています。

――大会まで一カ月を切りましたが、今の調子はいかがですか

 テニスに関しては悩むことはないですね。早慶戦やトレーニングで体に疲労がたまっている部分はあるので、自分の体と相談しながらケガをしないように気を付けて、インカレに向けて追い込んでいきたいなと思います。

古田 悩んでいるような、悩んでいないようなですね。あと三週間弱は時間があるので、一日一日体を大切にしながら練習に励んで、最高の調子でインカレに臨めるように頑張っていきたいと思います。

――強化しているポイントはありますか

 私は個人的に自分から打っていくことが好きなんですけど、コートの状況的には中々決まりづらいので、普段の練習から色々な状況を想定して自分の引き出しを増やしていくことが必要だなと考えています。

古田 自分のテニスのやり方は決まっているので、その中でいかに大事なところで攻めることができるかとか、メンタル的な部分を仕上げていきたいですね。そのために、練習からしっかりと迫力のあるボールを打っていくことが大事だとよく石井弥起コーチからも言われるので、2週間取り組んでどんな結果であろうと悔いの残らないインカレにしたいかなと思います。

――他大で警戒している選手はいますか

 私の中では打倒森崎さんですね。私は関西の高校で、森崎さんはずっと関東で、なぜか全国大会でもよく当たっていたんですけど、高校に上がってからたぶん一回も勝っていないので、森崎さんに勝てればそこで引退したいくらいの気持ちです(笑)。こんなに相手を褒めすぎるのもよくないんですけど、大学テニス界の中ではボールのスピードも速い相手にどこまで食らいついて、勝ちに持っていけるかということを楽しみにやりたいです。

古田 僕は春関で負けた筑波の川橋選手に、当たったらリベンジしたいと思っていますね。今のところ1勝1敗なので、しっかりと体力を戻せれば勝てる要素は十分あるので、そこは頑張りたいですね。あと、同じ早大の部員に負けることが多くあって、全員強いので仲間であり全員がライバルだという気持ちで頑張っていきたいと思います。

――インカレでのアピールポイントはありますか

 私は普段頑張らないキャラとか妥協キャラと言われているんですけど、インカレではコートの中を走り回る予定なので、それを見て頑張ってるなと思っていただければと思います。

古田 ことしが最後で勝ちたいという気持ちも強いので、あいつ頑張ってるなと思ってもらえればいいなと思います。

 言ってる事ほとんど一緒じゃん。真似しやんでよ。

古田 俺は妥協キャラじゃないから(笑)。体力面と気持ちですね。頑張ります。

――最後に意気込みをお願いします

 一番は楽しむことですね。インカレもこれで最後で、個人戦の学生大会も最後なので。楽しんで自分を信じれば結果はついてくると思うので、今までの春関やインカレインドアを自信にして、とことんまで全力で自分のプレーをして、体の限界が来るまで楽しんできたいと思います。

古田 楽しんで悔いのないようにインカレを終えるには、インカレまでの期間がすごく大切になってくると思っています。それをどれだけ自分の中で気持ちを持って取り組めるのかということにかかってくると思うので、まずはこの二週間を真剣に取り組んで、全力でインカレに臨めるようにしたいです。それでいい結果が出れば最高ですね。頑張ります。

――ありがとうございました!

(取材・編集 佐々木一款、松澤勇人)

和気あいあいとした4年生対談でした!

◆古田伊蕗(ふるた・いぶき)(※写真右)

1996年(平8)4月25日生まれ。身長172センチ、体重67キロ。静岡・浜松市立高出身。スポーツ科学部4年。昨季の主な戦績は、関東学生選手権男子シングルス準優勝。今季の主な戦績は関東学生トーナメント男子シングルスベスト16。全日本学生ランキング男子シングルス10位(2018年6月付)。自分からは中々後輩に絡みにいけないという古田選手。後輩の皆さんの積極的なアプローチを楽しみにしています。

◆上唯希(うえ・ゆいき)(※写真右)

1996年(平8)11月2日生まれ。身長167センチ。兵庫・園田学園高出身。スポーツ科学部4年。昨季の主な戦績は、関東学生選手権女子ダブルス優勝、全日本学生室内選手権女子ダブルス優勝。今季の主な戦績は関東学生トーナメント女子シングルス準優勝、女子ダブルスベスト4。全日本学生ランキング女子シングルス2位、女子ダブルス2位(2018年6月付)。1年時の古田選手が記憶にないという上選手。今では、二人で新宿に歩いて帰るほど仲良くなりました。