第1回に迎えるのは、今季のチームを率いる小倉孝介主将(スポ4=神奈川・湘南工大付)、細沼千紗女子主将(スポ4=東京・富士見丘)だ。本格的な学生大会シーズンのスタートを前に、現在のチーム状況や新入生の様子まで、新体制について伺った。
※この取材は3月8日に行われたものです。
「チームとしてはまとまりができてきている」(細沼)
チームの現状について語る細沼女子主将
――新体制になって約4カ月ですが、チームの雰囲気はいかがでしょうか
小倉 秋季リーグ(関東大学対抗選手権)などチームとして動いている部分もあって、最上級生となってうまくまとめられているかなというのはあります。その中で最近新入生が徐々に部に入ってきていて、うまくコミュニケーションを取っていいチームづくりをして早慶戦(早慶対抗戦)を迎えられるかという点では今重要な時期だと思うので、まずは学年関係なく縦のつながりをいいものにして、いい関係をつくっていけたらなと思います。
細沼 新体制になってすぐのインカレインドア(全日本学生室内選手権)では(女子は)単複準優勝というかたちで、男女とも優勝が取れていなくて。ただ秋季リーグではAチームとBチームが決勝で当たれていますし、これから軸になってくる新3年生の上(唯希、スポ3=兵庫・園田学園)、大矢(希、スポ3=愛知・名古屋経大高蔵)も上級生としてしっかりしてきているので、チームとしてはまとまりができてきてはいます。新1年生が加わっての部活がまだあまりできていないので、ここからだなという気持ちです。
――その新1年生の様子はいかがですか
小倉 慣れない環境での練習は気持ち的にも難しいところはあると思うのですが、まだ体もあまりできていなくて、そういう意味でケガもしやすいのでそこはしっかり注意しています。でもポテンシャルはそれぞれ高くて、ジュニアの頃からトップで戦ってきた人ばかりなので、大学に入ってどううまく引き上げられるかというところかなと思います。
――性格的にはどのような子が多いですか
小倉 自由奔放というか(笑)、まだ1年生なのでいい意味で元気です。締めるところは締められるような1年生になってほしいなと思います。
――男子には1年生のお世話をする教育係があると伺いました
小倉 もうこの間決まったと思います。これからビシビシ(笑)。
一同 (笑)
――女子の新入生はいかがでしょうか
細沼 入部予定の子たちがみんな結構レベルが高いので、その中でレギュラー争いが厳しくなってきます。雑用など新しいことが増えてくるので、体調管理はしっかりしてほしいなというのと、みんなレギュラーを狙える位置にいると思うので、部活も文武両道で頑張ってほしいなと思います。
――性格としては
細沼 どうなんだろう?私もまだあまり関われていないので(笑)。これからですね。
――去年は部全体としてはどのような年でしたか
小倉 去年はちょっとチームづくりが遅れたかなというイメージがあって。リーグ(関東大学リーグ)が終わるくらいにチームが全然できていないということにやっと気付いて、難しい部分はすごくあった1年でした。リーグもあと1ゲームで負けというところまでいきましたし、この四年間で一番危機感を感じた、初めての経験をした1年となりました。その反省を生かして、自分たちの代ではチームづくり、コミュニケーションから始めているのですが。去年の失敗を繰り返さないようにしていきたいなと思います。
細沼 メンバーを見た限りだと、早大がトップで絶対負けないだろうと周りの人たちは思っていたと思うのですが、その中でも私たちに団結力が足りていなかったのかなと思っていて。7-0で倒せるところを1本落としてしまったりだとか、そういう団結力が欠けている部分、隙から落としてしまっていたと思うので、そこはことしは失くしてしっかりコミュニケーションを取っていきたいなと思います。
――去年の全日本大学対抗王座決定試合(王座)が終わってから、学生大会やJOP、ITFの試合にも出ている部員がたくさんいると思いますが、ここまでのチームの戦績はどう見ていますか
小倉 インカレインドアはこれまで毎年優勝を取れていたのですが、ことしは取れていなくて。ライバルの慶大に取られて、その後の秋季リーグはタイトルを取れたのですが、その次の新進(関東学生新進選手権)は慶大(が優勝)というかたちで、どちらも戦力を兼ね備えた中でタイトルを取り合うかなりいい関係だとは思いますし、5月に控えている早慶戦では負けられません。2月には海外遠征でトップの選手はすごくいい刺激を受けたと思いますし、JOPだったり国内のフューチャーズだったりにはどんどん出して経験を積ませているというかたちなので、これからフューチャーズはどんどんあるのですが、そこでしっかりタイトルを狙っていきたいなと思います。
細沼 インカレインドアで優勝を取れなかったり、その後の新進でノンレギュラーの子たちがタイトルを取れる位置にいたのにもかかわらず負けてしまったり、悔しい部分はありました。その中でも全日本室内(島津全日本室内選手権)で上・大矢が決勝にいくなど、レギュラーはプロに通用すると分かったので、私たちは自信につなげていきたいのですが、ノンレギュラーの強化をもっともっとしていきたいです。インカレ(全日本学生選手権)に出られる選手がたくさんいるので、まずはその子たちを本戦に上がらせることが第一の目標かなと思います。
最高の環境
庭球部の魅力について考える男女主将
――ここからはお二人についてお聞きしたいと思います。まずはお二人が早大に、そして庭球部に入った理由をお聞かせください
小倉 僕はテニスをやるからにはプロを目指したいなと思っていて、ジュニアの頃はまだ実力が全然足りてなかったので、プロを目指す環境が一番整っている早大に入りたいなと思いました。先輩たちもすごい選手ばかりで、監督・コーチもすごい人ばかりなので、練習の中で自分が強くなるにはこれ以上の環境はないと思います。
細沼 私は実はずっと慶大に入りたいと思っていたのですが、高3の夏に迷い始めて。そもそも高校に入る前も、全国優勝もしている富士見丘高ではレギュラーを取れれないと思って逃げようとしていたんです。でも実際入って、厳しい環境でもまれていく中で強くなって、エースにまでなれたんですよ。だから大学でも、王座を何連覇もしている早大に入って成長できるかなと思って、慶大じゃなくて早大に入りました(笑)。
――実際に入ってみないと分からない早大庭球部の魅力は何だと思いますか
小倉 意外と先輩後輩の上下関係が厳しくないということですかね。オンとオフの切り替えがしっかりしているので。雑用とかについては厳しくするんですけど、コートを出たら仲良く、みたいな(笑)。コミュニケーションをたくさん取るようにしているので、良い関係というか、言いたいことが言える関係なのかなと思います。和気あいあいとした雰囲気がここの良いところですね。
細沼 小倉も言った通り、オンとオフの切り替えが先輩後輩の関係の中でしっかりできていて、とてもいいと思います。王座前の練習では、部員全員が一人ひとり「王座で優勝したい」という気持ちを持っているんだなと実感します。
――早大ならではの特徴、早大でしかできないことは何だと思いますか
小倉 ジュニア時代に各高校でシングルス1とかで主力としてやっていた人たちも、ここでは下級生からレギュラーを取ることは難しいと思います。そういう選手はボーラーなどのサポートに回ることになるのですが、サポート側の経験ができるのはとても貴重だと思います。サポート側の気持ちを知るというのはとても大事だと思うので。実力ある人たちもサポート側の経験をするというのは、ここならではだと思います。
細沼 100本ダッシュですかね(笑)。あれは他の大学ではやらないと思います。
――100本ダッシュは王座前にやるのですか
小倉 そうですね。年末もやるね。
細沼 リーグ前もやるから、年3回くらいだね。70本とか少ないのはもう少しやったりしてます。
小倉 (70本でも)少なくないけどね(笑)。ここでチーム力高めるぞっていうときにやります。
細沼 ことしは120回やっちゃう?
小倉 やめろやめろ、変なこと言うなって(笑)。
「死ぬ気でやっていきたい」(小倉)
力強い言葉を発する小倉主将
――お二人が主将に決まった時の心境はどのようなものでしたか
小倉 正直主将になるとは思っていなかったのですが、コーチ陣の方が選んでくださったからにはそれなりの理由があると思うので、やるしかないなと。王座連覇というプレッシャーがあるのですが、それをはねのけて優勝することでその先にまた新たな挑戦ができるのかなというのがあります。この1年全力で頑張っていきたいなと思います。
細沼 リーグからこのチームは私が引っ張っていきたいなと思っていて、(リーグで)いいプレーができて王座でも最高のプレーができました。こうやって私が引っ張っていくしかないなと思えたので主将になれたことは喜びの一つだったのですが、主将というプレッシャーに押しつぶされないかという不安もあって。たくさん練習しようと思いました(笑)。
――どのような主将になりたいですか
小倉 スローガンとして『挑戦』があるのですが、自分に強く、自分に挑戦してほしいなというのが部員それぞれにあって。きつい時それぞれ自分に負けて妥協することはあると思いますが、そこでいかに弱い自分を押し殺して頑張っていけるかという、強い自分を持ったチームにしていけたらなと思います。
細沼 小倉も言ったのですが、ことしは『挑戦』というスローガンがあるので、まずは私が挑戦して、そこからみんなについてきてもらうようなかたちで、私が率先して行動していけたらいいなと思います。
――『挑戦』というスローガンについてお二人の解釈を教えてください
小倉 まずは王座連覇への挑戦ですね。王座は毎年勝ち方が違ってくるので、挑戦する気持ちは常に忘れてはいけないと思います。それから、自分への挑戦ですね。本当に厳しくて辛いこともあると思うんですけど、そこでより自分を高められるように、自分に挑戦していきたいと思います。あと、ことしから(三菱)全日本選手権優勝という新たな目標ができたので、ことしは部のルールとかも色々変えていかないといけないと思うのですが、その中で王座、リーグ優勝という目標を継続できるか。それも、一つの『挑戦』だと思います。
細沼 受け身の姿勢だと弱気になってしまうと思うので、王座12連覇への挑戦ですね。それから、ことしからは海外に積極的に挑戦していこうというのがあって、私自身も先月3週間中国でフューチャーズ大会に挑戦して、そういう海外への挑戦もしていきたいと思っています。嶋崎さん(徹夫監督代行、平元商卒=神奈川・桐蔭学園)とも話したのですが、部として五輪に挑戦しようという目標も掲げているので、全日本、ITFなどさまざまな『挑戦』が待ち受けているなと思っています。
――さまざまな変革を行っていると伺いましたが、部には浸透しているのでしょうか
小倉 ことしは節目の年というか、まさに今変わっている途中なので、その代としてはとても難しいですね。これまでは1年生は雑用して当たり前みたいなところもあったのですが、睡眠や食事の面から見たらあまり良くない部分もあるので。当たり前だったことを変えていくのはとても大変だと思うのですが、うちの代は我慢して、東京五輪を見据えて部として方向転換していきたいと思います。
――ことしはどのようなチームにしていきたいですか
小倉 僕らの代が男子は13人でかなり多くを占めるのですが、それぞれ個性があってすごく明るい同期が集まっています。その横のつながりの良さを縦に伝えて、チーム全体がいい意味で仲良く、仲間としてやっていけて、時には厳しいことも言い合える、腹を割って話せるようなチーム作りをして、王座に向かっていきたいなと思います。
――連携を重視したチームづくりをしていくということですか
小倉 そうですね。戦績ではどの大学とも均衡しているので、チームとしての力を高めていきたいなと思います。
――女子はいかがですか
細沼 去年は先輩に対してあまり言えないということが多かったので、ことしはそのようなことはなく風通しの良いチームにしたいです。私たちの代は女子も元気がいいので、4年生の元気の良さを出して、元気のいいチームにしていきたいなと思います。
――改めて、主将としての意気込みをお聞かせください
小倉 やはり大学での主将というポジションは一生に一度しかないので、全力でやり切ることと、僕は今までリーグ、王座と出られていないので、その分練習での、コート上での頑張りだったり誰よりも努力する姿勢だったりを見せて引っ張っていくと。その中で早慶戦、リーグ、王座に出て、試合でみんなを引っ張っていけるような選手にもなっていきたいので。大変だとは思うのですが、死ぬ気でやっていきたいなと思います。
細沼 早慶戦、リーグ、王座といった団体戦では自分が単複共に出場して全勝することは最低限の事だと思っているので、それプラスチームの雰囲気作りだとか、王座12連覇に向けての練習内容だとかを後輩ともしっかり話し合って、連携して王座12連覇を達成したいなと思っています。
――ありがとうございました!
(取材・編集 熊木玲佳、松澤勇人)
主将としての意気込みを書いていただきました!
◆小倉孝介(おぐら・こうすけ)(※写真左)
1996年(平8)2月9日生まれ。身長173センチ、体重64キロ。神奈川・湘南工大付高出身。スポーツ科学部4年。ゆっくりと時間をかけて色紙を書いていた小倉主将。文字の大きさやトメ、ハネなど、随所でこだわりを見せていました
◆細沼千紗(ほそぬま・ちさ)
1996年(平8)3月26日生まれ。身長168センチ。東京・富士見丘高出身。スポーツ科学部4年。自ら「ことしは100本ダッシュを120本に増やそう」と冗談を飛ばした細沼女子主将。ふとした言動から、背中で引っ張りたいという言葉通りの気持ちが感じられました