時刻は午後7時過ぎ。ナイター用の電灯がともる中、坂井勇仁主将(スポ4=大阪・清風)と田中優之介(スポ2=埼玉・秀明英光)の間を鋭いサーブが切り裂く。一瞬の静寂の後、相手ペアが雄たけびを上げると同時に、坂井・田中優組は肩を落とした。この瞬間、1週間にわたって開催された関東学生トーナメント(春関)が幕を下ろした。今大会男子ダブルスに第1シードで臨んだ坂井・田中優組はフルセットの末、小見山僚・楠原勇介組(ともに法大)に敗北。また午前中に行われた男子シングルスでも、この大会での連覇が懸かっていた島袋将(スポ3=三重・四日市工)が川橋勇太(筑波大)に敗れ、早大勢は単複でタイトルを逃す結果となった。
まずは午前中に行われた男子シングルス。ケガからの復帰戦ながら、ここまでタフな試合を勝ち上がってきた島袋が決勝に臨んだ。この試合の相手は筑波大の川橋。ここまで1セットも落とさず勝ち上がってきた絶好調の相手に、苦戦を強いられる。第1セットの序盤はキープキープで試合が展開されたが、ファーストサーブの確率が落ちた第6ゲームで先にブレークを許す。ここからお互いブレークし合うゲームが続いたが、第9ゲームを相手にキープされ3-6でこのセットを落とした。第1セットではミスのない正確なショットを打ち込んでくる相手に対し、焦りから先にミスをしてしまう場面が多かった島袋。「全然余裕がなくて、プレーを変えたりミスを減らすことができなかった」と、第2セットも同じような展開で先にブレークを許し、リードを広げられる。それでもなんとか対抗し、4-5で迎えた相手サーブの第10ゲーム。マッチポイントを握られた場面で、この試合で最も長いラリーを繰り広げる。しかしここでもフォアハンドのストロークがネットにかかり、ゲームセット。「自分がいつものテニスをできるかがキー」と話していたが、本来のプレーができず、力負けしてしまった。
ゲームセットの瞬間、肩を落とす島袋
一方の男子ダブルスでは、坂井・田中優組が全日本学生室内選手権に続く優勝を狙った。相手の小見山・楠原組は昨年のインカレでベスト4入りした強敵。実力差が拮抗(きっこう)する両ペアだが、お互いにペースをつかみきれないまま一進一退の攻防が続いた。第1セットは坂井にミスが相次ぎ、サービスゲームを3本ブレークされてしまう。しかし田中優が坂井のミスをカバーしタイブレークに持ち込むと、序盤で続いた相手ペアのミスに付け込み、このセットを先取する。ここで波に乗りたかったが、第2セットも思うようなテニスができない。「(お互いの調子が)ちぐはぐになってしまった」(坂井)と、坂井が調子を取り戻してきたところに田中優が乗り切れず、このセットもタイブレークに。ここで相手ペアの素晴らしいショットが連発し、嫌な展開でセットを落とした。迎えたスーパータイブレーク。「相手のスーパープレーを引きずってしまった自分がいた」(田中優)、「自分たちから流れをつくれなかった」(坂井)。止まらぬ相手の勢いに押され、徐々に点差を付けられると、最後は終盤の勢いを象徴するかのようなサービスエースで終止符を打たれた。
坂井(右)・田中優組は紙一重の差で勝利を逃した
今大会は男子部のみならず女子部も単複でタイトルを逃し、早大として無冠に終わった。各校とも実力を付けてきているのは事実だが、学生テニス界では長年無類の強さを誇ってきた早大にとっては物足りない結果だ。坂井は主将として「単複タイトルを取れなかったっていうのは何か変えていかないといけないダメだった部分があると思う」と、今大会を振り返った。絶対王者が味わった悔しさ。この思いをぶつける機会が、来週すぐに早慶対抗試合(早慶戦)という場で用意されている。相手の慶大も同じく今大会では全タイトルを逃しているため、並々ならぬ思いでぶつかってくるだろう。「全員が一つになれるように、全員で勝ちにいきたい」(坂井)。まずは早慶戦で快勝し、夏の全日本学生選手権でのリベンジに向けていいスタートを切りたいところだ。
(記事 吉田優、写真 松澤勇人)
男子シングルス準優勝の島袋
男子ダブルス準優勝の坂井(左)・田中優組
結果
▽男子シングルス決勝
●島袋将3-6、4-6川橋勇太(筑波大)
▽男子ダブルス決勝
●坂井勇仁主将・田中優之介7-6(3)、6-7(1)、5-10小見山僚・楠原悠介
コメント
坂井勇仁主将(スポ4=大阪・清風)・田中優之介(スポ2=埼玉・秀明英光)
――今日の試合にはどのような気持ちで臨みましたか
坂井 相手も力のある選手だっていうのは僕は去年インカレであの二人とやっているので分かってたんですけど、その中で相手はしっかりやるべきことをやってきた中でこっちはちょっと挑戦しきれなかったっていうのが僕自身あって、風だとかそういう悪影響もあったんですけどこっちにも勝つチャンスはあったんでそこは残念かなと思います。
田中優 夏関(関東学生選手権)で準優勝だったのでやっぱり優勝したいっていうのはすごい思いながらやっていて逆にそれが自分を固くして自分の首を絞めてしまっていたかなと思います。
――きょうはお互いにペースをつかめていない印象を受けましたがどのように感じながらやっていましたか
坂井 ファーストセットで僕のサービスゲームを3回ブレークされてファーストも相手に取られてもおかしくなかったんですけど、なんとか優之介がしのいでそれにちょっと僕が(調子が)戻ってきて乗ったっていう感じでした。でも優之介が乗ってる時に僕が乗り切れなくて、僕が乗っている時に優之介が乗り切れなくてっていうのがちぐはぐになって続いちゃったんで、そこはこれからの修正していける伸びしろですね。
田中優 でも確かに僕らの方が先にブレークされて追い付く側だったので、先に僕らがブレークしてキープしていたらもっと乗れたんじゃないかな。でも一つ相手に乗らせなかったっていうのはいい部分だと思うんですけど、自分たちから先に乗っていかなきゃいけないなと思いました。
――スーパータイブレークにはどのような気持ちで臨みましたか
坂井 準決勝もスーパータイブレークでその時は勝ったんですけど今回は相手もすごい勢いがあって僕らも出だしから勢いを出してやっていこうとは思っていた中で序盤、中盤で3点、4点離されたので、自分たちから流れをつくれなかったっていうのがスーパータイブレークの敗因です。
田中優 スーパータイブレークは自分たちがリードしている時にもう一点離すことができず、追い付かれた時に相手に離されてしまって、相手のナイスショットやスーパープレーも何度かあってそこを引きずってしまった自分がいたので、もっと切り替えて次のポイントに集中するっていうのができていなかったかなと思います。
――坂井選手はこの大会全体を振り返ってみて主将としていかがですか
坂井 単複タイトルを取れなかったっていうのは何か変えていかないといけないダメだった部分があると思うので、それをしっかり見つけて一つずつ課題をつぶしていけばインカレ(全日本学生選手権)・リーグ(関東大学リーグ)・王座(全日本大学対抗王座決定試合)では力のある選手はそろっているので結果はついてくるのかなって思います。やることをしっかりやり切る力をしっかり部員全員がつけていかないといけないなと思いますし、これからこういうふうに他大も選手がそろってきている中で勝っていくには必要だと思います。
――最後に来週の早慶対抗試合(早慶戦)に向けて一言お願いします
坂井 早慶戦は伝統、歴史ある大会で現在ワセダは連勝中ですけども、今年のチームでやる早慶戦はこれが初めてなので、全員が一つになれるように残りの時間を有効に使って全員で勝ちにいきたいと思います。
田中優 早慶戦は僕は去年しか経験していなくて今年が初のアウェーということで今年がどういうものになるのか正直まだ分からないところはあるんですけれども、出るからには必ず勝ちたいです。ダブルスにおいてはきょうは負けてしまったんですけど「あいつら負けて変わった」って言われるように、本当にこの1週間でしっかり準備していきたいと思っているので頑張りたいと思います。
島袋将(スポ3=三重・四日市工)
――きょうはどういったプレーをしていこうと考えていましたか
川橋選手はストローカーでなんでもできるんで、最終的にキーとなるのは自分の攻撃力、どう自分がいつものテニスをやりきれるかだと思っていました。
――ファースト、セカンドセット共に同じような展開でセットを落としてしまいました
全ての試合を通して何事もうまくいくわけがないってことは分かってて、この決勝の舞台で緊張するってことも試合前から分かっていたんですけど、それに対して全然対応できなくて一方的なこっちのミスが続いてしまいました。自分自身に全然余裕がなくて、プレーを変えたりミスを減らすことができなかったです。
――余裕が無かったというのは焦りのようなものでしょうか
そうですね。向こうは勢いよく来てて自分は全然いつものプレーができなくて、それが緊張なのか力みなのかは分からないですけど、どんどんゲームが離されていくっていうのに対して焦りはありましたね。
――今大会はケガからの復帰戦でしたがその中でここまできたというのはいかがですか
ケガしててこれが復帰戦だろうが出たからには優勝したかったですし、ケガをしてたっていうのは言い訳になっちゃうので、自分自身はこの春関っていうのはちゃんと勝って復帰したっていうのを証明できるものだと思っていたので。初戦から結構タフな試合が続きましたけど、準優勝できた、決勝まで来れたことは一つ大きな収穫として、決勝でベストなパフォーマンスをできなかったっていうのはこれからの課題でもあるかなと思います。
――テニス自体の調子はどうでしたか
今まで通りのテニスはあまりできなかったとは思っています。でもやっぱりそういう時は誰でもありますし、自分がどういう調子だろうと勝っていくのが強い選手だと思うので、自分ももっとそういう強い選手になれるようにこういう経験を積んでもっと頑張っていこうと思います。
――来週には早慶対抗試合(早慶戦)がありますがそこへ向けてはいかがですか
一つの大会が終わってまたすぐ早慶戦があるということでまたタフな戦いが待ってるので、もう一回気持ちを切り替えてチャレンジャー精神を持って、出させてもらえたら全力で勝ちにいく気持ちで頑張りたいと思います。